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地方に移住して都心と同じように働く

地方に移住して都心と同じように働く"地方創生テレワーク"の取り組み

2022年12月13日更新

Special Feature 2
デジタル田園都市国家構想シリーズ vol.3
地方創生テレワークが地方都市を救う

デジタル田園都市国家構想シリーズの第3弾では、「地方創生テレワーク」を取り上げる。コロナ禍で大きく働き方が変わった中で、地方に移住して都会と同じようにテレワークで仕事を行う“転職なき移住”という考え方に注目が集まっている。地方創生の鍵となるテレワークへの取り組みについて、自治体、企業の双方の事例から、その可能性を探っていく。

山口県庁内にテレワークオフィスを整備し
移住者が快適に働ける環境を提供

Local Government Case

山口県庁を訪れると、その本館棟1階フロアの一角にさまざまな人々が働くコワーキングスペースがある。山口県が移住者受け入れのため整備したやまぐち創生テレワークオフィス「YY! SQUARE」だ。県庁の中にテレワークオフィスを整備するという全国的にも珍しい取り組みを実施した山口県に、その理由を聞いた。

都心からの移住者受け入れを促進

 本州南西部に位置し、東京都心から飛行機で約1時間半、新幹線で4時間18分ほどの場所にある山口県。その山口県では、「地方創生テレワーク」への取り組みを積極的に進めている。

 地方創生テレワークとは、テレワークによって地方にいながらにして都会と同じ仕事を行う“転職なき移住”を実現することで、地方創生につなげる取り組みだ。山口県の県民会議ではコロナ禍を契機として広がった働き方の変化に着目し、テレワークを活用した山口県への移住や、関係人口の創出・拡大を全県的な取り組みとして普及・推進するため「テレワーク・ワーケーション専門部会」を2021年5月に設置。情報発信の強化や拠点整備などに取り組み、都心部から移住者受け入れの体制を強化している。

 その取り組みの一つとして整備されたのが、2021年7月に開設されたやまぐち創生テレワークオフィス「YY! SQUARE」。山口県庁の1階にオープンしたこのスペースは、都心部の企業などに勤めるビジネスパーソンが、山口県に移住・滞在しながら、都会と同じように働けるモデルオフィスとして整備されている。民間企業が運営しているコワーキングスペースやシェアオフィスのように、テーブル席や1人用のブース席、カウンター席、小規模ミーティングに使える会議スペース、周囲を気にせずWeb会議できる1人用の防音ブースなど、さまざまな座席が用意されている。このようなオフィス環境はコクヨと協力し整備したという。そのほか、コピー機や給茶機、ロッカーなども用意されており、快適に業務に取り組める環境だ。Wi-Fi環境も整備されており、ノートPCを持ち込めば快適に業務に取り組める。ミーティングスペースには小型のモニターも用意されており、資料を提示しながら打ち合わせが可能だ。

YY! SQUAREのオフィス整備にはコクヨが協力。
業務に合わせたさまざまなデスクで働ける。

移住者同士の交流の場にも

山口県
総合企画部
中山間地域づくり推進課
主査
神田 修 氏

 山口県 総合企画部 中山間地域づくり推進課 主査 神田 修氏は「都心部から山口県への移住を希望する方は少なくありません。よくある例としては、奥さまの実家が山口にあり、子育てのため山口県に移住してテレワークで働くというケースです。山口県内には123基の赤鳥居が海に向かって並ぶ元乃隅神社や、金魚の形をした島として知られる周防大島など、人気の高い観光スポットも多くありますし、自然が非常に豊かです。そうした環境を気に入り、移住して働きたい人が多いのです」と語る。

 一方で、YY! SQUAREは山口市にあり、ほかの市町村に移住した人にとってはアクセスがしにくい可能性もある。しかし山口県では、県内のさまざまな場所にテレワーク施設を用意しており、県外から山口県に移住したり、ワーケーションや出張で訪れたりした人に対して、どこでも快適なテレワーク環境を提供できるようにしている。YY! SQUAREは、そうした各地の施設と連携しながらテレワークを進める先導的な役割も担っているのだ。「例えば、山口宇部空港にはコワーキングスペースを備えたワーケーション総合案内施設『YY! GATEWAY』が用意されています。新幹線の停車駅である新山口駅直結のKDDI維新ホールには、産業交流スペース『Megriba』にコワーキングスペースがあり、山口県に訪れた人がいつでもどこでも快適に働ける環境が整っています」と神田氏。そうした施設を探せるよう、山口県テレワーク・ワーケーション総合案内サイト(https://yamaguchi-workation.com/)も運営している。

 YY! SQUAREは、移住者へのワークスペース提供だけでなく、移住者同士の交流機会の創出の役割も担っている。「これはYY! SQUAREの利用者からの発案でスタートした取り組みです。『mini交流会』として、YY! SQUAREの利用者同士で交流できる機会を月に1回設けています。『移住してきたけど横のつながりが持てない』と困っている移住者もいるため、交流会で親交を深めて生活を充実したものにしてもらったり、交流から新しいビジネスにつなげてもらったりしています」と神田氏は語る。

 こうしたさまざまな環境を整えられたYY! SQUAREの利用者は、2022年9月末時点の延べ人数で約5,600人。40席用意されたスペースに対し、1日平均で21名ほどの利用があるという。

フロントで手続きすると、座席を利用していることが分かる「利用(在席)中」カードなどが渡される。

子育て世帯の移住者が増加

 移住者を増やすため、都市部企業や就業者に向けたプロモーションも行っている。実際にテレワーク移住を実践している移住者によるWebセミナーを実施し、情報発信を行ったり、チラシやメールマガジン、Facebookなどを活用したりして継続的な情報発信も続けている。

 都心部からの移住者を積極的に受け入れる理由について、神田氏は「山口県の人口減少に歯止めをかけたい」と口にする。「山口県から都心部に転出する人の数は多く、それによる人口減少が進んでいます。出て行く人が減らせないのであれば、新たに移住してもらったり、戻ってきてもらったりすることで、人口減少に歯止めをかけたいというのが大きな思いです」と神田氏。また都心部の知見を持った人が移住してくることで、地元企業との新たなビジネスチャンスが生まれることも期待されている。子育て世帯が子供を育てやすいよう、手厚い子育て支援を実施している市町村もあるようだ。

「特に子育て世帯が地方移住に関心を持っているケースが多いようです。山口県のさまざまなテレワーク施設の認知度が伸びており、自然豊かな環境で子育てをしたいビジネスパーソンに、ぜひ移住を選択していただけたらと思います。山口県は県内に空港が二つ、新幹線の停車駅が五つあるなど、都心部からのアクセスが非常に良い地域です。普段はテレワークをしながら、月に何回か東京のオフィスへの出社が必要な人でもアクセスがしやすく、人によっては通勤時間が東京に住んでいた頃よりも短くなった、という声も聞きます。さらに移住者を増やしていくことで人口減少に歯止めをかけるだけでなく、理想かもしれませんが増加に転じていけたらうれしいですね」と神田氏は展望を語った。

 YY! SQUAREを利用するにはWeb上での利用者登録が必要だが、利用料金は無料というから驚きだ。施設整備には内閣府による「地方創生テレワーク交付金」を活用し、運営はパソナに委託している。

Megribaでは、コワーキング利用のほか企業の住所利用や法人登記も可能!
新山口駅近くにも!

移住先で新たなイノベーションを生み出す
大分県や淡路島と連携した企業の取り組み

Company Case

コロナ禍によってテレワークが当たり前になった環境で、従業員の地方移住を認めたり、本社機能の一部を地方に移転させたりする企業が出てきている。チャットやWeb会議ツールなどを駆使し、都心にいたときと変わらない働き方を地方で実現している企業の例として、富士通とパソナグループの事例を紹介していこう。

富士通
富士通
Employee Success本部
Employee Relation統括部
マネジャー
深町弘明 氏

 ニューノーマルな時代における新たな働き方のコンセプトとして「Work Life Shift」を推進している富士通。Work Life Shiftは、「Smart Working」(最適な働き方の実現)、「Borderless Office」(オフィスの在り方の見直し)、「Culture Change」(社内カルチャーの変革)の三つの要素から構成されており、例えばSmart Workingの施策の一つでは、約8万人の国内グループ従業員の勤務形態の基本をテレワーク勤務としたことで、単身赴任者を自宅勤務に切り替えている。

 働く場所を自由にする取り組みの一つとして、富士通は2021年3月に「移住・ワーケーション協定」を大分県と締結している。「Work Life Shiftのリリースを発表した直後に、大分県の担当者からお声がけをいただいたのがきっかけです。当社は元々大分県にグループ会社(現在は富士通の営業拠点)を持っており、大分県とのつながりがありました。そこで、地方創生や地域課題の解決、地域の産業活性化などを目的に相互の連携や協力を通じた持続可能な地域社会の構築を目指し、包括協定を締結したのが、移住・ワーケーション協定になります」と語るのは、富士通で人事を担当するEmployee Success本部 Employee Relation統括部 マネジャー 深町弘明氏。その後、2021年10月15日に和歌山県とも同様の包括協定を締結しており、2022年11月現在、大分県に13名、和歌山県に2名が移住して働いている。

 富士通は、JR大分駅から徒歩20分、バスで10分ほどの距離に営業拠点「Oita Hub」を持っている。そのOita Hubの最上階に、社内サテライトオフィスとして新たに「F3rd」と呼ばれるワークスペースを整備した。大分県に移住して働いている富士通社員はもちろん、東京から出張してきた従業員も自由に利用できる。通常のオフィススペースとは異なる、シェアオフィスやコワーキングスペースのような机や椅子を採用し、働きやすさを意識した環境整備を行っている。

富士通
Employee Relation統括部
渡部かんな 氏

 移住した従業員の職種は、営業やエンジニアなど多様だ。テレワークによる勤務が基本だが、東京の本社に出社する必要が出てくるケースもある。そうした場合の出張費は会社が負担するほか、一定額を大分県が助成する仕組みも活用している。

 大分県への移住者が増えたことで、自治体と連携した取り組みも生まれつつある。例えば富士通が持つ開放特許(使用許諾があれば利用できる特許権)を元に、地元の学生や事業者がアイデアを出し、新規ビジネスを作るような取り組みも、現在検討している。「実は協定当初は移住だけの話だと思っていました。しかしビジネスサイクルの激しい現在、こうした地方自治体との連携は、新しいビジネスヒントがもらえる機会にもなり得ます」と語るのは、富士通 Employee Relation統括部 渡部かんな氏。富士通では副業が認められており、移住先での事業活動を地域活性化につなげる取り組みも進めている。

「当社では、社会課題を解決できる人材を作りたいと考えています。移住以外の遠隔勤務も認めているほか、ワーケーションの取り組みも進めています。新しい働き方を進めていくことで、自律する社員、自分で考えて行動する社員を育て、さまざまな場所でイノベーションを起こす環境へと、企業を変えていきたいですね」と深町氏はDX企業 富士通としての目標を語った。

富士通の社内サテライトオフィス「F3rd」。
Oita Hubの最上階から大分市を一望できる。
パソナ
パソナグループ
常務執行役員 CBO
Regional Advantage

Natureverse担当
伊藤真人 氏

 ——東京・丸の内にある本社機能を分散し、淡路島へ移転する。そんなリリースがパソナグループから発表されたのは、2020年9月のこと。「真に豊かな生き方・働き方」の実現と、グループ全体のBCP対策の一環として、人事、財務経理、経営企画、新事業開発、グローバル、IT/DXなどの本部機能業務を、兵庫県にある淡路島(淡路市)の拠点に段階的に移すといったその発表は、多くの人々に驚きを与えた。パソナでは現在も段階的な移転を進めており、2022年5月末時点で470名が淡路島のオフィスに勤めているという。2024年5月末までに1,200名の移転を進める方針だ。

 パソナは2008年から淡路島の地方創生事業を担っている。淡路島の農地を借りた独立就農支援や、観光施設の展開を行うなどさまざまな取り組みを続けてきた。そのつながりの中から、今回の本社機能の移転先として選択されたのだ。また、パソナグループの創業者である南部靖之氏が兵庫県神戸市の出身であることも理由の一つだ。

「淡路島は地方ながら、神戸や大阪などの関西圏からアクセスがしやすい場所です。2025年には関西万博も開催されるため、ビジネスチャンスにもあふれた土地でもあります。一方で、淡路島は東京都と同じくらいの広さがありますが、人口はおよそ30分の1です。この場所に移転し、住んで働くことでこれまでと違う新しい働き方のスタイルを発信できると考えました」と語るのは、パソナグループ 常務執行役員 CBO Regional Advantage兼Natureverse担当 伊藤真人氏。

 淡路島へ本社機能を移転することに伴い、パソナでは従業員が働く事務所を新たに整備。現在7カ所ほどの事務所が整備されており、元々レストランだった「淡路夢舞台」を改装したオフィスや、観光客への土産物店として営業していた場所をオフィスとして改装した「ワーケーションハブ鵜崎」、従業員が子供と共に出勤して同じ空間で働ける「パソナファミリーオフィス」など、多様な環境で業務に取り組める。「1カ所新設したオフィスもありますが、基本的には、元々淡路島にあった施設をリノベーションしてオフィスとして活用しています」と伊藤氏。

 淡路島に移転したパソナのオフィスは、以前と比較して賃料がほぼ30分の1にまで抑えられているという。また「従業員の視点から見ると、通勤時間が圧倒的に短くなりました」と伊藤氏。一方のデメリットとして、淡路島には公共交通機関がほとんどないため、主な移動手段は車になる。パソナはこの通勤インフラの課題を解決するため、観光施設向けに運行していた送迎バスの便数や路線を増やし、従業員も使えるようにしている。また通信環境にも課題があり、地元の通信会社に改善を働きかけているという。

「淡路島のオフィスで働く1,200人の従業員は、東京から移住してきた人ばかりでなく、淡路島の地元からも雇用していきます。元々あった本社機能にとどまらないアバター派遣のような事業が新たに生まれており、淡路島からアバターを通じて、東京や大阪の人々とモニター越しに接客するような業務も増えてきていますね」と伊藤氏は語った。

大型ショッピングモール3Fにあるワーケーションハブ志筑。
ワーケーションハブ鵜崎は、元土産物屋をリノベーション。

サテライトオフィスの整備を支援し
地方への企業の進出を推進する

Policy

地方創生テレワークは、デジタル田園都市国家構想における「地方への人の流れを作る」ことを実現する上で、非常に重要な施策だ。内閣府と内閣官房は、以前からこの地方創生テレワークにまつわる取り組みを進め、さまざまな自治体のサテライトオフィス整備や企業誘致を支援してきた。今回はデジタル田園都市国家構想推進交付金の中から、地方創生テレワークに関する事業について話を聞いた。

増える東京圏から地方への移住

 コロナ禍は、人々の生活に大きな変化を生じさせた。その代表例として挙げられるのが、働き方だろう。人と人との接触を最小限に抑えるため、これまで都市部にあるオフィスへ出社することが当たり前だった人々の働き方は、それぞれの自宅からリモートで勤務する働き方へと半強制的に変化した。

 働き方の変化に伴い、人の動きにも変化が生じている。具体的には、都市部から地方へと転出する動きが増加しているのだ。総務省が2022年1月28日に公表した「住民基本台帳人口移動報告 2021年(令和3年)結果」によると、東京都特別区部(東京23区)は2014年以降初めて転出超過を記録した。また東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)についても、2021年7月および12月に転出超過となっているほか、東京都に限ると5月以降8カ月連続の転出超過を記録している。

 上記のような人々の転出の動きから見えるのは、ライフスタイルの変化だ。ワークスタイル(働き方)が変化したことに伴い、住環境も都市部にこだわる必要がなくなった。どこからでも働けるテレワークを利用して、移動時間やコストを気にすることなく地方から働くことが可能になったのだ。

 こうしたライフスタイルとワークスタイルの変化は、地方が抱える人口減少の抑止といった問題の解決にも役立つ。これまで転出超過が続いていた地方に都市圏などから人口が流入することにより、人口減少が食い止められるだけでなく、その場所で子育てなどをしてもらうことにより、人口増に転ずる可能性も存在する。

転職なき移住を支援する5事業

内閣官房
デジタル田園都市国家構想
実現会議事務局
伊藤大貴 氏

 政府は、地方に移住する新たな人の流れを「転職なき移住」と定義し、このような人の流れを作るため「地方創生テレワーク」の普及推進を進めている。2021年度(令和3年度)補正予算では「デジタル田園都市国家構想推進交付金」として200億円を計上。このうち、「地方創生テレワークタイプ」は、サテライトオフィス等の施設整備・利用促進等に取り組む自治体を支援する。現在下記の五つのメニューで支援を行っている。

①サテライトオフィス等整備事業
②サテライトオフィス等開設支援事業
③サテライトオフィス等活用促進事業
④進出支援事業
⑤進出企業定着・地域活性化支援事業

 ①と②の事業は同一の内容に見えるかもしれないが、①は自治体運営施設、②は民間運営施設として整備を行う。サテライトオフィスなどテレワーカーが働く施設を開設し、地域に企業を呼び込むことを狙った取り組みだ。本事業では、これらの施設整備・運営の事業費として1施設当たり最大9,000万円を補助するほか、プロジェクト推進の事業費として、1団体当たり、最大1,200万円を補助する。

「サテライトオフィスの整備は、廃校や旧庁舎、空き家や古民家などを改装するものや、施設の新築なども可能としています。整備費用はもちろん、施設内で必要な什器やWi-Fi環境、モニター、PC、オンライン会議用のWebカメラなどの周辺機器も本補助金で整備可能です」と説明するのは、内閣官房 デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 伊藤大貴氏。

 ③のサテライトオフィス等活用促進事業では、すでに整備されているサテライトオフィスのプロモーションを行うことで利用を促進し、地域に企業を呼び込む。これらの取り組みに対して、1団体に最大で1,200万円を補助する。プロモーション以外にも、施設のWi-Fi整備の拡充なども対象経費となっている。

 ④の進出支援事業は、①〜③を活用し、施設整備や利用促進を行った施設に企業が進出する際の経費を支援する事業。1社当たり最大100万円を補助する。進出する企業は、例えば従業員の引っ越し費用などに活用できる。また、進出にあたっては、本社機能ではなく支社をその拠点に作るといった扱いでも問題ない。

進出企業と地域企業のコラボ

内閣官房
デジタル田園都市国家構想
実現会議事務局
主査
仁昌寺弘貴 氏

 ⑤の進出企業定着・地域活性化支援事業は、①〜④で進出してきた企業を地域に定着させるとともに、地域の企業と連携して地域を活性化させる取り組みだ。1事業当たり最大で3,000万円を支援する。伊藤氏は「例えば埼玉県にある皆野町ではかつて桑栽培が盛んでした。地域のサテライトオフィスに進出してきた企業が持つ真空乾燥技術を活用して、これらの桑の葉や実から抽出される成分で化粧水やエッセンシャルオイル、お茶などを精製、地域の特産品とするための商品開発を行っている事例があります。このような進出企業と地域企業が連携し、地域の資源を活用した地域活性化に資する事業を支援します」と語る。

 上記五つの事業は、①②と④の事業、③と④の事業などそれぞれ組み合わせて申請可能だ。また⑤の事業は、①〜③の事業により企業が地域へ進出していることが必須となる。交付上限額として整備する施設の収容人数(1施設当たり)が20人未満の場合は3,000万円、20人以上50人未満の場合は4,500万円などが設定されているが、その範囲内であれば補助金を活用して柔軟なサテライトオフィスの整備が可能になる。

 これらの交付金は、補助率4分の3の高水準タイプと、2分の1の標準タイプが存在する。「デジタル田園都市国家構想推進実施計画(地方創生テレワークタイプ)」を策定し、交付金対象年度以後3年間のKPIを設定する。例えば高水準タイプの場合は「2025年度末のサテライトオフィス等施設を利用する企業数を設定のうえ、そのうち、所在都道府県外の企業が3社以上」などというKPIがあるのに対し、標準タイプは「2025年度末のサテライトオフィス等施設を利用する企業数を設定のうえ、そのうち、所在都道府県外の企業が1社以上」などだ。高いKPIを設定し有識者の審査においてS評価やA評価を獲得した計画については、高水準タイプで採択される。

 地方創生テレワークが普及することによるメリットについて、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 主査の仁昌寺弘貴氏は「自治体からの視点では地方に人の流れができることが大きなメリットと言えるでしょう。また、皆野町のように新しいビジネスが生まれることもメリットの一つです。サテライトオフィスが整備され、企業が移転してくることで地元の雇用が生まれるといった効果もあるでしょう」と語る。

 仁昌寺氏と伊藤氏は自治体向けの支援を行っているが、内閣府の地方創生テレワークの全体の取り組みの中では、ほかに企業や働き手へのアプローチも行っている。これら3者へのアプローチを包括的に行うことで、地方が抱える社会課題の解決をますます迅速化させていきたい考えだ。

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