パラメーターを用いて形状や構造を定義する
設計者の思いに寄り添った3D CAD
少子高齢化による労働人口の減少や若者の製造業離れなどにより、製造業における人手不足は深刻だ。こうした人手不足の課題を解決するために、製造業では業務プロセスの抜本的な変革が求められている。それでは、業務プロセスの変革はどのように始めれば良いのだろうか。今回は製造業の業務プロセスの変革をサポートする3D CADソフトウェア「Creo」の特長を、PTCジャパン ビジネスデベロップメント ディレクター 芸林 盾氏に聞いた。
新しい製造業の業務プロセスとして
フロントローディングに注目が集まる
製造業をはじめとした人手不足が深刻な業界では、業務プロセスの変革が求められている。「今までと同じ業務プロセスを継続しているだけだと、先細りしていくだけです」と、PTCジャパン ビジネスデベロップメント ディレクター 芸林 盾氏は警鐘を鳴らす。
そうした中、前倒し可能な作業工程を設計の初期段階で行う開発手法「フロントローディング」に注目が集まっている。「従来の業務プロセスでは、開発期間において手戻りの期間が非常に長いため、開発期間の長期化を招いていました。こうした長期化は設計者の作業負担につながってしまいます。フロントローディングを採用することで、後工程での問題発生を防ぎ、手戻りを最小限にとどめられます。開発期間の短縮による設計者の負担軽減に加え、初期段階で設計の精度を高めることで、製品の品質向上にもつなげられます」(芸林氏)
フロントローディングを実現するためには、製品開発の工程において複数の業務を同時進行する「コンカレントエンジニアリング」と、製品全体のレイアウトを先に決めて各部品を順次設計する「トップダウン設計」という二つの取り組みが求められる。こうした取り組みを支える製品が、PTCが提供している3D CADソフトウェア「Creo」だ。
まずは、コンカレントエンジニアリングを可能にする機能を見ていこう。Creoはシングルデータベースを基にした強固な相互連携性を備えている。そのため、構想設計や詳細設計、解析、製図、製造といった各プロセスでの変更が全行程のデータに即座に反映されるのだ。続いて、トップダウン設計を可能にする機能を見ていこう。サイズや形状など製品の構想設計情報を定義し計画する「スケルトン」機能や、製品の構想設計情報を各要素に確実に伝達する「コピージオメトリ」機能、どの情報がどの要素に伝達されているか確認し、必要に応じて参照削除・切断できる「参照制御」機能を備えている。これらの機能を活用することで、設計の一貫性を保つことが可能だ。
設計したCADデータを
設計者自らリアルタイム解析

ディレクター
芸林 盾 氏
「PTCは1987年に、Creoの前身となる3D CADソフトウェア『Pro/ENGINEER』を発表しました。Pro/ENGINEERは当時、業界で初めて設計者向けの3D CADとして開発されました。2010年にCreoに名称を変更し、バージョンアップを重ねた現在でも、開発当初の設計者の思いに寄り添うという気持ちは変わっていません」と芸林氏は語る。
Creoが設計者向けの3D CADとなっているのは、二つの特長が主な理由だ。一つ目が「パラメトリックデザイン」の採用だ。パラメトリックデザインとは、パラメーターを用いて形状や構造を定義し、パラメーターを変更することで設計を動的に調整する手法だ。形状がパラメーターと連動しているため、1カ所のパラメーターを変更すれば、全体のパラメーターが自動で変更される。手動での修正作業が減少するため、人的ミスの防止や修正作業にかかる時間と手間の削減につながる。さらにパラメーターを変更するだけで形状や構造を調整できるため、設計のバリエーションを容易に生成可能だ。
二つ目が、リアルタイム解析機能「Creo Simulation Live」だ。従来の設計プロセスでは、設計者はCADデータを作成すると、解析者に解析を依頼して、解析結果を待つ必要があった。また設計者がある程度形状を作り込んでから解析者に解析を依頼しなければならなかったため、初期の形状の作成に多大な時間を要していた。そのため、さまざまなバリエーションの検討を行うことが困難だった。Creo Simulation Liveは、こうした課題を解決できるのだ。Creo Simulation LiveはCAD上の設計データを利用するため、瞬時にシミュレーションを行えることに加え、図面を変更した場合リアルタイムでシミュレーション結果に反映される。設計者が解析を行えるので、設計と解析にかかる反復プロセスを大幅に削減可能だ。
特にユーザーから評価が高いCreoの機能には、「ジェネレーティブデザイン」と安定した動作性能が挙げられる。ジェネレーティブデザインとは、設計要件を設定するだけで最適な設計案をAIが自動で作成することだ。設計者の負担軽減につながることに加え、経験の浅い設計者でも熟練の設計者と同等の成果を得られる。また、AIは材料や製造方法が異なる設計案を複数作成してくれる。設計者は複数の設計案を比較検討することで、その製品の意図に一番適した形状を選択できるのだ。
そしてCreoは安定した動作で、3D CADで組み立てられた製品「アセンブリ」を大規模なものでも管理できるように設計されている。さらに各部品が組みつけられたものである「サブアセンブリ」の中でも不要なものを一時的に除去することで、アセンブリの再生、読み込み、表示時間を短縮できるのだ。
CreoのUI例

AI設計のジェネレーティブデザインを利用することで、設計に不慣れな設計者も開発プロセスで貢献できる。

3Dアノテーションを利用することで、2D図面に依存せずに製造や品質管理を行えるようになる。
3D CADの魅力を発信していくことで
基準データを2Dから3Dに
芸林氏は、Creoは導入のしやすさも魅力だと語る。「Creoでは、最低限の3D CADの機能を備えた最小パッケージから、Creoで利用できる全ての機能を備えた最大パッケージまでさまざまなパッケージを用意しています。さらに、一部の機能のみを部分導入することも可能です。例えばリアルタイム解析の機能が欲しい場合は、最小のパッケージとリアルタイム解析のパッケージを導入することで、お客さまは必要な機能を安価に導入できます」
続けて芸林氏は、Creoの日本市場での注力領域についてこう語る。「自動車や重工業、建機、農機、産業機器、電気業界と業界を問わずに、3D CADを利用する全ての業界に向けてCreoの販売を行っていきます」
最後に芸林氏は、Creoの拡販においてダイワボウ情報システム(DIS)に期待する役割を以下のように語った。「DISさまの全国のパートナーさまとのつながりを生かし、まずは幅広い企業さまに3D CADの良さを知っていただきたいです。今までは2Dのデータと3Dのデータで差異があれば、2Dのデータを正しいデータとするのが主流でした。3D CADの良さを知ってもらうことで、製造に必要な情報を付加した3Dモデル『3Dアノテーション』を基に、製造や検査を行う『モデルベース定義(MBD)』を導入する企業さまが増えることを期待しています。そうした中で、Creoを導入するお客さまが増加するとうれしいですね。当社では、Creoを拡販するパートナーさまをサポートする専門のエンジニアといったバックアップ体制を拡充しています。こうしたサービスを活用してCreoを拡販し、お客さまの課題を解決してほしいですね」