クリエイティブな学びを支援するMacBookと
探求的な学びで新しい学力を育てる

海城中学高等学校は、「国家・社会に有為な人材を育成する」という建学の精神の下、1891年に設立された海軍予備校が前身となっている中高一貫の男子校だ。現在は、グローバル化が進んだ国際社会、価値観が多様化した日本社会における「有為な人材」を「新しい人間力」と「新しい学力」をバランス良く兼ね備えた人材であると定義し、対話的なコミュニケーション能力やコラボレーション能力といった人間力や、課題設定・解決能力の学力を育成する学びに取り組んでいる。その学びのインフラとして同校は、1人1台の学習者用端末にMacBook Airを採用している。その理由と、MacBook Airが実現する学びの姿を見ていこう。

創造的な学びを実現する端末選び

 海城中学高等学校が校内のICT化に取り組み始めたのは10年前ころのこと。同校のICT教育部 部長であり数学科教諭も務める宮﨑 篤氏は「まず着手したのが教室環境の見直しでした。黒板をホワイトボードにリプレースしたり、プロジェクターを取り付けたりといった対応です。また校内のWi-Fi環境の整備も進めました。2015年にはiPadを45台ほど整備し、生徒への貸し出し用端末としての運用をスタートしました」と振り返る。

 その後、2016年には教員に1人1台のiPadを整備。翌年の2017年からは中学校3年生の生徒から段階的に、生徒1人に1台のiPadを整備した。現在はこれらの学習者用端末を全学年でMacBook Air(以下、MacBook)に切り替えている。

 学習者用端末をiPadからMacBookに変更した背景について、宮﨑氏は「本校では、プログラミングやレポート執筆など、キーボードを使う学びが多くあります。このようなクリエイティブな活動の指導を行うことを想定した場合、MacBookの方が適していると判断しました」と語る。これらの学習者用端末は数年ごとに見直しを行っており、今後変更される可能性もあるという。

 それでは、海城中学高等学校ではどのようにMacBookが学びに活用されているのだろうか。「最も活用しているのは情報の授業です。本校のPC教室は、MacBookを整備した際にデスクトップPCなどを撤去し、プログラミングなど情報の学びも含め全てMacBookで行っています。例えば『Google Colaboratory』という、Webブラウザー上でPythonを記述、実行できるツールがありますが、情報の授業ではこのツールを活用してPythonの学習に取り組んでいます」と語るのは、同校のICT教育部 副部長を務め、情報科 主任でもある教諭の平田敬史氏。放課後にプログラミング講習を行ったり、部活動でロボットプログラミングに取り組んだりする生徒もいるなど、ICTの活用は日常に溶け込んでいる。MacBookの存在は文房具のような位置付けといえるだろう。

各教室には昇降型のホワイトボードと共に、左右に移動できるプロジェクターが設置されている。教員はプロジェクターを移動させながらフレキシブルな授業が行える。
海城中学高等学校のPC教室からはデスクトップPCが撤去され、教員が表示する指示が確認できるモニターのみが設置された状態だ。生徒は自身のMacBookでプログラミングなどを学ぶ。

プログラミングや論文作成に活用

 海城中学高等学校では、社会科や理科における探究学習にも力を入れている。「本校では30年前ごろから、探究的な学びに取り組んでいますね。当時は受験で大学に合格することが学びのゴールになっていましたが、そうした学びでは大学で留年する確率が高まる傾向にありました。受験勉強ももちろん大切ですが、それだけではない価値を生み出せないか、と考えて始まったのが探求型の『社会科総合学習』です」と宮﨑氏。

 社会科総合学習では、中学1年生のころから自らテーマを設定し、企業や役所などに取材をしながら自分なりの答えを出すといった学びに取り組む。中学3年生では3年間の学びの集大成として、原稿用紙30〜50枚分の卒業論文を執筆するという。平田氏は「こういった論文を作成するようなシーンでも、やはりキーボードがあるMacBookのほうが使い勝手が良いですね。プレゼン資料やレポート、論文を作成する細かい作業に向いています。iPadとMacBookは双方メリットデメリットがありますが、本校の学びの中ではMacBookが学習者用端末として適していますね」と語る。iPadは現在でも貸し出し用端末として運用している。例えば体育の授業で動きを確認するような場面で、カメラを手軽に使えて、動画をすぐに確認できるiPadは利便性が高いのだ。

「数学の授業でもMacBookは便利に使っています。例えば二つの円柱の共通部分の体積を求めるといった問題を解く際に、実際に端末上で動きなどを表示して見せると理解が深まりやすくなります。グラフなどもデジタル上で動かして見せると分かりやすいですね」と宮﨑氏は語る。

 今後は生成AIの活用も視野に入れている。平田氏は「まずはICT教育部内の教員で使いつつ、次に教員全体のように段階的に広げていくことを検討しています。一方で生徒自身に使わせる場合、成果物の評価を検討する必要があるでしょう。運用ルールの整備や評価基準の見直しを行いつつ、導入を検討していきたいですね」と締めくくった。

科学的思考力を養う校舎として2023年9月から運用をスタートした新しい理科館「Science Center」は理科科目の探求的な学びを支援する。物理・化学・生物・地学の専用実験室を設けるほか各所に標本などが展示されている。
Science Center地下の様子として、関東ローム層のはぎとり標本がエントランスに展示されている。
取材時は春休み中だったが、課外活動で登校していた地学部の生徒などはMacBookを用いて調べ物をしたり生徒同士で相談したりするなど、日常にICT端末の活用が根付いていた。