クラウド向きのソリューションの把握が必要

Cloud

 ノークリサーチは、中堅・中小企業がDXに取り組む際のクラウド活用実態の傾向を業種別に調査し、その分析結果を発表した。

 DXに向けた取り組みは、情報システムの導入や更新の際にクラウドサービスの利用を第一に検討する考え方「クラウドファースト」と共に論じられることが少なくない。しかし選択すべきIT基盤のシステム形態は業種やITソリューションの内容によって大きく異なり、オンプレミスの選択が有効な場合もある。そのためDX提案を行うIT企業は、業種ごとにクラウドが選択されやすいITソリューションを把握する必要がある。

 クラウド活用を行う業種の例として、ノークリサーチは小売業での調査結果を挙げる。DXに向けた取り組みでは顧客接点となるフロントエンドの改善に着目しがちだが、バックエンドの整備も重要だ。IT企業はフロントエンドの改善を担うシステム形態と、バックエンドの整備を担うシステム形態で、それぞれ有望なクラウドサービスの把握が肝要になる。

 中堅・中小の小売業が、最も重要なITソリューションで選択するクラウド種別の回答を見ると、中堅・中小企業全体と比べて、物理的なサーバーを共有し、仮想化環境上でサーバーが稼働するIaaSを選択する割合が高くなっている。加えて、物理的なサーバーを共有し、利用可能なアプリケーションなどが定められたホスティングを選択する割合も高い。そのため、小売業では物理サーバーを他社と共有する抵抗感が比較的低いとノークリサーチは分析している。一方、業種に関係なく利用することを意図したSaaSを選択する割合は低いため、業種固有の事情が加味されていないアプリケーションでは小売業のニーズを満たせないことが分かる。従って、中堅・中小の小売業に対してDXを伴うクラウド活用を訴求する際は、業種に関係なく利用することを意図したSaaSの提供では不十分だが、IaaSやホスティングにおける物理サーバーの共有への抵抗感は低いことを念頭に置くのが望ましい。

課金体系は定額を望む傾向

 ノークリサーチは、小売業のクラウド適用において必須と考える支援や関連サービスについても調査している。同調査結果を見ると、小売業ではクラウドサービスにおけるアカウントやアクセス権限の統一管理よりも、業務に適したクラウド活用が重視されていることが分かる。課金体系については、従量制よりも定額を望む傾向がある。

 上記を踏まえ、中堅・中小の小売業へクラウド活用を訴求する際は、ユーザー企業ごとの業務を視察した上でクラウド適用を提案し、まずは定額でシンプルな課金体系でサービスを提供することが重要だとノークリサーチは指摘している。

出荷台数が落ち込むトラディショナルPC

Traditional PC

 IDC Japanは、デスクトップPC、ノートPC、ワークステーションを「トラディショナルPC」として分類し、国内トラディショナルPCの出荷実績値を発表した。

 2021年通年の国内トラディショナルPC市場の出荷台数は前年比18.3%減の1,418 万台となった。背景には、新型コロナウイルス感染症を契機とした自宅のPC環境の整備が一段落し、在宅勤務や学習に使用するPCの購入が落ち込んだことがある。また、高校向けのGIGAスクール構想による需要が、小中学校向けのGIGAスクール構想による需要より規模が小さかったこともマイナス成長の要因として挙げた。

 2021年通年のカンパニー別の出荷台数シェアを見ると、トップのレノボ/ NEC /富士通グループは39.8%で、昨年より1.9ポイント減少した。一方、4位のシャープDynabook)は7.8%で2.0ポイント上昇し、5 位のApple は6.8%で1.3 ポイント上昇した。背景には、シャープ(Dynabook)は法人市場での健闘があり、Appleは高校向けGIGAスクール構想の影響を受けていないことに加え、M1チップ搭載モデルの販売が底支えし、出荷台数が昨年比1.2%増になったことがある。

 IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャー 市川和子氏は、国内トラディショナルPC市場の今後の動向について「2022年も反動減は続くと思います」と予測している。

協働ロボット世界市場は低迷

Collaborative Robot

 矢野経済研究所は、協働ロボット世界市場の動向と将来展望を発表した。同調査では、産業用ロボットの安全性に関する国際規格「ISO 10218」「ISO TS 15066」に適合した協働ロボットを対象に調査を行っている。

 2020年の協働ロボット世界市場の規模は、メーカー出荷台数ベースで2万5,485台と推計している。背景には、米中貿易摩擦の影響や世界的なサプライチェーンでの部品不足で生産活動への影響が顕在化する中、新型コロナウイルス感染症で人の移動が抑制され、協働ロボットの営業活動や設置が困難になったことがある。ユーザー企業側では、人手不足やソーシャルディスタンスの維持、生産活動の安定化に向けたBCP対策などで協働ロボットの導入による自動化のニーズは高まっているものの、景気悪化で設備投資計画が延期したことが同市場の低迷の要因に挙げられた。

 今後の同市場の展望としては、協働ロボットにおいてもAIや5Gなどの新技術の導入が見込まれる。加えて、協働ロボットの周辺機器や主要部品なども高性能・高機能化することで、協働ロボットの導入業界や需要分野のさらなる拡大が期待されると矢野経済研究所は分析している。さまざまな業界で自動化のニーズが高まり、協働ロボット市場の拡大や参入プレーヤーの増加で本体価格も低下し、2031年の同世界市場規模はメーカー出荷台数ベースで32万6,397台まで成長する予測だ。