ホーム > PC-Webzineアーカイブ > PCメーカーの法人向けWindows 11ビジネス戦略

PCメーカーの法人向けWindows 11ビジネス戦略

PCメーカーの法人向けWindows 11ビジネス戦略

2022年01月13日更新

Windows 11も駆け込み特需がある
ハードの独自の工夫が需要を喚起する

Market:PC

ここ数年、国内法人向けPC市場はWindows 7の延長サポート終了によるPCの入れ替え、テレワーク実施に伴うモバイルPCの購入、そしてGIGAスクール構想による児童生徒向けPCの新規導入など特需に恵まれてきた。その好影響もひと段落し、次の商機の到来が待たれている。Windows 11はそうした期待に応えられる存在なのだろうか。Windows 11への移行に伴う法人向けPC市場の見通しについて、MM総研 執行役員 研究部長 中村成希氏に話を聞いた。

無償アップグレード期間の動向を注視
企業にはWindows 11対象外のPCが多い

MM総研
執行役員 研究部長
中村成希 氏

 今回、国内PC市場でシェア獲得を競い合うトップベンダーを中心に、Windows 11への移行に伴うPCの需要について各社に話を伺ったが、日本マイクロソフトを含めて移行は数年にわたって徐々に広がっていき、駆け込み需要はそれほど大きくはならず平準化されるだろう、という見通しだった。

 この見解に対してMM総研で執行役員 研究部長を務める中村成希氏は異なる見解を示した。中村氏はWindows 7から10への移行と同様に、駆け込みによる需要の急激な立ち上がりを見立てているのだ。中村氏によると「2025年のWindows 10の延長サポート終了に向けてじわじわと需要が増えて、2025年には特需のような状態になるだろう」と述べている。

 その理由について中村氏は「Windows 11は現状、無償アップグレード期間ですが、企業ではWindows 11のアップグレード対象にならないPCがたくさん使われています。またWindows 7から10への移行のときも無償アップグレード期間が設けられましたが、その際はハードウェア要件がなかったにもかかわらず、大きな駆け込み需要が発生しました」と説明する。

 さらに「消費者の目線で見ると現状はWindows 10を使っている人がWindows 11の機能が欲しいと思って買い替えの需要につながっているとは考えにくいです。法人では情報システム担当者がハイブリッドワークに向けて会社の標準機をどうすべきか、Windows 11でのOSとアプリケーションの相性などを考える中で、Windows 11に買い換えようという動機は今の時点では見えません。そのためWindows 10のサポート切れまでのしかるべきタイミング、つまり期限ぎりぎりでの入れ替えになるでしょう」と指摘する。

PCのソフトウェア環境はオンプレミス
クラウドでの進化をどう受け止めるのか

 現時点ではユーザーや企業がWindows 11を導入する魅力を見出していないのが実情のようだが、しかし企業や情報システム担当者にとってWindows 11には魅力的な特長がいくつもあるという。

 その魅力について中村氏は「Windows 11にはリモートワークで便利な新しい機能や強化された機能がいくつも搭載されています。目立たない進化ではありますが、ユーザーが使っていくうちにそれらに気付けばWindows 11への評価が上がると見られます。そしてハードウェアと連携したセキュリティ強化も企業にとっては歓迎すべき特長です」と話しつつ、「しかしながらこれらが買い替えの積極的なモチベーションになるとは考えにくい」とも指摘する。

 ではWindows 11への移行およびPCの買い替え需要を喚起するには何が必要なのだろうか。中村氏は「PCメーカーや周辺機器メーカーがWindows 11の特長や機能を生かす便利で面白い機能を開発して搭載することが、需要を喚起する一つの方策になるでしょう」とアドバイスする。

 また「ソフトウェアはクラウドで日々進化を続けています。一方でPCはOSがオンプレミスで組み込まれ、新しい機能をタイムリーに提供できません。こうした観点からOSとアプリケーション、PCなどのハードウェアのそれぞれの役割や在り方を見直すことで、新たな進化が生まれるかもしれません」と語る。

 マイクロソフトは「Windows 365」でWindowsをクラウドでも提供している。これはAzure上に展開される仮想Windows PCであり、ユーザーから見るとWindowsを用いた仮想デスクトップサービスだ。今後はオンプレミスのWindowsだけではなく、クラウドのWindowsも顧客への提案の選択肢になるだろう。

強化されたセキュリティやサウンドなど
独自の機能とWindows 11が補完関係にある

Maker:HP Japan

「HP Elite Dragonfly G2」は1kg を下回る軽さとインテルEvo プラットフォーム採用のパワフルさを両立したコンバーチブルPC だ。

日本HPではWindows 11がプリインストールされた法人向けの製品が12月より発売されたばかりだ。しかしすでに法人向け製品のほとんどがWindows 11レディを銘打っており、Windows 11の要求仕様に応えられるスペックを備えている。この時点でも法人市場でのWindows 11への反応は良い感触だという。

管理者の負担を軽減する特長が
Windows 11への移行を促進する

日本HP
クライアントソリューション本部
ビジネス開発部
マーケティングマネージャ
松本英樹 氏

 日本HP クライアントソリューション本部 ビジネス開発部 マーケティングマネージャ 松本英樹氏によると「情報収集を急ぐパートナーさまが増えています。パートナーさまからは現行機種がWindows 11の要求仕様を満たしているのかという質問が多く、次いでWindows 11のダウングレード版の発売時期に関する問い合わせも増えています。それはハイブリッドワークに最適な機能面の強化もありますが、マイクロソフトがアピールしている管理や動作の“一貫性”で得られるメリットが大きいと期待しているからです」という。

 一貫性で得られるメリットとは何か。松本氏は「マイクロソフトはWindows 10で動作しているアプリケーションはWindows 11でも動作すると自信を持って発信しています。動作が確認できていないアプリケーションはごくわずかで、運用中のアプリケーションに修正が必要な場合は『App Assure』というサービスが用意されています。さらにWindows 11の展開や管理の手法もWindows 10と同じで、この安心感に対してパートナーさまは好意的に受け止めていると認識しています」と話を続ける。

 さらにパートナーを喜ばせるニュースが機能更新アップデートのサポート期間の延長だ。松本氏は「機能更新アップデートは年間2回から1回に集約されましたが、さらにWindows 11では機能更新アップデートのサポート期間が1年半から2年に延長されました。パートナーさまや情報システム担当者の方は対応の負担が大幅に軽減されます」と説明する。こうした一貫性による管理者の負担軽減がWindows 11への移行を後押しすると見ている。

Windows 11と連携した機能や装備と
周辺機器の組み合わせで需要を喚起

日本HP
パートナー営業統括
第一営業本部 第二営業部
部長
安部正則 氏

 前述の通りWindows 11ではWindows 10で動作するアプリケーションが同様に動作し、管理の手法も踏襲されていることから、Windows 10と11を混在させて運用することもできる。そのためWindows 11への移行は徐々に進むとみている。日本HP パートナー営業統括 第一営業本部 第二営業部 部長 安部正則氏は「移行や導入は前倒しで進められ、緩やかな山を描くように進むでしょう。サポート終了ぎりぎりまで待って大きな駆け込み需要が生じることにはならないとみています」と説明する。

 日本HPでは同社が独自に搭載してきた機能がWindows 11で強化された機能と補完関係にあり、今後のビジネス展開で有利に働くと期待している。例えばWindows 11ではTeamsを標準機能とし、音声をかなり高い精度でテキスト情報に変換できる。日本HPは以前より高性能なスピーカーやマイクを前後両面に装備した機種など、Web会議の生産性を向上させる機能を搭載している。

 さらにWindows 11ではハードウェアレベルのセキュリティが強化されているが、日本HPの製品には独自のセキュリティチップである「HP Endpoint Security Controller」を搭載してハードウェアレベルで攻撃を防御したり、攻撃を自動でリカバリーしたりするセキュリティ機種を提供している。

 さらにWindows 11の機能を有効に活用できるモニターなど、周辺機器にも商機があるという。安部氏は「例えば本体に角度調整ができるWebカメラと、スピーカーやマイクを内蔵したWeb会議に適したモニターも発売しています。ミーティングスペース用の常設モニターとしてなど、Teamsと組み合わせて便利に利用できます」とアピールする。

Windows 10のような駆け込み特需はない
ハイブリッドワークをワンストップで支援

Maker:Dell Technologies

「Latitude 9420」には自動SafeShutterや3Dスピーカーフォン、Intelligent Audio、ComfortView Plusを搭載した16:10のモニターなど、リモートワークの生産性と安全性を向上させる独自の機能が搭載されている。

Windows 7のサポート終了によるWindows 10への移行やテレワーク需要、GIGAスクール需要などこの数年、PCビジネスの変動が大きかったが、デル・テクノロジーズでは昨年の夏を底にビジネスは大幅に成長しているという。そうした中でWindows 11はどのような影響を与えるのだろうか。

2022年は緩やかな右肩上がり
16GBメモリーを選択する顧客が増加

デル・テクノロジーズ
クライアント・ソリューションズ統括本部
ビジネスディベロップメント事業部 部長
松井 崇 氏

 デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部 ビジネスディベロップメント事業部 部長 松井 崇氏は楽観視を含めてと前置きしながら「Windows 10マイグレーションの反動が徐々になくなりつつあり、来年(2022年)は緩やかな右肩上がりで推移し、法人市場で年間600万台以上、運がよければ700〜750万台に戻るのではないか」と見通しを語る。

 そうした中でWindows 11への移行はどのように進むのだろうか。松井氏は「現状はWindows 11への移行に向けた動きは顕著に出ていません。しかし2025年のWindows 10のサポート終了に向けて、どこかのタイミングで移行しなければなりません。まだ数年の猶予がありますが、その間のフィーチャーアップデートの際にWindows 11へ移行することになります」と説明する。

 また「Windows 11へ移行する前に保守期間が終了してしまうPCもあり、すでにWindows 10へのダウングレード権が使えるWindows 11搭載PCを購入する動きが出始めています。これらのことから、Windows 11への移行においてWindows 10のような特需はないと見ています」と話を続ける。

 Windows 11への移行を見据えた需要の変化も見え始めているという。松井氏は「従来はCPUはインテルCore i5、ストレージは356GB、そしてメモリーは8GBというスペックが標準でしたが、Windows 11への移行を意識してか16GBのメモリーを選択するお客さまが増えています」と指摘する。

ハードだけで差別化するのは難しい
ハイブリッドワークへの総合力で臨む

 Windows 11で求められるハードウェアの仕様を満たすために、また自宅やサテライトなどオフィスの外で働くリモートワークが定着し、その際に快適に仕事をするために、従来よりも高いスペックを求める傾向があるようだ。ただしハードウェアだけで差別化するのは難しく、デル・テクノロジーズではソフトウェアを組み合わせて、より便利で快適な仕事環境を提供することで優位性を獲得するという。

 例えば「Dell Optimizer」は組み込み型AIがPCでのユーザーの作業を学習して、アプリケーションの動作やバッテリーの持続時間などを自動的に改善し、ユーザーごとに最もパフォーマンスが発揮できる環境を提供する機能を提供する。

 またリモート会議中に雑音が発生すると、瞬時にマイクをミュートし、雑音が消えると瞬時にオンに戻す機能や、Wi-Fi利用時に電波が最も強いアンテナに自動的に接続する機能などもある。

 松井氏は「お客さまはどこからPCを買うのかではなく、ITの専門家としてどこと付き合うのかという意識に変わってきています。デル・テクノロジーズにはさまざまなプラットフォームのデバイスやアプリケーションなどを一元管理できる「VMware Workspace ONE」や、IDaaS(クラウド型ID管理)および統合認証サービスを提供する「Okuta」、セキュリティソリューションを提供するSecureworks、バックアップ・リカバリーソリューションを提供するDell EMC Data Protection Suiteなどがあり、ハイブリッドワーク環境で求められるITの全てを提供できます」と同社の強みをアピールする。

ハイブリッドワークでのIT管理者の負担を
Windows 11を絡めて軽減策を提案する

Maker:Lenovo Japan

ThinkPadは実機を見て評価してもらうと購入に至るケースが多いという。中でも「ThinkPad X1 Carbon Gen 9」の評価が高い。

レノボ・ジャパンは現時点(2021年12月)の法人市場はWindows 10への移行がひと段落した状況であり、Windows 11への関心はそれほど高くないという。そしてWindows 11への移行は早くても来年(2022年)から始まると見ており、それでもしばらくは、2025年のWindows 10のサポート終了の際に慌てないよう、準備をどう進めていくかという検討段階が続くと見立てている。同社はWindows 11ビジネスの商機をどう捉えているのだろうか。

ハイブリッドワークの課題に対して
解決策をWindows 11と絡めて提案する

レノボ・ジャパン
執行役員副社長
安田 稔 氏

 レノボ・ジャパン 執行役員副社長 安田 稔氏は、Windows 7のサポート終了に伴うWindows 10への移行やコロナ下でのテレワークの実施、さらにGIGAスクール構想など、それぞれの特需に対する反動を次の特需が大きな落ち込みを抑えつつ、伸びたビジネスもあったとここ数年の市況を振り返る。そして2022年度はWindows 11の好影響はあまり期待できないという。

 しかし安田氏は「2020年度は落ち込むと思っていましたが、需要が平準化されてきているためか法人市場の需要は通常と変わらないと見ています。そうした市況の中でレノボ・ジャパンは1桁、2桁の勢いでビジネスを伸ばしていきます」と意気込みを示す。

 その商機について働き方の多様性が進んでいることに着目し、そこで生じる課題に対してしっかりと応えていくことで需要を伸ばせるという。安田氏は「今まではテレワークが推進されましたが、これからは働き方の選択が幅広くなり、最もパフォーマンスを発揮できる働き方を状況などに応じて選択するようになります。こうした環境になるとユーザーはさまざまな場所で別々に働くことになり、IT管理者は分散する多様なIT機器を管理したり、必要なIT機器を配布したりしなければならないなど、負担が重くなります。その負担を軽減するためのソリューションとして、オートパイロットなどWindows 11の機能を絡めて提案することで移行を促進し、結果としてビジネスが伸びていくと考えています」と説明する。

実機を見せて品質をアピール
商材を組み合わせた提案にも注力

 Windows 11の機能や特長をハイブリッドワーク環境でのニーズに対応させてソリューション提案することに加えて、デバイスにもハイブリッドワークに適した機能や特長が必要だという。安田氏は「ハイブリッドワーク環境ではPCに対して1台でコミュニケーションツールとして機能することが求められています。レノボではドルビー対応のスピーカーを搭載し、独自のノイズキャンセリング機能で雑音を消すなど、コミュニケーションツールとしての質を上げることに投資をしており、製品の差別化につながっています」と説明する。

 さらにWindows 11ではタブレット機能も強化されており、タブレットにも豊富な製品ラインアップを持つレノボにとってWindows 11で訴求できるタブレットの活用提案もビジネスを伸ばす好機と捉えている。

 安田氏は「コロナ禍以降、PCを利用する時間が長くなり、お客さまのPCへのこだわりが強くなっています。ThinkPadは筐体のデザインや品質が高いため、実機を見て評価していただくと購入につながるケースが多いのです。対面、オンラインを問わず実機をお見せする機会を増やして、ビジネスにつなげていきます」と説明する。

 さらにパートナーへの新しい支援策として「ワンレノボ」を2022年春から提供を始める計画だ。これまでモバイルやサーバーなど製品カテゴリーごとに設けられていた窓口を統合し、全ての製品を一つの窓口で対応する。安田氏は「ワンレノボによって一つの商材の提案だけではなく、商材を組み合わせて幅広い提案がしやすくなります」とアピールする。

先行ユーザーの評価や意見を取り入れながら
ハイブリッドワーク環境に適した製品を提供

Maker:NEC

ハイブリッドワーク環境に「ちょうどいい」とアピールする「VersaPro タイプVM」は、14インチのモバイルPCだ。

コロナ禍以前、PC事業は成熟したという雰囲気が業界に漂っていた。それはオフィスに出社して仕事をするという働き方に対して、PCに対するユーザーの要望が画一的だったからだろう。しかしコロナ禍に直面してテレワークを経験し、現在ではリモートとオフィスを使い分けるハイブリッドワークが定着しつつある。働き方が多様化することでPCに新たな要望が芽生え、それに応えることでPC事業に新たな展開が期待できるとNECは見ている。

ハイブリッドワーク関連の機能に注目
OSとPCを組み合わせてメリットを訴求

NEC プラットフォームソリューション事業部
スマートデバイス事業統括グループ
スマートデバイス・GIGAスクール
営業推進グループ
シニアマネージャー
加藤賢一郎 氏

 Windows 11が発売された影響についてNECではハイブリッドワークに向けた機能強化に期待しているという。同社のプラットフォームソリューション事業部 スマートデバイス事業統括グループ スマートデバイス・GIGAスクール営業推進グループでシニアマネージャーを務める加藤賢一郎氏は次のように指摘する。

「Windows 11で最も大きな変化がハイブリッドワークに向けた機能強化です。ハイブリッドワークに適した仕事環境をお客さまに提供するには、OSとPCのハードウェアや機能をうまく組み合わせて実現する必要があります」

 そして同社のプラットフォームソリューション事業部 スマートデバイス事業統括グループ スマートデバイス戦略グループ マネージャー 佐々木紀安氏は「今後、お客さまがWindows 11を使っていく中で、ハイブリッドワーク環境において新たな要望が出たり、Windows 11の機能でマイクロソフトが想定していなかった使い方が評価されたりするなど、いろいろな声が出てくると見ています。そうしたお客さまの声をうまく取り入れてハードウェア側での機能強化を進めて製品に反映していきたいと考えています」と今後の製品展開について説明する。

 個人市場ではいち早く新しいテクノロジーや製品を使いたいと考えるユーザーが数多くいる。そうした先行ユーザーのWindows 11に対する評価も、製品展開だけではなく企業がWindows 11を導入する際の判断材料にもなるだろう。

 加藤氏は「Teamsは当初は使いづらい部分もありましたが、アップデートを重ねて現在ではとても便利なツールに進化しています。Windows 11にはTeamsが標準搭載されていますので、今後はさらに使いやすくなるのではないかと期待しています」と語る。

法人での導入の検討開始は
アップデートで洗練されてから

NEC
プラットフォームソリューション事業部
スマートデバイス事業統括グループ
スマートデバイス戦略グループ
マネージャー
佐々木紀安 氏

 企業におけるWindows 11への移行の見通しについて佐々木氏は「Windows 7から10への移行の際は、ユーザーインターフェースや管理の手法が大きく変化したため、移行のハードルは高いものでした。しかしWindows 11と10はマイクロソフトも一貫性をアピールしており、あまり変わっていません。Windows 11に対するアレルギーは少ないのではないでしょうか」と指摘する。

 ただし企業でのWindows 11への移行はしばらく間がたってから始まるという。加藤氏は「法人向けのWindows 11はアップデートが行われて洗練されるでしょうから、それがひと段落したら検討が始まると見ています」と説明する。

 今後NECではWindows 11への移行を見据えて、Windows 10でも11でも選択できる製品ラインアップを拡充して顧客ごとに異なる移行のスケジュールに貢献していくとしている。特にコロナ禍以降はモバイルPCへの需要が急増し、今後もこの流れは変わらないと見ており、この領域の製品を充実させていくという。

 また前述の通りハイブリッドワーク環境で快適に使えて、生産性の向上に寄与できる製品の開発にも力を入れていく。加藤氏は「モバイルPCの需要が大きく増加した一方で、13インチでは小さいという要望もあり、14インチの製品が携帯性と作業性を両立できるとして人気が出ています」と説明する。

 NECではWindows 11に限らずハイブリッドワーク環境において「ちょうどいい」製品を提供することで、顧客の要望に応えてビジネスを伸ばしていくという。

法人顧客からの具体的な問い合わせが増加
2022年春から2024年にかけて移行が進む

Maker:Dynabook

「dynabook G83」はハイブリッドワークに適した独自の特長や機能を備え、競合製品との差別化を図っている。

Windows 11が2021年10月5日に国内で正式にリリースされ、Dynabookは個人向けにいち早く搭載製品を発売した。同社は市場の反応について、個人市場では年末商戦に向けてWindows 11の認知を広げている最中とし、法人向けについては従来の傾向からも新しい製品にすぐに飛びつくわけではないが法人の顧客からの問い合わせが増えており、Windows 11に高い関心を持つ顧客が増えているという。

Windows 10のサポート終了に向けて
早めに動いて円滑に移行を進める

Dynabook
国内マーケティング&ソリューション本部
副本部長
荻野孝広 氏

 法人市場におけるWindows 11への移行はどのように進むのだろうか。Dynabook 国内マーケティング&ソリューション本部 副本部長 荻野孝広氏は「本格的な導入は来年以降と見ています。Windows 11を利用するには要求されるハードウェアスペックを満たす必要があるため、当面はWindows 11搭載PCを購入してWindows 10にダウングレードして利用するお客さまが多いと見ています」と話す。

 また同社の国内サービス事業本部 本部長 岡 馨氏は「2025年のWindows 10のサポート終了に向けて2022年から本格的に検討し、2024年に本格導入するという流れが主流になると思います。ただしWindows 7から10への移行の時のような、期限ぎりぎりの駆け込み需要はないと見ています。あの時は移行が間に合わなかったお客さまもいましたので、今回は早めに動いて円滑に進めたいと考えているお客さまが多いのではないでしょうか」と説明する。

 2022年から始まると見られる検証について岡氏は、「法人向けのWindows 11は2022年春までに修正や機能追加などのアップデートが行われると思われ、アップデートがひと段落する2022年春から検証を始めるお客さまが多いでしょう」と見通しを語る。

製品によって使い勝手が全く異なる
独自の特長と機能を備えて差別化を図る

Dynabook
国内サービス事業本部
本部長
岡 馨 氏

 Windows 11に関連するビジネスを伸ばす取り組みについてDynabookは、Windows 11でも実現されているハイブリッドワークに向けた生産性や利便性の向上に向けた機能強化や、ハイブリッドワーク環境で煩雑化する管理の負担軽減などに注力し、「Windows 11を使うならDynabook」というキャッチコピーとともに競合製品との差別化を図っている。

 例えばWindows 11にはTeamsが標準で提供されているが、Dynabookでは個人向けにマイクをキーボードでオンオフできる機能を搭載した製品を発売しており、TeamsやZoomなどでの利用中にワンタッチでマイクのミュートや解除が行える。

 また独自のノイズリダクション機能も搭載しており、継続的なノイズだけではなくドアが閉まる音やチャイムの音など突発的な雑音もAI機能で消去でき、相手から聞こえてくる雑音も消去できる。さらに筐体も薄く、軽く、頑丈で、自宅とオフィスの移動で持ち歩きやすく、落としたりぶつけたりしても壊れにくいなど、ハイブリッドワークに適したさまざまな機能や特長を備えている。

 1台のPCであらゆる仕事をこなすことも求められるため、高いパフォーマンスも求められる。そこでCPUのパフォーマンスをTDP(熱設計電力)の最大値で動作させる「dynabookエンパワーテクノロジー」を独自に開発・採用しており、同スペックの製品と比較してより高速な処理を実現し、例えばTeamsやZoomなどリアルタイムの映像を利用するアプリケーションが快適に利用できる。

 管理の負担軽減についてはWindows 10移行時に大きな実績を上げ、ノウハウを蓄積した「クライアントPC LCM サービス」を提供しており、クライアントPCの導入計画から調達、導入、運用、保守、撤去、更新、リユースまで、ライフサイクル全体をユーザーに代わって管理してくれる。

 荻野氏は「Windows 11搭載PCはどれも同じと認識しているお客さまに対して、製品によって使い勝手が全く異なることを訴求していきます」とアピールする。

PCのライフサイクルの全てをカバー
「コト化」でサブスクリプション提供

DaaS:Yokogawa Rental & Lease

横河レンタ・リースでは企業におけるWindows 11の導入時期について、2025年のWindows 10のサポート終了を視野に入れて2023年から2024年にかけて本格化し、2024年の下期から2025年の上期にピークを迎えるのではないかと見ている。既存のWindowsを一気にアップグレードするのではなく、Windows 11に適応するPCに入れ替えておき、フィーチャーアップデートの一環で移行するというシナリオだという。

ハードウェアでの対策を視野に入れた
セキュリティの強化に意気込みを感じる

横河レンタ・リース
事業統括本部ITソリューション事業本部
ソフトウェア&サービス事業部 事業部長
松尾太輔 氏

 Windows 11を導入するメリットについて横河レンタ・リースの事業統括本部ITソリューション事業本部 ソフトウェア&サービス事業部で事業部長を務め、『デバイス・アズ・ア・サービス』(カナリアコミュニケーションズ刊)の著書もある松尾太輔氏は次のように解説する。

「Windows 11ではハードウェアに対する要求仕様があり、それは主にセキュリティの強化を目的としています。高度化するサイバー攻撃に対してセキュリティ機能も年々強化され、攻撃しにくくなってきています。しかし攻撃するレイヤーが下がってきており、ハードウェアでの対策も講じなければ防御できません」

「企業にとってセキュリティは最も大切な要件です。目に見える派手な進化ではありませんが、Windows 11ではハードウェアと連携したセキュリティの強化やIDベースのゼロトラストセキュリティへの移行など、マイクロソフトの意気込みが感じられるセキュリティの強化がいくつも見られます。セキュリティの強化に関してWindows 11を導入するメリットは大きいのですが、企業のセキュリティリテラシーが不十分なため、Windows 11の価値が理解されないのかもしれません」(松尾氏)

PCの入れ替えにかかる負担を軽減し
Windows 11の導入を促進する

横河レンタ・リース
事業統括本部ITソリューション事業本部
執行役員 事業本部長
山神寛之 氏

 セキュリティの強化やハイブリッドワークでの利便性や生産性向上など、Windows 11のメリットを理解して導入を検討したとしても、PCの入れ替えに負担がかかるようではその意欲はなえてしまいかねない。そこで横河レンタ・リースではモノをサブスクリプションで提供する「コト化」の提供を計画している。

 横河レンタ・リースの事業統括本部ITソリューション事業本部で執行役員 事業本部長を務める山神寛之氏は「コト化はハードウェアをas a Serviceで提供する新しいサービスで、2022年春からの提供を予定しています。コト化ではPCだけではなくMicrosoft 365などのクラウドサービスも含めて提供する計画です」と説明する。

 既存のレンタルサービスとのすみ分けについて松尾氏は「レンタルは必要に応じて短期、中期、長期で契約して、それぞれに応じた料金で利用できます。コト化は期間を決めずに月額課金で利用でき、使わない時は一時的に契約を停止できるなど柔軟な料金体系が特長です。ただしモノのコストを無視できるかというと、解約し放題というわけにはいきません。as a Serviceの本質は別のところにあります」と説明する。

 横河レンタ・リースではPCやWindows 10の運用の効率化とクライアントPCのデータレス化を実現する「Flex Work Place」を提供している。Flex Work PlaceにはデータレスPCを実現する「Passage Drive」および「Passage」や、PCやWindows 10の運用を効率化する「Unifier」や「Unifier Cast」、アプリケーションを安全に管理する「AppSelf」などの機能があり、これらもコト化に取り込むことで顧客のメリットを訴求する。

 山神氏は「サブスクリプションはトータルコストがお客さまの検討事項となります。それに対してどのような価値を提供していくのかというテーマに向けて、サービスを洗練させていきます」とアピールする。

Windows 11に対する初動は鈍い
法人向けPCの需要はDaaSで喚起する

DaaS:ORIX Rentec Corporation

Windows 11が国内で発売されてから1カ月がたった2021年12月時点で、オリックス・レンテックでは顧客からWindows 11に関する問い合わせはまだ少ないという。それはWindows 11の新しい機能などが知られておらず、Windows 10からWindows 11へ移行するメリットが明確ではないというのが理由のようだ。それでは国内PC市場の活性化にWindows 11は役立つのか、それとも別の方策が必要なのか、同社に話を聞いた。

アプリの動作検証などの負担と
導入メリットのせめぎ合い

オリックス・レンテック
常務執行役員
営業推進本部長
兼 東京営業本部長
兼 デジタル推進本部長
沖野俊之 氏

 2025年に予定されているWindows 10のサポート終了がWindows 11導入を喚起するという話に対して、オリックス・レンテック 常務執行役員 営業推進本部長 沖野俊之氏は懐疑的だ。沖野氏は「予定通りサポートが終了するならばWindows 11への乗り換えはあるでしょう。しかし過去の事例を参考にすると、Windows 10のサポート終了の時期に対して市場から強い要望が出た場合は、延長する可能性もあると考えられます」と意見を述べる。

 またWindows 10では年間2回のフィーチャーアップデートへの対応が管理者の大きな負担となっていたが、フィーチャーアップデートが年間1回に集約され、さらにWindows 11ではフィーチャーアップデートのサポート期間が従来の1年半から2年へと延長される。沖野氏は「管理者の負担が軽減される機能や特長が認知されれば、Windows 11導入のモチベーションにつながるかもしれません。しかし導入の際の動作検証などの負担を考慮すると、もう少しメリットが欲しいところです」と指摘する。

 Windows 11では導入するハードウェアに対してスペックの要求がある。沖野氏は「Windows 11に関係なくPCのスペックへの要求が高まっています。これはテレワークの普及により1台のモバイルPCでリモート会議など、さまざまな業務をこなさなければならなくなったことが要因です。ハイスペックなCPUやグラフィックス、メモリーなどが必要とされるようになりました」と語る。

クラウドやLCMを含めたDaaSを提供
レンタルやサブスクで利用方法を開拓

 今後のPCへの需要喚起に対してオリックス・レンテックではDaaS(サブスクリプション)にも注力するという。沖野氏は「従来のレンタルは契約期間の途中で解約して精算できるという柔軟性はありましたが、DaaSでは必要な期間だけ利用できるメリットがあります。レンタルはオフィスにPCを固定して設置し、一定期間に同じユーザーが利用するような用途に適しています。一方のDaaSは、例えばシステム開発のようなプロジェクトの期間や人数が変動するような用途に適しています。Windows 11でのアプリケーションの動作検証や導入の有用性の確認にも当社のDaaSが有効です」と説明する。

 同社のDaaSは常に最新のデバイスとMicrosoft 365をはじめデータシンクライアントやクラウド利用時のアクセスセキュリティ、エンドポイントセキュリティなどのサービスを最新のデバイスを組み合わせてサブスクリプションで利用できる。さらにオプションでPCのライフサイクルマネジメントサービスを組み合わせて利用することもできる。

キーワードから記事を探す