チラシなどの印刷物も作れるデザインアプリケーション「Adobe Express」。今回はビジネスパーソンに身近なプレゼンテーションの資料作りにフォーカスしたAdobe Expressの使いこなし術を、アドビ マーケティング本部 統合マーケティング部 マーケティングスペシャリスト 有川 慧氏に解説してもらった。

ブランドガイドラインに準拠した
デザインでプレゼン資料を作れる

アドビ
マーケティング本部
統合マーケティング部
マーケティングスペシャリスト
有川 慧

有川_前回は「Adobe Express」(以下、Express)を活用した社内イベント向けチラシの制作方法を紹介しました。クオリティの高いチラシで告知すれば、これまで以上にイベント参加者が集まってくれるかもしれませんね。使いこなし術3回目となる今回は、Expressを活用したプレゼン資料の作成方法を解説します。

 マーケティングや営業職の方は、プレゼン資料を作る機会が多いでしょう。そのようなプレゼンテーションで使う資料も、実はExpressで簡単に作れます。どうしても地味になりがちなプレゼンテーション用のスライドも、Expressを使えば見栄え良くデザインできるでしょう。

 まずは「新規作成」から「ドキュメント」を選びましょう。そうすると「プレゼンテーション」という項目から、さまざまなテンプレートデザインが選択できます。テンプレートデザイン以外にも、前回、前々回で紹介したアドオン機能から「Googleドライブ」のアドオンを使用して、「Googleスライド」のデータを読み込んでExpressで編集することも可能です。このアドオン機能を使えば、Googleドライブに保存した写真のデータなどもデザインに使えて便利です。

 プレゼン資料を作成する場合、会社でよく使うフォントや、指定のカラーってありますよね? 例えばアドビの場合赤や白がブランドカラーとして指定されています。フォントもブランドガイドラインとして会社で指定されている場合がありますよね。Expressでは作成するコンテンツを、一貫性のあるブランドガイドラインに準拠した形でデザインできます。Expressの「ブランド」という項目をクリックすると、プレゼン資料で使用する企業のブランドカラーやフォントなどを選択して保存できます(ブランド登録はプレミアムプランのみ対応)。ロゴもアップロードして保存しておけます。登録したブランドアセットを選択して適用すれば、編集中のコンテンツの全てのページのフォントやカラーをブランドに準拠したものに変更できます。見出しに使っているテキストと、本文のテキストのフォントは、その内容に応じて異なるものが適用されますので、いちいちコピー&ペーストでフォントを適用していく手間もありません。

プレゼン内容に適した画像は
Adobe Fireflyにお任せ

有川_Expressでは多様な画像素材が用意されていますので、提案内容に応じた画像を挿入することもできますし、Express内でアドビの生成AIである「Adobe Firefly」(以下、Firefly)も利用可能ですので、最適な画像を生成することも可能です。例えばオーガニックな商品のプレゼン資料を作ろうと思った場合、それに適したカバー画像が必要ですよね。Fireflyの画像生成を使えば、オーガニックコスメのボトルの背景に植物を配置したり、白い背景に変更したりとイメージにぴったりの画像を生成可能です。生成した画像はサイズ調整をして、最適な場所に配置できますし、資料全体の色味と画像の色が合わない場合は、フィルターで色味やトーンを変更できます。もちろん画像だけでなく、動画やテキスト効果などさまざまな生成機能が搭載されているので、より簡単にユニークなプレゼン資料が作れます。

 さて、試行錯誤しながら完成したプレゼン資料ですが、これで終わりではありません。完成したプレゼン資料は、プレゼンテーションで使う必要がありますね。Expressには「発表者モード」が用意されています。これを使うと、プレゼンテーション用の全画面表示のほか、発表者ノートの表示が可能です。この発表者ノートはスライド右下に表示されるノートのアイコンから追加できますので、発表する内容を記入しておけばスムーズな発表が行えるでしょう。プレゼン資料作りからプレゼンテーション発表まで、トータルでカバーできるExpressを活用して、営業提案を勝ち取りましょう!

豊富なテンプレート
Step 1 ►►►
Googleドライブからインポート
アドオン機能で連携したGoogleドライブから、ベースとなるGoogleスライドをインポートすると、Expressで編集できるようになる。フォントや写真などもExpressの素材を使用可能だ。
用途に応じてテキスト編集
Step 2 ►►►
カラーテーマを設定
「配色」機能からカラーテーマを変更し、全てのページに適用できる。基調とする色などは変更できるため、プレゼンテーション内容に応じてトーンを変えた上で適用可能だ。
イラストを追加して華やかに
Step 3 ►►►
Adobe Fireflyを使って画像を配置
プレゼン資料で使う画像は、豊富な画像素材から選択して挿入できるほか、Fireflyで最適な画像を生成可能だ。生成した画像は「効果」のフィルターやトーンから、デザインに応じて調整できる。
印刷に適したデータに
Step 4 ►►►
発表者ノートで台本を作る
「発表者ノート」機能を使って、スライドごとに話す内容をメモしておけば、スムーズにプレゼンテーションできるようになる。発表時は共有ボタンの左側にある▽から発表者モードでプレゼンテーションをスタートしよう。

アドオンでQRコードを生成
Point 1 ►►►
豊富なテンプレートから作成
新規作成からドキュメント>プレゼンテーションを選択すると、豊富なテンプレートからプレゼン資料を作成できる。スタイルやムードなどからデザインのテイストを絞り込めるので、プレゼンテーション内容に応じて選択しよう。
コンビニプリントに対応!
Point 2 ►►►
ブランドロゴやカラーを登録
左サイドメニューの「ブランド」を選択すると、企業のロゴやカラー、フォントを登録できる。登録すれば企業や製品のブランドガイドラインに準拠したスライドを作れるようになり、便利だ。

生産性と創造性を統合したAI搭載プラットフォーム
「Acrobat Studio」英語版を提供開始

2025年8月20日に、アドビは「Adobe Document Cloud」の新製品としてAI搭載プラットフォーム「Acrobat Studio」を発表した。Acrobat Studioは生産性と創造性を変革する新たなプラットフォームで「Adobe Acrobat Pro」(以下、Acrobat)「Adobe Express」(以下、Express)、そしてAIエージェントを統合している。Acrobat Studioでは「PDF Spaces」という新たなワークスペースを提供する。これは保存されたファイルやWebサイトを基に、対話型のナレッジハブに変換できる機能だ。ユーザーはPDF Spacesを活用することでエージェント型AIアシスタントを介してファイルにアクセスし、インサイトを見つけたりアイデアを生成したりといったデータの活用が可能になる。またPDF Spaces内のAIアシスタントには「インストラクター」「アナリスト」「エンターテイナー」などの特定の役割も割り当てることができ、情報の要約や質問への回答、さらなる探究領域の提案などにも役立てられる。Acrobat Studioは前述した通り、Expressとも統合しているため、Acrobatのホーム画面からExpressにアクセスし、簡単に見栄えの良いプレゼンテーション資料や販促物の制作が可能だ。今回の記事で紹介したような企業のロゴやカラーテンプレートを使ったプレゼンテーション資料の作成を、Acrobat内で行えるようになる。Acrobat Studioは同日よりグローバルで英語版の提供をスタートした。日本語版は現在開発中だ。Acrobat Studioに関してはP.72~73のPickOutTopicsでも詳報する。