ジュニパーネットワークスの買収で
より高みに行くネットワーキング事業
2026年2月19日、日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)は年次イベント「HPE Discover More AI 東京 2026」を開催した。イベントではさまざまな変革が起こる時代において、同社がネットワーキング・AI・ハイブリッドクラウド事業でどのような戦略を描くかが、同社社員やスポンサーから語られた。本記事ではその中からネットワーキング事業に焦点を当て、HPEのネットワーキングに関する取り組みや戦略をレポートしていく。
Self-Driving NetworkはSTAGE4へ
対話型のAIアシスタントも利用可能

HPE Networking 事業統括本部
技術本部 本部長
上田昌広氏
HPEのネットワーキング事業について、まずはHPE HPE Networking 事業統括本部 技術本部 本部長 上田昌広氏が、「AIネイティブネットワーキングが拓く新次元のユーザー体験:Networking AIOpsの未来は現実に」と題したセッションを行った。
上田氏は同社のネットワーキング事業を語るに当たり、最初に「私はHPEによるジュニパーネットワークスの買収に伴い、合流したメンバーです。現在の環境で業務を始めて2カ月がたちますが、実感を率直に申し上げると、HPEのサーバー、ストレージ、HPC(High Performance Computing)、そのほかクラウドや自動化のソリューションなどによって、お客さまの課題を包括的に解決できるようになっていると思いました。またAIを使うことで、フルスタックでトップクラスのソリューションを提供可能なベンダーになったと感じています」と切り出す。
上田氏は続けて、取材時点(2026年2月19日)では開催中の「ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック」の会場でHPEのソリューションが使われていることに触れる。「ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックは複数会場で開催されており、超分散型のオリンピックと呼ばれています。そして競技会場や選手村、プレスエリアなどで、我々のネットワークソリューションが使われています。非常に大規模に展開しており、つながりやすいとの評価をいただきました」

また上田氏は、HPEが人間の介入を最小限に抑える、もしくは介入なしにする「Self-Driving Network」を目指すに当たって、どのような道のりをたどるかを次のように話す。「Self-Driving Networkにおいて重要なのは、まずはユーザー体感データだと考えています。これをSTAGE1とすると、STAGE2はドメインごとの体感レベル判断、STAGE3はIT管理者への提言、STAGE4は根本原因および解決策のガイダンス、STAGE5は完全自動修復と続きます。当社はすでに予兆検知や対話型でのトラブルシューティングなどができるソリューションを出しており、現在はSTAGE4.5ほどの位置にいます。我々がいる業界において、STAGE4.5までたどり着いている製品はなかなかありません」
そしてその製品が、仮想ネットワークアシスタントの「Marvis AI」だ。上田氏はMarvis AIの特長をこう語る。「拠点が数十以上になったり、ユーザーが数千~数万人になったりすると、ネットワークの管理を行うダッシュボードの確認が非常に大変になります。そこでMarvis AIであれば、対話型のAIアシスタントが使えるため、自然言語でトラブルの原因と解決策を探れるのです。ITのエキスパートでなくても、AIとの対話でトラブル解決が行えます。こうしたトラブル対応の流れも、最終的にはSelf-Drivingを目指しています」

両社が主要なITの要素を享受
四つの需要にネットワークを提供

エグゼクティブバイスプレジデント
プレジデント 兼 ゼネラルマネージャー
ラミ・ラヒム氏
本イベントでは、メディアやアナリストに向けて「HPE Networking事業戦略に関する説明会」も開催された。
本説明会にはまず、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ エグゼクティブバイスプレジデント プレジデント 兼 ゼネラルマネージャー ラミ・ラヒム氏が登壇した。ラヒム氏はHPEがジュニパーネットワークスを買収したことについて、以下のように話す。「HPEとジュニパーネットワークスが力を合わせることで、両社は共に、包括的なポートフォリオと主要なITの要素を享受できるようになりました。ちなみに我々が考える主要なITの要素とは、ネットワーキング・AI・ハイブリッドクラウドの三つです」
この要素を踏まえてラヒム氏は、「今日のAIが活躍する時代において、ネットワークの重要性は増しています」と語る。それからラヒム氏は、今後のネットワーキング事業で重要になるポイントを以下のように話す。「AI時代において重要なのは、ネットワークのパフォーマンスだけではありません。素晴らしい体験を利用者に提供しなければならないのです。人やAIエージェントなどが全てつながり合う、新しいネットワークが必要になります。そしてそれが、AIの需要を満たさなければなりません。そうしたことに対して我々は、Self-Driving Networkというコンセプトを立てています。つまりは人間を必要とせず、自己修復が可能で、自己最適化が行えるネットワークを目指しているのです。この戦略を基に、我々は『Canpus and Branch』『Routing Infrastructure Solutions』『Data Center』『SASE&Security』の四つの需要に向けて、ネットワークを提供しています。そして四つそれぞれに対して、ソリューションを開発しています。また顧客のセグメントには『Enterprise』『Cloud』『Service Provider』の三つがあります。どのセグメントにおいても、日本は重要なマーケットになっています」

営業体制を四つのセグメントに
再編してGo-to-Market戦略を推進

執行役員
HPE Networking 事業統括本部長
本田昌和氏
ラヒム氏に次いで、HPE 執行役員 HPE Networking 事業統括本部長 本田昌和氏が登壇した。本田氏は、同社のネットワーキング事業のGo-to-Market戦略をこう説明する。「Go-to-Marketの組織ですが、HPEのメンバーもジュニパーネットワークスのメンバーも関係なくまとまり、四つのセグメントに営業体制を再編しています。一つ目は『Service Provider』です。ここはジュニパーネットワークスの時代から一番得意としていた、ミッションクリティカルなルーターのビジネスです。長年をかけて培った、大きな足跡を残すビジネス領域のため、新体制でもしっかり継続していきたいと考えています。またこのセグメントは、最先端のテクノロジーが市場で求められる中、共に技術を検証しながらソリューションを世に出せるお客さまがいる領域でもあります。そのため、当社のネットワーキング事業において一番重要だと考えています」
本田氏は続けて、そのほかの営業セグメントについて次のように話す。「二つ目は『Enterprise』です。さまざまな企業の中で、使われている社内の仕組みやプラットフォームが複雑化しています。こうした状況において、当社が提供するSelf-Driving Networkが、お客さまの業務の効率化に大きく貢献できると考えています。Enterpriseは、当社にとっての成長領域です。三つ目は『Public Sector』です。こちらもEnterpriseと同じく、成長領域だと捉えています。多様な国や地方自治体、教育委員会に対してもパートナーさまと一緒になり、課題を解決していくアプローチを取っています。Enterprise向けの体制とは異なる方向から、運営を行っていく営業領域です。四つ目は『Commercial』です。ここはお客さまの数が非常に多いマーケットです。Commercialでは、パートナーさまとの協業をメインにして活動を進めていきます。当社のビジネスは、非常に多くのパートナーの皆さまに支えられています。このパートナーチャネルを旧ジュニパーネットワークスの製品にも使いながら、よりビジネスを伸ばしていくことが、成長材料になると考えています。またこれはどのセグメントにも言えることですが、当社はパートナーさまが中心の『Partner Centric』のアプローチができます。こうしたアプローチが、他部門とも連携を取りながら進めていく、HPEのGo-to-Market戦略です」


