生成AIを利用した検索が重要になる時代に
ブランドの可視性・影響力・成果を最適化

9月17日、アドビは生成AI時代のコンテンツ最適化を実現する「Adobe LLM Optimizer」を発表した。通常の検索だけでなく、生成AIを使った検索が行われるようになった現在では、LLMに自社のWebサイトやコンテンツが引用/参照されやすくなるように最適化する「Large Language Model Optimization」(LLMO)が重要になる。本記事ではLLMOを支援するアドビの新製品について、発表日と同日に行われた記者説明会の内容を紹介する。

生成AI経由のトラフィックが増加
回答から直接収益につながることも

 アドビ テクニカル・バリデーション部 シニア・マネージャー 平嶋英治氏はまず、近年のAI活用の傾向について「生成AIサービスは急速に拡大しています。今日参加している皆さまも、ChatGPTやGemini、Perplexityのような生成AIを利用していることでしょう」と切り出す。

 続けて平嶋氏は、同社のアクセス解析ツール「Adobe Analytics」で分析した米国消費者のデータを参照しながら、生成AIによるトラフィックの変化をこう説明する。「米小売サイトへの生成AIソース経由の流入トラフィックは、2024年7月~2025年5月の10カ月間で3,500%増加しました。同様に、米旅行サイトへの生成AIソース経由の流入トラフィックは、2024年7月~2025年5月の10カ月間で3,200%増加しています。この数値を見れば分かる通り、生成AI経由のトラフィックは大幅に増加しているのです」

 この結果を踏まえ平嶋氏は、「大規模言語モデル(LLM)の活用が拡大する中で、ブランドは多様化するトラフィックソースとその影響力を考慮する必要があります」と強調する。「今まで一般的だった自然検索では、ユーザーはほかのWebサイトやソーシャルメディアなどの外部リンクからアクセスする『リファラルトラフィック』で企業のWebサイト・アプリにたどり着いていました。そうしたトラフィックから、企業は自社のブランドエンゲージメントや収益を目指す構図でした。現在ではこの構図に、LLMが活用されるようになってきています。LLMの活用によって、ユーザーからブランドエンゲージメント・収益が生まれるきっかけに、『LLMリファラルトラフィック』と『LLMゼロクリックジャーニー』が追加されています」

 LLMリファラルトラフィックとは、生成AIにプロンプトを入力して回答が返ってきた際、回答のソースリンクをクリックして企業のWebサイト・アプリにアクセスしてきたものだ。そしてLLMゼロクリックジャーニーとは、ユーザーが生成AIで回答を得た後、ソースとなった企業のWebサイトやアプリにアクセスすることなく、直接ブランドエンゲージメントや収益につながるものだ。現在はユーザーが生成AIで検索を行う際、回答を見るだけでソースにはアクセスせず、そのまま検索を完了するケースが増えているという。

LLM活用が拡大する中でのブランドエンゲージメント・収益の目指し方を説明するアドビ テクニカル・バリデーション部 シニア・マネージャー 平嶋英治氏。

多様なデータへのアクセスと
統合がビジネス価値を生む鍵に

 さらに平嶋氏は「LLMとのやりとりの影響を正しく図るには、多様なデータの収集が必須になります」と話す。
 具体的には、ユーザーがLLMに伝えるプロンプトを指す「LLM入力データ」、プロンプトを基に出力された「LLM出力データ」、LLM経由でWebサイトにアクセスする際のLLMクローラーの種類とクエリ数である「エージェンティックデータ」、LLM経由で発生した訪問数の「リファラルデータ」だ。

「こうした非常に多くのデータが必要になる中、LLM入力データとLLM出力データはブラックボックスなデータのため、プロキシ経由でのアクセスが必要です。それに対してエージェンティックデータとリファラルデータは、プロキシ経由でなくても何らかの形でデータ取得が可能です。LLMOの観点で言うと、これらのデータに簡単にアクセスし統合できるソリューションは、より大きなビジネス価値を生み出せます」(平嶋氏)

 では、アドビはどのような優位性をもってLLMOの領域に取り組んでいるのだろうか。平嶋氏は同社のLLMOの取り組みについて、こう説明する。「当社は先ほど説明した四つのデータに加え、ブランド承認済みコンテンツ全体やブランドガイドライン、コンテキストへのアクセス、コンテンツ間の関係性、実装、構造の理解といったコンテンツに関する深い理解を持っています。加えてCMSの専門知識を生かし、推奨コンテンツや技術的変更を適切な場所へ反映できるデプロイメント機能にも強みがあります。LLMOで効果的な判断を行えるかが、本領域の差別化要因になると当社は考えています」

見つけられ・引用され・選ばれる
ブランドのコンテンツを最適化

 ユーザー企業のLLMOを目指してアドビが提供するのが、エンタープライズ向けの新製品「Adobe LLM Optimizer」だ。「AI時代での検索で“見つけられ・引用され・選ばれるブランド”へ」をコンセプトにしており、AIネイティブ検索においてブランドの可視性・影響力・成果の継続的な最適化をサポートしていく。

 Adobe LLM Optimizerは、大きく三つの機能を持っている。一つ目は、AI検索においてブランドを“見られ・正しく・影響力のある存在”にするための機能「レポートとインサイト」だ。現在ブランドがどのように評価されているかを表す「Brand presence」を確認できるほか、生成AI・AIブラウザー経由でたどり着いた「エージェンティックトラフィック」とリファラルトラフィックの2種類のトラフィックを参照可能だ。

ブランドが今AI経由でどのように見られているかを示す「Brand presence」の画面。自社のメンション数などを確認できるほか、競合他社との数値比較も行える。
エージェンティックトラフィックを表示する画面。実際どれほどのユーザーがアクセスに成功したかをパーセンテージで表す「サクセスレート」も提示されている。

 二つ目は、具体的な改善・最適化案を提示する機能だ。この機能では、404エラーの修正やサイトマップの更新といった技術的な最適化案を出すほか、自社Webサイト/外部Webサイトについての最適化案を提案する。

具体的な改善・最適化案を提示する画面。技術的な問題の改善案として、404エラーの修正が提案されている。改善後の効果が高い案には赤いアイコンが表示される。

 三つ目は、ワンクリック実装だ。同社のエンタープライズ向けCMS「Adobe Experience Manager」を利用する顧客であれば、Adobe LLM Optimizerから出された改善案をワンクリックで反映できる。もしAdobe Experience Managerを利用していなくても、Adobe LLM Optimizerの改善案をコピー&ペーストでWebサイトの更新代行を行う企業に伝えれば、修正依頼を正確に伝達可能だ。

 最後に平嶋氏は、Adobe LLM Optimizerの強みをこう話した。「強みは主に五つあります。一つ目は、エージェンティックトラフィック分析です。Adobe LLM Optimizerでは、CDNログに直接アクセスし、実際のクエリボリュームを正確に把握できます。二つ目は、オフサイトの最適化です。自社Webサイトの最適化だけでなく、ソーシャルフォーラムや外部メディア、権威ある第三者Webサイトへの影響力の強化も行えるのです。三つ目は、具体的な改善提案です。KPI・実行ステップ・ドラフトコンテンツを明示した実践的な提案を提供可能です。四つ目は、自動デプロイです。Adobe Experience Managerを利用しているお客さまであれば、手動ワークフロー不要でコードやコンテンツの即時反映を行えます。五つ目は、広告やマーケティング活用がどのように成果に結びついているかの分析が行える『アトリビューションモデリング』です。取得したCDNログを基に、LLM経由で流入してきたユーザーがどのくらい購入や資料のダウンロードに結び付いたか可視化できる機能を提供しています。実際にユーザーが企業の期待する行動を起こすまでに、LLMのトラフィックがどれくらい貢献しているのかを把握可能です。さらには、最適化する前とした後でどのくらい変化があったのかも比較できます」