高度経済成長期に集中的に整備された社会インフラが、徐々に老朽化してきている。これにより自治体には多くの劣化申告が来ている一方、対応人員や維持費用は減少しているのが現状だ。膨大な修繕対応を限られた人員で行うのは難しい上、事務作業の煩雑化や、修繕対応の属人化といった課題も生まれているのだ。今回はこれらを解決するために、NTTフィールドテクノ・マップフォーと共に取り組みを行った、愛知県東浦町を取材した。
そこで注目されているのが、AIを活用して音声対話を自動化する「ボイスボット」だ。今回はNTTマーケティングアクトProCXの提案を受け、税の電話問い合わせ対応にボイスボットを試験導入した兵庫県神戸市を取材した。
愛知県東浦町

知多半島の東部に位置する人口4万9,514人(2026年4月末日時点)の都市。徳川家康の母・於大の方の生誕地として知られ、八重桜が満開の4月の第3土曜日には「於大まつり」が開催される。ほかにも五穀豊穣を願う秋の祭礼「おまんと祭り(駆け馬)」や、8頭の獅子が乱舞する雨乞い祈願の獅子舞「藤江のだんつく獅子舞」などさまざまな祭礼が実施されている。
老朽化設備の修繕対応に課題
高度経済成長期から50年以上が経過した現在、当時整備された道路が老朽化してきている。しかし老朽化設備が増加する一方で、道路設備の維持管理に必要な土木技師の人数や土木費は、年々減少傾向にあるのだ。
愛知県東浦町も、そうした悩みを持つ自治体だった。NTTフィールドテクノ 名古屋設備部 主査 山内裕太氏は、東浦町が抱えていた課題を次のように語る。「東浦町さまが抱えていた課題は三つありました。まず一つ目は道路施設などの網羅的な把握です。道路異常の申告が多く、その対応に苦労されていました。二つ目は申告対応や情報管理の効率化です。受け取った申告の管理をExcelなどで運用したり、過去の修繕写真を別々のフォルダーに保存したりしていたため、事務作業が煩雑になっていました。三つ目は修繕判断の均質化です。修繕に関する判断の属人化が問題になっていました」
こうした課題を抱えていた東浦町は、愛知県が実施する「スタートアップ活用まちづくり支援事業」(以下、スタまち)の支援自治体に選定された。スタまちについて、東浦町 インフラ整備部 土木管理課 係長 足立潤哉氏はこう説明する。「スタまちは、愛知県が主体で進めているものです。2040年ごろの社会経済を展望し、2030年度までに重点的に取り組むべき政策の方向性を示す『あいちビジョン2030』に基づいて、地域特性に応じたスマートなまちづくりを推進するものになっています。本プログラムを通して、全国・世界に先駆けた技術・サービスを社会実装していくことを目指しています」
そして、スタまちにて採択されたNTTフィールドテクノとマップフォーが、東浦町と共に道路維持管理の課題に挑むことになったのだ。
AIやLiDARを用いて作業を効率化
2025年11月5日に本取り組みへ採択された両社は、2026年3月18日に行われたイベント「AICHI INNOVATION CHALLENGE 2026」内で実施された成果報告会まで、道路維持管理の課題解決を目指した活動を続けた。山内氏は、期間中の活動の内訳をこう話す。「本取り組みを立ち上げるに当たり、ツールの導入が必要になっていました。そのため、東浦町さまとの話し合いを踏まえてツールを開発したり、フィードバックを受け取りながらツールを改善したりするといった環境の準備を、2025年11〜12月ごろに実施しました。そして、東浦町さまでの実証実験を2026年1〜2月に行った形です」
では具体的に、どのような解決策を行ったのだろうか。まずは山内氏が、NTTフィールドテクノが取り組んだことを次のように説明する。「当社が開発した道路設備管理プラットフォーム『Audin AI』を提供し、ドライブレコーダーを活用した道路付属物などのデータ収集・可視化、受付管理ツールの開発・提供、解析AIによる道路劣化診断を行いました。AIはまだまだ完璧ではないため、マップフォーさまが持つ点群技術と掛け合わせることで、より高精度な解析が行えるようにしました」
続けてマップフォー ソリューションデベロップメント部 チームリーダー 加賀谷裕平氏も、マップフォーが取り組んだことをこう語る。「当社はレーザー光を利用して物体の距離を測る『LiDAR』を用いた、点群データによる路面損傷状況の解析を担当しました。当社が開発した3次元データ計測システム『SEAMS』を搭載した車両で道路を走行し、LiDARやカメラなどのセンサーを使って、路面や周辺状況を高精度な3次元データとして取得しました。そのデータを基に、3次元点群作成ソフトウェア『MAP IV Engine』で3次元点群を作り、路面の損傷の深さ情報データを算出しています」

効率的かつ均質的な管理の可能性
足立氏は、実証実験の結果をこう話す。「実証実験では、大きく三つの検証を行いました。一つ目は、道路管理受付における、情報粒度の統一に向けた検証です。申告内容や地図・路線名と現場の状況写真といった情報を一元管理し、事務作業をシステム化しました。これにより、一定の事務作業時間の削減が見込めました。二つ目は、ドライブレコーダーや点群を活用した、効率的なデータ収集・損傷箇所把握に向けた検証です。収集したデータをAIやLiDARなどの新技術を用いてプラットフォームへ蓄積することで、道路表面の劣化状況を網羅的に把握できました。三つ目は、AIによる修繕対象の優先順位付けと帳票出力の自動化に向けた検証です。AIおよびLiDARを活用し、ひび割れの抽出と面積によるランク分け、アスファルトに空いたくぼみなどを指す『ポットホール』の深さの数値化を行い、判断基準のばらつきを抑制できる可能性を確認しました。これらを踏まえ、効率的かつ均質的な道路維持管理体制の確立は可能だと、我々は考えています」
一方で、検討課題もあると足立氏は続ける。「今回は期間・対象道路を限定した実証実験なため、活用可能なところまでは至っていません。また設計書の自動作成は、検証期間内では情報量が足りないなどの課題があり、まだ実現が困難でした」
最後にNTTフィールドテクノ ネットワークデザイン部 課長 鈴木亮平氏は、本取り組みを踏まえた展望をこう話した。「Audin AIは、これからもインフラメンテナンスの課題に対して、機能を充実させたいと思っています。本事例を基に、さらに道路維持管理の課題解決に挑戦していきたいですね」

