“第三極”のプラットフォームを提供しつつ
ネットワーキング事業をさらに成長させる
2025年12月15日、日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)は2026年度の事業方針に関する説明会を開催した。分社化から10周年を迎え、2025年11月よりジュニパーネットワークスとの新体制を開始したHPEは、来年度どのような方針を打ち出すのだろうか。その詳細と共に、同社のネットワーキング事業の戦略と取り組みも紹介していこう。
分社化から10周年の節目
顧客のIT環境の最適化を支援

会見では最初にHPE 代表執行役員社長 望月弘一氏が登壇し、「2015年の分社化から10年がたち、本年度は10周年の節目に当たる記念すべき年です。この10年間を振り返ると、IT業界は目まぐるしく変わってきました。デジタル化、クラウド、AIがどんどん浸透する中、当社はお客さまの要望にきちんと耳を傾け、応えていく活動を行っています。10年前に当社がお客さまに提供してきたテクノロジーやソリューションと、今提供しているものを比べると、大幅に進歩しています。これまでの10年間に感謝しながら、節目となる次の10年に向けて邁進してまいります」と感謝を述べる。
続けて望月氏は、同社の事業方針について次のように語る。「私どもは2024年度から、『Edge-to-cloud company』のリーダーである『Leading edge-to-cloud company』になることを目指して活動してきました。2026年度はまさしくリーディングカンパニーになるために、一歩も二歩も明確に差別化する年にしていきます。お客さまの環境を見ると、複数のベンダーやクラウドを利用することが当たり前になっています。こうした中で当社はベンダーニュートラルであり、クラウドニュートラルであることをテーマに、お客さまのIT環境の最適化を支援します。お客さまがIT環境を選ぶ際に、当社はオンプレミスかクラウドの二極ではなく、それぞれの良いところを併せ持った第三極のプラットフォームを提供していきます。すなわち、オンプレミスだけれどもクラウドとして使っていける『HPE GreenLake』に力を入れ、お客さまのビジネスの成長を支えます」(望月氏)
Leading edge-to-cloud companyの
立ち位置を確立する1年に
事業方針を踏まえ、望月氏は2026年度の注力領域を四つ挙げる。
まず一つ目は、ネットワーク市場における“新しいリーダー”としての活動を本格展開することだ。同社は2025年7月にジュニパーネットワークスを買収し、2025年11月からジュニパーネットワークスを加えた新体制がスタートしている。これまでの同社のネットワークソリューション「HPE Aruba Networking」と併せ、ネットワーク業界のリーダーポジションを明確にしていく。
二つ目は、HPE GreenLakeを通じて“ソフトウェアおよびサービスでの成長”を加速することだ。同社が提供する統合型ソリューション「HPE CloudOps Software suite」による運用インテリジェンスの統合など、高度化・洗練が進むHPE GreenLakeの付加価値を、顧客へ還元することにこだわっていく。
三つ目は、最新テクノロジーと独自IPの価値訴求による、プラットフォーム市場のシェア獲得だ。同社のサーバー「HPE ProLiant Compute Gen12」による次世代サーバープラットフォームへの移行促進や、同社のストレージ「HPE Alletra Storage MP」を通じた独自のIPにより、非構造データの活用を推進していくことで、日本の市場でより多くのシェア獲得を目指す。
四つ目はソブリンおよびエンタープライズ市場における、AIインフラストラクチャの成長にフォーカスすることだ。近年データ保護やセキュリティの観点から、プライベートクラウドやソブリンクラウドでのAI基盤を求める声が高まっている。この声にきちんと向き合い、提案を進めていく。
また同社は、顧客に貢献できる領域として「ネットワーキング」「クラウド」「AI」の三つをITモダナイゼーションの必須領域として挙げる。そして各領域において、同社が取れるポジションを次のように説明する。
まずはネットワーキングだ。同社はネットワーキング領域を、複雑化するネットワーク環境をAIの力で最適化・自律化する「AI for network ops」と、AIワークロードに最適化するネットワークの提供を行う「Networks for AI workloads」の二つに整理している。こうした背景の中でジュニパーネットワークスを買収し、統合によって同社のネットワーク事業の売り上げは2倍の規模になったという。同社全体の売り上げに占めるネットワーク事業の構成比率は約3分の1で、中核事業の一つとして、今後もさらに成長を続けていく予定だ。

次はクラウドだ。プライベートクラウドへの回帰がトレンドになり、ハイブリッドクラウド化がさらに進行していく中で、同社はHPE CloudOps Software suiteを発表した。本ソリューションは全てのクラウド、全ての環境、全てのワークロードに対応するソフトウェア群で、効果的かつ質の高い運用管理に貢献する。さらにもう一つ、従来型の運用に変わるエージェント型Ops「GreenLake Intelligence」も発表している。このソリューションは本格的なAIエージェントを使った運用フレームワークで、ネットワーキング、ストレージ、サーバー、アプリケーション、セキュリティなどさまざまな領域をカバーするものだ。それぞれのブロックで独立して動くAIエージェントが相互に更新することで、さらにその質を高めていく。

最後はAIだ。同社はスーパーコンピューターで培った知見を、より多くのエンタープライズに展開していく。それがNVIDIAとの戦略的な協業の下で提供する、ターンキー型のAIソリューション「HPE Private Cloud AI」だ。またストレージ基盤についても、日本の顧客へさらに商品を紹介する方針だ。
最後に望月氏は「Leading edge-to-cloud companyとしての立ち位置をより確立する1年にしていきます」と、2026年度に向けた意気込みを語った。
自律型ネットワークは
Juniper Mistによって実装が進行

望月氏に次いで、HPE 執行役員 HPE Networking事業統括本部長 本田昌和氏が登壇した。本田氏は同社のネットワーキングにおける戦略と取り組みを話すに当たり、以下のように切り出す。「2025年11月からジュニパーネットワークスの皆さまが当社の社員になっています。さらに2026年1月からは、営業組織を一つにまとめ、一つのゴールに向けて新たな体制で事業をスタートしていきます。両社の社員共に、今回の合併を非常に前向きに捉えています」
本田氏は続けて、新体制の同社が顧客に提供していく価値に、人間の介入を最小限に抑える、もしくは介入なしにする「Self-Driving Network」(自律型ネットワーク)を挙げる。「エージェンティックAIといった技術を適用することで、自律型ネットワークの取り組みが飛躍的に実現してきています。ジュニパーネットワークスのクラウド管理ソリューション『Juniper Mist』を使っている方々においては、今日のネットワーク運用の中で、自動化や自動修復といったテクノロジーの実装が進みつつあります」(本田氏)
また本田氏は、2025年12月3~4日に開催されたイベント「HPE Discover Barcelona 2025」での発表内容に触れつつ、ジュニパーネットワークスとの合併についてこう補足する。「よく聞かれるのが、Juniper Mistと当社の統合クラウドプラットフォーム『HPE Aruba Networking Central』、今後はどちらが主流になるのかといった疑問です。私たちが取るアプローチは、Juniper Mistで提供する機能をHPE Aruba Networking Centralに移植し、またその逆もあるというものです。双方で提供する機能を、双方のプラットフォームに相互移植することがスタートしています」

最後に本田氏は、日本におけるGo-to-Market戦略に触れつつ、同社の展望をこう語った。「AIの時代において、従来のネットワークのままでは十分なパフォーマンスは得られません。最適なパフォーマンスを享受できないと、ネットワークが企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を足止めする要因になります。そこで当社は、ネットワークを『Service Provider』『Enterprise』『Public Sector』『Commercial』の四つのセグメントで捉え、それぞれで専門の営業部隊を組み、1月から活動を始めていきます。またこちらは当社全体にいえることですが、パートナーさまとの協業を通じて、エンドユーザーへ価値を届けていきます。このハイタッチの活動とパートナーさまとの協業の両輪で、今後もビジネスを継続します」


