AI PCの台頭とWindows 11への移行が進む中、日本市場におけるAMDプロセッサー搭載PCの存在感が急速に高まっている。AMDプロセッサー搭載PCはこれまでもクリエイティブやゲーミングの領域で強みを発揮していたが、最近では法人に採用されるケースが増えているという。またPCメーカーではAMDプロセッサー搭載モデルのラインアップを拡充する動きも見られる。新しい選択肢に慎重な姿勢を持つ日本の法人ユーザーに対して、AMDはどのような戦略で信頼を獲得していくのか、日本AMDの代表取締役社長 ジョン・ロボトム氏に話を伺った。
AMDが選ばれるのは
優れたコストパフォーマンスが一番の理由です
互換性など導入のハードルが下がり
法人市場で導入実績を伸ばしている

代表取締役社長
ジョン・ロボトム 氏
日本市場におけるAMDプロセッサー搭載PCビジネスの現状について、日本AMDの代表取締役社長 ジョン・ロボトム氏は「AMDはグローバルのx86 CPU市場全体でここ数年、シェアを着実に伸ばしています。PCにおいてはクリエイティブやゲーミングの領域で特に強みを発揮しています」と説明している。
グローバルでは成長の勢いが続くが、日本市場はどのような状況なのか。「日本のお客さまは新しい選択肢や新しいテクノロジーへの移行に非常に慎重な傾向がありますが、当社は自社製品および日本市場での今後の展望に自信を持っています」と強気な見方だ。
実際にここ数年で状況は変わりつつある。「最近では企業や自治体のお客さまへの(AMDプロセッサー搭載PCの)導入が広がっています」と胸を張る。その背景にはAMDプロセッサー搭載PCの優れたコストパフォーマンスと、動作の安定性およびその認知が広がったことが挙げられる。
ロボトム氏は「AMDが選ばれるのは優れたコストパフォーマンスが一番の理由です。いくら(PCの)性能が高くても1.5倍、2倍の価格では選ばれません。AMDプロセッサーを搭載するPCはパフォーマンスと価格のバランスが非常に良く、導入の決め手となっています」という。
さらに互換性への不安も徐々に解消されつつある。日本AMDではAMDプロセッサー搭載PCの導入を検討している法人顧客に対して、PCメーカーと連携してPCを貸し出して検証に協力するなど、互換性に関する不安や問題の払拭に力を入れているという。そして法人および自治体への導入が拡大している現在、互換性に関する導入のハードルが下がっているという。
ロボトム氏は「そもそも現在の64ビットのWindowsやLinuxはAMDが開発した命令セット『AMD64(x86-64)』で動作しています。AMD64は以前の32ビットx86ソフトウェアと後方互換性を実現していたため、OSやアプリケーションが64ビットへ移行する時期に他のCPUメーカーなどにAMD64が広く採用されました。そして現在もAMD64をベースにOSやアプリケーションが稼働しているので、もともと互換性の問題はありません」と強調する。
AMDのイノベーションがAI PCを通じて日本の人材不足を補い、そして社会を支えていければと考えています
日本はAI活用が不可欠
AI PCで利用を促進する

昨今の生成AIの普及やAI PCの台頭も、AMDプロセッサー搭載PCの需要増に好機をもたらすという。AMDは生成AIが世界的に普及し始める以前から、AI利用におけるパフォーマンスの高さをアピールしており、日本でも将棋ソフトといったAIを搭載したアプリケーションがAMDプロセッサー搭載PCで快適に動作することが広く知られている。ロボトム氏は「日本は先進国の中でも少子高齢化が進んでおり、人材不足が最大の課題となっています」と指摘し、「AIの活用は日本の社会における人材不足を補完し、AMDのAI技術によるイノベーションがAIの普及と日本国内での利用拡大に貢献すると私たちは考えています」と語る。
AI活用を促進するにはソフトウェアとハードウェアの両輪で、利用環境の整備と用途の充実が必要だろう。まず利用環境について、現在AIはクラウドを通じて利用するのが主流だが、今後は用途に応じてAI処理をデバイスで行えるAI PCやCopilot+ PCの需要が伸びるという。
ロボトム氏は「特にビジネスではクラウドを経由する際に待ち時間が生じますので、AI処理をローカルで行うことで即座に回答や結果が得られるメリットは大きく、データが端末にとどまるためセキュリティ面でも優れています。またクラウドの利用にかかるコスト負担が軽減できるメリットもあります」と説明する。こうしたシナリオでAI PCおよびCopilot+ PCの必要性を訴えていく。
AIアプリの充実に注力
PoCを通じて顧客を啓蒙
用途の充実については、ビジネス利用にメリットのあるAIアプリケーションの開発、提供が求められる。AMDは日本市場だけではなく、グローバルで優れたオンデバイスAI性能を持つCopilot+ PCを生かしたAIアプリケーションの開発を、マイクロソフトと協力して支援している。またAMD自身も、AMDプロセッサーのNPUやCPU、GPUに最適化されたAIアプリケーションの開発を支援する取り組みを進めている。
ロボトム氏は「Copilot+ PCは40TOPSを超えるNPUをはじめ、CPUやGPUを組み合わせて非常に高性能なAI処理が行えます。Copilot+ PCのパフォーマンスを生かしたAIアプリケーションを提供し、お客さまに体感していただくことで、Copilot+ PCのメリットが認知され、Copilot+ PCを含むAI PCの普及につながると考えています」と説明する。
さらに顧客の啓蒙にも力を入れていくという。日本AMDではPoC(概念実証)を通じて実際に製品を試してもらう機会を提供している。ロボトム氏は「Copilot+ PCでは、例えば『ライブキャプション』というAI機能が提供されており、PCで再生される音声や動画の字幕をリアルタイムで翻訳できます。グローバル展開を目指す企業にとって大きな武器になります」と説明する。
そして「日本はAIを活用しなければならない国です。AMDのイノベーションがAI PCを通じて日本の人材不足を補い、そして社会を支えていければと考えています」と強く語った。






