大阪と東京の距離を飛び越え
STEAMや探究の学びを共に深めるシンポジウム

 2026年7月31日に、「日経STEAM 2026シンポジウム」が開催された。本イベントは日本経済新聞社大阪本社が、STEAM 教育の推進や、文化・社会貢献活動の一環として毎年実施しているものであり、今年で5回目の開催となる。ダイワボウ情報システム(DIS)は2022年から継続して本イベントに特別協賛し、展示や発表プログラムを実施することで、子供たちに最新のICT機器や、それらを活用した学びに触れる機会を提供している。

 インテックス大阪の大阪会場では今年から新たなプログラムとして、文理融合の新しい学問である「データサイエンス」の手法を用いて、社会のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)を解き明かす「データサイエンスで解き明かすアンコンシャスバイアス」のプログラムが実施されたほか、昨年から継続して提供するプログラムとして、問いを立てる大切さや楽しさを体験できる「サントリー特別探究授業『Q to VIEW』“問い”の探究で一変する世界のミカタ」、若手研究者と語り合う座談会「若手研究者座談会 語り合おう未来のために」、大学の入学相談などが行える「大学相談ブースコーナー」、大学の研究室から持ち込まれた、普段触れることができない研究機材に触ったり、操作したりできる「大学体験コーナー」が提供された。また大阪会場とTODA HALL & CONFERENCE TOKYOの東京会場の双方で提供するプログラムとして、実施している探究学習の内容について、さまざまな人からコメントをもらい視点を深める「探究ポスター発表 アイデアの泉」や、「合成動画作成」「CAD・3Dプリンター」「AR作成」「プログラミング」「ドローン操作」などを体験できる「DIS特設体験コーナー」も設けられ、大阪会場、東京会場共に、多様な年齢層の来場者が訪れ、STEAMの学びを体験していた。

 昨年に引き続き、大阪会場と東京会場をオンラインでつなぎ、双方の会場から発表を行う「私たちは問う 自由で豊かな未来のために発表コンテスト」や「DIS STEAMゼミ」も実施された。ライブ接続のメリットを生かし、双方の会場からさまざまな質問が飛び交うなど、大阪と東京という距離を感じさせない熱気あふれる発表が行われていた。

 今回のイベントリポートでは、DIS STEAMゼミの発表内容にフォーカスをして紹介するほか、DIS STEAMゼミ参加校に対して社会人の視点からメンターとしてアドバイスを行った、DIS社員のインタビューを掲載していく。

大阪はインテックス大阪の1号館で開催!
今年も多くの子供たちが訪れたDIS特設体験コーナー
CADソフトを使ってものづくりを実践
作ったアイテムは3Dプリンターを使い出力して持ち帰れる
東京はTODA HALL & CONFERENCE TOKYOで開催!
大阪と同様にポスター発表も行う
DIS特設体験コーナーではドローンプログラミングなどを体験
プログラミングで音楽とビジュアルを制御する体験も

DIS STEAM SEMINAR

学校生活の課題から環境問題まで
身近な“問い”を社会課題解決へとつなげる

 大阪会場と東京会場の2拠点をオンラインでつなぎ、ICTを活用したアイデアを発表する「DIS STEAMゼミ」。日経STEAMシンポジウムと同様に5回目の開催となる今年は、「常識を上書きしよう! ICTが作る未来社会」をテーマに据えたプレゼンテーションが実施された。20校22チームが参加し、熱い議論が交わされた本イベントの様子を見ていこう。

 2026年のDIS STEAMゼミは出場校全てが高校であり、数回目の出場となる学校の姿も複数見られた。どの学校のチームも「常識を上書きしよう! ICTが作る未来社会」という発表テーマに基づき、自身の身近な生活に存在する悩みや課題を起点に、社会全体の課題の解決に昇華する探究的な学びを実践し、発表する姿が見られた。例えば若者たちが抱えるSNS依存といった課題や、不登校や孤立といった問題を解決するソリューション、防災・救命・育児といった命を守ることや安全を確保する技術としてテクノロジーを活用する提案、教員の長時間労働をはじめとした教育現場の課題、地域社会や環境の活性化などを実現するためのICT活用提案などだ。

 それぞれのチームの発表は、審査の上最優秀賞が1チーム、優秀賞が2チーム、審査員特別賞が4チームに授与された。受賞チームは以下の通り。

 ■最優秀賞
 岡山県立瀬戸高等学校:チーム名「DiSPOT」

 ■優秀賞
 豊島岡女子学園高等学校:チーム名「クローバー」
 愛媛県立松山南高等学校:チーム名「ばーちゃるず2」

 ■審査員特別賞
 松蔭高等学校:チーム名「よりそい隊」
 さいたま市立浦和高等学校:チーム名「Blue Bird・AYSM」
 甲南女子高等学校:チーム名「Well Bloom」
 早稲田大阪高等学校:チーム名「ベアーズ」

 審査員長を務めたDIS 管理本部 本部長 堤 康次郎氏は、総評コメントとして変化の激しい時代に必要な力として「楽しい問いを出す力」を挙げ、「今回の発表では、どのチームにも『社会を良くしたい』『学校生活を良くしたい』『地域を良くしたい』という思いと共に、その“問い”がしっかりと入っていました。聞いている側に対してもその問いを投げかけると同時に、引き込まれるメッセージを発してくれるチームも多くあり、刺激になりました」と語った。また、各発表にDX・IT・AIなどデジタルテクノロジーのキーワードが多く含まれていたことを指摘し、「当社も含め、今回審査に参加したインテルさま、日本マイクロソフトさま、サイボウズさま、アマゾン ウェブ サービス ジャパンさま、日本HPさまといった企業は、日本中だけでなく世界中にデジタルテクノロジーを届けている企業です。皆さんのこれからのチャレンジに対して、私たちはテクノロジーを届ける会社としてずっと応援していきたいと思っていますので、どうか今日のこの発表を終わりではなく、スタートとして、これからもチャレンジを続けていただければと思います。皆さまのこれからのチャレンジを各社で応援していきます」とメッセージを贈った。

昨年に引き続きインテックス大阪1号館で開催されたDIS STEAMゼミ。13校14チームが大阪会場で発表を行い、課題をイメージさせるための演出や、目を引くスライドなどで聴衆を引きつけた。
東京はTODA HALL & CONFERENCE TOKYOで開催された。本会場からは7校8チームが登壇し、防災教育や環境問題、教育現場の構造改革をテーマに据えた発表などが行われた。

最優秀賞

岡山県立瀬戸高等学校
チーム名:DiSPOT
観光DX “通過型観光”を変える

 最優秀賞に選ばれたのは岡山県立瀬戸高等学校の「DiSPOT」による観光DXの提案だ。「旅行が好きだが、スキマ時間でいけるスポットが見つからない」「岡山県は観光の目的として選ばれにくく、通過されている」という課題を提示し、その解決策として観光マッチングアプリ「DiSPOT」と岡山県特化型旅行SNS「OKATORI」を提案した。DiSPOTは質問に対し、○×で回答をするとユーザーにマッチした観光地を紹介してくれるアプリだ。観光雑誌には掲載されないものの、地元で愛される隠れた名所の中から、ユーザーの状況や要望に合ったスポットをマッチングする。しかしDiSPOTを開発する中で、プロの意見を聞くため大手旅行会社であるJTBへのフィールドワークを行ったところ「滞在時間を延ばすには『線として巡る回遊性』が必要」という指摘を受け、写真やレビューで地元のリアルな感動を発信できるSNSとしてOKATORIを開発したという。OKATORIには鉄道やバスの移動時間などを含めた回遊のためのルート提案機能も搭載することで、「観光の目的地としての岡山」の実現を目指すという。

 審査員長のDIS 堤氏からは「審査員の間では岡山県の観光課題に対して、岡山県観光連盟やJTBに直接フィールドワークを行った点や、すでに完成度の高いアプリのプロトタイプを開発している点といった実行力の高さが評価されました」と講評コメントが述べられ、実際にOKATORIを活用して岡山の観光をしたいと語った。

優秀賞

豊島岡女子学園高等学校
チーム名:クローバー
「遊び」が「備え」になるゲーム

 優秀賞に選ばれた豊島岡女子学園高等学校の「クローバー」は、まち作りゲームを通して防災を学べる「TownLink」を提案した。副審査員長のDIS 首都圏第2営業本部 兼 首都圏第3営業本部 本部長 吉川晃平氏は「防災をゲームで学ぶというアイデアにとどまらず、事前の綿密な調査や、具体的な年間ライセンス料を含めた事業計画など、幅広い観点で考え抜かれている完成度が素晴らしいと審査員から評価されました」と講評した。

優秀賞

愛媛県立松山南高等学校
チーム名:ばーちゃるず2
防災力・減災力向上プログラム

 優秀賞に選ばれた愛媛県立松山南高等学校の「ばーちゃるず2」は、既存の避難訓練からの脱却が必要だと指摘。実際の校舎を3Dモデリングし、バーチャル空間で過酷な環境を疑似体験できる「3時間構成の生存スキル授業」を提案した。審査員のインテル 執行役員 アカウント・パートナー事業本部 栗原和久氏は「煙の恐ろしさや避難時の過酷な状況をVRメタバースとして見事に可視化できており、審査員自身が体験してみたいと思うほど高いレベルに昇華されていました」と講評した。

MENTOR INTERVIEW

DISのメンターたちが語る
発表当日までの生徒たちの歩み

DIS STEAMゼミでは、参加した全てのチームにDISの社員がメンターとして、5月から7月まで全5回のサポートを行っている。今回は5名のメンターにインタビューを行い、サポートの過程から、発表当日に至るまでの生徒たちの頑張りにフォーカスしていく。

生徒の想いを伝える資料作りをアドバイス

岡山県立瀬戸高等学校メンター
西日本営業本部
中四国営業部
岡山支店
主任
後藤晋介 氏

第1回目のオリエンテーションで初めて瀬戸高校のメンバーと挨拶した際は、驚くほど落ち着きがありクールで堂々とした印象を持ちました。今回の「観光DX」というテーマ設定は、メンバーの一人がもともと岡山県備前市出身で、中学生の頃から地元の町おこしプロジェクトに携わっており、観光協会と連携して地場産品を紹介する動画制作などを経験していたことが背景としてあります。JTBへのフィールドワークは生徒たちが自発的に行ったもので、その行動力に驚かされました。私からは発表で使用するスライドの文章ボリュームや色使い、文字の形などのアドバイスや、発表時に時間超過しないよう2人のメンバーが交互に話す構成を提案したほか、アプリの普及しやすさや既存ソリューションとの差別化をどのようにアピールするかといった観点を意識するよう伝えました。今回のプロジェクトはゴールではなく、これからさらに良くしていけるものであると思いますので、今回の経験を通じてパワーアップした取り組みのこれからを楽しみにしています。

資料に予算感を盛り込み他校と差別化

豊島岡女子学園高等学校メンター
首都圏第1営業本部
港南営業部
港南第3支店
名波真梨 氏

最初のミーティングでは、生徒たちから複数の発表テーマが持ち寄られました。例えば「学校内で先生がどこにいるのか分からない」という課題を解決するソリューションや、遠隔地でも匂いなどの同じ感覚を共有できるソリューションなどです。その内の一つとして災害対策も挙げられており、2回目以降のミーティングで各案の実現可能性を議論した結果、災害をテーマにすることが決まりました。近年の地震の多さなども、このテーマを選定する背景にありました。テーマ選定後、生徒たちは「防災訓練施設が遠方にしかない」という課題を踏まえ、ゲーム形式の防災教育ソリューションの提案を決めました。ミーティングの中では生徒たちから「辛口のアドバイスをしてほしい」と言われたことが印象的で、発表の順序や構成などについてのフィードバックを行いました。また前年度の発表チームの事例を参考に、予算感を紹介することもアドバイスしました。今回の発表は、課題に対してどう改善をしていくかということを考える良い機会だったと思うので、これから社会人になるまで、この経験を生かして頑張っていってほしいですね。

生徒たちが考えるきっかけを作る

松蔭高等学校メンター
関西営業本部
中央大阪営業部
中央大阪第7支店
主任
山根昇吾 氏

松蔭高等学校の「よりそい隊」は、SNSを見る3分を、考える3分に変えるアプリとして「ITOMA」を提案しました。発表当日は「暇」と一文字大きく書かれたスライドで聴衆の興味を引きましたが、実はこの「暇」をテーマに設定したのは4回目のミーティングのタイミングでした。当初は、「愛を深めるためのICT活用」をテーマに話し合いを進めていたのですが、より身近な課題をテーマに設定しようと生徒たちが話し合ったようでした。ミーティングの中でも「愛の定義が人によって異なるため、具体性を持たせた方が良い」といったようなアドバイスを行いましたし、現在の「暇」がテーマになってからは「考える時間を作るために暇を有効活用するなら、アプリを使って考える力を養うという方向性はどうか」と提案したことを覚えています。自分たちで考えてもらうことが最重要だと考えていましたので、方向性を誤らないよう問いかけるようなアドバイスを行いながら生徒たちが考えるきっかけを作っていきました。生徒たち自身が考え抜いた結果が審査員特別賞の受賞という形で表れて心から良かったと思いますし、改めておめでとうとお疲れさまの言葉を伝えたいと思います。

「こうなったらいいな」を具体化する

早稲田大阪高等学校メンター
関西営業本部
中央大阪営業部
中央大阪第2支店
瓜田達也 氏

早稲田大阪高等学校の「ベアーズ」は、AI×子育てをテーマにした子育てカルテソリューション「MIRUCA」を提案しました。テーマ設定に至るまで、生徒たちは「ソリューションの細かい仕組みを考えなければならないのか」と悩んでいましたが、「自分たちの生活に関わること」「高校生ならではの視点」を大切にするようアドバイスをしたところ、子育てというテーマが浮上しました。このテーマ設定の背景には、生徒たちが家庭科の授業で子育ての大変さを学んだことや、自身の両親にその大変さについて話を聞いたことがあるようです。「現実を度外視して、こうなったら良いなというアイデアを考えてみよう」というアドバイスを行ったところ、当日の発表ではネットワークカメラや足首用ウェアラブルデバイスを活用し、子供の体の状態を解析することなどが提案に盛り込まれていました。当日は堂々たる発表で、自分がこれほどの発表ができるだろうかと感心していました。相当な準備を重ねていることが分かる発表でしたし、審査員特別賞の受賞もでき、お疲れさまでしたとおめでとうございますを伝えたいですね。

アドバイザーを活用し「面白さ」を重視

神奈川県立平塚江南高等学校メンター
首都圏第3営業本部
神奈川営業部
神奈川第1支店
村田千明 氏

平塚江南高等学校の「80回生チーム」は、バスの待ち時間を快適にするアプリ「BusLink Kanagawa」を提案しました。しかし最初からこのテーマに決まっていたわけではなく、生徒たちが持ち寄った複数のテーマから今回のテーマに決定しました。テーマを決める上では、Zoomミーティング中に待機しているテクニカルアドバイザーをブレイクアウトルームに呼び込み、生徒たちと相談した結果「面白いテーマの方にしよう」と、バスの待ち時間をテーマにすることに決まりました。発表資料制作に当たっては、生徒たちが自発的に生成AIを活用し、アプリの説明動画を制作していましたが、発表時間の制約に対してボリュームが大きすぎたため、尺を短くして端的にまとめるようアドバイスを行いました。当日はそのアドバイスを生かし、時間内に収まるよう整理されており良かったと感じています。今回惜しくも受賞を逃してしまいましたが、STEAMゼミに立候補して参加し、大勢の前で堂々と発表できたこと自体が100点満点だと伝えたいです。