AWSジャパンが推し進める
地域経済の飛躍に向けた新プログラム

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は8月17日、地域経済の自立的成長を支援する新プログラム「AWSジャパン地域創生支援プログラム」(以下、LEAP by AWSジャパン)を発表した。クラウドや生成AI、AIエージェントなどの最新技術の活用を支援するとともに、デジタル人材の育成や地域データの活用も包括的に後押しする。LEAPは「Local Economy Acceleration Program」の頭文字であり、「飛躍」を意味する英単語に由来する。今回は、同日に開催された記者説明会の内容を基に、プログラムの概要を紹介する。

約8割の経済活動は地域に集中
AWSジャパンは地域への支援を継続

AWSジャパン
常務執行役員
広域事業統括本部
統括本部長
原田洋次氏

 AWSジャパンは「日本のために、社会のために」というスローガンを掲げ、2011年から2027年までに累計3.8兆円を投資する計画を進めるとともに、2011年には東京リージョン、2021年には大阪リージョンを開設するなど、日本市場への取り組みを強化している。

 日本では、県内総生産の72.6%、総人口の81.7%、企業数の79.7%が地域に集中しており、人口や経済活動の約8割を地域が支えている。こうした状況を踏まえ、AWSジャパンは、地域の活性化なくして日本経済の活性化は実現できないとの考えの下、さまざまな取り組みを展開してきた。2022年には、地域社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)や持続可能な地域創生を目指して全国を巡る対面型イベント「デジタル社会実現ツアー」を開始。翌2023年には、新潟県や北九州市、大阪市、つくば市との連携協定締結を通じて、自治体との協力体制を強化した。さらに2024年には、広島県で地域企業とのデータコラボレーションワークショップを初開催したほか、新潟県における産官学金連携イベントを実施。2025年には組織横断チームによる推進体制を構築するなど、支援の輪を広げている。

 AWSジャパンの地域創生ビジョンについて、同社 常務執行役員 広域事業統括本部 統括本部長 原田洋次氏は次のように語る。「産学官金を有機的に結び付け、当社が提携できる仕組みや、お客さまに実際に活用していただけるプログラムや素材を提供していきます。そのビジョンを実現するのが、地域創生支援プログラム『LEAP by AWSジャパン』です」

AWSジャパンの地域創生ビジョン。同社は、国・自治体、金融機関・AWSパートナー、スタートアップ・地場企業、教育機関を有機的に結び付け、提携できる仕組みやプログラム、素材を提供することで、地域内での持続可能な価値創造のサイクル構築を支援する。

地域経済の成長を加速化させる
四つの支援メニュー

 LEAP by AWSジャパンは四つの支援メニューで構成されている。一つずつ見ていこう。

LEAP by AWSジャパンの四つの支援メニューは、AWS ジャパンがこれまで複数の部門で個別に進めてきた取り組みを、一つのプログラムにまとめたものだ。

 一つ目が、地域企業向けのAI/クラウド体験・導入支援だ。「AWS クレジット」を最大5万ドル分提供し、PoCから本格運用までに必要となるコストを資金面から支援する。また、AWSジャパンやパートナー企業が全国各地でAIエージェントの体験イベントやハンズオンセッションを開催し、企業規模や業種を問わず、「Amazon Q」「Kiro」などのAIエージェントに実際に触れられる機会を提供する。さらに、体験から検証、本番導入までを一貫してサポートすることで、AI活用の定着を後押ししていくのだ。

 二つ目が、パートナー企業向けのAI・クラウドスキル強化支援だ。AWSジャパンは、既存のパートナー企業である「AWS 地域創生トレーナー」と連携し、地域のITサービス企業に対して技術力や提案力の向上を支援する。具体的には、AWS認定資格の取得に向けた技術研修やクラウド提案に関する実践トレーニングを提供するほか、トレーナー企業による伴走支援を実施する。さらに、AWSパートナー認定における「セレクトティア」以上の取得を後押しすることで、地域におけるクラウド人材と支援企業の裾野拡大を目指している。また、一定の要件を満たした企業については、AWS 地域創生サポーターとして認定し、地域におけるAI・クラウド活用の担い手としての活動を後押しする。
 本プログラム発表時点でのAWS 地域創生トレーナーには、プログラム開始時点でダイワボウ情報システム、クラスメソッド、NHNテコラスの3社が参画している。いずれもAWSパートナーとして豊富な実績を持ち、トレーニング事業や中堅・中小企業向け支援に強みを持つ企業だ。

 三つ目が、教育機関および学生向けの地域AI/クラウド人材育成だ。AWSジャパンは、学生が実践的なスキルを身に付けられる学習機会の提供に力を入れている。その一環として、Kiroを活用した開発トレーニングや、地域課題の解決をテーマにしたハッカソン形式のビジネスコンテストを実施している。AIやクラウドを活用しながら課題解決に取り組むことで、次世代のデジタル人材の育成を支援する。
 また、AWSが提供する学習プラットフォーム「AWS Skill Builder」も活用できる。900を超える無料のオンラインコースを用意しており、学習者は自分のペースでクラウドやAIに関する知識を習得できる。さらに、教育機関向けには無償の学習プログラム「AWS Academy」を提供。各教育機関は自校のカリキュラムにクラウドやAIの学習コンテンツを組み込み、実践的なデジタル人材の育成に役立てることが可能だ。
 加えて、AWSのユーザーコミュニティ「JAWS-UG」も整備している。JAWS-UGは北海道から沖縄まで全国60以上の支部を展開しており、学習や情報交換の場を継続的に提供している。人材育成にとどまらず、学び続けられるコミュニティとして地域への人材定着を後押しする基盤にもなっている。

 四つ目が、主に自治体や地方銀行向けの地域データ活用支援だ。AWSジャパンは、データコラボレーションサービス「AWS Clean Rooms」を活用し、組織や企業が自社データを外部に開示することなく、相互のデータを組み合わせて分析できる環境を提供する。これにより、自治体や金融機関、地域企業などが組織の垣根を越えて連携し、新たな価値創出につなげることを目指している。
 その取り組みとして、データ活用をテーマとしたコラボレーションワークショップを開催。参加者が地域課題の解決に向けたアイデアを創出できる場を提供するだけでなく、ワークショップで生まれたアイデアの実装に向けて、クラウドへのデータ移行や、分散したデータの統合・整備を支援し、データを活用できる基盤づくりを後押しする。加えて、整備・蓄積したデータをAIエージェントで活用できるように支援を行い、地域におけるデータドリブンな意思決定や新たなサービス創出の実現を目指している。

 原田氏は、「LEAP by AWSジャパンでは、年間を通じて各支援メニューを提供しながら事例や知見を蓄積し、その成果をデジタル社会実現ツアーで共有していきます。また、ツアーで得られたフィードバックをプログラムにも反映します。そこで終わるのではなく、各地域へのフォローアップを継続しながら全国を回り、AIやDXの取り組みをさらに加速させていきます」と意気込みを語った。

地域創生を支える
二つの顧客事例

BSNアイネット
上席執行役員
成長戦略室長
坂田源彦氏

 本記者説明会では、BSNアイネットとsoraプロジェクトの事例も紹介された。

 BSNアイネットは、新潟県を拠点に全国へITソリューションとデータセンター事業を展開する企業だ。同社 上席執行役員 成長戦略室長 坂田源彦氏は、産学官金をつなぎながら地域活性化に取り組んでいる。その中心となるのが、新潟最大級のイノベーション拠点「NINNO」だ。新潟駅南口近くに位置し、2026年7月時点で54の民間企業や行政機関、大学などが参画している。AWSジャパンも参加し、地域のデジタル化を後押ししている。また、同拠点を中心に、行政や民間企業のデジタル施策を集約した滞在型イベント「LAST NIIGATA」も開催しており、参加者の交流を促進する場として機能している。

 新潟県は、経済産業省が定める「DX認定」の取得数で全国トップクラスを誇るなど、デジタル活用に積極的な地域として知られる。BSNアイネットでは、その先にあるAX(AIトランスフォーメーション)の実現に向けてAWSとの協創を進めている。2026年6月には第四北越銀行との共催で「地域データ活用・データコラボレーションワークショップ」を開催し、小売業や製造業、自治体、ヘルスケア分野など幅広い関係者が参加した。さらに、BSNアイネットは国の重点交付金を活用した「新潟県AI活用推進ラボ事業」の運営も担っており、地域企業が抱える課題とAIベンダーのマッチングやPoCの推進を通じ、産官学金連携を具体的な成果創出へとつなげている。

 坂田氏は、「新潟では3~5年ほどかけて産官学金連携の基盤を築いてきました。その上にLEAP by AWSジャパンが加わることを非常に心強く感じています。AWSジャパンさまが持つ最新のAI・クラウドに関する知見と、地域企業や自治体が抱える現場の課題を結び付けることで、新潟のAXをさらに加速させていきたいと考えています」と、LEAP by AWSジャパンへの期待を寄せた。

soraプロジェクト
代表取締役
樋口裕貴氏

 一方、福岡県筑紫野市を拠点とするsoraプロジェクトは、約400人規模でアウトバウンド型コールセンター事業を展開している。同社は三つの課題に直面していた。

 一つ目が、人材確保の難しさだ。周辺地域にはコールセンターが多く存在し、人材獲得競争が激しいため、オペレーターの採用が容易ではない。限られた人員で成果を上げるためには、生産性向上が不可欠だった。二つ目が、応対品質のばらつきだ。経験やスキルによってベテランと新人の成績に大きな差が生じ、品質の平準化が課題となっていた。三つ目が、オペレーターへの負荷集中だ。架電前後の準備や記録作業などの定型業務に時間を取られ、本来注力すべき顧客対応に十分な時間を割けない状況にあった。

 こうした課題の解決に向け、同社は生成AIとクラウド技術の活用を進めている。久留米工業大学との産学連携により、音声データ活用に関する共同研究を実施。現在はローカル環境で研究を進めているものの、今後はAWSクラウド上への実装も視野に入れている。

 またAWSが公開している、生成AIを安全に業務へ活用するためのビジネスユースケース集「Generative AI Use Cases(GenU)」を活用し、自社向けAIエージェントの開発も進めている。大量のマニュアルやトークスクリプト、過去の応対記録をRAG(で統合し、オペレーターからの問い合わせに対して迅速かつ的確な回答を提示できる仕組みの構築を目指しているという。

 今後について、soraプロジェクト 代表取締役 樋口裕貴氏は、「コールセンター運営で培ったノウハウとAI技術を組み合わせ、サービスとして外部企業へ提供していきたいです。AIに定型業務を任せ、人は人にしかできないコミュニケーションに集中する。そんな新たな働き方のモデルを地方から発信していきたいですね」と語った。