【特集】厳しいPC市場でビジネスを伸ばす攻め口

価格上昇を超える価値を示してリプレースを促進

Windows 10のサポート終了を受け、2026年度のPC市場にはEOS(サポート終了)特需の反動減が予想されていた。一方、AI活用の広がりを背景に、Copilot+ PCをはじめとする最新PCへの関心は高まっている。ところが、世界情勢などに起因するメモリーやSSDの価格高騰がPC本体の値上がりを招き、需要の勢いを鈍らせている。価格上昇局面で、顧客にPC刷新の必要性と投資効果をどう伝えるべきか。IT専門の市場調査会社、MM総研で取締役 研究部長を務める中村成希氏を迎え、EOS特需後のPCビジネスを成長させる攻め口を聞いた。

EOS特需の反動と価格上昇でも
法人向けPC市場の需要は底堅い

MOEKO●今年前半は、Copilotなどの生成AI活用に取り組むお客さまが増え、それに伴ってCopilot+ PCをはじめとするAI PCへの関心も高まっていました。ところが、メモリーやSSDの価格高騰を受けてPCが値上がりし、お客さまの反応が鈍くなっています。Windows 10のEOS特需から約1年が経過して買い替え需要も一巡し、2026年度のPCビジネスが不安です。

中村さん●ご指摘の通り、2025年度はEOS特需に加えて需要の先取りも含まれていたため、その反動で2026年度の出荷台数が前年度から減少するのは避けられません。当社は2026年度の国内法人向けPC出荷台数を、2026年8月時点で648万8,000台と予測しています。EOS直後の2025年10月時点では2026年度の見通しを750万台程度と見込んでいましたが、昨今のメモリーやSSDの価格高騰に伴うPC本体の価格上昇を加味し、予測を下方修正しました。なお、この法人向けPC市場の予測には、GIGAスクール向けの需要は含まれていません。

MOEKO●やはり厳しい状況なのですね。出荷台数は、どのような根拠に基づいて予測したのでしょうか。

中村さん●PCの価格が上昇しているのは事実ですが、2倍、3倍になっているわけではありません。現時点では、従来比1.2〜1.3倍程度の価格帯で推移しています。さらに短期間で1.5倍まで上昇した場合、企業が予算面でどこまで許容できるのかなど、企業へのヒアリングや市場での実際の販売動向などを踏まえ、予測台数を算出しています。

 EOS特需の反動とPCの価格上昇という二つの逆風はありますが、市場の需要がなくなるわけではありません。昨年が絶好調だっただけに、昨対比を見て危機感を持つ方も多いようですが、絶対数としての出荷台数が極端に落ち込む状況にはならないとみています。

MOEKO●ちょっと安心しました。

教えてくれる人
MM総研
取締役 研究部長
中村成希 氏
教えてくれる人
日本マイクロソフト
デバイスパートナー
セールス事業本部
マーケティング戦略本部
Commercial Windows
戦略部長
仲西和彦 氏
教えてもらう人
MOEKOさん
ダイワボウ情報システム(DIS)に勤める入社2年目の営業職。顧客の課題に親身になって向き合う姿勢が評価されている伸び盛りの若手社員。次々と出てくる新しいテクノロジーの理解に苦戦している。

導入5年超のPCが次の商機
PCもWindows 11も最新が最善

MOEKO●2026年度も、PCビジネスを伸ばす余地はあるのでしょうか。

中村さん●2026年度および2027年度にも需要は確実に存在します。その需要の所在を的確に捉え、アプローチすることが重要です。まず注目したいのは、PCを買い替えず、OSの更新だけでWindows 10からWindows 11へ移行したユーザーです。2026年3月末時点の調査では、その台数を476万台と推計しています。

 国内メーカーや法人向け市場ではWindows 10搭載PCが2023年ごろまで流通していましたが、Windows 11搭載PCは2021年10月から販売が開始されました。ですからWindows 10搭載PCをアップグレードしたPCの多くは、5年以上前に導入されたものだと考えられます。

 Windows 11搭載PCに関しても、コロナ禍のテレワーク対応で導入されたPCが多く稼働しています。コロナ禍の影響が本格的に出始めたのは2020年春ですから、それらのPCも導入から5年が経過しています。

 5年前のPCでもWindows 11は動作しますが、長期間使い続けるうちに常駐プログラムが増えるなどして、ソフトウェアの起動や操作への反応が遅くなる問題が生じやすくなります。

 業務では、PCを通じてさまざまなアプリケーションやクラウドサービスを利用します。PCのレスポンス低下は、そのまま業務生産性の低下につながり、利用する社員のストレスも増大させます。

仲西さん●Windows 11も進化を続けており、現在は特に品質向上に力を入れています。例えば、メモリーを占有するデータの削減やサイズの縮小によって、Windows 11とアプリケーションのレスポンスを改善しています。前述の価格高騰の影響を受け、価格面から搭載メモリーを引き下げた場合などを考慮して、最新のWindows 11は8GBのメモリー環境でも、Outlookなどのオフィスアプリケーションが快適に動作することが一例として挙げられます。

 Windows 11の最新機能や品質改善は、主にWindows Updateを通じて順次提供しています。Windows Updateを実行することで、現在利用しているWindows 11の機能や品質を継続的に改善できます。また、以前はWindows Updateの適用時に再起動が必要になるケースが多くありましたが、最近のWindows 11では再起動の回数も大幅に減っています。

 最初に品質向上に触れましたが、Windows 11は引き続きAIを利用する上で最適なプラットフォームを提供する方向に進化を続けています。これから登場するであろう新たな機能やサービスを快適に活用するためには計画的なPCの更新、特にCopilot+ PCなどを2年先、3年先を見据えながら計画的に導入していくことが非常に重要となります。

Windows 11とAI PCの価値を
正しく伝えてリプレースを促進

MOEKO●AI活用においても5年前のPCはAI PCではないため、NPUが搭載されていませんね。

中村さん●AI活用では、クラウド経由でのAI利用にNPUは必須ではありません。しかしNPUを搭載した最新のPCは、ハードウェア全体が進化しています。将来のローカルAI活用に備えられるだけでなく、日常業務で使う多様なアプリケーションを快適に利用できる点もメリットとなります。

 Copilot+ PCをはじめとするAI PCでは、AI処理性能に注目が集まりがちです。しかし実際の業務では、さまざまなアプリケーションで作業し、そこで得たデータや情報を基に生成AIへプロンプトを入力します。つまりAIを使う前段階の作業を効率化することも、生産性向上には欠かせません。その観点からも、Copilot+ PCをはじめとするAI PCを導入する価値があります。

仲西さん●Windows 11には、Windows 10にはない多くの最新機能が搭載されています。MOEKOさんは「Microsoft Defender SmartScreen」を使っていますか。フィッシングサイトやマルウェアを配布する危険なWebページを検知し、アクセスをブロックしたり警告を表示したりする機能です。

 またインターネットからダウンロードしたファイルやプログラムの信頼性を確認し、未知のファイルや安全性が確認されていないプログラムを実行しようとした際にも警告を表示するなど、PCをサイバー攻撃から保護します。

 さらに今年6月のMicrosoft Build 2026で発表した「Microsoft Execution Container」など、PC上でAIを利用することを考慮して、PC上でAIをより安全に使う仕組みや機能も追加されていく予定です。

MOEKO●知りませんでした。まずは最新のWindows 11に搭載されている機能とその効果を理解し、お客さまに分かりやすく説明したいと思います。そして、最新のWindows 11が快適に動作するPCは、生産性とセキュリティの向上を通じて価格以上の投資効果を生み出せることを、具体的な数字と共に伝えて受注の拡大につなげていきます。アドバイスをありがとうございました。