アイリスオーヤマといえば、どのような事業を思い浮かべるだろうか。食品やヘルスケア、ロボティクス、空間ソリューションなど幅広い分野で強みを持つ同社は、家電事業にも進出している。
その中でもデジタル家電は、現在伸びしろがある分野だという。モニターやタブレット、バッテリーといったアイリスオーヤマのデジタル家電群は、一体どのようなコンセプトで開発され、いかなる強みを持っているのだろうか。
本記事ではその詳細に迫っていく。

幅広いジャンルで事業を展開
2019年からデジタル家電にも本格参入

 アイリスオーヤマは、現会長の大山健太郎氏の父・大山森佑氏が、プラスチック製品の下請け町工場である大山ブロー工業所を創業したところから歴史が始まる。そこから顧客や社会のニーズに対応しながら事業が広がり、今では食品やヘルスケアなどの分野を持つBtoC事業、ロボティクスや空間ソリューションなどを展開するBtoB事業と、幅広いジャンルで企業活動を行っているのだ。

 同社の家電事業への本格参入は、2009年に始まった。そして2018年には4K対応テレビ「LUCA」シリーズを発売し、2019年にはデジタル家電事業に本格参入している。

 アイリスオーヤマ 研究開発本部 デジタル家電開発部 部長 是常彰人氏は、同社の家電事業について次のように語る。「家電事業は今、当社の中でも大きな売り上げ比率を占めています。その中でもデジタル家電は、まだまだ伸びしろがある分野だと考えています」

 テレビから始まったデジタル家電は、現在ではモニターやタブレットの開発・販売も行っている。是常氏は続けて、同社がモニター・タブレット市場に挑戦した理由をこう話す。「当社がデジタル家電事業に本格参入した2019年前後、日本のテレビブランドの撤退や再編が進んでいる時期だったことが背景にあります。そうした中でデジタル家電のカテゴリーを増やすために、モニターへ挑戦しました。またもう一つの理由として、当社のグループ会社であるアイリスチトセが、LED照明やオフィス什器を含めた空間のトータル提案を行っていたことがあります。その中でモニターも持っていた方が、よりシナジーが生まれると考え、参入を決めました。テレビから始まり、そこから親和性の高いモニターへと移っていった形です」

 そしてタブレット市場に挑戦した理由を、次のように説明する。「スマートフォンやPCの利用が当たり前になる中で、タブレットはなかなか普及していきませんでした。そのためこれから多様化が進む中で、利用シーンを創出すればタブレットはさらに広がると考え、参入しました」

 また是常氏は、バッテリーもデジタル家電で扱っていると語る。「バッテリーにデジタル家電のイメージを持つ方は、少ないかもしれません。しかし、タブレットの中にもバッテリーは入っているのです。業界動向を調査したり、タブレットのバッテリーにおける安全な制御方法を調べたりする中で、バッテリーを安全に使う知見がたまりました。それを生かして、バッテリーの開発を始めました」

アイリスオーヤマ 研究開発本部 デジタル家電開発部 部長 是常彰人

顧客の利用シーンの拡大や
安全性の高い製品の提供を目指す

 是常氏は、同社のモニター・タブレットの市場概況について以下のように話す。「モニター市場は横ばいですが、当社の出荷台数は着実に増えています。一方タブレット市場は、普及率は増えつつあるものの、まだいろいろと見ないといけないと思っています。そうした中で当社は、知名度が上がってきて、出荷台数がかなり伸びている状況です。利用シーンの拡大が行えれば、さらにお客さまに製品を届けられると考えています」

 では同社は、具体的にどう製品を広めていくのだろうか。是常氏はまずモニターについて、その考えをこう語る。「モニターについては、マルチディスプレイがより拡大すると思っています。しかし、いたずらにマルチディスプレイにするのではなく、どのようなマルチディスプレイ環境をお客さまに提供すればよいか考えているところです。当社のマーケット調査で、マルチディスプレイ環境に移った人は、モニターを1枚のみに戻せないことが分かっています。ダイワボウ情報システム(DIS)さまとうまくソリューション提案ができれば、マーケットが広げられるのではないかと感じています」

 続けて是常氏は、タブレットの製品展開を次のように話す。「タブレットも、利用シーンを拡大していこうと考えています。現在は10インチが主流だと感じていますが、15.6インチのタブレットであれば、A4の資料を等倍できます。そして12.6インチであれば、B5の資料を等倍可能です。そのため現在市場の中心になっているものよりも、一回り大きなモデルをメインに持っていくことで、顧客の利用シーン拡大につながるのではないでしょうか」

 さらにバッテリーの展開についても、是常氏はこう触れる。「バッテリーは、最近発火のニュースが増えています。飛行機内の持ち込みも個数が制限されるなど、安全性について世間で叫ばれている状況です。タブレットに積まれているバッテリーと、モバイルバッテリーの電池が同じ種類である以上、重要なのは設計面だと思っています。今後も容量面などを考えながら、より安全な製品を出したいですね」

SRGの開発コンセプトを基に
顧客が欲しいものを開発していく

 是常氏は製品の展開を語るに当たり、同社の開発方針を次のように説明する。「アイリスオーヤマは製品開発のコンセプトに、『Simple(機能)・Reasonable(価格)・Good(品質)』(SRG)と『なるほど』を掲げています。SRGのバランスを重視して開発しているため、お客さまに安全で日常使いしやすく値ごろなものを届けることを目指して、使用シーンにおいて必要最低限のスペックに厳選しています。これをデジタル家電開発にも落とし込み、お客さまが必要とする機能を考え、“引き算と選択”を意識して製品ラインアップを増やしているのです」

 それでは、そんなコンセプトを基に開発された同社の製品の中で、現在注力しているものを紹介していこう。

 まずは23.8インチモニター「LUCA 液晶ディスプレイ 23V型 DT-JF235S-B」だ。フルHD対応の高解像度のため、コンテンツを細部まできれいに映し出せる。加えて高視野角で、角度を変えてもほとんど変わらない色彩を表現する「ADSパネル」を搭載しているのだ。また是常氏は、同社のモニター製品についてこう補足する。「モニターはたくさんの新製品を仕込んでおり、今後面白い製品がいろいろ出てくる予定ですので、楽しみにしてもらえればと思います」

 次は12インチタブレット「LUCA タブレット TM12E3W74-KV1H」だ。128GBの大容量ストレージを搭載し、ビジネスシーンでも活躍する1台になっている。さらに是常氏は、同社のタブレット製品をこうアピールする。「当社のタブレットは、プリインストールアプリをほとんど入れていません。これにより、ユーザーが自由に使えるスペースを増やしているのです」

 最後はモバイルバッテリー「バッテリーステーションmini IBT-A32100-W」だ。幅約7.8×奥行き約8.3×高さ約12.8cmのコンパクトサイズながら、3万2,000mAhの大容量を実現している。是常氏は本製品について、「このバッテリーは、私たち自身の『欲しい!』という思いから開発がスタートした製品です」と付け足す。

 こうした製品も踏まえ、是常氏は同社の成長戦略をこう話す。「当社は、技術進化起点の開発から脱却します。簡単に言うと、スペック競争をやめるということです。ユーザーに“ちょうどいい”をどうやって届けるかを変えずに、今後も製品開発を進めていきます」

※2026年5月時点の情報。

PICK UP

23.8インチモニターのLUCA 液晶ディスプレイ 23V型 DT-JF235S-B。フルHDに対応し、フレームが気になりにくいスリムベゼルデザインを採用した。
12インチタブレットのLUCA タブレット TM12E3W74-KV1H。高精細な映像表現と、左右に配置した四つのスピーカーにより迫力のあるサウンドが楽しめる。
モバイルバッテリーのバッテリーステーションmini IBT-A32100-W。大容量ながら約0.9kgと軽量で、日常やレジャー、被災停電時の備えにも最適だ。