企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上で、最も保守的な領域の一つが契約業務である。長年続いてきた「紙と印鑑」の慣習は根強く、これを乗り越えなければ真の業務効率化は実現しない。契約のデジタル化において企業がまず確保すべきは、安全性と法的妥当性だ。世界180カ国以上で利用されるドキュサインの電子署名サービス「Docusign eSignature」は、その要件を満たす選択肢として存在感を高めている。

電子契約の普及と現状
残る紙文化と導入格差

 物理的な制約を排し、ビジネスの速度を上げる電子契約。しかし、実際に日本のビジネス現場では今、どこまでデジタル化への切り替えが進んでいるのだろうか。ドキュサイン・ジャパン ソリューション・コンサルティング プリンシパル・ソリューション・コンサルタント 田邉真一氏は電子契約の導入状況について、現在の立ち位置を次のように分析する。「BtoB、BtoC共に普及はかなり進んできました。4〜5年前まではNDA(秘密保持契約)などの比較的シンプルな書類から始める企業が多かったのですが、現在は売買契約や雇用契約、さらには取締役会の議事録まで、非常に幅広い類型で使われ始めています。しかし、全体の8〜9割が電子化されているかというと、決してそんなことはありません。先進的な企業でもまだ半分程度は紙が残っており、活用できる『ホワイトスペース』は依然として広いのです」

 電子契約の普及が進む一方で、浸透の度合いは業界や地域によって濃淡がある。実務の最前線で感じるデジタル化の壁について、ドキュサイン・ジャパン パートナーアライアンス 常務執行役員 星野光一氏は現場のリアルな状況を次のように補足する。「地方や特定の業界では、いまだに『大事な契約だからこそ紙で』という根強い慣習を感じる場面があります。電子契約の安全性に対する信頼が、社会の隅々まで浸透しきっているわけではないのです。また、トップダウンで号令が出た企業は導入が早いですが、現場任せのボトムアップでは、部署によって利用率に大きな開きが出てしまうのが現状です」

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ドキュサイン・ジャパン パートナーアライアンス 常務執行役員 星野光一
ドキュサイン・ジャパン ソリューション・コンサルティング プリンシパル・ソリューション・コンサルタント 田邉真一

世界標準の信頼と実績
厳格な法規制への適応力

 こうした現場の心理的・慣習的なハードルとは対照的に、国が進める「ルール」の整備は着実に加速している。かつては書面での交付が義務付けられていた領域も、相次ぐ法改正によってデジタル化への追い風が吹き始めた。

 法制度の面では、2022年の「宅地建物取引業法」の改正や2023年の「特定商取引法」の改正により、不動産取引や訪問販売での電子化が解禁された。これにより、これまで紙のやりとりが主流だった個人向け(BtoC)の契約シーンにもデジタル化の波が押し寄せている。こうした新たな領域への挑戦には、法的な妥当性やなりすましリスクへの不安がつきまとうものだろう。そうした企業の懸念を払拭し、ビジネスを安全かつスピーディーに進めるための強力なインフラとなるのがドキュサインの電子署名サービス「Docusign eSignature」である。

 Docusign eSignatureは、単に署名をデジタル化するだけでなく、厳格な日本の法規制にもスムーズに適応できるよう設計されている。実務で避けて通れない「電子署名法」や「電子帳簿保存法」についても、Docusign eSignatureであれば十分に対応が可能だ。「法解釈を過度に厳格に捉えて運用のハードルを上げるのではなく、信頼できるツールを使い、まずは導入に踏み切ることが重要です」(田邉氏)

 電子契約における国内法への適応は、今や標準的な要件といえる。その上で、自社の事業規模や取引先の広がり、さらにはシステム連携といったビジネスの拡張性を見据えたとき、製品選びの基準はグローバルという視点を含めた多角的なものへと進化していく。

 Docusign eSignatureは、世界180カ国以上で展開され、10億人を超えるユーザーに利用されている。この広範な実績が、世界中どこでも安心して使える信頼の証となっているのだ。また、デジタルでの契約における本人確認が厳格化されるなどの国内法規制の変化にも柔軟に対応できることから、海外のみならず幅広い日本企業で活用されている。

盤石な基盤と高い拡張性
全社を支える契約プラットフォーム

 では、これほどまでに幅広い国と地域で、Docusign eSignatureがなぜ選ばれ続けるのか。それは、単なる署名機能にとどまらない「安定性」「拡張性」そして「信頼性」にある。「Docusign eSignatureは24時間365日稼働しており、定期メンテナンスによるシステム停止がありません。過去90日間の稼働率は99.9%を誇ります。また、1,000以上のシステムとの連携部品が既存で用意されており、APIを利用すれば自社開発システムともシームレスにつなぐことができます」と田邉氏はその技術的優位性を語る。

 信頼性に関して、星野氏は大企業やグローバル展開における世界共通のビジネスインフラとしての価値を強調する。「海外企業との取引では、知名度の低いドメインから署名依頼を送っても、相手方の法務チェックではねられてしまうことがあります。Docusign eSignatureであれば、世界中の企業がすでに自社の『ホワイトリスト』に入れているため、摩擦なく契約が進みます。また、組織構造に基づいた高度なアクセス権限管理ができるため、一部門の『部門単位の個別ツール』としてではなく、全社的な『契約プラットフォーム』として運用が行える設計になっています」(星野氏)

 セキュリティ面でも、ISO認証などの国際基準を満たすだけでなく、内部不正を防ぐ「振る舞い検知」や、SMS・マイナンバーカードを用いた高度な本人確認機能を備えている。これにより、なりすましやヒューマンエラーのリスクを最小限に抑え込んでいるのだ。

 このように「安全なデジタル基盤」が確立されたことで、企業が次に注力すべき課題は、署名そのものの効率化から、契約業務の在り方そのものへと移りつつある。

 今後の展望について、同社が強調するのは、単に「署名」をデジタル化して終わりにするのではなく、契約に関わるプロセス全体を最適化する視点だ。その鍵となるのが、契約の準備から締結、その後の活用までを網羅する“契約ライフサイクル全体のデジタル化”である。田邉氏は「これまでは『ハンコの代わり』としての電子署名が主眼でしたが、今はその前段の契約書準備プロセスや、後段の管理・分析・活用を一気通貫でデジタル化するニーズが高まっています。背景にあるのは、契約情報の『不透明さ』への危機感です。紙の書類をキャビネットやPDFデータとしてオンラインストレージに眠らせたままでは、自社がどのような条件で、誰と、何件の契約を締結しているのかを、経営側がリアルタイムに把握することは困難です。こうした情報を即座に検索・活用できない状態のまま放置することは、コンプライアンス対応の遅れや意思決定の停滞を招く経営リスクとなります。デジタル化は、単なる効率化の手段ではなく、企業のガバナンスを支える不可欠な基盤といえます」と説明する。

 こうした市場の変化を見据え、ドキュサインでは単なる電子署名サービスの提供を超え、契約の全プロセスを一気通貫で支えるプラットフォームである「Docusign IAM」の展開を強化している。それは、日本企業の契約業務を世界標準へと引き上げるための挑戦でもある。「欧米では、契約の準備から署名、活用までを一つのプラットフォームで行うのが当たり前です。契約データはビジネスのノウハウが詰まった資産であり、これを再利用できないことによる経済的損失は計り知れません。日本は今、まさにこの領域で世界に追いつくべき局面にあります」と星野氏は力強く語った。