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横河レンタ・リース 松尾太輔氏と菱洋エレクトロ 杉田智也氏、畠中和伸氏がDaaSを解説

横河レンタ・リース 松尾太輔氏と菱洋エレクトロ 杉田智也氏、畠中和伸氏がDaaSを解説

2021年04月07日更新

Next Target of as a Service
as a Serviceの次の狙い所
―Device as a Service、Hardware as a Service…―

システムのクラウド化が進行し、SaaSやPaaS、IaaSといった“as a Service”の利用は一般化した。サブスクリプション契約によって得られるエンドユーザーのメリットは大きく、as a Serviceの選択肢はこれからも広がっていくだろう。次の狙い所としてすでに動きが始まっているのが、PCやビデオ会議システムのas a Service化だ。

Target.1
DaaS
Device as a Service

管理負担ほぼゼロでPCを短期リプレース

PCの新しい提供形態として市場が立ち上がりつつあるのが「DaaS(Device as a Service)」だ。as a Serviceの名称通り、PCが月額課金型のサービスとして提供される。従来のレンタルやリースと異なるサブスクリプションとしての価値はどこにあるのか。すでにDaaSへの取り組みを開始している横河レンタ・リースや菱洋エレクトロへの取材をもとに解説する。

as a Serviceの波がPCにも

 従来まで買い切りのモノで提供されてきた製品を月額のサービスとして提供するのがas a Serviceだ。「所有から利用へ」というキーワードとともにユーザーを拡大させてきた。サービス化による利点は製品の管理の手間が不要になったり、常に最新の機能が利用できるようになったりする点にある。月額のサブスクリプション型で、必要なときに必要な分だけ使える柔軟性も大きなメリットだ。無駄な費用をかけることなく、常に最適なコストでITの運用が可能になる。

 as a Serviceとして提供されるSaaSやPaaS、IaaSなどはクラウドサービスとして導入されているが、国内のクラウドサービス市場規模は2020年度に3兆円弱へと成長し、2024年度には5兆円を超えるという予測がMM総研によって発表されている。政府も「クラウド・バイ・デフォルト原則」の調達方針を発表しており、官公庁や自治体、そして民間企業においてクラウド、つまりas a Serviceの活用が前提となりつつある。

 そうした中で、PCをas a Service化する「DaaS(Device as a Service)」という概念が2~3年ほど前に登場し、具体的なソリューションとして提供する企業が登場してきた。

 ただし、従来のas a Serviceと比較してDaaSはモノ(つまりPC)がユーザーの手元に提供される点が大きく異なる。SaaSやPaaS、IaaSなどはサービスを提供するサーバーなどがクラウドベンダーのデータセンターに設置されており、ユーザーがそうしたサーバーを自社に設置して運用することはない。そのため、DaaSのメリットをユーザーに理解してもらうためには、従来のように製品を買い切る形態や、これまでのリース、レンタルとどう違うのかを明確にする必要がある。

 なお、DaaSについては、DaaSの市場調査を行っているMM総研が次のように定義している。

Device as a Service
・対象ハードウェア
―PC(2in1 タブレットを含む)
・ソリューションの価値
―ハードウェアをクラウドライクに利用でき、好みのデバイスを快適なテクノロジーリフレッシュレート(2?3年)で選び直しても定額利用
―保守・修理・サポートの権利が含まれる
―ハードウェアと一体でソフトウェアサービスを利用

運用をセルフサービス化

横河レンタ・リース
松尾太輔氏

 すでにDaaSの提供に取り組んでいる横河レンタ・リースでDaaS事業を統括している松尾太輔氏(同社 事業統括本部 ソフトウェア&サービス事業部長)は、PCのas a Service化について次のように話す。「モノ自体をas a Service化、サブスクリプション化するのは実は難しいのです。なぜならモノは劣化し、性能が陳腐化していくからです。価値が下がっていくモノに対して月額定額で使用料を払い続けるのは損をした気分になるでしょう」

 SaaSやIaaSなどのas a Serviceはアプリケーションが常にアップデートされ、利用できるサーバーなどの性能も逐次更新されていく。一方、手元にPCが提供されるDaaSは、そうしたメリットを享受しにくい。こうしたデメリットがありつつも、PCをas a Serviceとして提供する価値はどこにあるのか。松尾氏はこう話す。

「従来までPCの管理は企業や自治体などの管理者が最初から最後まで行っていました。いわゆるゆりかごから墓場までです。しかし、この状況は管理者にとって非常に負担が重く、PCの手配や故障対応、ソフトウェアのアップデートなど、大変な労力が費やされてきました。PCをas a Service化するDaaSは、こうした管理者の手間を削減できます」

 松尾氏が説明するように、横河レンタ・リースが提供するDaaSでは、デバイスを管理者がモノとして管理して従業員へ提供するのではなく、個々の従業員がデバイスをサービスとして横河レンタ・リースから受け取ることになる。従業員は自らの意思で好みのデバイスを選択して利用でき、そのデバイスは2~3年に1度程度のサイクルで新しいデバイスに交換可能になる。そのため、従業員はいつも最新に近い環境で業務が行える。DaaSにおいて、as a Serviceの肝でもある常にアップデートの考え方は、デバイスの短期間での定期的なリプレース(アップデート)を、管理者に負担をかけずに効率的に行えるようにする点にあるのだ。

「DaaSの利用によってPC運用のセルフサービス化が可能になります。管理者は契約するだけでよく、PCの選定からリプレース、問い合わせ対応に至るデバイス管理から解放されるのです。従来のレンタルやリースはPCの調達手段のバリエーションにしか過ぎません。デバイスをサービスとして提供するDaaSとは土俵が根本的に違うのです」(松尾氏)

専用ポータルでライフサイクルを回す

 それでは実際にDaaSによってPCの運用がどう変わるのか、横河レンタ・リースが提供するDaaS(現在はトライアルリリース中)を例に俯瞰してみよう。

 横河レンタ・リースのDaaSは、同社がDaaSを提供するために開発した専用のWebプラットフォーム「Cotoka」を中心に構成されている。横河レンタ・リース経由でDaaSを利用しようとするユーザーは、管理者、利用者ともにCotokaにアクセスして、PCのライフサイクルを回していくことになる。そのサイクルは次のようになる。

・アカウント登録
・デバイスの申請
・配送、受領
・自動セットアップ
・利用中のサポート
・更新期限の通知

 管理者は、横河レンタ・リースのDaaS利用の契約後(デバイスのラインアップやリプレースの周期設定なども含む)、Cotokaの管理画面で従業員のアカウントを登録(ID付与)するだけでいい。この後の作業は全て従業員が行うものになる。

 従業員は、Cotokaのポータル画面から利用したいデバイスを申請する。デバイスは、従業員が指定した場所(会社や従業員宅)に直接届けられる。届いたデバイスを従業員が自ら起動させ、ネットワークに接続する。あらかじめ設定されたIDのパスワード入力画面が表示され、パスワードを入力すると、WindowsのAutopilotによってデバイスが職場用として自動的にセットアップされて利用できるようになる。

 その後、管理者によって設定されたデバイス更新期限を迎えると、従業員はデバイスの更新通知を受け取る。そして、新たなデバイスを選択し、同じように従業員が自らセットアップして利用していくサイクルが実現する。使用を終えたデバイスは横河レンタ・リースに返却。一連の流れの中で管理者は、Cotokaの管理画面から従業員のデバイスの利用状況などを逐次確認できる。サポートなども管理者、従業員ともに横河レンタ・リースから受けられる。

「Cotokaを中心に、デバイスの選定、展開、利用、更新というライフサイクルを回せるようになります」と松尾氏はアピールする。

 横河レンタ・リースでは、データをOneDrive for Businessに自動的に保存する「Passage Drive」を組み合わせたサービスを提供しており、これによってデバイスとデータの切り離しも可能になる。デバイスを交換する際のデータ移行の手間が削減できるのだ。

横河レンタ・リースが提供する「Cotoka」によるDaaS 運用イメージを紹介しよう。まずは管理者が管理画面でサービスを従業員に割り当てる。
従業員はCotoka にアクセス。
好きなPC を選択。
配送先や配送希望日などを登録すると、指定日に指定先にPC が届く。
届いたPC を起動させてネットワークに接続。あらかじめ設定されたパスワードを入力。
Windows のAutopilot によってセットアップが進行。
利用できるようになる。
デバイス更新のタイミングがきたら更新通知が表示される。リプレースも従業員が自ら行える。

事例を作って市場を形成

 横河レンタ・リースのDaaSは現在トライアルリリース中だが、今年の上期には本サービスとしてのリリースを目指していると松尾氏は意気込む。「市場自体はまだまだアーリーフェーズです。幸い、さまざまな企業から反応を得ているので、事例をしっかり作っていき、利用メリットなどを伝えていきたいと考えています」

 ユーザー自身が手元でPCをセットアップするためには、WindowsのAutopilotがキーになるが、その点について課題もあるという。「国内企業で利用されているPCの設定は細かい作り込みなどがされていてAutopilotで反映させることが難しい部分もあります。こうしたカスタマイズの文化についても、提供されるサービスやグローバルの標準に合わせてある程度変化させていく必要があるでしょう。そうすれば、これまで管理者が担っていた大変な作業労力を軽減でき、効率的で迅速なデバイスの運用が可能になるはずです」(松尾氏)

 ユーザーに直接デバイスが届けられるという面では、テレワーク環境が普及した現在の状況においてもDaaSの利用メリットは高くなりそうだ。デバイスを受け取るために会社に行く必要がなく、不要な接触も減らせる。多様な働き方に柔軟に対応できるデバイス運用がDaaSによって実現するのだ。

「市場を拡大させるためにも、Cotokaというプラットフォームをさまざまなサプライヤーに利用していただきたいですね」と松尾氏は話す。DaaS提供のために必要な環境としてCotokaを共通プラットフォームとして提供するような構想も松尾氏は持っているようだ。

新事業としてPCのサブスクに挑む

菱洋エレクトロ
杉田智也氏

 菱洋エレクトロは、PC提供における新たな取り組みとしてDaaSに取り組んでいる。半導体関連の販売やIoT・クラウドなどのICTソリューションを提供してきた同社は、顧客ニーズに応じてPCも扱ってきた。そうした中で、新たなチャレンジとしてDaaSの提供に着手した。菱洋エレクトロでDaaSの専任営業を担当している杉田智也氏(同社 ソリューション事業本部 ソリューション第6ビジネスユニット コンピュートビジネス推進グループ エキスパート)はこう振り返る。

「2018年にDaaSというPCの提供形態の情報をマイクロソフトから得ました。売り切りが主体であった当社のPCビジネスにおいて、月額のサブスクリプション型で提供できるDaaSは新しいビジネスチャンスの創出を可能にすると考えました。そこでDaaSの事業化に踏み切ったのです。当社はそれまでPCのレンタルやリースの提供もしてこなかったので、会社として大きなチャレンジになりました」

 2018年からDaaSという新事業に着手した菱洋エレクトロは、2020年の春に「RYOYO DaaS」としてDaaSの提供を開始している。RYOYO DaaSは、業務に必要なPC、保守、サポートなどをまとめて月額課金で提供するサービスだ。選択できるPCには、リモートワーク、在宅ワーク、現場作業向けタブレットなどのカテゴリー別に8機種を用意。上記の基本的なサービスに加えて、自社開発の多店舗経営向け業務指示アプリケーション「WOMS(Work Order Management System)」やMicrosoft 365、SIM&ルーターをオプションで追加できる。

 WOMSは、本部から店舗への業務指示や、店舗からの報告・フィードバックの効率的な管理を可能にする双方向型業務指示ツールだ。「業務指示・連絡」「実施状況確認」「アンケート」「カレンダー表示」「ファイル共有」「組織・ユーザ管理」の機能を備えており、店舗や製造現場での業務指示や伝達事項を確実に伝え、情報共有における負担を軽減させるなど組織力の向上に役立つという。

 RYOYO DaaSとWOMSの組み合わせは、PCの月額課金という新たな提供形態への挑戦だけでなく、自社サービスとのセット提案で売上を拡大させていこうという狙いだ。

ターゲットはSMB、リテール、医療、FA

菱洋エレクトロ
畠中和伸氏

 RYOYO DaaSの販売ターゲットとして想定しているのは、中堅中小企業やリテール、医療、FA分野など。RYOYO DaaSのサービス構築を担っている畠中和伸氏(同社 ソリューション事業本部 ソリューション第6ビジネスユニット コンピュートビジネス推進グループ エキスパート)は次のように考えている。

「設立から60年が経過する当社には中堅中小企業のお客さまが多くいらっしゃいます。情報システム部門の人員が少なかったり、ほかの業務と兼任されている企業も少なくありません。そうしたお客さまにとって、PCの導入から保守、技術サポートまでをまとめて提供できるDaaSは、大きな導入メリットがあるでしょう」

 RYOYO DaaSは、ベースプランとして用意された3年の利用期間だけでなく、半年、1年、2年、4年、5年の期間も選択できる。「PCを買い切りで購入する場合は、PCのリプレースサイクルは5年程度です。同じようなサイクルでDaaSの利用を望むお客さまに対しては4~5年の長期契約のプランが有効でしょう。PCの故障時には無償で代替機を提供するため、故障率が高まる4年目以降の利用も安心です。一方、とりあえずテレワークなどに対応したいというお客さまには、半年や1年の短期契約のプランを用意しています」と畠中氏はアピールする。

 RYOYO DaaSはサービスの開始から1年程が経過する。DaaSというサービス自体がまだ黎明期にあるため、手探りが続いていると杉田氏は明かす。「サービス開始当初は、PCや保守・サポートと合わせてMicrosoft 365もセットで提供するプランをベースにしていました。しかし、オーバースペックだという声をお客さまからいただくこともありましたので、Microsoft 365はオプションにして、エディションなども選択できるようにしたのです」

 PCをサブスクリプション型で提供するDaaS市場は、産声を上げてまだ間もない。しかし、PCの導入においてもas a Serviceのメリットを享受したいというユーザーは少なくないだろう。そうしたユーザーに対する選択肢として、DaaSは適宜変化しながらあるべき姿に着地していきそうだ。

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