Wellness
NTT東日本がWellness Loungeをオープン
NTT東日本初台本社低層棟ビルに、先端テクノロジーを活用し、ライフパフォーマンスの向上をサポートする共創型実証施設「Wellness Lounge」が開設された。その目的と活用されているテクノロジーについて紹介する。
先端テクノロジーを活用した「Wellness Lounge」が
オフィスワーカーのウェルネスを向上させる
NTT東日本とNTTデータ、ストーリーラインは、NTT東日本初台本社低層棟ビルに、先端テクノロジーを活用し、ライフパフォーマンスの向上をサポートする共創型実証施設「Wellness Lounge」を開設した。2025年5月19日にオープンした本施設では、さまざまなアプローチから利用者の心や体を継続的にサポートするデータドリブン型施設の有効性を検証する実証プロジェクトを行う。その目的と、最先端の技術が詰まったWellness Loungeの様子を紹介していこう。
心身の健康状態から
最適な飲食や空間を提案
NTT東日本は、地域のソーシャルイノベーション企業として、地域循環型社会の共創を目指し、スマート農業やドローン、eスポーツなど、社会課題解決に向けたさまざまな取り組みを進めてきた。そんな同社が今回、NTTデータとストーリーラインと共に取り組むのが、地域のウェルビーイングに資する事業サービスだ。
ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に満たされた状態であることを示す。NTT東日本 ビジネス開発本部 営業戦略推進部 部長 佐藤文武氏は「生活者の健康に対する意識が変化し、健康関連のテクノロジーやデータ活用への理解や関心が増加しています。また、人々のウェルネスに対する意識も高まっており、継続的にさまざまな心身の状態を継続するだけでなく、その測定データを具体的な商品や体験などに結び付けて、生活者の日常の中で、適切な選択や行動をサポートする取り組みが求められています」と語る。
今回、初台にオープンした「Wellness Lounge」は、リアルタイムに心身の健康状態を計測し、その結果を基に最適な飲食や空間を提案するデータドリブン型の実証施設だ。
利用者はまずWellness Loungeに訪れたら心身の健康状態を測定する。すると、心身に合わせた最適な飲食や、施設内に用意された三つの空間の中から、最適な空間を提案される。
初台はオフィスワーカーが多いため、これらの提案もオフィスワーカーの健康にフォーカスしたものになっている。施設利用者はNTT東日本、NTTデータ、ストーリーラインの関係者および、申し込みのあった企業・団体を対象にしている。一般解放については施設利用状況を踏まえて検討を進めていく方針だという。

ビジネス開発本部
営業戦略推進部 部長
佐藤文武 氏

第三金融事業本部 保険ITサービス事業部
戦略デザイン室 室長
矢野高史 氏

代表取締役CEO
岩井順子 氏
三つの空間で楽しむ
新しいウェルネス体験
Wellness Loungeは、五感を通して自分に合うパーソナライズ体験ができる「KAGEROU」、五感を通して覚醒へと導く空間「HINATA」、五感を通して鎮静へと導く空間「KOKAGE」の三つの空間が用意されている。
これらの空間について、NTTデータ 第三金融事業本部 保険ITサービス事業部 戦略デザイン室 室長 矢野高史氏は「三つの空間は、五感を刺激することで自然とウェルビーイングが向上するように設計されています。例えば、KAGEROUでは、声や発話内容、表情を基に利用者の健康状態を分析して、それに合わせたコーヒーや軽食などが提案されます。コーヒーはカフェインの効用を利用しながら過剰摂取を避ける『カフェインコントロール』がなされたものから、最適なコーヒーを提案してくれますし、軽食も個人の健康状態に沿ったメニューが表示されます。これらの飲食を中心に、それぞれの体験価値を上げていくような空間になっています」と語る。
HINATAは覚醒をテーマにしたコミュニケーション空間だ。前述した通り、本施設はビジネスパーソンをターゲットしているため、仕事に集中するためのさまざまな仕掛けが用意されている。例えばパーソナライズアロマ。これは個人の今の状態をセンシングし、その人に合った香りを提案するものだ。午後の仕事に集中するために自身に合ったアロマを提案してもらい、その香りで集中力を高めるような活用が可能になるだろう。また空間内の照明には、1日のリズムに合わせたサーカディアンリズム照明を採用しており、体内リズムを整えるのにも役に立つ。
KOKAGEは鎮静をテーマにしたセルフメディケーション空間だ。部屋の照明は薄暗く、そこにいるだけでリラックスできるような空間作りをしているという。
「仕事をしていると疲れることもあるでしょう。そうした疲れを癒やすため、最適な脳の状態に導く『ニューロミュージック』を用いて、脳を深い鎮静状態にして休むことができるようにしています。またバーチャル森林浴や深呼吸を誘発するデバイスなども設置しています」と矢野氏は語る。
利用者は入り口から入ったKAGEROUでパーソナライズ体験をした後、飲食を購入し、それぞれの空間でウェルネス体験を楽しむのだ。

2. 声や発話内容、表情を基に利用者の健康状態を分析して、それに合わせたコーヒーや軽食などを提案するサービス。
3.4. 提案されるコーヒーや軽食の例。コーヒーはストーリーラインによるカフェインコントロールがされたものの中から適したレベルのコーヒーが提案される。
5. 覚醒をテーマにしたHINATAではパーソナライズアロマを体験できる。提案されたアロマを実際に体験することも可能だ。
6. 鎮静をテーマにしたKOKAGEではバーチャル森林浴を楽しみながら、ニューロミュージックで脳を深い鎮静状態にして休むことが可能だ。
カフェインの効用を利用して
オフィスワーカーの生産性を上げる
このWellness Loungeで提供されるコーヒーについて、ストーリーライン 代表取締役CEO 岩井順子氏は「当社では独自のカフェイン除去技術によってデカフェコーヒーの生産を行っています。この技術は東北大学で開発されたもので、当社は大学発のスタートアップという位置付けになります。『カフェインコントロール』や『カフェインマネジメント』という言葉をご存じでしょうか。まだそれほど認知されている言葉ではありませんが、要はカフェインの効用を利用しながら、過剰摂取を避けて体に合った状態で取り入れていくことを推奨するものです。デカフェコーヒーというとなんとなく妊婦さんが飲むものという印象があるかもしれませんが、当社としてはこのデカフェをうまくオフィスワーカーの人々に使ってもらうことで、睡眠の質や生産性を上げることに役立ててほしいと考えています」と語る。
ストーリーラインが提供するコーヒーはレベル0〜5までの6段階用意されている。レベル0がカフェインがないデカフェであり、1から順にカフェインが多くなっていく。例えば大事な商談前はカフェインが最も多いレベル5、3杯目以降のコーヒーはレベル2といったように、シーンに応じてカフェインコントロールすることが望ましいようだ。
NTT東日本とNTTデータ、ストーリーラインの3社は、このWellness Loungeの運営を担うとともに、本施設における実証を通じて人々のニーズを満たす提供価値を見極め、パートナー企業との共創により、地域のウェルビーイング向上に資する中核事業の創出を目指していく方針だ。