今月のテーマは……
誰でも簡単に業務用アプリが作成できる
「 AppSheet 」

こんにちは、Google Cloud のキキです。今回は私から、Google Workspace に含まれる話題の Google Cloud のノーコードアプリ開発ツール「 AppSheet 」について紹介します。特定の業務で従業員が利用するアプリがない、別途業務アプリの開発を依頼するとコストがかさむ、などの悩みはありませんか。ソフトウェア開発の技術がなくても、簡単に業務用アプリを作成、導入する方法を解説します。

庄司大助(Dandy)
所属:グーグル・クラウド・ジャパン
パートナーエンジニアリング本部
役職:パートナーエンジニア
経歴:大学卒業後、日系の中堅企業のIT部門で、ITインフラ担当者として入社後、自動車系IT企業にて、ネットワークエンジニアを経験。その後、マイクロソフトにて、10年以上にわたり、オンプレミスからクラウドまで幅広くプリセールス活動に従事。現職に至る。
宮崎悦子(Kiki)
所属:グーグル・クラウド・ジャパン
パートナーエンジニアリング本部
役職:パートナーエンジニア
経歴:外資系IT企業でオンプレミス・クラウド製品に関するカスタマーサポートに従事した後、プリセールス活動に従事。得意分野はSaaS、コミュニケーションコラボレーション製品。使っていてワクワクするサービスが好き。

Excelで整理された資産管理表

 この記事をお読みのあなたが情報システム部門の方であれば、従業員が利用するデバイスの管理を行っているかもしれません。PCやスマートフォン、マウス、モニターなどの関連機器を含め、会社で購入したITデバイスを管理するために、型番やシリアル番号をメモしてそれぞれの端末を認識しリスト化。利用者と端末情報をひも付けて、在庫を管理しているケースが多いのではないでしょうか。そういった資産管理には、従来からExcelなどのスプレッドシートが利用されてきました。

 ただ、スプレッドシートだけで管理すると「共有されているIT部門の従業員しか在庫が確認できない」「機器の追加や処分の作業が煩雑になる」「保存項目が多いと列が長くなって見づらい」といった課題が出てきます。これらの課題を解決するために、「 AppSheet 」でアプリを作ってみるのはいかがでしょうか。すでに管理しているデータがあるのであれば、そのデータを基に作成を始めるだけで、基本的なデータの参照・編集・追加を行うアプリは AppSheet により自動で作成されます。データの形式や入力方法に関しては、スプレッドシートのカラム名から自動的に検知し、日付型やテキスト型がセットされるので、アプリの作成者が都度考えて定義する必要はありません。

 もちろんデータの見え方や、利用者への表示・非表示の定義は別途変更が行えます。また、利用者に応じて異なるビューも提供できるので、前述のIT資産管理アプリであれば、IT部門はデバイスの登録・修正を行う機能、そのほかの従業員に関しては空きデバイスを確認し、利用申請を行う機能をそれぞれ付与することも可能です。

 IT資産管理以外にも、会社所有の専門書などの貸出管理や、敷地内の遺失物の報告・返却を管理するアプリなど同じ要領で作成可能です。身近な作業からアプリで効率化をしてみてはいかがでしょうか。

▲実際にAppSheet でITデバイス管理アプリを作成しているところ。操作も簡単だ。

モバイルを活用してペーパーレスを加速

▲スマートフォンでアプリを利用して、その場で撮影した写真の文字起こしが可能だ(OCR機能)。

 AppSheet の特長の一つとして、モバイル端末用のアプリも自動で作成できるところが挙げられます。皆さまの会社で、外出が多く、スマートフォンなどのモバイル端末を頻繁に利用する社員の方はいませんか。もしくは、製造現場や運輸業で、現場からの報告・連絡に、紙の日報を書いて回収している現場もあるかと思います。

 紙や、メールなどの個別ツールでの報告だと、別途それを集計する必要があるので、どうしても報告内容を反映したアクションが後手になりがちです。AppSheet で報告のアプリを利用すれば、入力されたデータはスプレッドシートをはじめとした、各種データソースへ自動で格納されるので、集計の手間を省けます。

 また、入力されたデータに応じたアクションを定義するのも、プログラミングをせずにポータルからアプリを拡張することが可能です。例えば、現場で点検作業をしている従業員から、異常を報告する日報が届いた場合、上長へ報告したり、修理が必要なのであればその作業の承認を得たりするといったワークフローを組めます。業務の要をアプリを中心として実現できるのです。

 スマートフォンに搭載されている、カメラなどの機能を使うアプリを作成することも簡単です。現場の状況を分かりやすく伝えるために、アプリ上で写真を撮って情報を入力すれば、オフィス内で勤務している方にもすぐに共有ができますし、入力されたほかの情報と共に画像データ(jpg/pngなど)の保管も行えます。また、書類や名刺、型番などをカメラで撮影すると、画像内の文字を自動で認識して活用することも可能です(OCR機能)。

 ほかにも、スマートフォンの位置情報をGPSで取得し、「 Google マップ 」の地図上に表示したり、二次元バーコードを読み取って作業を行ったりするアプリの作成も可能です。現場作業の手間を減らしながらデバイスを活用し、オフィスワーカーだけではない真のデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速を、AppSheet で実現できるのです。

市民開発で導入までのスピードを短縮

 上記のようなアプリを用いた業務効率化は、既存のSaaSサービスを利用したり、請負開発を利用してオリジナルのアプリの作成を依頼したりして行うことも可能です。しかし、特定の業務において既存のSaaSサービスの機能が合致していなかったり、請負開発は要件定義から開発、納品まで時間がかかり、出来上がったアプリが意図したものではなかったりした際の修正にも手間がかかることが一般的です。

 AppSheet のような市民開発者を支援するツールは、現場で該当の業務をされている方、もしくはその業務に近い・よく知っている従業員にアプリを直接作成してもらうことで、上記の時間を大幅に短縮させることが可能です。これまでシステム化を検討していなかったような業務でも、アプリを作成して試してみることが容易になりますので、あらゆる業務の効率改善が実現できるようになります。それだけではなく、アプリで集まるデータから、新たなビジネスチャンスがないか検討を行うことで、さらなる成果を生み出しているユーザーもいます。

 AppSheet を活用して、ぜひ先を行く業務のデジタル化を推進していただければと思います。