HPE、生成AIの導入を加速する取り組みを発表
AIソリューション
日本ヒューレット・パッカード(HPE)は、7月31日に「HPEのAI戦略とNVIDIA AI Computing by HPEに関する説明会」を実施した。本記者会見では、HPEとNVIDIAが共同開発したAIソリューションのポートフォリオおよび共同の市場開拓の取り組み「NVIDIA AI Computing by HPE」を発表した。本取り組みにおける最初のオファリングとして、AI向けのプライベートクラウド「HPE Private Cloud AI」が提供される。
HPE Private Cloud AIは四つの特長を持つ。一つ目が、即座に利用を開始できる点だ。生成AIを活用する環境をゼロから構築するのは複雑であり、人的リソース不足などの課題もある。HPE Private Cloud AIでは検証済みのAIツールにセルフサービスでアクセスでき、開発者の生産性を最大で90%向上可能だ。二つ目が、データの一元化だ。クラウド/オンプレミスといった各所にある構造化データや非構造化データを、全て一元化して扱えるコンポーネントを含んでいる。三つ目が、高い信頼性と制御性だ。HPE Private Cloud AIは多層型制御によって、データとモデルを保護している。また、モデルをチューニングせずにそのまま扱うのはリスクが大きい。そのため、モデルの出力を制御する「ガードレール」やトレーサビリティの機能も備える。四つ目が、データをプライベートに保った状態でのクラウドライクなインターフェースだ。概念実証から本番環境へ展開する際も、データは安全なオンプレミスで保持できる。もちろんクラウドからデータを利用することも可能だ。
同社 執行役員 ハイブリッドソリューションズ事業統括本部 ソリューションアーキテクト本部長 及川信一郎氏は、HPE Private Cloud AIについてこう語る。「推論やファインチューニングといった幅広い部分をカバー可能なため、企業の生成AIの活用を加速できます」
パートナープログラムを拡張
同記者会見では、HPEとNVIDIAの共同の取り組みとして、パートナープログラムの拡張も発表された。
既存のパートナープログラム「HPE Partner Ready」と、as a Serviceビジネスを中心に展開するパートナーを対象としたプログラム「HPE Partner Ready Vantage」の拡張を行う。具体的には、AIやマシンラーニング、ディープラーニングについての新しい学習コンテンツの追加やハンズオンワークショップを実施するほか、新たなAI関連資格を設ける。
及川氏は「さまざまな業種のお客さまが複雑なAIワークロードを実行できるように、今後もNVIDIAさまとの共同の取り組みを進めていきます」と抱負を語った。
立体映像が鏡の内外を移動するNTTの新システム
映像新技術
NTTは7月26日に、デジタル情報が鏡の中と外を自在に移動できる「超鏡空中像表示システム」を発表した。超鏡空中像表示システムによって、ユーザーはVRゴーグルなどを装着せずに、裸眼で鏡の外に飛び出す立体映像を視聴できるようになる。
超鏡空中像表示システムの開発背景として、既存技術による映像表現の限界がある。デジタル情報を日常空間に溶け込ませる既存技術には、鏡の中にデジタル情報を表示する「ミラーディスプレイ」や、空間中に映像を表示する「空中像表示技術」がある。しかしこれらの技術は、デジタル情報を鏡の中、または外のいずれかにしか表示できなかった。そのため、鏡の内外を問わない映像表示を可能にし、立体映像における表現の幅を広げるために、超鏡空中像表示システムが開発された。同システムでは、空中像表示技術をベースとしつつ、移動機構を備えたディスプレイを用いることで、立体映像が鏡の中と外を自在に移動できるようにしているのだ。
超鏡空中像表示システムでは、鏡の内外の立体映像とのインタラクションも可能だ。現実空間のユーザーの手の位置座標をセンサーで取得することで、ユーザーは鏡の外に表示された立体映像を操作できる。一方、鏡の中に立体映像が表示されているときは、鏡に映った手の座標を算出することで、ユーザーは立体映像を操作できるのだ。
NTT人間情報研究所 主任研究員 巻口誉宗氏は「博物館やデジタルサイネージ、イベントでの展示といった場面で、超鏡空中像表示システムを活用していきたいです」と展望を語った。