国内初の「Adobe Student Ambassador」に認定20名の学生と共に育てるデジタルの“種”とは

立命館は、2023年9月29日にアドビと連携・協力協定を締結し、Society5.0時代における新たな価値創出を担う人材育成を共同で推進してきた。2024年4月には、クリエイティブなデジタルスキルの育成に取り組む大学のみが加盟できる世界的コンソーシアム「Adobe Creative Campus」に日本の教育機関として初めて加入している。Adobe Creative Campus としての立 命館大学の取り組みを見ていこう。

ワークショップでは他のキャンパスにいるAdobe Student AmbassadorがWeb会議ツールを活用し、Adobe ExpressやAdobe Fireflyの使い方を指南しながらコンテンツの作成に取り組んだ。

創発性人材を育てる取り組み

 小学校から大学までを擁する立命館は2020年に、10年後の社会を見据えた学園ビジョン「R2030」を策定した。その中で目指すべき姿として掲げているのが「新たな価値を創造する次世代研究大学」と「イノベーション・創発性人材を生み出す大学」だ。ビジョンの実現に向けて、立命館ではさまざまな取り組みを進めている。その一つが、2023年9月29日に締結した立命館とアドビの連携・協力協定だ。2024年4月には、クリエイティブなデジタルスキルの育成に取り組む大学のみが加盟できる世界的コンソーシアム「Adobe Creative Campus」に、立命館大学が日本の教育機関として初めて加入した。この加入に合わせて立命館では、アドビのデザインツール「Adobe Express」を学園全体で利用できるようにしたほか「Adobe Creative Cloud」のユーザー指定ライセンス数を増やし、積極的に活用する方針を固めている。

 その立命館大学が2024年12月19日、20名の学生が「Adobe Student Ambassador」に認定されたことを発表した。Adobe Student Ambassadorは、クリエイティビティを身に付ける活動に意欲的に取り組み、培ったスキルを学園内に広く還元する活動に取り組む学生であり、立命館大学から10名、立命館アジア太平洋大学(APU)から10名がアドビによって認定された。これに合わせて立命館大学では、大阪いばらきキャンパスにクリエイティビティを育む空間「STUDENTS' INNOVATION HUB SEEDS」(以下、SEEDS)を開設した。SEEDSは立命館大学が学生の挑戦を支える場として用意されていた教室だが、今回はその空間をアドビのクリエイティブツールを活用する場として改装しリニューアルオープンしている。Adobe Student Ambassadorの学生たちが主体となってクリエイティブツールを活用した課題解決や新しい価値の創造に取り組んでいく。

ワークショップでは他のキャンパスにいるAdobe Student AmbassadorがWeb会議ツールを活用し、Adobe ExpressやAdobe Fireflyの使い方を指南しながらコンテンツの作成に取り組んだ。

デジタルの種をまく空間

 2024年12月23日に、Adobe Student Ambassadorの認定とSEEDSオープンに合わせた発表会が実施された。登壇した立命館 常務理事(企画担当) 山下範久氏は「SEEDSの壁には『Sowing the seeds of digital brilliance with Adobe at Ritsumeikan.』というステートメントが書かれています。簡単に訳すなら『立命館においてアドビと共に輝くデジタルの種がまかれ、それが芽吹いて大きく育っていく』というアドビさまからのメッセージになります。SEEDSは社会や未来を変える挑戦をしてみたいという思いを持った学生が集まる場所です。今回、アドビさまのサポートを受け、クリエイティビティを育む新たな場所として生まれ変わりました。ここから学生、生徒、児童がさまざまなトライを広げ、世界に飛躍していくことでしょう」とSEEDSの場所の意義を語る。

 SEEDSの開設に当たりサポートを行ったアドビの教育事業本部執行役員本部長 小池晴子氏は「学生の個性や創造性を表現できる場としての教室というと、STEAM Labのような3Dプリンターや高性能PCが並ぶ空間をイメージされるかもしれませんが、立命館のキャンパスにはそういった場所がすでに複数存在します。このSEEDSは、すでに未来型であるこのキャンパスの中で、時間や場所に縛られず学生の皆さまがクリエイティブな活動ができる拠点として活用できる教室です」と語る。

 SEEDSを開設した目的は二つある。一つはアドビのブランド認知だ。アドビが提供するクリエイティブツールを学生に知ってもらい、それによって何ができるかといった興味関心を醸成する場として活用していく。二つ目は、これらの情報やインスピレーションから、具体的なアクションにつなげる場として活用する役割だ。前述したように、アドビのクリエイティブツールを知った学生や職員が、それぞれのニーズ応えられるツールを活用し、そのアイデアを形にする場所としてSEEDSを活用してもらう。

 小池氏は「これからこのSEEDSにおいて、学生の皆さまがそれぞれの個性と強みを生かした創造性の花を見せてくれることを期待しています。さらにそれを牽引してくれる存在として、20名のAdobe Student Ambassadorを任命しました。このアンバサダーはこれまで米国、イギリスを中心に展開しており、英語圏以外の大学で活動を開始するのは立命館学園が初めてです。今後このアンバサダーの学生を中心に、Adobe ExpressやAdobe Fireflyを活用したワークショップの企画運営や、学生の視点から授業や課題でAdobe Expressの活用を提案してもらうような活動を進める予定です」と語る。

 発表会後には、実際にアンバサダーのリーダーを務める学生数人が中心となり、Adobe Expressを活用したワークショップを実施した。ワークショップでは画像生成AIであるAdobe Fireflyも活用しながらチームごとに自己紹介シートを作成したり、SEEDSのキービジュアルを生成したりといった活動が行われた。大分県別府市にあるAPUや、立命館大学の他のキャンパスから参加している学生もおり、オンラインとオフラインを交えた活発な意見交換が実施されていた。

(左)「学びの形を変えていく中で、それにふさわしい空間の形を作っていきます」と語る立命館 常務理事(企画担当) 山下範久氏。
(右)アドビの教育事業本部執行役員本部長 小池晴子氏は「SEEDSの設置はAdobe Creative Campusの中でも立命館さま独自の取り組みです。ここに来るとインスピレーションが湧いたり、コラボレーションのきっかけになったりする活動の場になっていってくれるとうれしいですね」と語った。