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国内企業のIT投資は旺盛だがDXのビジョンが不足

国内企業のIT投資は旺盛だがDXのビジョンが不足

2022年08月08日更新
MM総研
取締役 研究部長
中村成希 氏

パートナープログラムに乗って
ビジネスの大海をゆく

コロナ禍以前よりITへの需要が高まるとともに、クラウドの台頭や働き方の多様化など、そのビジネスは複雑化していた。そしてコロナ禍を経てビジネスの複雑化、顧客要望の多様化が一気に加速している。混沌とする市場においてビジネスを成長させるには、また新たなビジネスを拡大していくには、どの方角に向かって舵を切ればいいのだろうか。それを知る術がベンダー各社のパートナー戦略にある。ベンダー各社が提供するパートナープログラムには複雑化、多様化する市場を整理し、成長の道筋を立てるための情報や、ビジネスの取り組みを支援する仕組みが提供されている。ベンダー各社のパートナー戦略を読み解き、パートナープログラムを理解することで、ビジネスを有利に進めるための「乗りこなし方」を考察する。

国内企業の多くが増収増益の見通し
IT投資は旺盛だがDXのビジョンが不足

IT Market Trends

この数年間、世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大し、あらゆる市場およびそのビジネス環境が大きく変化した。その大きな変化に対して企業はうまく順応し、事業を継続、成長させているのだろうか。最新の調査結果を参照すると、企業の規模を問わず増収増益を見込んでいる企業が多く、IT投資にも積極的であることが分かった。

2022年の売上と営業利益の見通し

 MM総研が2022年3月に発表した「日本企業 従業員規模別のDXおよびIT投資動向調査」によると、2022年の売上高と営業利益の見通しについて調査対象全体(1,000社)のうち前年比20%以上の増収が11.5%、同10〜20%未満の増収が27.9%、同1桁の増収が24.3%と、全体の63.7%が増収を見込んでいることが分かった。

 規模別に見ると増収と回答したのは大企業(1,001人以上)が73.2%、中堅企業(501〜1,000人)が62.1%、準中堅企業(301〜500人)が64.9%、中小企業(25〜300人)が55.7%だった。

 2022年の営業利益の見通しについては全体で増益と回答したのが61.2%で、そのうち利益率が向上したのが26.0%、前年と同じが23.2%、低下したのが12.0%だった。規模別に見ると増益と回答した大企業は67.6%、中堅企業が61.2%、準中堅企業が60.3%、中小企業が56.1%だった。

 売上、営業利益ともに企業の規模が小さくなると増収増益の割合が下がっていくが、それでも中小企業で55%以上が増収増益と回答している。

 大企業に対して中小企業の増収増益の割合が低い要因について、MM総研で取締役 研究部長を務める中村成希氏は「中小企業は客数の増加が大企業や中堅・準中堅企業よりも割合が低く、減少した割合が大きいことが調査結果で分かっています」と指摘する。

IT投資が設備投資を上回る

 コロナ禍以降の経営方針、IT投資、設備投資に関する調査結果では経営戦略・方針を大幅に見直したと回答した企業が全体の31.2%、見直したと回答した企業が同51.0%と、80%以上の企業が環境の変化に対して経営の変革に取り組んでいることが分かる。

 その動きを裏付けるのがIT投資と設備投資の傾向だと中村氏は指摘する。IT投資について増加したと回答した企業は全体で57.7%、減少したと回答したのは同20.0%だった。また設備投資について増加したと回答した企業は全体の46.8%、減少したと回答したのは同27.8%だった。

 中村氏は「設備投資を増加したと回答した企業の割合に対して、IT投資を増加したと回答した企業の割合が10ポイントも上回っています。これはIT投資を先行して行い、新しい経営戦略や経営方針を推進しようという意図が表れているとみられます」と説明する。

 ちなみにIT投資を増加したと回答した企業の割合について大企業が67.2%、中堅企業が58.5%、準中堅企業が55.9%、中小企業が49.8%と総じて意欲が高いことが分かる。

 中村氏は「DXへの取り組みの度合いについても調査しましたが、現状は中小企業の取り組みが遅れてはいるものの、経営の指示で取り組みを開始する計画があると回答した企業が相当数(14.5%)あることから、それを加えると今後は巻き返す可能性が高いとみています。こうした結果も踏まえて、今後も国内IT市場は堅調に成長を続けるとの見通しを立てています」と説明する。

規模を問わずDXの課題はビジョン

 DXを推進する機運が高まり、IT需要も盛り上がることが期待される一方で、課題もあると中村氏は指摘する。「経営方針および経営計画(中期経営計画・統合報告書等)においてDXの推進に向けたビジョンを掲げていますか」という質問に対して、掲げていると回答した企業の割合は全体で38.0%だったのに対して、「DXの推進に向けたビジョンを掲げているが、デジタル技術による社会および競争環境の変化が自社にもたらす影響(リスク・機会)は考慮していない」と回答した企業が同44.9%に上った。

 規模別に見るとビジョンを掲げていると回答した割合は大企業が48.3%、中堅企業が40.2%、準中堅企業が36.9%、中小企業が26.4%と規模に応じた差が生じている。しかし影響を考慮していないと回答した企業の割合は大企業から順に43.5%、45.9%、44.2%、45.9%と規模による差はほとんどない。

 中村氏は「企業の規模を問わずDXの推進において『戦略思考の不足』が課題となっています。ユーザーの戦略思考についてITサプライヤー1社がコンサルティングサービスから実装、その後のサポートまでを一気通貫で網羅するのは難しいのが実情です。特に多種多様な課題と機会を持つ中小企業に対して、それぞれに適したコンサルティングサービスやソリューションを見つけることはとても難しいのが現実だと思います。この領域において経営層が考えるべきDXの戦略を含めたデジタル提案をすることが、中堅中小あるいは地域の販売店やSIerに求められています」とビジネスチャンスについてアドバイスする。

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