税に関する電話問い合わせは、自治体に日々多く寄せられている。職員はそれら全てに対応しなければならないが、その結果コア業務の時間が圧迫されている場合がある。しかし電話対応のために派遣社員を雇うと、その分だけ人的コストがかかってしまう。
そこで注目されているのが、AIを活用して音声対話を自動化する「ボイスボット」だ。今回はNTTマーケティングアクトProCXの提案を受け、税の電話問い合わせ対応にボイスボットを試験導入した兵庫県神戸市を取材した。
兵庫県神戸市

兵庫県の南東部に位置する人口148万65人(2026年4月15日時点)の都市。
神戸市のランドマーク「神戸ポートタワー」、異国情緒を楽しめる「神戸北野異人館街」、日本三大チャイナタウンの一つ「南京町」、神戸市と淡路島をつなぐ「明石海峡大橋」など多数の観光スポットを備えるほか、日本三古泉・日本三名泉の両方に数えられる「有馬温泉」も有名。
年間40万件の問い合わせに対応
税は生活から切り離せないものだ。しかし手続きの中には複雑な手順を踏むものもあり、自治体における税の担当部署は、住民から来る多数の問い合わせに対応する必要がある。兵庫県神戸市も、そうした悩みを抱える自治体の一つだった。
そこで神戸市の税務部は、委託事業者であるNTTマーケティングアクトProCXの提案を受け、税の電話問い合わせ対応に生成AIを活用したボイスボット(自動電話応対システム)を試験導入した。
神戸市 行財政局 税務部 税務課 山本惇貴氏は、ボイスボットの試験導入を決めた背景をこう語る。「当市の税務部は、2024年度ベースで年間40万件ほど電話での問い合わせがあります。主に職員が対応しているのですが、今後その膨大な電話にどう対応していくかが課題になっていました。この課題への解決策として、当市では税務部におけるコンタクトセンターの構築を計画しています。コンタクトセンターの構築では、電話を一元化するだけでなく、電話対応の省人化も目指したいと考えています。今回はその一環として、ボイスボットの試験導入を行いました。ボイスボットが実際に電話対応の人的コスト削減に役立つのか、市民の問い合わせ内容に対する自己解決の促進につながるのか、そして市民に受け入れられるのかを検証しました」
回答を分析して正答率を向上
試験導入は、2025年8月12日〜10月31日の期間に行われた。住民税についての問い合わせのうち、納税通知書や申告、証明書の取得方法に関する一般的・定型的な質問にボイスボットが対応する。ボイスボットが電話をかけてきた人物の質問の意図を理解し、対応したFAQで回答するのだ。もしFAQで回答できない場合は、職員に電話を転送する。
具体的には、電話をかけてきた人物の発話内容をテキストにし、AIがそのテキスト内容を解析する。そして事前に準備したFAQから適切な回答を判断して、回答を読み上げる流れになる。FAQについては、NTTマーケティングアクトProCXが利用者から寄せられる問い合わせ内容や意見・要望など(VOC:Voice of Customer)を収集・分析して質問傾向を把握し、ボイスボットに適したものを用意した。なお同社は運用前だけでなく、運用期間中における回答状況も分析し、ボイスボットのシナリオやFAQのメンテナンスを実施した。これにより、利用者からの問い合わせに対する応答率や正答率の向上を図ったという。
山本氏は、本試験導入で使用したボイスボットの特長を次のように話す。「本ボイスボットにおける生成AIは、文面の生成を行わない意図理解の要素のみで使われています。そのためハルシネーションの心配がありません。また従来のキーワードマッチ型ボットは、シナリオを一つずつ丁寧に作り込み、キーワードが正確に一致するようにしないと、用意した回答がピックアップされない状況でした。しかし今回のボイスボットは、生成AIが高い精度で利用者の質問意図を把握します。シナリオは一定数作りつつも、後は語彙登録のような形で言い回しなどを用意すればよいだけでした。シナリオを作り込む必要がなく、作業効率が良かった点もメリットですね」
また山本氏は続けて、VOCの分析を行ったメリットをこう語る。「VOC分析を行った結果、マッチング率は試験導入の当初から50%を超えました。試験導入期間は2カ月程度でしたが、短い期間の中でも問い合わせを分析し、さらにFAQを追加していく改善のサイクルを回せました。この点も本試験導入の特長だと感じています」

2026年度は本格導入を予定
本試験導入の結果、当初から50%ほどの成果を出していたマッチング率は、最終的に66.3%まで上がった。また、市民からのクレームは発生しなかったという。「試験導入前は職員の間で、『自動音声での回答になるから、市民から不満がたくさん出るのではないか』という不安の声が上がっていました。しかし結果的には何の不満も出なかったため、市民もAIに慣れた時代になったのだと思いましたね」(山本氏)
山本氏は、本試験導入を踏まえた神戸市の今後の展開をこう話す。「試験導入の結果、ボイスボットを使用しても市民からのクレームが出ず、ある程度高い精度が出ることが分かりました。そのため、2026年度は本格導入を考えています。試験導入では住民税の問い合わせに限定していましたが、固定資産税や軽自動車税など、ほかの税目にも展開していく予定です。ボイスボットによって、職員の負担を軽減できればと考えています」
最後に山本氏は、税の問い合わせに関する神戸市の展望を次のように語った。「今回はVOC分析を行っているため、これをボイスボットの改善だけでなく、Webページの改善にも生かしていきたいです。これにより、市民が電話をしなくても疑問を解決できるようにしていければと思っています。また本試験導入を行ったことで、業務分担で職員や派遣社員、アウトソーシングへ任せる以外に、AIに任せるという人以外の要素が出てきたことは非常に大きいです。今後稼働予定のコンタクトセンターでは、民間のノウハウも活用しながら、AIによる人の手を介さない業務の対応範囲を拡大し、職員の業務時間を創出したいですね。コア業務に取り組める時間を生み出すとともに、人的コストの削減を図っていきます」

