災害支援活動の現場から学ぶ
実践的なBCP対策と非常時のIT活用

実践事例

災害被災地では人命や被災者の人生に関わる深刻な問題が発生しており、ビジネス以上の迅速な対応が求められる。被災地での対応は国や自治体、社会福祉協議会、災害ボランティア、NPOなどさまざまかつ多数の人たちが役割分担して、復旧活動などを展開する。この現地での活動を迅速に進めるには、現地でのさまざまな業務の効率化が必要となり、ITの効果的な活用が求められる。本稿ではその実例から実践的なBCP対策を考察する。

茨城県常総市洪水災害
被災地で求められるIT活用
災害支援活動の現場での課題

サイボウズでは2015年9月に茨城県常総市で発生した洪水災害から、同社の社員が被災地に赴いて現地で支援活動を行っている。この活動を通じて現地でのさまざまな問題や課題を把握し、それらを同社の強みであるテクノロジーを活用して解決してきた。その成果は昨年7月に発生した熱海市伊豆山土石流災害の支援活動に生かされ、現在もその効果を高めるための進化を続けている。まずは被災地の支援活動の現場で生じていた問題や課題を見ていこう。

東日本大震災の被災者受け入れで
調布市社協の支援活動にITで協力

サイボウズ
災害支援チームリーダー
柴田哲史 氏

 サイボウズの被災地支援活動は同社の社長室 災害支援チームが中心となって行われている。そのチームリーダーを務めるのが柴田哲史氏だ。柴田氏は以前、日本マイクロソフト(当時はマイクロソフト)の開発部門とサポート部門の拠点があったマイクロソフト調布技術センターに勤務しており、東京都調布市で活動するボランティアや市民活動団体などの人脈を築いた。

 日本マイクロソフトを退社して海外で起業した後も、同市の恒例行事である「ちょうふチャリティーウォーク」のホームページの制作を依頼されるなど交流が続いた。そして2011年3月11日、東日本大震災が発生する。調布市にある「味の素スタジアム」が避難所となり、福島からの被災者を受け入れることになった。ここから柴田氏の災害支援活動が始まる。

東日本大震災の際に被災者の受け入れ場所の一つとなった東京都調布市の味の素スタジアムでのボランティア活動の情報を発信するホームページとボランティア登録のWeb フォームを、調布市社協からの依頼で柴田氏が制作した。

 味の素スタジアムへの避難者の受け入れが公表されると、ボランティアに関する問い合わせの電話が調布市と社会福祉協議会(社協)に殺到し、職員がその対応に追われて避難所開設準備ができないという事態に陥った。

 ちなみに社協とは地域福祉の推進を目的に高齢者や障がい者などへの福祉活動を支援する民間団体で、全国の都道府県と市町村に一つずつ設置されており、全国に合計約2,000の社協がある。災害が発生すると国や自治体は死者・行方不明者の捜索や災害対策本部の設置、避難所の設置・運営を行い、社協が被災者の生活支援、災害対策本部との協議によって災害ボランティアセンターの設置・運営を行うという役割を分担する。

 当時、調布市の社協の職員から殺到する問い合わせへの対応を何とかして欲しいと相談を受けた柴田氏は、避難所の状況や物資の募集などを伝えるホームページを制作、開設するとともに、ボランティア登録ができるWebフォームも提供した。その効果について柴田氏は「ホームページでは避難所の中の様子を見えるようにしました。そうしないとどうなっているのかという問い合わせの電話がかかってくるのです。かかってきた電話の内容を精査すると、同じ内容の質問が多いことが分かりました。そこでホームページに『よくある質問』への回答を掲載しました。これらの活動によって、問い合わせの電話が半減しました」と説明する。

被災地での支援活動を
サイボウズ入社後も継続

サイボウズ
災害支援プログラム事務局
岩下朗子 氏

 問い合わせ対応以外の課題も数多くあった。例えばボランティアの各チームリーダーと支援者、避難者とでメールでやりとりして活動するのだが、その際にメールをやりとりしている本人しか事情が分からず、本人がいないと対応ができない、リーダーが不在になるとそのチームが活動できなくなるという課題が生じた。

 さらに電話やファクス、メール、SNSなど、さまざまな手段で膨大な情報が、ものすごいスピードで行き交うため、情報の整理が追い付かず何が最新なのかが分からなかった。

 社協の職員には福祉関係の日常的な仕事があり、そこに災害対応が加わり、仕事量が膨大になって処理が追い付かないこと、大量の情報をスピーディーに整理したり処理したりすることに慣れていないこと、普段の業務でITを使い慣れてないことなど、現場の課題を目の当たりにした。

 その後、被災地でのITを活用した柴田氏の支援活動は2013年に発生した伊豆大島土砂災害、2014年に発生した群馬県前橋市の大雪災害や広島市の土砂災害、2015年に発生した茨城県常総市の洪水災害へと続く。この茨城県常総市の洪水災害の直前に柴田氏はサイボウズに入社した。

 同社では東日本大震災以降、災害支援策として同社製品の無償提供を行ってきた。サイボウズの災害支援プログラム事務局で活動する岩下朗子氏は「大きな災害が発生した際には当社製品のライセンスを数カ月間無償で提供したり、すでに当社製品をお使いのお客さまが被災された場合は一定期間無償にしたりするなど、製品での支援を実施していました。すでにご利用されているお客さまにはツールの支援はできますが、新規で自治体さまなどから協力を要請されても、現場で役立つツールとしての中身は提供できませんでした」と以前の課題を説明する。

柔軟かつ即応できるツールで
予測できない変化に対処する

 数々の被災地に赴いてITを活用した支援活動に携わってノウハウを蓄積してきた柴田氏だが、従来の活動では主にホームページやSNSを活用した支援だった。

 従来の取り組みにおいてもさまざまな成果を得ていたが、現地での実際の状況は災害の種類や地域などによって異なるため、生じる課題や問題もそれに伴い違ってくる。

 茨城県常総市の洪水災害では「全国から1日に3,000人以上のボランティアが駆け付けてくれたのですが、準備していた受付の規模が小さく、長時間にわたり長蛇の列ができてしまいました。事前に参加してくれる人数が分かっていれば、それに応じた準備ができ、円滑に対応できたと反省しました」と柴田氏は語る。

 言うまでもなく災害は突然発生し、被災地の現場の状況も日々変化する。こうした予測できない変化に対して柔軟かつ即応できるツールが、日ごろのBCP対策、そして現地での支援活動に求められることも解決すべき課題として浮き彫りになった。

熊本地震
クラウド、アジャイル、ノーコードで
災害支援活動の迅速化、効率化を図る

2016年4月、熊本県と大分県で最大震度7を観測する熊本地震が発生した。この震災の被災地での支援活動において、現地で次々と発生する問題や課題に対して、その場で臨機応変に対応できる新たなツールが活用された。クラウド、アジャイル、ノーコードの三つの特長を持つそのツールによって、被災地での支援活動におけるIT活用の恩恵がぐっと広がった。その実例を紹介する。

ボランティアの人数を予測して
受付や送迎などを的確に行いたい

ベースキャンプにボランティアを集め、機材を含めてバスで阿蘇山を越えて南阿蘇村へ送迎する計画を立てたが、ボランティアが何人くらい集まるのか見当がつかず、手配するバスの台数を想定することが難しかった。

 熊本地震は被災の規模が非常に大きく、災害ボランティアセンターが17カ所も設置された。柴田氏のこれまでの災害支援活動の経験でも、災害ボランティアセンターは多くても2〜3カ所であり、熊本地震での17カ所という数から、震災の規模の大きさと被害の深刻さが分かる。

 熊本地震発生の前年までの支援活動において、現地の業務でITを有効活用する必要性を感じていた柴田氏は、現地に赴くにあたり考えを巡らした。そして柴田氏が最初に訪れたのは大分県竹田市の災害ボランティアセンターだった。

 熊本県南阿蘇村へ支援に行く人が橋の倒壊により現地に行くことができなかったため、橋を通らずに現地に行くことができる竹田市にベースキャンプが開設されたのだ。このベースキャンプにボランティアを集め、機材を含めてバスで阿蘇山を越えて送迎する計画だった。またゴールデンウィークを迎える時期であり、多数集まるボランティアに円滑に対応することも求められた。

 しかし実際にボランティアが何人来るのか、全く見通しが立たない。すでに開設されていたほかの災害ボランティアセンターでは、全国から1日1,000人を超える参加者が集まり、受付で2時間以上待つこともあるなど、対応に対する苦情も多かった。

 人数の見込みが立たなければ、送迎バスを何台用意すればいいのか手配ができない。バスが足りなければせっかく集まったボランティアが活動できず、多すぎると無駄なコストが発生してしまう。

 ボランティアが何人集まるかをある程度把握したいという課題は、熊本地震の前年に発生した茨城県常総市の洪水災害でも直面した同様の課題だ。柴田氏は被災地の支援活動の現場で次々と生じる問題や課題に柔軟に対応できるツールが必要だと考えた。

来場者数の見通しを立てるために
参加予約システムを被災地で作成

ベースキャンプで柴田氏がkintone で作成した参加予約システムによって、ボランティアに参加する人数の見通しを立てることができるようになった。その結果、送迎バスを適正な台数で用意でき、ボランティア参加者を円滑に送迎できたほか、バスのレンタル費用を数百万円単位で削減できた。

 当時も災害被災地での活動を支援するツールは存在していた。柴田氏は「被災地での活動を効率化するためのツールを自治体や社協が利用するケースもありましたが、使われていませんでした。それらは機能が豊富過ぎて、職員が何をどう使っていいのか分からないことが理由に挙げられます。また自分たちの業務の流れと少しでも違うと使ってもらえません。こうしたツールを必要とする人はITリテラシーが高くない場合が多く、何か乗り越えなければならないハードルがあると、現場はそれどころではないので使ってもらえません」と説明する。

 そして「これは便利だと実感してもらえる機能やツールを提供しなければ使ってもらえません。それにはツールが使われる現地の業務を実際に見て、知る必要があります」と話を続ける。

 現地では状況やニーズが変化するため、変化に応じてツールが柔軟に対応できることも求められる。こうした検討から柴田氏が導き出した解答が自社製品の「kintone」だ。

 まず柴田氏は竹田市のベースキャンプで、ボランティアへの参加を希望する人に向けて参加予約システムをkintoneで作成した。Facebook上でベースキャンプに来場できる可能性のある日を尋ね、その回答が自動的に集計されて現地の情報を発信するホームページにグラフで表示される仕組みだ。

 このシステムによってゴールデンウイーク中に何人くらい、平日は何人くらいがベースキャンプに来場するかの見通しが立てられるようになった。その結果、ボランティア参加者を長時間待たすことなく円滑に送迎でき、送迎バスの台数が適正化されたことでレンタル費用を数百万円単位で削減することができたという。

クラウドでの情報共有によって
現地での業務が改善・効率化された

熊本地震で開設された17 カ所の災害ボランティアセンターの募集状況や活動状況をポータルサイトに集約し、ホームページから問い合わせができるようにするとともに、問い合わせの内容をkintone に集約して管理した。クラウドで情報共有ができるようになったことで、遠隔地にいる別のスタッフが遠隔対応できるようになり、現地の職員の負担が軽減された。

 改善すべき業務はまだまだある。例えば熊本地震では17カ所の災害ボランティアセンターが開設されたが、それぞれの募集状況や活動状況をポータルサイトに集約し、ホームページから問い合わせができるようにするとともに、問い合わせの内容をkintoneに集約して管理するようにした。すると問い合わせを現地の職員が見て対応するのではなく、遠隔地にいる別のスタッフが確認して、できるものは遠隔対応できるようになった。

 柴田氏は「従来はホワイトボードに情報が記されていて、現地に行かなければ状況が把握できませんでした。現地の職員の負担を減らすことができ、その結果、被災者に寄り添った活動により多くの労力と時間を使うことができます」と語る。

 このほか被災者からの支援要請への対応にもkintoneが活用された。従来はかかってきた電話の内容を紙にメモをして管理していた。そのため熊本地震では数千枚もの紙のメモが散乱し、被災者のニーズへの対応漏れが生じていた。そこでkintoneで被災者ニーズ管理システムを現地で作成し、問い合わせの管理1と同様にクラウドで情報を共有することで、支援依頼への対応漏れを減らすことができた。

 柴田氏は「従来は支援依頼を把握していても、この地域は別のボランティア団体やNPOが対応しているだろうと思い込んだりして、漏れが生じていました。被災者ニーズとその対応状況を情報共有することで対応漏れを減らしました」と説明する。

 kintoneのクラウドによる情報共有、現地で迅速に開発して、変化する状況に応じて柔軟にカスタマイズできるアジャイル開発環境、さらにプログラミングのスキルがない人でもドラッグ&ドロップでアプリケーションの機能を簡単に変更、追加できるノーコード開発環境、これら三つの特長が被災地で生じるさまざまな課題や問題の解決に役立った。

 ここで紹介している事例は災害被災地での支援活動でのツールの活用ではあるが、オフィスやビジネスの現場での日常的な業務にも応用できる取り組みが多々ある。そのポイントとなるのが、同一ツールの平時と非常時の両方での活用である。熊本地震でkintoneを効果的に活用したサイボウズだが、そこで平時からのkintoneの習得と活用、迅速な初動対応に有効なアプリケーションの準備が次の取り組みであると学んだ。

熱海市伊豆山土石流災害
災害支援活動にも有効なツールを
平時と非常時の両利きで使いこなす

熊本地震での災害支援活動ではサイボウズのkintoneを活用した仕組みが、現地での活動や業務の改善、効率化に役立った。しかし新たな課題も見えてきた。それはkintoneを初見で使いこなすのは容易ではないこと、初動対応を迅速化する備えを平時にしておく必要があること、そしてkintoneを平時と非常時の両方で有効に活用することなどだ。これらの新たな課題への取り組みから実践的なBCP対策と、同一ツールを平時と非常時の両方で有効活用するためのヒントを探る。

ツールを初見で使うのは難しい
平時の活用で操作を習得すべき

熱海市伊豆山土石流災害では、ボランティアの受付での行列による3 密を避けるため、スマートフォンからQR コードで受付できる仕組みを作った。

 熊本地震での災害支援活動にkintoneを活用して成果を得た一方で見えてきた新たな課題について柴田氏は「kintoneでアプリケーションが簡単に作れると言っても、ゼロから作る場合は1日かかることもあります。支援活動の現場ではその時間も惜しいのです」と指摘する。

 そこでサイボウズでは柴田氏が中心となって災害支援活動の現場で得た知見やノウハウを整理し、どの被災地でも役立つと思われる機能をあらかじめ作ってパッケージ化して提供する活動を始めた。それが2020年に開設された「災害支援プログラム」だ。

 災害支援プログラムでは災害支援活動に役立つ機能がパッケージ化されたkintoneのライセンスを「災害支援ライセンス」として社協などに半年間無償提供しており、現在は46団体(2022年1月時点)が利用している。また被災地での支援、あるいはリモートでの支援を行う災害支援チームも組織し、サイボウズの社員が対応する。このほかkintoneの災害支援ライセンスと連携するパートナーのサービスを優待提供するプログラムも用意する。

 操作が簡単で容易にアプリケーションを作成できるkintoneであっても、平時の活用を通じた操作の習得と使いこなしが非常時の効果につながる。そこでサイボウズは全国の社協と災害支援協定を締結し、平時から災害への備えを継続的に行う取り組みを進めている。サイボウズと災害支援協定を締結するとkintoneの災害支援ライセンスが1年間無償提供されるほか、毎週のリモート会議で課題を共有し、それを解決するツールのプロトタイプをkintoneで作って実証実験を実施し、その成果を災害支援プログラムに反映する活動も行う。さらにkintoneおよび災害支援プログラムを使いこなすための研修会も実施されている。

 柴田氏は「災害支援協定での研修や実証実験を繰り返して災害支援プログラムを改善してきました。例えば広島県社協ではボランティア登録のアプリケーションを、長野県社協では地図を活用した被災者ニーズ管理のアプリケーションを作りました」と説明する。

共通する機能をパッケージ化
「熱海パック」が各地で役立つ

 災害支援協定を結ぶ県社協6団体がそれぞれkintoneで作ったアプリケーションを合体させて、災害支援プログラムはさらに進化した。その実力を発揮したのが昨年7月に発生した熱海市伊豆山土石流災害での支援活動だ。

 静岡県社協とサイボウズは災害支援協定を締結しており、熱海市で土石流災害が発生する1年前からホームページを構築して非常時に備えていたため、被災2日後には災害ボランティアセンターのホームページとFacebookページが開設された。

 熱海市での支援活動では災害支援協定でブラッシュアップされたkintoneが「熱海パック」として、現地の災害ボランティアセンターで活用された。熱海パックではボランティアの事前登録、活動予約、当日受付、被災者ニーズ管理、ボランティアの活動報告のほか、事前登録された情報から例えば居住地域で絞り込んで、対象者に協力を依頼するといったのメールを一斉送信する機能などが提供された。

 対象者を絞ったメールの一斉送信機能は、コロナ禍で県外への移動が制限されていたため地域内でボランティアを集めるのに役立った。またボランティアの受付での行列による3密を避けるため、スマートフォンからQRコードで受付できる仕組みを作ったほか、体調チェックの仕組みも急きょ加えた。

 これらの機能により3密を回避でき、対面での対応が不要となり、受付時に入力されたデータが自動的に整理されるなど、職員の業務負担が大幅に軽減された。

 災害支援協定で長野県社協と作った被災者ニーズ管理のアプリケーションも役立った。被災者のニーズを地図上に未着手、作業中、作業完了といった進捗状況を色分けして表示して見える化することで状況が一目で把握でき、対応漏れを防ぐことができた。

 熱海パックはテンプレート化され、昨年8月に佐賀県で発生した大雨災害、さらに今年3月、4月に発生した宮城県での震災でも活用され、それぞれでkintoneのメリットを生かして状況に応じた変更やブラッシュアップが施された。

熱海市伊豆山土石流災害では、柴田氏およびサイボウズが携わった被災地での支援活動や、災害支援協定での平時の活動で蓄積された知見やノウハウ、改善の成果が詰め込まれたkintone の「熱海パック」が熱海市の被災地での支援活動を支えた。スマートフォンからQR コードで受付できる仕組みを作った。
「熱海パック」の被災者ニーズ管理アプリケーションは地図上に被災者のニーズへの対応の進捗状況を色分けして表示する仕組みが活用され、対応漏れを防ぐことができた。

平時のIT人材の確保とツールの活用
「両利きの提案」で関心を高める

今年4 月22 日に静岡県島田市で開催された「防災サミット」では、全国各地の自治体や社協の職員、サイボウズのパートナーを含めた地元のIT 人材およびIT 企業、NPO の交流の場が提供された。

 災害被災地での支援活動は国や自治体、そして都道府県と市町村の社協、ボランティア、NPOなど、さまざまな組織や団体、人が協力しなければ機能しない。さらに支援活動を迅速かつ的確に行うにはツールを効果的に活用できるIT人材も必要だ。

 IT人材は平時に企業が確保することが難しいことからも分かる通り、突然の非常時にIT人材を確保するのは不可能と言わざるを得ない。そうしたことから地域で活躍するIT人材やIT企業と、地域の他の企業や社協、自治体、さらにはNPOなどが平時からつながっておく必要がある。

 平時からコミュニケーションが図れていれば、非常時の役割分担も円滑に行え、初動を迅速に展開でき被害を抑えられるからだ。さらに平時のコミュニケーションによりIT人材の交流や新たなビジネスへの発展など、地域ビジネスの振興につなげられる可能性もある。

 サイボウズではこうした交流を活性化させるために今年4月22日に静岡県島田市で「防災サミット」を初開催した。このイベントでは全国各地の自治体や社協の職員、サイボウズのパートナーを含めた地元のIT人材およびIT企業、NPOの交流の場が提供された。防災サミットは今年9月に徳島でも開催される。

 柴田氏は「kintoneが被災地での支援活動でうまく機能しているのはクラウド、アジャイル開発、ノーコード開発の三つの要素が状況の変化に対する柔軟かつ容易な対応という要望に合致しているからです。この特長は非常時だけではなく激しく変化する平時のビジネスの現場でも大きな効果が得られます。例えば静岡県社協では職員の方々がkintoneでアプリケーションを自ら作れるようになり、日常業務の改善や効率化に自ら活用しています」と説明する。

 BCP対策や災害対策だけでは関心を引くことは難しいが、平時と非常時の「両利きの提案」ならばビジネスにつなげられるのではないだろうか。