現代のビジネスにおいて、ファイル共有は日常業務に不可欠な要素である。しかし、「メール添付では容量制限がある」「セキュリティ面で不安がある」「既存のファイル共有ツールは管理が煩雑で使いこなせない」といった共通の課題に直面する企業は少なくない。
特に、情報システム部門の担当者にとっては、セキュリティと利便性の間で板挟みになる「外部共有のジレンマ」が大きな悩みの種である。このような背景から、ビジネスの生産性とセキュリティ確保の両立は、喫緊の課題として浮上している。
この複雑な課題に対し、AvePoint Japanが日本独自の視点から開発した画期的なファイル共有ソリューション、それが「DenshoBako(でんしょばこ)」だ。今回は、事業戦略部の望月健斗氏と遠藤翔平氏の二人に開発の経緯やソリューションの強みについて伺った。
AvePoint Japanが「DenshoBako」を日本で開発した理由

AvePointは2001年に米国で創業した外資系ITメーカーであり、20年以上に渡りMicrosoftのグループウェア管理ツールを提供してきた実績を持つ。現在はMicrosoft 365のクラウド管理へと事業の軸足を移し、企業のデータ管理とセキュリティ支援を行っている。
その中で、日本法人であるAvePoint Japanは、2008年に事業を開始し、国内の大企業や官公庁をはじめとした900社以上の組織で採用されている。グローバル企業としては珍しく、日本市場に特化した製品開発に裁量を与えられているという。マーケティングコミュニケーションスペシャリストの望月氏は、この背景について「北米や欧州と比べ、日本ではまだMicrosoft 365のクラウド利用が進んでいない現状があります。この活用を促進するためには、日本のお客さまに特化した便利なビジネスアプリケーションが必要だと考えました」と語る。
これは、単にグローバル製品をローカライズするだけでなく、日本の商習慣やユーザーの細かなニーズを深く理解し、それに合致するソリューションをゼロから生み出すという、AvePoint Japanの戦略的な判断の結果である。
今回紹介する「DenshoBako」は、このような日本市場特有のニーズに応えるべく、企画から開発、デザインまでをAvePoint Japanが主導した初の製品である。コーディング自体は海外の開発チームが担当するが、UI/UXについては、日本のユーザーが直感的でシンプルだと感じるデザインを追求し、日本側が主体となって開発を進めている。
UI/UXデザインを担当する遠藤氏は、「日本のデザインは人間中心設計が進んでいる一方で、北米と比較するとまだユーザーサイドの理解が根付いていないと思います。誰もが説明がなくても直感で使える、簡単でシンプルなUIを目指しました」と、日本市場への強いこだわりを見せている。

「DenshoBako」がファイル共有の常識を変える3つのポイント

「DenshoBako」は、従来のエンタープライズ向け管理ツールとは一線を画し、中小企業や大企業の一部の部署でも気軽に導入できる、ビジネスユーザーに寄り添ったアプリケーションだ。その主要な特徴は以下の3点である。
① 誰でも「簡単」に共有できる直感的な操作性
「DenshoBako」は、ITリテラシーの低い従業員でも迷うことなく使えるよう、徹底的にシンプルで分かりやすいUIが追求されている。複雑な設定や手順は不要で、直感的な操作が可能だ。容量無制限でファイル共有ができるため、ユーザーは何も考えずに手軽にファイルを共有できる。大容量のCADデータや、会議録画のような動画コンテンツなど、あらゆるビジネスファイルをスムーズにやり取りできる点は、日常業務の生産性を大きく向上させる。

② 送った後の「見える化」で成果を最大化
営業やマーケティング部門にとって特に強力なのが、送付したファイルの「閲覧状況の可視化」機能である。誰が、どのファイルを、どこまで、どれくらいの時間閲覧したかまで把握できるため、例えば商談前に顧客が資料を確認したかを事前に把握したり、複数のファイルを送付した場合に顧客がどの製品に興味を持っているかを、ダッシュボードから可視化・分析することが可能となる。これにより、顧客のエンゲージメント度合いを定量的に把握し、より効果的な次のアクションへと繋げられる。また、ファイルが送られたものの2日間開かれていない場合には通知を送信することができ、顧客へのフォローアップを促す。
望月氏は、「営業資料はサイロ化しやすく、売上上位の営業担当者のノウハウが共有されにくい課題があります。そこを、どの資料がよく使われ、どのトップ営業がどんな資料を送っているのか、誰がどのようなツールをよく使っているのかも副次的に可視化できるため、ナレッジシェアを進められます」と、組織全体の生産性向上への貢献を強調する。
組織全体の営業力の底上げだけでなく、これまでメールやローカルファイルでの共有では不可能だった、営業ナレッジの形式知化と共有を促進するはずだ。


③ Microsoft 365との「シームレスな連携」で業務効率アップ
「DenshoBako」の最大の強みは、Microsoft 365との深い連携にある。OneDriveやTeams、SharePointなど、普段使い慣れているMicrosoft 365の環境から直接ファイルをアップロード・共有できるため、新たな操作に戸惑うことなくスムーズに導入できる。
望月氏は、「Microsoft 365で外部共有を使ったことがあれば、ほぼ同じUI/UXで利用できます。これにより、ファイルをローカルに保存するのではなく、OneDriveやSharePoint、Teams上に貯めるというMicrosoft 365自体の活用も促進されます」と述べている。これは、既存のMicrosoft 365への投資を最大限に活かしつつ、セキュリティと利便性を両立させるソリューションと言えよう。
「DenshoBako」が解決する具体的な課題と導入メリット

多くの日本企業が抱える「PPAP(パスワード付きzipファイルとパスワードの別送)問題」についても、「DenshoBako」は解決策を提供している。遠藤氏は「実は7月のリリース当初には“脱PPAP”に対応する機能は提供していませんでした。ところが日本のお客様の声を聞いていく中で、ここに大きなニーズがあるということを認識し、急遽開発のロードマップに組み込みました。この機能は10月の製品アップデートでリリースされる予定です」と、セキュリティ強化への積極的な姿勢を示す。これにより、Microsoft 365 を利用しつつPPAP廃止を検討している企業にとって、セキュリティ要件を満たしつつスムーズな移行を支援する強力な選択肢となる。
また、「DenshoBako」は従来のエンタープライズ向け高コストなソリューションとは異なり、スモールスタートが可能な価格設定がされており、特定の部署から試験的に導入するといった柔軟な運用が可能である。これにより、無料のファイル共有ツール利用による潜在的なセキュリティリスクを回避し、安全な情報共有環境を整備できる。
これは、企業の規模や予算に関わらず、段階的な導入が可能なため、リスクを抑えながら効果を検証し、全社展開へと繋げられるメリットがある。例えば、まずは営業部門のみ、人事部門のみといった部署単位で導入し、セキュリティを確保しながらナレッジシェアを進める運用もできる。
さらに、「DenshoBako」の導入は、Microsoft 365の活用を促進するだけでなく、その先の課題解決にも繋がる。Microsoft 365の利用が進むにつれて生じるデータ消失、ランサムウェア対策、情報漏洩、Teamsの管理といった課題に対しても、AvePointは豊富な管理ソリューションを幅広く提供しており、包括的なIT環境の改善提案へと繋げることが可能だ。「DenshoBako」を起点として、よりセキュアで効率的なMicrosoft 365環境構築に向けた全体的な支援を受けられる点が、AvePointの強みである。
お客さまの声に応え、進化し続ける「DenshoBako」

今後の「DenshoBako」は、ファイル共有という軸をさらに強化し、業界や部署に合わせた展開プランを増やすことを視野に入れている。望月氏は、「ファイル共有以外に関しても、やはりMicrosoft 365を利用する中での課題は多くあります。“脱PPAP”の機能開発のように、今後もユーザーから寄せられる多くの声を反映させ、日本の顧客に向けた、分かりやすい製品とアプリケーションとして展開していきたいと考えています。これはAvePoint Japanとして今後も強化し投資していく領域となっています」と語る。将来的には、営業部門だけでなくマーケティングやバックオフィスなど、さまざまな部署のニーズを吸い上げ、業界ごとの機能追加も視野に入れている。
また遠藤氏は、現状を「まだ発展途上」としつつも、今後の進化に強い意欲を見せている。「実はこの『DenshoBako』をリリースする前も、営業の方々やさまざまな部署の方々にユーザーインタビューを実施し、ユーザービリティテストも実際に行いました。そこで見えてきた課題をできるだけ早いサイクルで開発していくことで、より使いやすいものにしていきたいと思っています」と、ユーザーからのフィードバックを重視する姿勢を強調した。
「DenshoBako」は、単なるファイル共有ツールに留まらず、日本のお客様の声を起点に進化し、Microsoft 365の活用をさらに促進するビジネスアプリケーションとして、その可能性を広げていく。企業の情報共有における課題を解決し、よりセキュアで生産性の高いデジタルワークプレイスを実現するための強力なパートナーとなるだろう。
製品紹介
DenshoBako
普段お使いのMicrosoft 365からシームレスに社外とファイルを安全・簡単に共有が可能。閲覧状態を分析することで、検討状況を把握し、お客様に最適な営業活動を行える。また、営業が社外の誰と、どんなファイルを共有したのかを可視化し、リモートワークでも営業の行動量を把握。社員の評価やフォローも可能にする。