ローコード/ノーコードの開発需要が増加

Application Platform as a Service

 IDC Japanは、アプリケーションPaaS市場動向を調査した。同調査におけるアプリケーションPaaSのカテゴリーは、Java EEやSpring Frameworkなど、アプリケーション開発用の標準的なフレームワークで構築される「デプロイメントセントリックアプリケーションプラットフォーム」(DCAP)と、GUIやビジュアルモデリング機能を備え、ドラック&ドロップや単純なスクリプトでアプリケーションを構築できる「モデル駆動型アプリケーションプラットフォーム」(MDAP)の二つに定義している。

 2019年のアプリケーションPaaS市場は前年比成長率20.9%で、市場規模は306億6,600万円となった。背景には、Webアプリケーションの実行環境がオンプレミスからクラウドサービスへシフトしていることや、コンテナアプリケーションをはじめとするクラウドネイティブアプリケーションの実行環境としてDCAPの利用が拡大していることがある。また、企業内では業務やビジネスの柔軟性を高めるために業務アプリケーションの迅速な開発に対するニーズが高まっている。例えば、マイクロソフトの「Microsoft PowerApps」やIBM Cloud上で動作するMendixの「Mendix App Platform」といったローコード/ノーコード開発機能を備えたMDAPの需要が拡大している。各市場の動向として、DCAP市場はJavaアプリケーションをオンプレミスからPaaSへ移行するケースが増加したり、DXに向けたクラウドネイティブアプリケーション開発が増加したりすることで高い成長が見込まれる。MDAP市場は、ローコード/ノーコード開発やワークフローの自動化に向けた活用が増加していくとみている。

開発の迅速化や拡張性の高さが重要

 2020年のアプリケーションPaaS市場は、新型コロナウイルスによりITシステムの開発/導入案件の中止や凍結が起こると予想され、前年比成長率は13.0%、市場規模は346億5,800万円と、一時的に減速する見込みだ。新型コロナウイルスが収束に向かうと予想される2021年からは市場が再び拡大して2022年に前年比成長率のピークを迎え、2019~2024年の年間平均成長率は17.7%の予測だ。

 同市場の動向について、IDC Japan ソフトウェア&セキュリティのグループマネージャーの入谷光浩氏は「DXの進展によってアプリケーションは大きな変革期に入っている。開発の迅速化と容易化、実行環境の拡張性とアジリティを高めるためには、アプリケーションPaaSの活用が重要になってくる。さらに新型コロナウイルスを契機として、企業は事業継続性のさらなる強化のため、オンプレミスのアプリケーションプラットフォーム環境をPaaS環境に移行する戦略を推し進めていくであろう」と説明している。

POSターミナルは専用機からの脱却が急務

Point Of Sales

 2017年度に3大コンビニエンスストアチェーンがPOSターミナルの入れ替えを行ったことが契機となり、2019年度までに多くの小売店舗でPOSターミナルのリプレースが実施された。リプレース需要の収束により、今後のPOSターミナル市場は落ち込んでいくと矢野経済研究所は指摘している。同社は、それらの市場動向を踏まえた国内POSターミナルの市場調査や将来展望を発表した。

 2020年度のPOSターミナル市場規模は、前年度比78.4%の13万1,320台、同74.9%の456億3,500万円と大きく縮小する予測だ。背景には、2019年度までに大手ユーザー企業の多くがPOSシステムのリプレースを終えて需要が一巡したことに加え、新型コロナウイルスが多くのユーザー企業の業績を直撃したことや、同年度にセルフ精算機が大量導入されたことなどがある。2021年度の同市場は、新型コロナウイルス感染拡大による大幅な出荷台数の減少の反動でやや持ち直すものの、2023年度にかけて次第に縮小していくという。要因には、新規のリプレース需要が見込めないことや、飲食店、量販店を中心にレジを伴わないチェックアウトシステムが普及していくこと、従来のような専用機ではなくタブレットに代表される汎用機でのPOSシステム利用が進むことなどが挙げられる。

 上記を踏まえ、2023年度のPOSターミナル市場規模は411億3,200万円、売上台数は12万4,642台の見込みだ。今後は、従来以上にPOS専用機のベンダー専業からの脱却が急務となるだろう。

AI市場は時系列データ分析に需要

Artificial Intelligence

 データ分析人材の不足を補うサービスとして、大企業を中心に導入する企業が増えているAIソリューション。市場に参入するベンダーの増加や製品の低価格化も進み、今後も市場拡大が見込まれている。アイ・ティ・アール(以下、ITR)の調査によると、画像/音声認識、時系列データ分析などAI主要8市場の2019年度の売上金額は全体で384億500万円、前年度比37.8%増と大幅に増加した。背景には、技術的な進歩に加えて各種製品・サービスと組み合わせたソリューションが増加し、活用用途が多様化したことがある。AI主要8市場の2019~2024年度の年平均成長率は20.6%で、2024年度には売上金額が980億円に達する予測だ。中でも時系列データ分析市場は、複数のデータを掛け合わせた高度な分析のニーズが増え、高い伸びが見込まれる。

 ITRのシニア・アナリストである舘野真人氏は、AI市場動向について「AIシステムは独自開発が主流であり、ビジネス用途で汎用的に利用できる製品・サービスはまだ限られています。そうしたなかで、開発に必要な作業を効率化する機械学習自動化プラットフォームが、専門スキルを持つスタッフが不足している国内企業の間で採用が拡大しています。一方、汎用サービスの分野では、画像認識と翻訳の実用化が先行しています。今後も、自社固有のデータから洞察を得るための独自開発の支援と、学習済みモデルを利用することで迅速にAIの価値を享受する汎用サービスの両輪によって、国内のAI関連市場は拡大を続けると見込まれます」とコメントしている。