コンタクトセンターのカスハラ対策を実現

カスハラ対策

 アドバンスト・メディアは7月17日に開催した記者発表会にて、コンタクトセンター向けAI音声認識ソリューション「AmiVoice Communication Suite」から、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策を支援する新パッケージの提供を開始すると発表した。同社 執行役員 兼 CTI事業部 部長 今宮元輝氏は、リリースの背景についてこう語る。「近年、顧客対応の現場ではカスハラが深刻化しており、コンタクトセンターのオペレーターの94%が勤務中にカスハラを経験しています。さらにその内15%は週に数回、あるいはほぼ毎日カスハラの被害を受けており、こうした状況が新人スタッフの高い離職率につながっています。労働者人口の減少が進む中、従業員の心のケアが重要になっています」

 新パッケージは、カスハラ対策に必要な「検知」「対応」「改善」「予防」の各機能を網羅している。まず検知では、暴言や脅迫などのキーワードを事前に設定し、それらが発話された場合や長時間の通話が発生した際に管理者へアラートを通知する機能を備える。アラートは発話回数に応じて色が変化し、深刻度を視覚的に把握可能だ。

 続いて対応では、不当な要求や暴言があったとき、事前に設定されたルールや対応マニュアルをオペレーターの画面にポップアップ表示する機能を備える。対応方法のばらつきを防ぎ、顧客対応の統一化を図れるのだ。またオペレーターの感情の変化を可視化する「感情解析」機能により、カスハラ対応で精神的に負担がかかっているスタッフを特定し、個別のケアや面談などのフォローを行える。

 そして改善では、同社が提供するコンタクトセンター向け大規模言語モデル「AOI LLM」を活用し、テキスト化された通話データをAIが分析する機能を備える。カスハラのレベルや原因、顧客のニーズなどを可視化し、改善策の立案に役立てられる。

 最後に予防では、顧客のタイプに応じた対応を支援する機能を備える。厚生労働省のマニュアルを参考に顧客の言動からタイプを判別し、適切な対応方法をオペレーターに提示することで、カスハラの発生を未然に防げるのだ。

現場の声を基に改善を続ける

 本発表会では新パッケージの展望も語られた。現在、新パッケージは複数のユーザー企業のコンタクトセンター業務において、検証利用が進められている。アドバンスト・メディアでは、ユーザーとの共同検証を通じてフィードバックを収集し、アップデートを重ねることで、精度の向上を目指している。

 今宮氏は「カスハラの発生現場はコンタクトセンターに限りません。中でも、就業中にカスハラを受けた場面として最も多いのが対面接客時です。対面接客のシーンでも当社のテクノロジーを活用することで、企業のカスハラ対策を支援し、現場で働く人々の心を守っていきたいです」と意気込んだ。

アドビのAIでマーケティング業務を効率化

AIエージェント

 アドビは7月23日、AIエージェント「Product Support Agent」「Data Insights Agent」、そしてそれらの基盤となる「Adobe Experience Platform Agent Orchestrator」に関する記者説明会を実施した。

 Product Support Agentは、製品に関する質問に対応するほか、バグ調査のチケットなどのサポートケースの作成や、進捗状況の確認が可能なAIエージェントだ。これらの操作は、チャット画面上でAIと自然言語による対話を通じて行える。従来のようにサポート担当者に連絡する必要がなくなるため、問題解決までの時間が短縮され、結果として顧客満足度の向上につながる。

 Data Insights Agentは、自然言語のプロンプトを入力することで、複雑な顧客データやジャーニーデータを分析し、レポートの自動生成が可能なエージェントだ。アドビの独自推論エンジンを活用することで、ユーザーの意図を深く理解し、マーケティング分析の専門知識を生かしたインサイトを提供する。

 Adobe Experience Platform Agent Orchestratorは、これらAIエージェントの連携基盤だ。推論エンジンやカスタマーエクスペリエンスモデルが組み込まれているため、この基盤上で動作するAIエージェントはユーザーの意図を的確に把握し、適切な行動を取れる。

 アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 ソリューションコンサルティング本部 プリンシパルソリューションコンサルタントの山下宗稔氏は、AIエージェントを活用した業務変革の可能性についてこう語った。「AIエージェントが反復的で大量かつ時間のかかるタスクを支援することで、マーケターは人にしかできない業務に集中できます。これにより、マーケティング業務の効率化に加え、顧客エンゲージメントの強化にもつながります」

Product Support AgentのUI。自然言語で製品に関する質問や、サポートケースの進捗状況の確認を行える。