複雑なデータ処理を1回のプロンプトで
Excel作業の効率化は、多くのビジネスマンが取り組んできた課題だ。入力の効率化にはピボットが有効だし、集計やグラフ化にもさまざまな工夫がこらされてきた歴史がある。とはいえ、複数の帳票の数字を操り必要な分析結果を得るまでにはいくつものステップが必要だ。しかし、これらの作業を一気通貫でこなしてくれるのが標準エージェントのアナリストだ。
アナリストは以前紹介したリサーチツールとともに標準提供されているエージェントで、リサーチツールが情報の収集分析に強みを持っているのに対し、アナリストはデータの処理と分析を得意としている。特に、Excelデータの扱いはMicrosoft 365ファミリーだけあってお手のものだ。ここでは、新製品の数ヶ月分の売り上げなど実績データを元に、損益分岐時期を予測してもらおう。製品の企画段階では当然予測項目に入っていただろう損益分岐時期だが、実際発売になって、それがどう変化したかを追跡する必要がある。結果によっては、販売計画等に変更を加えなくてはならないだろう。
通常のCopilotでExcelデータを処理しようと思うと、作業を指示しても逆にいくつもの質問をされたりしたが、アナリストを使えば「新製品のこれまでの実績データを元に、損益分岐時期を予測してください」といった指示を、ワンプロンプトで実行できる。テキストだけでなく、自動で予測をグラフ化したものもつけてくれる。執筆時点では、日本語ファイル名のファイルの処理ではグラフ上で文字化けすることがあったが、ファイル名を欧文にすれば解消された。今後のアップデートで解決していくと思う。






今回はデータ量が少なかったため結果が表示されるまでには3分程度の時間がかかったが、取り扱うデータが増え、処理が複雑になればリサーチツール同様10分くらいかかることもある。しかし、指示を一度で済ませて結果を得られるのだから、待ち時間は他の仕事をしていればいい。
通常のCopilot Chatの分析と比較すると
CopilotのChatに同じデータで同じ質問をしてみたところ、「このペースだと、毎月の貢献利益が固定費累計の増加ベース(4,000,000円)を下回っているため、損益分岐点に到達しません」という答えが返ってきた。このファイルの条件のみでは、損益分岐は永遠にやってこないという答えだ。
この場合、アナリストが自動で構築した過去3ヶ月の貢献利益に基づく線形モデルという収支シナリオを、条件(売上高の増加、または固定費・変動費の削減)として質問側が加えていかないと、望む結果は得られない。その分人間の思考と作業が必要になるというわけだ。複雑な作業になりそうな時は、アナリストの利用が適しているだろう。







