紙の業務負担を低減して子供と向き合う時間を増やすシステム

–Baby Tech– EMC Healthcare ベビモニ

保育施設では、労働力不足が続く中で保育士にかかる業務負担も増加傾向にある。特に紙の書類が多く、処理に時間を割かれている。その業務負担を軽減してくれるのが「ベビモニ」だ。

原因不明の突然死をどう防ぐ?

 ——ヘルステックの力で社会課題を解決する。

 そうしたミッションを掲げ、地域社会で活躍する介護現場や保育現場のエッセンシャルワーカーに対して、業務を支えるソリューションを提供しているのが、EMC Healthcareだ。

 その製品の一つが、カメラ型の見守りシステム「ベビモニ」だ。ベビモニは天井に取り付けたカメラから、午睡中の子供たちを見守るシステムだ。子供の午睡に見守りが必要な背景を、EMC Healthcareの取締役 浦上 悟氏は次のように語る。「『乳幼児突然死症候群』(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)をご存じでしょうか。これは、何の予兆も既往歴もないまま乳幼児が死に至る病気で、医療的に振り返ってもどういった原因で死亡したのか分かりません。その多くが睡眠中に発生しています。これは保育現場でも発生しており、およそ7割の死亡事故が睡眠(午睡)時であると言われています」

 乳幼児突然死症候群の直接的な原因は分かっておらず、予防方法は確立していないが、あるポイントを守ることでその発症率が低くなることがデータから分かっている。その一つがあおむけで寝かせることだ。厚生労働省からも2016年に「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」が公開されており、睡眠中の安全な環境を確保するポイントの一つとして、あおむけ寝や、定期的に子供の呼吸・体位、睡眠状態を点検することなどが挙げられている。浦上氏は「この定期的な点検が保育施設にとっては大きな負担で、5分に1回のチェックのほか、その寝ている向きなどを紙に書き記録する必要があります。またそれらの記録は残しておき、監査時には提出が求められています。保育士の皆さんが本当にやりたいことは子供を見守り、体調をケアすることのはずですが、紙の業務にその時間を取られてしまっているのです」と課題を提起する。

ベビモニのカメラとアプリ画面。カメラは保育施設の天井に取り付けて使用する。
子供がうつ伏せ寝の状態になると、アプリ上にアラートが表示される。突然死のリスクを防げる。

リスクの高いうつ伏せ寝を検知

 ベビモニは、そういった子供の午睡にまつわる見守りから記録業務までを、トータルでサポートする。機能としてはごくシンプルで、保育士が天井に設置されたカメラをタブレットのアプリで起動して、見守る対象の子供を選択するだけで見守りがスタートできる。5分に1回、AIが顔の向きなどを基に寝ている姿勢を識別。その情報を自動で記録していく。寝ている姿勢はあおむけ、左、右、うつ伏せの4方向を識別でき、寝返りでうつ伏せ寝になってしまった場合は検知してアラートで知らせてくれる。カメラ1台で最大10人までの子供を同時に見守れるため、見守る人数が変動しても柔軟に対応可能だ。

 ベビモニの大きな特長と言えるのが、カメラによる見守りである点だ。ベビモニは2020年に発売された製品で、午睡見守りシステムの中では後発と言える。しかし、既存の午睡見守りシステムは午睡時に子供の服にセンサーを取り付ける必要があったり、うつ伏せを検知するマットを敷く必要があったりと、保育士が準備する手間がかかる製品が主だった。浦上氏は「開発に伴いリサーチを行ったところ、センサー取り付け型の製品は服に取り付けたり、バッテリーの管理をする負担が大きいという現場の声がありました。また紛失したり、家庭に持って帰ってしまったりといったケースもあり、逆に手間が増えてしまっているようでした。マット型も同様で、スペースを取るためお昼寝の時に設置し、それを片付けるという手間がかかっていたようです。またマット型は呼吸の有無を検知してくれるメリットがある半面、姿勢の方向までは検知ができないデメリットがありました。そうした既存製品の課題を解決できるように開発したのがベビモニで、設置の手間なく、1台で10人の子供を見守れるため保育現場の管理負担がかかりません」と語る。

ベビモニのカメラは、10人までの子供たちを1台で見守れる。寝ている向きなどもAIによって4方向を自動識別し、画面上で表示できる。

監査にも対応できる記録表

 ベビモニによる5分ごとの寝姿勢の識別は、記録表に自動で記録される。この記録表はアプリ上で管理し、施設内のプリンターで印刷して監査対応にも活用できる。これまで手書きで行われていた記録を、システムが代替することが可能になるのだ。

 他社保育ITシステム「CoDMON」(コドモン)や「WEL-KIDS」(ウェルキッズ)との連携もされている。子供ごとの午睡時間を二重で記録する手間がないため、業務負担を低減しつつ情報の一元化が可能になる。またこれらの保育ITシステムでは、連絡帳機能などで保護者に保育園での生活を伝えており、その連絡に午睡時間を共有することも可能だ。保育士にとっても、保護者にとってもうれしい連携と言えるだろう。

 2020年から発売がスタートし、バージョンアップを重ねているベビモニ。現在の仕様となったのは2022年だが、使われている大枠の仕組みは変わっていない。浦上氏は「現在は1台につき10人の見守りですが、さらに多人数の見守りを実現したいですね。また、体温や呼吸、体の状態なども確認したいという声があり、午睡以外の健康分野に対してもサポートできたらと考えています。事故を防ぐだけじゃなく、身体の発達の状況をカメラで見極めて、その遅れなどが分かるようになれば、より発達段階に適したサポートも可能になるでしょう。ユーザーからのフィードバックを基に、さらなる機能強化を続けています」と展望を語った。