練馬区の粗大ごみ収集運搬業務を
デジタル活用で効率化&円滑化

粗大ごみは各家庭の敷地内や集合住宅の粗大ごみ置き場に出されるため、毎日決まった収集ルートをたどれない。そのため収集の際のルート作成には、地域や収集についての知識を持った作業員が必要になる。しかし一部の作業員に作業が集中すると、業務の属人化が起きるだけでなく、粗大ごみ収集に関する事務作業の効率が低下してしまう。今回は粗大ごみ収集における作業員のスキル平準化や業務効率化を目指す、東京都練馬区と小田急電鉄を取材した。

東京都練馬区

東京23区の北西部に位置する人口75万242人(2026年2月1日時点)の都市。植物学者・牧野富太郎氏の居住跡を整備した庭園「牧野記念庭園」、日本の近現代美術を中心に展示を行う「練馬区立美術館」、東映アニメーション作品の絵コンテをはじめとした資料が見られる「東映アニメーションミュージアム」などさまざまな観光スポットを有する。

粗大ごみ収集ルートの作成に課題

 粗大ごみは各戸建て住宅の敷地内や、集合住宅の粗大ごみ置き場などに出される。そのため決まった集積所が設けられる可燃ごみなどと異なり、収集ルートが日々変化するのだ。従って収集ルート作成には、収集地域についての地理や収集に関する幅広い知識と高い技術が求められてくる。

 東京都練馬区も、そうした問題を抱える自治体の一つだった。練馬区 環境部 清掃リサイクル課 清掃事業係の担当者は、同区における粗大ごみ収集の課題をこう話す。「課題は主に三つあります。まず一つ目はルート作成業務です。作業員2人で3.5時間/日かけ、手作業で作成していることが課題になっていました。二つ目は収集指示と情報連携です。粗大ごみを収集する際、作業員は紙の地図を確認しながらごみ収集現場に向かいます。そのため、一定の土地勘が必要でした。三つ目は運行状況です。収集車両の運行状況を、正確に把握できていないことが課題でした」

 そこで練馬区は小田急電鉄と粗大ごみ収集運搬システムの構築を目的とする協定を、2025年11月10日に締結した。そして同日より、小田急電鉄が提供する廃棄物収集資源化支援サービス「WOOMS」の新機能を活用した実証実験を開始している。WOOMSとは自治体や事業者向けに、収集車の収集運搬状況を即時取得・共有できるシステムといったテクノロジーの活用を通じ、業務効率化を支援しているサービスだ。

 小田急電鉄の担当者は、練馬区との連携協定を締結した背景をこう語る。「練馬区さまとの連携は、2023年12月にWOOMSの問い合わせをいただいたことをきっかけに始まりました。そこから当社の事業説明や導入済み自治体への現場視察、機能改善や新機能の紹介・提案についての打ち合わせを重ねる中で、粗大ごみ収集に関する課題感を共有できました。またWOOMSはこれまで、家庭ごみ収集の分野で多くの自治体に導入されてきましたが、粗大ごみ収集に関しては、当社としても新たな収集分野への挑戦でした。しかし練馬区さまから収集件数の増加・管理方法の複雑化などの事情を理由にアナログ手法の脱却を強く検討していると伺い、機能改善を視野に入れてサポートしていきたいと考えました。こうして持続可能な粗大ごみ収集体制の構築に向け、新たな機能開発を視野に入れた実証実験を、連携協定を締結して取り組むことになりました」

WOOMSによる業務改善イメージ

紙の地図を用いた収集ルート作成の様子(左)と収集ルートを記入した地図(右)。受付業務はデジタル化できていたが、ルート作成は担当作業員が紙の地図を用いたアナログ作業で行っていた。そのため、作成には作業員2人で3.5時間/日ほどかかっていた。
WOOMSの車内使用イメージ。自動ルート作成で作成時間が5分程度となり、GPS付きタブレットのナビゲーションで現場へ向かえるようになる。通行禁止区間・注意事項など細やかな情報も迅速かつ手軽に共有可能なため、ルート間違いの防止が期待できる。

他社システムとの連携で効率化

 実証実験は2025年11月10日〜2026年3月31日の期間で実施される。粗大ごみ収集運搬体制の構築と持続可能性の向上を目的としており、収集運搬業務に関わる事務作業の効率化や、収集作業員のスキル平準化、安定的な収集運搬体制の実現を図る。

 そして実証実験で活用するのが、WOOMSだ。今回はWOOMSの新機能を主に二つ活用し、実証実験を行っていく。

 まず一つ目は、他社システムとの連携機能だ。他社システムで取得した収集日や箇所、品目といった情報をWOOMSに連携し、効率の良い収集ルートを自動作成する。受付業務をすでにデジタル化している自治体でも、改めてデータを入力し直すことなく、ルート作成機能を使用可能だ。二つ目は、ナビゲート機能の改善だ。土地勘のない収集員でも安全に走れるように、通行禁止エリアや収集箇所での注意事項などを、細やかに設定できるようにした。

 小田急電鉄の担当者は、新機能を活用する今回の実証実験について次のように話す。「今回の実証実験は、他社のデータと連携してルートを作成する体制の構築が主な目的です。練馬区さまが現在使用している、両備システムズさまの粗大ごみ収集受付システム『Eco伝』とデータを連携して粗大ごみ収集ルートを作成する際に、WOOMSの新機能を利用します」

ごみから資源への循環を共創

 練馬区の担当者は、実証実験に期待する効果や成果をこう語る。「こちらも主に三つあります。一つ目は自動ルート作成機能で、ルートの作成時間が5分程度になることです。二つ目はGPS付きタブレットのナビゲーションで現場に向かえて、通行禁止区間・注意事項といった細やかな情報が迅速かつ手軽に共有でき、ルート間違い防止が可能になることです。三つ目は各収集車の位置・収集状況が90秒ごとのタイムスタンプで表示・記録され、PC画面の地図上でモニタリングが可能になり、複数の車で収集状況をカバーし合う体制が構築できることです」

 実証実験は取材時点(2026年1月)で実施中であり、練馬区の担当者は「ペーパーレス化による業務の効率化を期待しています」と話す。

 そして小田急電鉄の担当者は、本実証実験への期待と展望を次のように語った。「粗大ごみ収集の分野は、我々にとっても新たなチャレンジです。今後も練馬区さまと共に、東京23区どこでも活用してもらえるシステムの構築に取り組んでいきます。WOOMSは持続可能な収集運搬システムの構築をサポートすることで、ごみから資源への循環を、自治体や事業者さまと共創することを目指しています。粗大ごみ収集の効率化を巡る課題は、人手不足と人口集中に直面する東京23区をはじめ、全国各地で起こっています。私たちのノウハウで、地域を支えるインフラであるごみ収集現場の皆さまをサポートし、地域活性化に貢献したいと考えています。練馬区さまとの連携と今回の実証実験を通じて、粗大ごみの収集効率化、作業員のスキル平準化を達成し、システム化の価値を見いだすことができれば、多くの自治体や事業者さまへの支援にもつながると期待しています」