2026年5月13〜15日にかけて、東京ビッグサイトにおいて「第17回 EDIX(教育総合展)東京」(以下、EDIX)が開催された。
3日間合計で2万6,155人が来場した本展示会では、学びや校務のシーンで活用できるICTソリューションが多数出展された。
本リポートではその中から、3OSメーカーの出展内容に加え、STEAM教育、教員の仕事をサポートするソリューションにフォーカスし、GIGAスクール構想第2期(GIGA第2期)を迎えたこれからの教育現場に必要なソリューションを展望していく。

3OSメーカーが集結!
校務からSTEAMの学びまで多様なソリューションが続々登場

 2026年のEDIX 東京では、日本マイクロソフトとグーグルに加え、Appleが初めての出展を行った。MM総研が2025年7月31日に発表した「小中GIGAスクール第2期におけるICT整備動向調査」によると、GIGA第2期で導入された学習者用端末に搭載されたOSは、ChromeOSが60%、iPadOSが31%、Windowsが10%と、GIGAスクール構想第1期(GIGA第1期)と比較してChromeOSが大きくシェアを伸ばした結果となっていた。

 GIGA第2期の需要が落ち着いた今回のEDIXでは、学習者用端末としての訴求は落ち着きを見せ、教員の校務用端末として各社OSを搭載した端末の活用が提案されていた。3社に共通していたのは生成AIの活用だ。特に日本マイクロソフトとAppleは、ローカルAIを活用することで機微な情報を安心して扱えることなどをアピールしていた。また生成AIを活用した学習教材作成なども紹介されており、校務DXに向けた提案が盛んに行われていた。

Microsoft

Copilot+ PCで教材作りも快適に

 日本マイクロソフトは、デバイスとソリューションの二つの軸で、教育現場のDX提案を行っていた。中でも注目したいのは、ハードウェアであるCopilot+ PCだ。Copilot+ PCにはさまざまなAI機能が搭載されており、導入することで教員の校務効率化に寄与できる。導入事例は決して多くないものの、多くの来場者が興味を持っていた。

 Copilot+ PCというと、「リコール」機能といったAI機能を使うことで校務の効率化が図れるが、特に教育現場で有用となりそうなのは「Microsoft Learning Zone」だ。本機能はCopilot+ PC用に設計された Windows アプリケーションであり、PowerPointなどの教材を読み込ませることでインタラクティブな復習用教材が約5分で作成できる。本教材で学んだ生徒の学習レポートなどもグラフィカルに表示され、学習傾向が把握しやすい。Copilot+ PC上で処理されるため、児童生徒の学習データをセキュアに取り扱える点も魅力的だ。取材時点では英語とフランス語のみの対応だが、近々日本語対応も予定している。

1.日本マイクロソフトブースのセッションエリアでは、教育関係者らが多数登壇し、同社のデバイスやソリューションを活用する教育メリットを語った。2.Copilot+ PCで活用できるMicrosoft Learning Zoneを使えば、復習用教材が簡単に生成可能だ。3.渋谷区ではPower BIやPower Appsを活用した教育ダッシュボードを活用している。4.デバイスコーナーでは多数のCopilot+ PCが展示され、導入を検討する教育関係者の姿が見られた。

Google

教育向けにGeminiが学びを支援

 グーグルのGoogle for Educationブースでは、同社の教育版AIアシスタント「Gemini for Education」を中心に、AI×教育によって起こる変化を来場者に訴求した。Gemini for Educationは教育機関向けの「Google Workspace for Education」アカウントにひも付いており、教育用にチューニングされた情報提供を行う。そのため、児童生徒が学習で使う上でもすぐに答えを出すのではなく、共に考えるような応答をしてくれるという。

 また、Geminiのテキストボックスに「明治維新についてのクイズを3問出してください」などと入力すると、選択問題が即時に出題され、回答するとスコアや正答率が表示される機能なども紹介されていた。このようなクイズ機能は、児童生徒一人ひとりに最適化された問題を出題してくれることに加え、苦手分野や得意分野を分析し、苦手な分野にフォーカスした問題を出すことができるなど、個別最適の学びにも活用可能だ。

 これらのデモに加えて、Gemini for Educationを活用した校務効率化を体験するコーナーや、AI×教育の具体事例などを紹介するセミナーやChromebookの展示も行われており、数多くの来場者が訪れていた。

1.プレゼンテーションシアターではAI×教育を実践している自治体や、児童生徒たちによるパネルセッションが行われた。2.Gemini for Educationは教育用にチューニングされており、子供たちの考える力を養いながら学びを支える。3.Gemini for Educationを活用し、AIで働き方改革を実践するためのワークショップも行う。4.Nano Bananaを活用したフォト体験コーナーで画像生成AIを体験。

Apple

Appleデバイスで未来の教育を体験

 Appleは製品体験セッション「The Lab」を同社ブースで展開した。AppleのEDIX出展は初となる。The Labのセッションでは今春発売されたばかりの「MacBook Neo」と「iPad Air」を活用し、四つのトピックに基づき、それぞれの場面で同社のテクノロジーがどのように活用できるのか、実際に製品に触りながら体感した。例えば「長く使い続ける」では、MacBook Neoに内蔵されているAppleシリコンを活用したローカルAIの処理によって、機密性の高い生徒のデータを保護しながらAIが個別指導計画を作成する様子を体験できた。

 また「可能性を解き放つ」では、Appleの「クラスルーム」アプリと、Goodnotes Limitedが提供するデジタルノートアプリ「Goodnotes」を組み合わせ、教員が生徒の学習端末をコントロールしながら学習意欲を引き出し、学習目標に沿って学びを進めるやり方などが解説された。実際にデバイスやアプリケーションに触れながら校務や学習シーンの効率化を体験することで、その最先端の技術に驚きの声を上げる教育関係者の姿が見られた。

1.Appleの製品体験セッションは、Apple Storeのような高級感のある空間で行われた。2.MacBook NeoとiPad Airを組み合わせることによるデータ連携や、学習意欲を引き出せるツール活用を体験。3.教育向けARアプリ「Foxar」をiPad Air上で使うことで、月の満ち欠けや人体の構造などをインタラクティブに学べる。4.手描きノートアプリ「Goodnotes」の教育版を活用すれば教材の配布も簡単に行える。

STEAMの学びを実現する多様な教材群

NTTデータNJK出展UVレーザー加工機「xTool F2 Ultra UV」でガラス内部へ彫刻

 STEAM教育はScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術・人文社会科学)、Mathematics(数学)の頭文字を取った教育概念だ。最先端の技術で社会が激しく変化している昨今、文系や理系の枠にとらわれず、各教科での学習を実社会での問題発見や解決に生かしていくための教科横断的な学びの重要性が指摘されており、それを実現するのがSTEAM教育だ。EDIXでは数年にわたって継続的にSTEAM教育に関連する教材が多数出展されているが、今年は文部科学省が発表した「N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」などもあり、高校向けのSTEAM教材や遠隔教育向けソリューションが多く見られた。

 また、レーザー加工機や3Dプリンターなどのものづくり向けハードウェアが多数出展されていたほか、実際にそれらを使っている学校の生徒たちによるプレゼン発表などの姿もあった。デザインアプリケーションを提供している企業も多く見られ、教育現場でSTEAM教育が浸透している様子が垣間見えた。

Arts

Artsの学びを支援するデザインツール

 STEAM教育はもともとSTEM教育と呼ばれていた。理系のSTEM教育にArtsのAを加えたのが、現在のSTEAM教育だ。STEAM教育におけるArtは、単なる芸術にとどまらず、リベラルアーツやデザインの視点を含め、文理の枠を超えた総合的な創造力の育成を目指す。このArtsの学びをサポートするツールとして、デザインツールがある。

 EDIXではアドビが、年齢を問わず誰でも使えるデザインアプリケーションの「Adobe Express」やプロ仕様のクオリティを追求できるクリエイティブツール群「Adobe Creative Cloud」の活用事例、DXハイスクール向けの提案を行っていた。また、同ブースセミナーでは、DXハイスクール校をはじめ、各校で採用が増えつつある「アドビ出前授業」も紹介をしていた。

 多くの自治体で活用が進むデザインツールの教育版「Canva教育版」を提供するCanva Japanは、セミナーに加え、実際に教育関係者がCanva教育版を体験できるスペースを設置。ツールに組み込まれたAIなどを活用することで、より自由で創造的な学習環境の提供が可能であると語られた。オンラインホワイトボード「FigJam」が数多くの教育現場に導入されているFigma Japanは、もともと「Figmaデザイン」というWebページやWebアプリのデザインツールを提供している。EDIXでは両ツールが紹介され、企業でも利用されているFigmaデザインの魅力が語られた。

1.アドビではDXハイスクール向けのSTEAM教育の提案のほか、学生のクリエイティブなデジタルスキル育成を行う革新的大学が加盟する「Adobe Creative Campus」の紹介などが行われた。2.Figma Japanの「FigJam」は多くの教育現場の協働学習に活用されている。またFigmaデザインと連携しているため、子供たちは自分のアイデアを素早く形にできる点も魅力的だ。3.Canva Japanは、同社ツールを使うユーザーを「ボイジャー」(航海者)と呼ぶため、出展スペースも船のようなデザインだ。セミナーと体験コーナーを展開し多くの教育関係者が足を止めていた。

Technology

ものづくりをサポートするデバイス

 STEAM教育のTにあたるTechnologyは、単なるコンピューターを操作する力にとどまらず、テクノロジーを活用することでアイデアを具現化したり、社会課題を解決したりするためのツールとして位置付けられている。その代表例としてプログラミングツールといったソフトウェアや、3Dプリンターなどのハードウェアがよく知られている。EDIXではこうしたSTEAM教育を実現する製品が多数出展されていた。

 すでにDXハイスクール事業などで3Dプリンターを導入した高校からは、3Dプリンターの出力の遅さなどが課題として指摘されており、速いスピードで多数のものづくりが可能なレーザーカッターの需要が高まっていた。

 また3Dプリンターで立体として出力する前に細部の確認が行える立体視ディスプレイなども注目を集めていた。学校によってはeスポーツも盛んであり、そういった需要に応えるゲーミングPC教室の提案なども行われていた。

1.NTTデータNJKは初めてでも扱いやすい多機能レーザー加工機「xTool」を出展。特にフラグシップ機の「xTool P3」は同時に多数のカットが行えることから、多くの教育関係者から関心の高い製品だという。2.ガイア・エディケーションはアクティブラーニング教室やゲーミングPC教室など、子供たちのための新しい教育空間の提案を行っていた。3.ソニーマーケティングの空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」は、裸眼で3D立体視が行える製品だ。従来モデルから解像度や色再現性が大きく向上し、3Dモデルの出力前チェックや立体物を用いた学習などに活用できる。

N-E.X.T High School

高校教育改革実現に向けた教材提案

 文部科学省は高校教育改革に向けた基本方針として「N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」(以下、ネクストハイスクール)を掲げ、2025年度補正予算として2,955億円を計上している。本事業内の「産業イノベーション人材育成等に資する高等学校教育改革促進事業」において、三類型の改革先導校を定め、アドバンスト・エッセンシャルワーカーや理数系人材の育成や、人口減少地域といった多様な学習ニーズに対応した教育機会の確保などを行う。

 EDIXではこれらのネクストハイスクール事業に提案するソリューションとして、遠隔授業に向けた音響機器やネットワークカメラなどの提案や、半導体を活用した実践的な探究教育基盤などの教材提案、STEAM教育をさらに加速化させるデバイス提案が行われていた。

1.アバー・インフォメーションは「AI自動追尾機能リモートカメラ」を出展し、遠隔授業で「見えない」「聞こえない」というストレスを解消し、より効果的な学びを実現できる環境構築を提案した。2.木村情報技術は次世代型学習支援基盤「GAKUSEE MI」を提案し、半導体の回路設計などを学びながら実践的な設計や開発体験を行う教育を訴求した。3.シャープはネクストハイスクール向けSTEAM教育環境に3DプリンターやXRグラスを提案。中でもBambu Labの3Dプリンター「P2S」シリーズは、薄型のものであれば4〜5分で複数の造形物が出力できるなど、これまでの3Dプリンターの出力時間の課題を解決した製品として教育現場の学びを支援する。

Teacher's Job
校務効率化からインクルーシブ教育までをサポート

 教員の校務効率化は喫緊の課題だ。EDIXではクラウド型校務支援システムをはじめとした次世代型校務DX環境を支援するソリューションや、校務用端末、日々の採点業務を効率化するデジタルツールなど、多様なソリューションが出展されていた。

 また、多様な子供たちが通う教育現場においては、障害の有無や国籍、文化的背景にかかわらず、共に学ぶインクルーシブな環境の構築が重要となる。それらを支援するツールも数多く登場していた校務データと学習データの統合などが進む中で、学校現場のセキュリティ強化も重要となる。特に前述したような次世代型校務支援システムを導入する場合、ゼロトラストを前提としたセキュリティソリューションの導入も併せて行う必要がある。

 こうした教員を取り巻くさまざまな課題を解決するデバイス、ソリューション群を見ていこう。

School Affairs

時間割作成やテスト採点を効率化

 学校における時間割の作成は、教員にとって負担の大きな校務の一つだ。各教員が担当できるコマ数や特別教室のキャパシティなど、さまざまな条件調整が必要となり、パズルのように複雑な作業が必要となるためだ。EDIXではその時間割をAIで生成できる機能を有した校務支援システムなどが登場していた。また児童生徒の学習の理解度を把握し、苦手克服などに生かすテストは教育の上で重要だ。しかし教員にとってテストにまつわる業務は、問題作成や採点といった負担が大きい。EDIXではその採点を自動化するツールが数多く出展されていた。全国学力・学習状況調査がCBT化されたことで、日常的なテストにおいてもCBTを活用しようとする動きが広がっているのか、CBTも対応したツールも見られた。

AIロボットはインクルーシブ教育へと活躍の幅が広がっている。上は丸文のAIロボット「Kebbi Air」。
小学館グループのSasaeLは、保護者連絡機能などを統合したオールインワンの校務支援システム「SasaeL 校務」を出展。生成AIによる時間割作成の機能なども搭載することで、教員の校務効率化をサポートする。
新学社のCBTシステム「SingCBT」は、文部科学省のMEXCBTと同一のプラットフォーム(TAO)を使用している。SingCBTで事前にテストの準備をしておけば、全国学力・学習状況調査で戸惑うことなくテストを受けられる。
マイクロシミュレーションのデジタル採点システム「testus」は、独自の生成AIを組み込んだことで、従来対応が難しかった手書きの記述や長文問題の自動採点に対応している。

Inclusive

インクルーシブ教育実現に向けた整備

 文部科学省が2021年9月27日に発表した「特別支援教育の充実について」によると、直近10年間で義務教育段階における児童生徒数は1割減少した一方で、特別支援教育を受ける児童生徒数はほぼ倍増したという。こうした状況に対して文部科学省は特別支援教育をさらに進展させるため「障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられる条件整備」「障害のある子供の自立と社会参加を見据え、一人ひとりの教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備」の方針を打ち出している。その取り組みの一つとして「ICT利活用等による特別支援教育の質の向上」が挙げられている。EDIXではこうした特別支援教育を充実させつつ、教員の校務負担軽減を実現するソリューションが多数出展されていた。

シャープも「ロボホン」を出展している。これらのロボットはプログラミング教育のほか、特別支援教育や不登校支援にも活用されている。
Nankaは、AIで手書き文字の読み上げを行う学習支援アプリ「もじソナ」を出展。読むことや書くことに困難を抱える児童生徒でも授業内容にアクセスしやすい環境構築をサポートする。
LITALICOはインクルーシブな教育支援体制の構築を目指すICTツール「LITALICO教育ソフト」を出展。個別の教育支援計画や指導計画の作成のほか、スモールステップでの学びを助けるプリント教材などの提供を行う。

Security

ゼロトラストを前提とした校務環境を構築

 次世代の校務DXを実現する上では、教育現場のセキュリティ強化も欠かせない。校務系・学習系システムを統合した次世代の校務支援システムを構築する上では、ゼロトラストの考え方に基づいたアクセス制御によるセキュリティ対策を講じる必要があるためだ。文部科学省も「GIGAスクール構想の下での校務DXについて」において、ゼロトラストセキュリティの導入を求めており、アクセスの真正性や通信の安全性、端末・サーバーの安全性に関する要素技術などが紹介されている。

 EDIXにおいてもこれらの次世代校務DX実現に向けた情報セキュリティを確保するためのソリューションが多数出展されていた。特に端末やサーバーの安全性については、ロケーションフリーの働き方を実現する上でも重視したポイントといえる。端末管理を行えるMDMソリューションだけでなくセキュアな端末の導入など、さまざまな需要がありそうだ。

シスコシステムズは「Cisco Secure Access」を提案。Webフィルタリングに加え、DNSセキュリティやクラウドファイアウォールなどの機能をクラウド上で統合し、包括的に防御するSASEの必要性を訴えた。
ソリトンシステムズのID認証サービス「Soliton OneGate」はデジタル証明書による多要素認証(MFA)で、ゼロトラストを見据えたアクセス制御を実現する。
EDIXには初の出展となるアイキューブドシステムズは、ISMAPに登録されている同社のMDMツール「CLOMO」を訴求した。オフライン状態での紛失対策を強化できる。