紹介するDXサービス:viaPlatz(NTTテクノクロス パブリッククラウドサービス)、SOP簡単作成ツール(パナソニック プロダクションエンジニアリング)、OTRS10(ブロードリーフ)

熟練者の技術やスキルを次世代に継承したい

製造業において“技術”は自社の優位性を高め、他社との差別化を図るための重要な要素となる。自社の技術を守り、事業を継続していくためには、後継者にスキルや知識を伝え、技術を継承していかなければならない。その一方、技術を伝える熟練者の高齢化などが要因となり、技術継承が進まないことが問題視されている。こうした問題を解決するべく、熟練者の技術やスキルを次世代に継承していくための製品を提案したい。

熟練者の高齢化が進む

 日本の製造業において、技術継承の重要性が叫ばれている。高品質な製品を長きにわたって生産していくためには、技術を有する熟練者から若手への技術継承が不可欠だ。その一方、製造業において技術継承を課題の一つとして挙げる声が多い。

 厚生労働省が公表している「令和4年度 能力開発基本調査」の結果によると、製造業の59.5%が「技能継承に問題があると認識している」と回答している。その要因となっているのが、熟練の作業員の高齢化だ。高齢化が進み、定年退職を迎える作業員の割合も増えている。こうした状況の中、若手作業員の育成が急務となるが、時間の制約もあり十分な伝承が行えていないケースが多い。

 また、技術継承の取り組み状況では、「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」と回答した製造業は65.2%にも及んだ。加えて、「退職予定者の伝承すべき技能・ノウハウ等を文書化、データベース化、マニュアル化している」と回答した割合は21.5%だった。

 技術継承の重要性は理解しつつも、技術を継承していくための手段に苦戦を強いられている企業が多いのが現状だ。

説明だけでは伝わらない技術

 熟練の作業員の技術を若手従業員へ教育する際に、紙のマニュアルを活用しているケースがある。しかし、作業員がどこまで理解できているかといった学習状況の把握は難しい。また、作業員から手順を追いながら直接指導を受ける場合と比べ、文字や画像だけでは継承できる技術に限界がある。

 熟練の作業員による技術指導だけでは、技術のノウハウ全ての伝承は難しいともいわれている。伝承される情報の形態には、形や言葉で表せる「形式知」と、ベテランの勘やコツなど言葉では表現しにくい「暗黙知」がある。特に暗黙知はこれまでの経験で培った勘やコツに頼った技術のため、マニュアルやベテランからの指導では継承しきることが難しい。

 こうした課題を解決するのが、熟練の作業員がその場に居なくても、作業方法やコツなどを伝えられる動画マニュアル作成ツールだ。動画によって作業イメージが伝わりやすくなるだけではなく、時間や場所を問わずに学習できるメリットがある。

 今回は、NTTテクノクロス、パナソニック プロダクションエンジニアリング、ブロードリーフに製品を提案してもらった。

2段階認証で安心・安全に動画配信

viaPlatz

NTTテクノクロス パブリッククラウドサービス
初期費用:5万5,000円
11万円/月

企業の動画を守る2段階認証機能

 強固なセキュリティ機能を備えた動画配信システム「viaPlatz」を提案する。viaPlatzは、動画編集の知識や専用ソフト不要で、現場で撮影した動画をWebブラウザー上で簡単に編集し、公開できるシステムだ。習熟が必要な技術伝承のほか、動画配信による社内研修や大学での遠隔授業などさまざまなシーンで活用できる。

 動画の大事なポイントを丸で囲んだり、画像に説明文を入れたりするなどの書き込みが可能で、知識やノウハウを視聴者に分かりやすく伝えられる。また、viaPlatzは動画とスライド資料を連動して表示する機能を搭載している。動画だけでは説明が難しいポイントをスライド資料にまとめることで、内容の理解を深められる。動画とスライドは自由に切り替えられるため、効率良く学習が行える。

 動画視聴後には、理解度の確認テストやアンケートを実施する機能も備えている。社員がどの程度内容を理解したかを確認して、学習効果を把握できる。

 動画配信をするに当たり、限られた社員しか閲覧できないようにするなどの徹底した情報漏えい対策も必要となる。viaPlatzは、強固なセキュリティ機能を多数搭載しているため安心して利用可能だ。ユーザーごとにログインID、パスワード+認証コードによる入力を必要とする「2段階認証」機能を備えており、安全を担保できる。ほかにも、コンテンツごとにユーザーの視聴権限を設定してアクセス制御する「視聴者設定」機能やユーザーのログイン履歴を確認できる「視聴ログ」機能などを用意し、不正ログインや情報漏えいへの対策を徹底させられる。

 viaPlatzは機能強化にも力を入れている。今後は、生成AIを活用したコンテンツ制作に関する機能をはじめ、さまざまなバージョンアップを図っていく予定だ。

誰でも分かりやすい手順書を作成

SOP簡単作成ツール

パナソニック プロダクションエンジニアリング

 文章、静止画、動画を使って視覚的に分かりやすい作業手順書が作れる「SOP簡単作成ツール」を提案する。SOP簡単作成ツールは、撮影した動画を基に、①切り出したい動画の位置を見つける、②ボタンを押下して動画を切り出す、③作業内容と注意事項を記入するという3ステップの簡単操作で手順書が作成できるという“作りやすさ”が特長だ。動画にはコメントテロップや図形などを追加できるため、「ここは両手でしっかり持つ」「後方に注意!」といった映像だけでは伝えづらい要点も的確に分かりやすく伝えられる。

 作成した手順書は、PowerPoint形式で出力されるため、社内だけでなく、顧客や委託先といった社外関係者にも容易に配布できるという“扱いやすさ”もある。また、日本語/英語/中国語に対応した「音声読み上げ」機能を備えているため、外国人労働者に対する作業説明などもスムーズに行える。

 SOP簡単作成ツールは、情報セキュリティの堅牢性を優先し、オンプレミスで提供している。サブスクリプションではなく、買い切り型とすることで追加費用をかけずに長期的な利用が可能だ。

 SOP簡単作成ツールを導入した企業では、動画編集に関するスキルがなくても簡単に手順書を作れるシンプルな操作性などが評価され、1日で現場に浸透したという例もある。SOP簡単作成ツールで仕上げた手順書を活用することで、誰でも同じように業務に取り組めるようになるため、作業の属人化も防げるだろう。熟練技術者の技術やノウハウなどの共有もスムーズに行える。

 今後もSOP簡単作成ツールはさらなる提案活動を進めていく予定だ。医薬系における製造プロセスの保証にも対応できる強力なツールとして提供するべく、同社の製造実行システム「MP-Connect」と連携させて展開していく計画もあるという。

業務をカイゼンして生産性を向上

OTRS10

ブロードリーフ

 製造業の現場における作業改善や生産性向上を支援するために開発されたソリューション「OTRS10」を提案する。製造業の現場では、業務内容やプロセスなどを見直して、現状よりもさら生産性を高めていくための活動のことを「カイゼン」と呼ぶ。そんなカイゼンに役立てられるさまざまな機能を搭載しているのがOTRS10だ。

 OTRS10は、作業動作をビデオで記録し、その映像を基に詳細な作業分析が行える。作業者の動作や移動を細かく記録し、どの部分に無駄が生じているのかを可視化できる。また、作業ごとの時間を正確に測定し、誰が作業を行っても無理のない標準時間を策定する「レイティング」機能を備える。これらの機能によって動作や作業時間の見直しを行うことで、最適な作業フローの構築が可能だ。

 作業分析した結果は、作業手順書や動画マニュアルとしても活用できる。出力形式はPDF、Excel、Power Pointなどに対応している。動画にはコメントやナレーション、テロップなどを挿入できるため、映像だけでは分かりづらいポイントも理解を深められる。

 OTRS10を導入することで、さまざまな業務カイゼン効果を得られる。例えば、自動車メーカーでは、OTRS10を導入して作業者の動作分析や作業手順の標準化を行い、生産ラインでの作業時間を最大30%削減させた。また、OTRS10は国内だけではなく、世界31カ国以上での導入実績がある。新興国における生産性向上やSDGsを支援するプロジェクトに活用されているという。現地の従業員が短期間で作業手順を習得できるように、OTRS10を使った教育プログラムを実施し、品質の安定化と生産性の向上につなげている。

 OTRS10は現場の作業における無駄を排除し、業務の効率化に寄与する。製造業が抱える業務カイゼンに関するさまざまな課題を解決できるだろう。

※価格は全て税込