2026年4月5日、トレンドマイクロは自社の法人向けサイバーセキュリティ事業部門を「TrendAI」としてブランド化し、AIセキュリティのリーダーとしてAI、クラウド、ネットワーク、エンドポイント、データを現代のAttack Surface全体で保護することで、法人組織が安心して革新を進められるよう支援に取り組んでいる。その視点から、AIが台頭する現在のサイバーセキュリティ脅威や、それに対応するためのプラットフォームを紹介してもらった。

AIが攻撃の精度や速度を向上させる

トレンドマイクロ
スレット&プロダクトマーケティング部 部長
エバンジェリスト
福田俊介 氏

「AIの進化によって、セキュリティリスクの様相も変わっています」と語るのは、トレンドマイクロ スレット&プロダクトマーケティング部 部長 エバンジェリスト 福田俊介氏。福田氏はその変化を、脆弱性が見つかる「数の増加」、攻撃にかかる「時間の短縮」、脆弱性に対するパッチ適用といった従来の「セキュリティ対策の限界」という三つを挙げた。攻撃者がAIを悪用することで、脆弱性の発見数が増え攻撃対象領域が拡大している。また、攻撃プロセスにもAIを活用することで、攻撃の精度や速度も向上している。

 福田氏は「AIが発見する脆弱性に対して、防御側が全て対策することは、修正能力や対応人員に限界があるため実質的に不可能です。脆弱性対策の文脈で使われる識別子として「CVE」(Common Vulnerabilities and Exposures)と「KEV」(Known Exploited Vulnerabilities catalog)がありますが、経営者層から『現在悪用されている脆弱性から守れているか』と問われた際には、公開された脆弱性全てを対象としているCVEの全件対応率ではなく、実際に悪用が確認されたCVEのみを対象にしているKEVを参照する方が現実的です」と語り、脆弱性対策の勝ち筋は発見された件数への全件対応ではなく、優先順位付けにあると語った。

 サイバー攻撃のスピードが高速化しているという変化について、TrendAIのインシデントレスポンス事例に基づく実際の数値が紹介された。初期侵入からランサムウェア実行・暗号化までが24時間以内のケースは28.6%、最短事例は3時間10分だったという。「ほかのベンダーのデータでは、AI時代に入って初期侵入が平均29分になったとするデータもあります。侵入からランサムウェア実行までのスピードも高速化しており、検知後に人間が分析・判断するだけの従来型SoC運用では間に合わない可能性が高まっています。攻撃者のAI活用に対抗するには、防御側もAIを使って分析・初動を高速化すべきといえます。これは既存のEDR、ゼロトラスト、XDR、SIEMなどへの投資を否定するものではありませんが、AI利用の一般化を転換点と捉え、追加的にAIを組み込む必要があるということです」と福田氏は指摘する。

TrendAI Vision Oneでは「次に何をするべきか」を自然言語でAIコンパニオンに質問することで、必要な対処を回答してくれる。

対策すべきリスクを
脆弱性の深刻度から判断

 脅威が高度化するサイバー攻撃に対して、トレンドマイクロが提案しているのが「TrendAI Vision One」だ。
 TrendAI Vision Oneでは、検出された攻撃や攻撃予兆に対して、優先的に実施する作業を提示する「Workbench」、攻撃のパスを予測する「Attack Path Prediction」などを単一のコンソールで可視化できる。

 従来はセキュリティレイヤーごとに個別製品を提供していたが、現在はTrendAI Vision Oneという単一のSaaS型プラットフォームで、リスク管理、セキュリティオペレーション、脅威インテリジェンスを提供している。

 TrendAI Vision Oneでは脆弱性に対して優先順位付けを行い、サイバーリスクを低減できる機能として「Cyber Risk Exposure Management」(CREM)という機能も提供している。福田氏は「脆弱性の深刻度を評価する共通脆弱性評価システムの指標に『CVSS』(Common Vulnerability Scoring System)がありますが、CVSSが9.8の脆弱性とCVSSが8点の脆弱性が並んでいる場合、多くはCVSS 9.8の脆弱性を優先的に修正するでしょう。しかしCVSS 9.8の脆弱性はインターネット非接続の社内業務システムにあり、悪用実績がなく、CVSS 8の脆弱性は外部公開VPN装置にあり、既に悪用報告がある場合、後者を先に修正するべきです。こうした到達可能性、悪用可能性、資産重要度などのコンテキストを加味した統合的なリスク評価を行うといった用途には、AIが適しています。こうしたコンテキストを加味した脆弱性の優先順位を、CREMの画面で表示し、よりリスクの高い脆弱性への対処を行うことが可能になります」と機能を語る。

 またTrendAI Vision Oneの各機能で表示される画面上の推奨策に加え、「次に何をするべきか」をAIコンパニオンに質問でき、推奨手順、エンドポイント確認、スクリプト実行などの回答も得られるという。

コンテキストを加味した脆弱性対処の優先順位を表示してくれるCREMの画面。

フロンティアAIで実現する
次世代のサイバー防御

 プライベートプレビュー段階ではあるが、TrendAI Vision OneではフロンティアAIを活用し、ユーザー企業のソースコード内の脆弱性を自動的に識別、検証、修正の確認を行う「TrendAI Vision One Autonomous Vulnerability Discovery」の提供もスタートしている。Anthropicモデルを主軸とし、複数のフロンティアAIとTrendAIのAI基盤を活用している。

 2026年10月2日にはTrendAI Vision Oneと「Claude Compliance API」の連携対象を拡大することも発表している。この拡張によってClaude CodeおよびClaude EnterpriseのCoworkを対象に、エンジニアやデータを活用するチームが、日々どのようにAIエージェントを利用していているのか可視化できる。セキュリティチームはAIエージェントが動いていることは把握できていても、それが自社のセキュリティポリシーに則っているかどうかを把握することが難しい。今回の連携対象拡張によりClaude CodeおよびCoworkを利用する際の活動を可視化し、AIエージェント利用状況やポリシー違反の有無を把握できるようになる。

 福田氏は「企業規模を問わず、AI利用を禁止する発想は現実的ではありませんが、AIを使う中でセキュリティは度外視されがちです。AI活用とセキュリティは一体で考えるべきであり、守るべき資産へ投資を集中させ、AIを用いて防御側の時間軸も短縮することが重要です。またセキュリティ責任者は、AIが見つける脆弱性の数を怖がらず、何が自社にとって大切かを見極め、高リスクのポイントにセキュリティの投資を優先的に回したり、AIの脅威にはAIを使って防御したりするという発想を持つことが重要になるでしょう」と今後ますます高度化するセキュリティ脅威に対しての心構えを語った。

検出された攻撃や攻撃予兆に対して、優先的に実施する作業を提示する「Workbench」の画面。