ハイブリッドマルチクラウド化を推進し
顧客のビジネスのアジリティを上げていく

今年6月13日、ニュータニックス・ジャパンのコーポレートバイスプレジデント 兼 代表執行役員社長に金古 毅氏が就任した。金古氏はレッドハットの副社長執行役員 パートナー・アライアンス営業統括本部長 兼 事業戦略室長としてオープン・ハイブリッドクラウド戦略を推進したほか、日本マイクロソフトではパートナービジネス開発やOEMビジネスなど、同社のクラウドビジネスの成長をけん引した実績を持つ。グローバルのトップ企業のトランスフォーメーションに貢献してきた金古氏はニュータニックスのトランスフォーメーションをどのように導き、成功させるのだろうか。

ソフトウェアをプラットフォームにして
そこから新しいビジネスモデルを作る

ニュータニックス・ジャパン合同会社
コーポレートバイスプレジデント
兼 代表執行役員社長
金古 毅 氏

編集部■これまでチャネル、クラウド、ソフトウェアライセンス、OEMなど、テクノロジー分野のビジネスで20年以上の豊富な経験をお持ちですが、最初からIT業界で活躍されていたのですか。

金古氏(以下、敬称略)■ありがとうございます。実はIT業界に携わる前は総合商社で異なる業界の仕事をしておりまして、当時はIT業界に興味はありませんでした。

編集部■それは意外ですね。どのようなきっかけでIT業界に携わったのですか。

金古■当時、日本マイクロソフトで仕事をしてほしいと声を掛けてくださった方が、日本マイクロソフトはソフトウェアを媒介にして新しいビジネスモデルを作る仕事をしていると説明してくれました。

 何かをプラットフォームにしてそこからビジネスモデルを作るという仕事において、プラットフォームがソフトウェアというのは、当時は新しい発想でしたし今までに私が経験したことのない挑戦ができると思い、日本マイクロソフトに入社しました。この感覚で20年間、今もIT業界で仕事をしていますし、私のモチベーションになっています。

編集部■その後、レッドハットを経てニュータニックス・ジャパンに移籍されました。いずれもインフラ系のソフトウェアベンダーです。両社のビジネスにどのような魅力を感じられていましたか。

金古■日本マイクロソフトではいろいろな仕事を経験しましたが、入社して10年ほどたったときに新しい挑戦をしたいと考えていました。そんなときにクラウド事業でパートナービジネスを推進する仕事を任されました。クラウドビジネスではそれまで付き合ったことのないパートナーさまや持ったことのないタイプの部下と仕事をすることになり、社内であっても新しい挑戦ができるとわくわくしました。

 当時、マイクロソフトにおけるクラウド事業は同社のビジネスのトランスフォーメーションでした。その後、レッドハットでもLinuxからOpenShiftなどを擁するオープン・ハイブリッドクラウド戦略というトランスフォーメーションに携わり、目標を達成することができました。現在レッドハットは次のトランスフォーメーションにステップアップしています。

 そしてニュータニックスでも現在、3層構成の従来型データセンターアーキテクチャからHCIのテクノロジーをベースとしたハイブリッドマルチクラウドプラットフォームへとお客さまのインフラのトランスフォーメーションを推進し、新しいビジネスモデルの創造を支えています。 ニュータニックスでは、これまでお世話になってきたパートナーさまやお客さま、さらに新しいたくさんのお客さまのビジネスに大きな貢献ができると期待しています。

アプリのデリバリースピードを上げて
ビジネスのアジリティを上げていく

編集部■ニュータニックス・ジャパンでは日本の企業にどのような貢献をしたいと考えていますか。

金古■そこはレッドハットとニュータニックス・ジャパンとで感覚は一緒なんです。日本のお客さまのビジネスのアジリティを上げていくこと、そのために必要なパートナーさまと一緒にビジネスを進めていく、この二つに使命を感じています。

 外資のIT企業にいると日本のお客さまのDXが世界から遅れていることを痛感します。ビジネスのアジリティを上げるには、ビジネスに必要なアプリケーションのデリバリースピードを上げなければなりません。ニュータニックスはその部分でお客さまに貢献できます。さらにパートナーさまとの協業によってお客さまのDXを包括的にお手伝いすることができます。

編集部■日本の企業のDXを加速させるにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

金古■DXを推進するために必要なソリューションにおいて、その選択肢の自由を提供する必要があります。各ベンダーはいろいろなソリューションを持っていますが、お客さまがビジネスをアジャイルに進めていくために、適材適所で選択できるサービスを提供するべきです。その仕組みを実現するプラットフォームを作っていくことがニュータニックスの役割となります。

 以前、アジャイルな仕組みはパブリッククラウドで実現するものという風潮がありました。しかしアジャイル(開発)はパブリッククラウドでなくても実現可能です。逆にパブリッククラウドに限って話を進めてしまうと、それがお客さまのDX推進を阻害する要因となる恐れがあります。

 クラウドはあくまでもオペレーティングモデルですから、場所を問わずハイブリッドで、マルチクラウドで、どこでも使えることがお客さまのDXを促進する上で大切な要件となります。

 ニュータニックスは私がジョインする少し前に、従来から提供してきた製品ポートフォリオのパッケージングを大幅にシンプル化してハイブリッドクラウド、マルチクラウドにおいて、場所を問わず適材適所でアプリケーションが使える環境を実現する「ハイブリッドマルチクラウドプラットフォーム」を構成する製品をお客さまに提供しています。

 新しいNutanix Cloud Platformは、クラウドインフラとなるNutanix Cloud Infrastructure(NCI)とクラウド管理のNutanix Cloud Manager(NCM)、ユニファイドストレージのNutanix Unified Storage(NUS)、そしてデータベースサービスのNutanix Database Storage(NDB)、エンドユーザーコンピューティングの五つのコンポーネントで構成されています。

 これまでのニュータニックスのプラットフォームの用途は、VDI やインフラアプリケーションが中心でした。ここ4 年間でニュータニックスのプラットフォームの性能はほぼ6倍に高まりました。データを中心とした経営やビジネス展開がお客さまに求められていることもあり、データベース管理にも力を入れています。

 データを中心に置いてニュータニックスのテクノロジーを生かし、オンプレミスでもクラウドでも透過的に違和感なく使えるポートフォリオを提供しています。すでにデータベースやデータウェアハウス、SCM系アプリケーション、さらにはAI・機械学習といった用途でも導入・利用が着実に拡大しています。

日本独自の上流工程コンサルサービスを提供
パートナーエコシステムの拡充で顧客を支援

編集部■日本の企業では製造業などオンプレミスにこだわっている顧客がまだたくさんいます。そうした企業に対してどのようにしてハイブリッドマルチクラウド化へ導くのですか。

金古■お客さまのハイブリッドマルチクラウド環境を実現するためには、技術とプロセスの二つの側面で、クラウドシフトへの支援が欠かせません。技術面の支援の一環として、ニュータニックスでは無償で利用できるクラウド移行ツールである「Nutanix Move」を提供しています。

 Nutanix Moveを使ってリスクとエラーを回避しながら自動で他社の仮想化環境やクラウド環境からNutanix Cloud Platform へ移行することで、コストと期間を抑えることができます。

 ツールに加えてクラウド移行を支援するコンサルティングサービスもご提供することで、クラウドオペレーティングモデルを実現しようとされるお客さまをご支援します。

  Nutanix Cloud Platformでクラウドオペレーティングモデルが実現できるのはオンプレミスの環境だけにとどまりません。NutanixベースのプライベートクラウドをシームレスにAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureへ拡張できるNutanix Cloud Clusters(NC2) も提供しています。NC2 によりプライベートクラウドで稼働するNutanix Cloud Platformが提供するさまざまなクラウドサービスをシームレスに管理されたハイブリッドクラウド環境で利用できます。

編集部■ハイブリッドマルチクラウド環境の実現を促進するために、お客さまをサポートするサービスも強化していくのですか。

金古■その通りです。ビジネスのアジリティを上げていくためにはレガシーから新しいアーキテクチャへ移行をしていただかなければなりませんが、その取り組みの中でお客さまに移行を促進するだけではなく、移行が完了するまで、さらに移行後の運用も含めて長期的に支援していくことが求められます。

 そこで「クラウドエコノミスト」というスペシャリストをニュータニックス・ジャパンに新設しました。クラウドエコノミストは日本固有の財務や税務、商習慣に精通した人材で、ハイブリッドマルチクラウド化を推進する中で、どういうパターンで実現するのが経済的合理性があるのかを、原則無償で分析・計算してお客さまに提示します。

 さらに、例えばデータベースサービスを提供する場合、お客さまのビジネス上の課題を解決するところから支援しなければ新しいソリューションを導入してもその効果は発揮されません。そこで上流工程に近いところでプロアクティブにサポートするコンサルティングサービスも提供します。

 これは日本独自の取り組みで、具体的には「NDB早期導入支援パッケージ」と「NC2 on AWS早期導入支援パッケージ」、さらに9月末から「Nutanix Self-Services早期導入支援パッケージ」の提供も始めました。こうした日本独自のサポートモデルがどのように成功していくのか、ニュータニックスのグローバルからも期待されています。

編集部■顧客のハイブリッドマルチクラウド化の推進に向けてパートナーとの連携についてお聞かせください。

金古■お客さまには多様なクラウドジャーニーがあります。それを支援するにはパートナーエコシステムの拡充が不可欠です。従来のSIパートナーさまは当社にとって引き続きコアとなりますが、当社のポートフォリオがクラウドへ大きく動いており、またお客さまの需要もアプリケーション領域で高まっています。こうしたお客さまの需要に応えるために、今後はクラウドネイティブなパートナーさまとの連携も強化していきます。

 同時に営業・サービス部門の体制を金融、製造、流通、サービスプロバイダー、メディアエンターテインメント、パブリックセクターに再構成し、各業界特有の課題解決に向けた提案も強化していきます。

 このように当社には明確なビジョンがありますが、一方でお客さまに届けるリソースは限られています。またポートフォリオを増やしていますが、当社が提供するのはインフラに近い部分のソリューションです。その上のレイヤーのソリューションを持っているパートナーさまとジョイントソリューションを作ることが、お客さまの課題解決への貢献につながります。

 ダイワボウ情報システム(DIS)さまは全国のパートナーさまとつながっており、パートナーさまとつながるお客さまのニーズも熟知しています。またDISさまのグループにはソリューションとサービスを提供するディーアイエスサービス&ソリューションさまもいらっしゃいます。パートナーさまと自社のリソースを擁するDISさまを通じてお客さまが求めるジョイントソリューションを作り、お客さまに届けたいと期待しています。