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世界に一つのコスメを作る凸版印刷の「AIレコメンドベンダー」

世界に一つのコスメを作る凸版印刷の「AIレコメンドベンダー」

2022年04月21日更新

世界に一つだけのアイシャドウパレットをAIで作る

-Beauty Tech- カネボウ化粧品

女性が日常的に行う化粧は、肌の状態や色、顔立ちなどによって適した色味やアイテムが異なる。そうした個々人に最適化された化粧品選びをサポートする手段として、今デジタルの活用が進んでいる。

自販機のような什器でAI診断

 美容業界において“パーソナライズ”が注目を集めている。肌の状態や色、好みなどから最適なスキンケアやメイクを提案するサービスが増えつつあるのだ。一方で、コロナ禍による非接触需要から、肌の状態などを対面でカウンセリングされることに、抵抗感のある消費者も存在する。

 カネボウ化粧品のグローバルメイクアップブランド「KATE」は、ニューノーマル時代の新たなデジタル体験の提案として、AI技術によってパーソナライズされた4色のアイシャドウを自動販売機のように提供する什器「KATE iCON BOX」を店舗に設置し、前述したパーソナライズ化と非接触のニーズに応えている。

 KATE iCON BOXは、自動販売機のような筐体の上部に搭載されたカメラによって顧客の顔を撮影し、AI技術とKATE独自ロジックによる顔の印象分析を行う。分析結果に基づき、その人に最適な4色を組み合わせたアイシャドウパレットとメイク方法を提案するのだ。アイシャドウは診断されたカラーだけでなく、26色から好きな色を選択してカスタマイズすることも可能だ。保護シートには名入れもでき、世界に一つだけのパーソナライズ化されたアイシャドウパレットが手に入る。

「KATEではもともと、LINE公式アカウント『KATE MAKEUP LAB.』内のサービスとして、スマートフォンのカメラで自身の顔を読み取るだけで、パーツ比率を分析して、なりたい顔に変われるメイクメソッドを提案していました」とカネボウ化粧品の親会社である花王の化粧品事業部門 マステージビジネスグループ KATE 国内マーケ担当 松本典子氏は語る。

店頭でしか得られない体験を

 一方で、デジタルに完結していては、それらのツールを使う顧客には限りがある。商品により近い店頭で同じようなわくわくする体験を生み出せないかと考え、凸版印刷に相談したことが、KATE iCON BOXが生まれる契機となった。

 KATE iCON BOXは、2021年9月8日よりマツモトキヨシmatsukiyo LAB 相模大野ステーションスクエア店に設置されて活用がスタートした。2022年3月1日からはココカラファイン東京新宿3丁目店に設置されており、5月9日まで同店舗で活用される予定だ。

 松本氏は「実際に店頭でKATE iCON BOXを利用している顧客層は、友人同士やご夫婦など、誰かと一緒にコミュニケーションを取りながら使うケースが多いようです。従来のLINE診断では出会えなかったお客さまに、新しい体験が提供できたと感じています」と語る。

 KATE iCON BOXによる診断は、KATEがこれまで提供してきたKATE MAKEUP LAB.による診断と比較すると簡易的なものだという。より詳しくパーソナライズ化されたメイクのアドバイスなどを知りたい人へのニーズに応えられるよう、KATE iCON BOXでKATE MAKEUP LAB.への誘導も行っている。「店頭での1回の診断でお客さまとのつながりが切れるのではなく、LINE公式アカウントにつなげることで、KATEとお客さまとのつながりを作る導線を構築しています」と松本氏。

 KATEはデジタルとリアルを掛け合わせた新しいメイク体験を顧客に届けられるよう、今後もさまざまな取り組みを進めていく。

現在ココカラファイン東京新宿3丁目店に設置されているKATE iCON BOX。5月9日まで同店舗で活用される予定だ。KATE iCON BOXは1台のみで、設置場所はKATEのWebサイトで確認できる。1台しかないレアリティの高さも、消費者にとってのわくわく感につながる。

パーソナライズ化された化粧品を
提案するAIレコメンドベンダー

-Beauty Tech- 凸版印刷「AIレコメンドベンダー」

KATEのKATE iCON BOXを開発した凸版印刷は、KATE iCON BOXをベースにした「AIレコメンドベンダー」を開発・販売を進めている。化粧品業界における需要と、他業種への提案可能性を聞いた。

カスタマイズで提案の幅を広げる

 KATEが導入した「KATE iCON BOX」。本製品を開発した凸版印刷は、KATE iCON BOXの仕様をベースに、AI顔分析によるカウンセリング提供を実現した什器「AIレコメンドベンダー」を開発し、2022年1月から本格運用をスタートさせている。

「KATEさまでは、以前からAIとAR技術を活用したパーフェクトという企業のバーチャルメイクツールを活用し、顧客のカウンセリングをデジタルで実現していました。そこで培ったロジックや、KATEさまが25年間培ったメイクのノウハウ、パーフェクトのモジュールを当社で組み合わせ、KATE iCON BOXのソフトウェアを開発しました。ハードウェア設計も当社が行い、店頭で非接触によるパーソナライズメイク提案が可能な自動販売機型什器として開発しました」と語るのは、凸版印刷 情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部 ビジネスプロデュース本部 徳良 銀氏。

 ハードウェアには汎用性を持たせており、AIレコメンドベンダーとして他社に提案する場合はカスタマイズすることで、ファンデーション、口紅といった異なる化粧品の提供も可能になる。

 一方で、KATE iCON BOXを含むAIレコメンドベンダーには現在決済機能は搭載されていない。そのため顧客は、AIレコメンドベンダーでカウンセリングを受けて提案された化粧品を、後ほどレジカウンターで購入する必要がある。AIレコメンドベンダー1台では完結しないため、あくまで“自動販売機型の什器”という位置付けだ。

非接触の接客ニーズにマッチ

 AIレコメンドベンダーは、本体上部のカメラで利用者の顔を撮影し、AI技術によって肌の印象や、顔のパーツ比率を分析する。分析した結果から化粧品提案とメイク方法を合わせて提案する。例えばKATE iCON BOXではアイシャドウの色の組み合わせを、顧客の肌の色や骨格に最適な色味に組み合わせて提案してくれる。オリジナルパッケージへの名入れ機能も搭載されており、化粧品だけでなくパッケージもパーソナライズ化された商品を購入できるのだ。

「KATEさま以外にも、AIレコメンドベンダーに興味を持っている化粧品会社は多いです」と徳良氏。コロナ禍で非接触が求められている中、一時期は化粧品カウンターの美容部員によるタッチアップ(顧客の肌に直接メイクやスキンケアを施す接客)も自粛されていた。現在は再開している店舗も多くあるが、消費者側の非接触による購買ニーズも少なくない。半面、個人に最適化されたパーソナライズメイクの需要が高まっており、そうしたパーソナライズ対応と、非接触による接客ニーズに、AIレコメンドベンダーはマッチした製品なのだ。

 花王の松本典子氏は「KATEは専門の美容部員がドラッグストアなどの店頭に配属されておらず、メイクメソッドの提案が十分に行えていない側面がありました」と話す。顧客とのコミュニケーションを深めるために、LINE公式アカウントであるKATE MAKEUP LAB.によって、顔診断やメイクメソッドの提案を行ってきたが、それを店頭でも生かしたいという思いがあった。実際に店頭で診断して、商品を試してもらう楽しさを体感してもらうことで、店頭で商品を購入する動線をデジタルで作り上げている。そのため、前述したようにKATE iCON BOXで提供する診断はKATE MAKEUP LAB.よりも簡易的にしており、商品を買いに来たついでに診断を試して、楽しみながら商品購入につなげてもらう狙いがある。

「デジタルでは体験できない、リアルな体験を重視しているのがKATE iCON BOXです。この筐体自体が最先端のテクノロジーを内蔵している雰囲気があり、それだけで体験価値が得られます。また店頭に並ぶアイシャドウなど、リアルな化粧品に出会った気持ちの高まりに対して、KATE iCON BOXによるわくわく感で店頭ならではの体験を深掘りしていきたいですね」と松本氏は語る。現在は1台のみの導入だが、顧客からの要望が多ければ導入台数を増やしていくことも検討している。

医薬品の販売にも活用できる

 凸版印刷では、このKATE iCON BOXをベースに開発したAIレコメンドベンダーを、化粧品業界に向けて本格展開を進める。より広いエリアで新たな顧客体験ができるよう展開を進め、2025年までに全国で100台の設置を目指す。

「このAIレコメンドベンダーのカウンセリングによるパーソナライズ対応は、化粧品業界以外にも需要があるでしょう。例えば医薬業界で、お客さまがどのような症状でどういった薬を求めているのか、AIレコメンドベンダーで診断して三類医薬品を提案できれば、ドラッグストアの利便性が向上します。こういった、他業界への展開も視野に入れて、企業さまとの会話を重ねながら新しい体験を作っていきます」と徳良氏。さまざまな場所でAIレコメンドベンダーによる接客が受けられる日は遠くない未来かもしれない。

KATE iCON BOXをベースに開発されたAIレコメンドベンダー。画像はKATE iCON BOXのイメージだが、提案する化粧品などはカスタマイズで変更も可能だ。
AI技術による顔分析からお薦め商品のレコメンドのフロー。カメラで顔をスキャンし、顔の色や特徴点などを基に最適な色味などを提案してくれる。

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