近年、コンプライアンスは企業経営における最重要課題の一つとして位置付けられている。SNSをはじめとするネット社会の進展により、不祥事や不適切な行為は瞬時に拡散し、企業の信用やブランド価値を大きく毀損しかねない。また、個人情報保護法の強化に加え、長時間労働の是正やハラスメント防止といった労働関連法規も年々厳格化しており、企業にはこれまで以上に高い法令遵守意識が求められている。こうした背景からコンプライアンスについて学べる書籍を紹介する。

60分でわかる!
コンプライアンス 超入門

福田恵太岩渕恵理 編著、田畑瑠巳神田詠守中島永祥
1,760円(税込)
技術評論社

 コンプライアンスという言葉は浸透しているものの、その全体像や実務での生かし方を体系的に説明できる人は少ない。本書は、コンプライアンスを単なるルール遵守ではなく、企業を取り巻く多様なリスクに対処するための実践的なツールとして捉えている。全体の構成は、基礎から具体的な対応までを理解できるよう設計されている。Part1からPart4では、コンプライアンスの基本的な考え方や枠組みを整理し、「なぜ必要なのか」「何を守るのか」といった前提理解を押さえている。続くPart5・6では、具体的な違反事例や個別領域の解説を通じて、実務でどのようにコンプライアンスを活用すべきかといったイメージをつかめるのだ。また本書は、1テーマを見開き2ページで整理する構成に加え、図版を多用している。専門知識がなくても、短時間で要点を把握しやすい。執筆陣は、多数の不正調査を通じてリスクマネジメント体制の不備を見極め、再発防止策に携わってきた経験を持つ公認不正検査士だ。法令や理論の解説にとどまらず、現場での判断や対応を意識した、具体的かつ実務に即した内容となっている。会社全体のコンプライアンスを統括する立場の人はもちろん、営業や調達、広報など外部との接点を持つ担当者、法務・人事・労務・経営企画に携わる人にとって、自らの業務と結び付けながら読み進められる入門書だ。

図解入門ビジネス 最新
コンプライアンスの基本と実践がよくわかる本

後藤慎吾
1,980円(税込)
秀和システム新社

 本書は、企業や従業員がコンプライアンスを実践する上で必要となる基本情報をコンパクトにまとめた入門書だ。構成は三つのパートからなり、第1章では総論として、コンプライアンスの意義や企業にとっての重要性を解説する。第2章から第11章では、刑法や労働法をはじめとした理解しておくべき主要な法令や基本ルールを幅広く取り上げ、判断の前提となる法的な考え方にも触れている。第12章では、コーポレートガバナンスや内部統制、内部通報制度といった、企業がコンプライアンスを担保するための仕組みを解説している。図解を多用していることに加え、平易な言葉で説明しているため、知識が全くない読者でも体系的に理解しやすい。

法律実務家のためのコンプライアンスと
危機管理の基礎知識

木目田 裕 監修・執筆/西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 危機管理グループ 編
3,630円(税込)
有斐閣

 本書は弁護士などの法曹や、企業でコンプライアンスや危機管理に関わる役職員など、企業不祥事への対応を担う法律実務家を対象としている。構成は、第1部の総論と第2部の各論に分かれる。総論では、企業不祥事におけるコンプライアンスおよび危機管理の要点を整理し、実務に携わる際に押さえるべき全体像を示している。続く各論では、企業不祥事の代表的な類型を取り上げ、類型ごとに実体法規則の概要、コンプライアンス上の着眼点、危機管理上の留意点を解説する。さらに本書は、ブックガイドが用意されている。各テーマをより深く学びたい読者に有用だ。