教育の未来を創るソリューションが集結
多彩な講演で熱い議論が交わされた2日間

開場時間前には多くの教育関係者が入場口に並んだ
ガイアエデュケーションは小学生向けのゲーミングチェアやデスクを提案
ぷらっとホームのDHCPサーバーは大量の機器をネットワークに接続する学校現場の障害切り分けや管理におすすめ
アーテックの「アーテックロボ2.0」はプログラミング教材としての注目度が高い
サカワの着せ替えパネル「KisePa」を使えば黒板を簡単にホワイトボード化できる

 2026年7月30〜31日に、インテックス大阪の2号館で「第11回 関西教育ICT展」が開催された。今回の開催テーマは「教育の未来を創るDXのちから」。生成AIや次期学習指導要領など、教育に関するさまざまな情報を得られる展示会だ。

 今年の出展者製品の傾向を見ると、GIGAスクール構想第2期による端末更新のピークが過ぎたことで、その次となる教育デジタルトランスフォーメーション(DX)実践フェーズを実現するためのソリューションが多く出展されていた。例えば、AI一つ取ってみても学習データ分析や評価支援型のAI製品が多い。また校務DXや教員の働き方改革を実現するための校務支援システムや、採点システムなども見られた。

 またそれに関連して、ゼロトラスト対応やメールセキュリティなど、セキュリティ対策を強化するソリューションも出展されていた。

 以前から引き続き、STEAM教育も注目トピックスの一つだ。STEAMやプログラミング教材などの教育パッケージのほか、次世代の学びを実践するための空間作りの提案なども見られた。

 今年は七つの会場でセミナーが開催され、多くの教育関係者が教育の情報化の動向や情報活用能力、教育DX、セキュリティなどさまざまテーマに基づく講演やパネルディスカッションに耳を傾けていた。また今年は特別企画として、文部科学省担当者と直接意見交換が行える「オンライン意見交換会」や、大阪教育大学が主催する「指導主事向け研修会」(7月30日のみ開催)といった、教育の情報化を推進するためのより実践的な取り組みも行われるなど、教育の未来を創るための熱意を感じる2日間となった。

九州教育情報化研究会

築上町では教科横断的に学ぶSTEAM教育を実施している

九州における学校教育の向上を目指し、教員・研究者・企業が教育工学に関する実践的研究や成果の共有、普及啓発を行う九州教育情報化研究会。同研究会では、ICT教育先進自治体である田川市、武雄市、築上町、高森町(高森町は令和8年熊本地震の影響で当日は参加見合わせ)の4自治体が共同で、自治体の取り組みの発信を行った。例えば田川市では、中村学園大学の山本朋弘教授からの指導を受けながら、市内全体で主体的な学び実現に向けた授業作りに取り組んでいる。田川市では子供たち主体の深い学びを実現するための七つのポイントを策定し、先進校2校においてはそのポイントを意識した公開授業を実践しているという。授業においては子供たちが学習の見通しを持ち、学習ツールを自分たちで選択しながら主体的に学習に取り組む様子が紹介された。

サカワ

かけるくんはホワイトボードマーカーで直接画面に書き込める

黒板、電子黒板、教育ICT機器を取り扱うサカワは、ホワイトボードマーカーで直接書ける電子黒板「かけるくん」や、ウルトラワイドプロジェクター型電子黒板「ワイード」、スクリーン不要でプロジェクターを投映できる「サンヤクブルーグレー黒板」、黒板を手軽にホワイトボード化できる着せ替えパネル「KisePa」などさまざまな製品を出展していた。かけるくんは専用の電子ペンに持ち替えなくても、ホワイトボードマーカーのまま書き込みができる点が魅力であり、手書き内容をそのままスクリーンショットとして記録することも可能だ。サンヤクブルーグレー黒板は表面に特殊な加工を施しているほか、通常の黒板と比較して表面が白に近いブルーグレーカラーを採用することで、チョークを使用した板書と、プロジェクターによる投映の見やすさを両立させている。

ガイアエデュケーション

LOVOTは特別支援など教育現場でも導入が進んでいるようだ

学びが育つ教育空間を提案するガイアエデュケーションは、アクティブラーニングルームやPC教室などに整備するデスクやチェア、ディスプレイ、ロボットなどを提案していた。バッテリーを内蔵し、ケーブルレスで使用できる27インチタッチモニター「Mobile Display 27」は、1グループ1台配置した形でのグループワーク用途に適した製品だ。単体でネット接続もでき、動画の閲覧や電子ホワイトボードのような活用が行える。実際にアクティブラーニングルームへの導入事例もあるという。また小学生向けに作られたゲーミングチェアや、家庭用ロボットとして知られる「LOVOT」なども展示されており、子供たちの学習意欲を向上させる教室を実現するさまざまな什器やICTデバイスが紹介されていた。

アーテック

アーテックインテリジェンスでロボットのLEDを花の形に光らせた

ICTグッズやSTEAM、プログラミング教材を多数展開するアーテックは、生成AIで論理的思考を育むプログラミング教材「アーテックインテリジェンス」を出展。アーテックインテリジェンスは生成AIを利用して、自然言語でプログラム(Pythonコード)を生成する教材だ。例えば接続するロボットのLEDを光らせる指示を行う際、「お花を光らせて」と自然言語で指示をすると、その指示に沿ったプログラムが生成される。しかし色の指定が曖昧な場合、意図しない色の花が表示されてしまう。このように生成結果を通じて、AIへの適切な指示の出し方(プロンプトエンジニアリング)を学べる教材だ。アーテックインテリジェンスは2026年度向け新商品として提供が開始されており、中学校の技術家庭科における「計測・制御」の単元で活用できる教材も用意されている。

情報の領域の学びを模擬授業で体験
ミニ探究ユニットで学ぶ情報活用能力の育成

コーディネーター
放送大学
教養学部
准教授
小林祐紀 氏
模擬授業者
宮代町立須賀小学校
教諭
小内慶太 氏
コメンテーター
千葉県柏市立大津ケ丘第一小学校
校長
佐和伸明 氏

 次期学習指導要領では、児童の情報活用能力を育成するため、小学校の総合的な学習の時間に新たに「情報の領域(仮称)」が新設される。関西教育ICT展で開催された「探究的な学びの基盤となる情報活用能力の育成 −『情報の領域』を体験してみよう!(小学校模擬授業)−」では、小学校の模擬授業を実施。参加者は児童の視点に立ち、情報の収集・整理・分析のプロセスを追体験した。

 冒頭、コーディネーターを務めた放送大学 教養学部 准教授 小林祐紀氏からは今年度末に改訂が予定される学習指導要領において、小学校では、情報活用能力の基礎的な部分を「情報の領域」として体系的に学ぶ枠組みが設けられること、また中学校では「技術・家庭科」から「技術」が独立する方向で検討されていることが説明された。

「私たちが一番危惧しているのは、『情報の領域でやっているから各教科は関係ない』という誤解が生じることです。しかし、この情報の領域は各教科等につながります。情報の領域で学んだことをベースにしながら、各教科の探究の基盤として生かすことが重要です」と指摘する。

 この情報の領域では「ミニ探究ユニット」という小単元を通じて探究活動と結びつけて情報活用能力の育成を行うことが予定されている。今回の模擬授業ではこのミニ探究ユニットをベースに、日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)が開発した「情報活用能力ベーシック」における五つの探究の学習プロセスに基づき、ミニ探究ユニットの学びの一例を体験した。

 模擬授業では宮代町立須賀小学校 教諭 小内慶太氏が模擬授業担当者として登壇し、「見つけてびっくり!その特技 クラスタグラムで友達のいいねを広げよう」をテーマに授業を実施した。模擬授業では参加した教員同士でペアを組み、自身の特技を自己紹介し合いながら、互いの意外な特技を発見し、教育向けのコラボレーションツール「Padlet」にスライドでまとめた。その後グループ内でスライドを発表し合い、それぞれの参加者の意外な一面を共有した。学習の最後には振り返りとして、授業で得られた学びや感想などを入力した。コメントを確認した小内氏は「今回のミニ探究ユニットは新学期の子供たちを対象にした授業でしたが、新学期に子供たちに持ってもらいたい感想そのものでした」と締めくくった。

 千葉県柏市立大津ケ丘第一小学校 校長 佐和伸明氏がコメンテーターとして登壇し、模擬授業を終えた後の協議を主導した。佐和氏が「今日の模擬授業のエッセンスを自分の教科・単元にどう転嫁するか」という問いを投げかけると、参加者からは理科や社会、国語などの授業における活用例が挙げられた。

 最後に小林氏は「ミニ探究ユニットは教科の探究に生かされることで初めて花が咲きます。単独で完結させるべきではありません」と強調し、ミニ探究ユニットと教科の学びを接続する上で、情報活用能力ベーシックを活用してほしいと述べた。

模擬授業では参加した教員らが自己紹介をしながら、意外な一面を紹介するスライドを作成するといったミニ探究ユニットの授業を体験した。

先進自治体の取り組みから見る
校務と授業の両輪で進める教育DX

コーディネーター
中村学園大学
教育学部
教授
山本朋弘 氏
パネリスト
長崎県教育庁
義務教育課未来教育班
課長補佐
坂本隆典 氏
パネリスト
福岡市教育委員会
教育ICT推進課
主査
永田裕二 氏

 教育DXによって、児童生徒の授業の在り方が変わりつつある。「AI時代の教育DX!授業と校務の両面からどう迫るか」では、授業DXと校務DXの両面を一体的に進めてきた事例を通して、今後教育DXをどのように展開していけばよいのかを考えていく場となった。

 まずコーディネーターを務める中村学園大学 教育学部 教授 山本朋弘氏が登壇し、19世紀英国の蒸気自動車を例に用い「蒸気自動車が登場した頃は、赤旗を持った人が前を歩いていないと走れませんでした」と語り、新技術が既存の規制・慣習によって本来の性能を発揮できない構造を説明した。また、DXとは単なるデジタル化・効率化ではなく「新しい価値・変革を生み出すこと」であると定義し、学校のICT化においても同様の発想転換が必要だと述べた。

 山本氏は過去の学習や成功体験を通じて獲得した見方で学習することを「シングルループ」、既存の枠組みを捨てて新しい考え方や行動の枠組みを取り入れることを「ダブルループ」と定義し、今回のセミナーで登壇する二つの自治体はこのシングルループとダブルループをうまく組み合わせていると指摘した。

 その自治体の一つ、福岡市教育委員会の教育ICT推進課 主査 永田裕二氏から、福岡市の教育DXが紹介された。福岡市では「学力の変化」や「心の状態の変化」を早期に発見するため、教育データ活用基盤とダッシュボードの構築を進め、教育データ利活用を積極的に推進している。例えば、教員向けダッシュボードでは「Google Classroom」などの学習系データと保健室の来室記録などの校務系データをクラウド上で連携し、児童生徒の状況を一元的に把握できる。また、単元を通じた学びの変容を可視化する学習振り返りシステム「学びポケット」をベンダーと共同開発している。また、Googleの生成AIである「Gemini」をカスタマイズして使用できる「Gem」を「舞パートナー」と名付け、学習支援ツールとして活用している。子供たちはそのフィードバックを基に自律的に学び、自分の考えを確かなものにすることができたという。

 二つ目の自治体として、長崎県教育庁 義務教育課未来教育班 課長補佐の坂本隆典氏が登壇した。長崎県では、校務DXによって創出した時間を授業DXに生かすという両輪で教育DXを推進している。県全域で教育DXを推進するため、2018年度から統合型校務支援システムを県の推奨システムとして調達・導入しており、2026年度にはほぼ100%の市町村で整備が完了する見込みだという。

 推進体制の核として10年以上の歴史がある「長崎県教育情報化推進協議会」が機能しており、県と全21市町が対等な関係で情報共有・合意形成を行う信頼関係も、この環境整備を後押ししたようだ。

 山本氏はセッション全体のまとめとして「校務DXの前提としてゼロトラスト環境の整備が重要であり、校務系・学習系データの統合が進むことで、ダッシュボードや学習データの効果的な活用が可能になります」と語った。

山本氏は授業における生成AIの活用について、授業者と学習者の視点や授業前後という時間軸から図のように整理した。