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オープン・ハイブリッドクラウド、内製化を支えるクラウド基盤

オープン・ハイブリッドクラウド、内製化を支えるクラウド基盤

2021年10月11日更新

「オープン・ハイブリッドクラウド」で
顧客視点のサービス提供を支えるICTを実現

Open Hybrid Cloud

国内企業のICTにおける問題点は、ビジネスサービスにおいて顧客視点が欠如していることだという。ユーザー企業が目指すべきはビジネスサービスのロジック実装に注力し、ビジネスロジックに基づいて実装されたアプリケーションを迅速かつ安定したサービスの展開を、可能な限り効率的に行うことができるICTの実現だ。その実現に寄与するのがレッドハットが提唱する「オープン・ハイブリッドクラウド」である。

日本企業のICTの問題点は
顧客視点が欠けていること

レッドハット
テクニカルセールス本部
ソリューションアーキテクト
小島啓史 氏

 電子情報技術産業協会(JEITA)とIDC Japanが共同で実施した「2020年日米企業のDXに関する調査」の結果によると、IT予算の増減見通しに関して「IT予算が増える理由」として調査対象の国内企業の多くが「働き方改革の実践」や「ITによる業務効率化とコスト削減」「未IT化業務プロセスのIT化」といったIT部門が起点となる取り組みを挙げた。

 これに対して調査対象の米国企業の多くは「ITによる顧客行動や市場の分析強化」や「市場や顧客の変化への迅速な対応」、「ITを活用したビジネスモデル変革」といったビジネス部門が起点となる取り組みを挙げている。

 レッドハットのテクニカルセールス本部でソリューションアーキテクトを務める小島啓史氏はこの調査結果を示しながら「米国企業ではビジネス部門が起点となり、業務の自動化やデータを活用した意思決定範囲の拡大などが挙げられており、常に顧客視点でのビジネスサービス、ビジネスモデルの在り方を目指していることが分かります。国内企業ではIT部門が起点となり、自社業務プロセスの改善、効率化を目指している傾向が強く現れており、顧客視点が欠けているという点が日本のDXの弱さを象徴しています」と指摘する。

 そして「日本のICTの問題点もまさにここにあり、個人または各チームで実施するITシステムの運用・管理に関わる作業を効率化することは重視しているが、それを実際のビジネスサービスにどう結びつけていくか、という視点が欠けている傾向があります」と話を続ける。では顧客視点のサービスを提供するにはどのようなICTを構築、活用すべきなのだろうか。

顧客視点のサービス提供に必要な
スピード、スケール、スタビリティ

 顧客視点のサービスを提供するために必要なICTには、より早く市場へサービスを投入する「スピード」、ビジネス機会の拡大に対応する「スケール」、ビジネスを常に安定稼働させられる「スタビリティ」の三つの要素が求められる。あるレポートではパフォーマンスの高い組織では、低い組織の208倍もの頻度でアプリケーションのデプロイが行われており、その頻度とスピードの重要性を指摘している。

 このような背景からユーザー企業はビジネスサービスのロジック実装にフォーカスするとともに、ビジネスロジックに基づいて実装されたアプリケーションを迅速に、かつ安定したサービスを可能な限り効率的に展開することが求められる。

 小島氏は「ユーザー企業においてはオンプレミスの管理コストの削減や、ベンダーおよびクラウドのロックインの回避に向けて、さまざまなクラウド企業が提供しているパブリッククラウドサービスを複数組み合わせて利用することが有力な選択となるでしょう。ただしシステム要件に応じては、オンプレミスで持たなくてはいけないものもあると思います。例えば日本の金融システムでは要件上、インターネットに接続してはいけないというものもあって、オンプレの需要はまだ続くと思います。そのためハイブリッドクラウドやマルチクラウドが現実解ではないでしょうか」と説明する。

 そしてレッドハットではここ数年、「オープン・ハイブリッドクラウド」を提唱している。これは業界標準で利用されているさまざまなオープンソースのテクノロジー、例えばOSではLinux、コンテナ技術ではKubernetesなど、こうした技術要素を取り入れて提供しているレッドハット製品と、レッドハット製品の動作認定を取得しているパートナーのサーバーやクラウドなどの製品やサービスを組み合わせて構築した、ハイブリッドマルチクラウド環境を意味する。

オープン・ハイブリッドクラウドで
開発・管理・運用の手順を統一

 レッドハットが提唱するオープン・ハイブリッドクラウドの代表的な基盤となるのが「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)と、RHEL上で動作するソフトウェアであるコンテナアプリケーションの開発および運用のプラットフォーム「Red Hat OpenShift」だ。

 小島氏は「オープン・ハイブリッドクラウドを利用することで、ユーザーは世界中の開発者がオープンソースとして開発してきた成果の恩恵に授かれます。またレッドハットがパートナーさまとともに構築・発展してきた、パートナーさまによるレッドハット製品のサポートを含むエコシステムを利用できるようになります」と説明する。

 ハイブリッドクラウドおよびマルチクラウドを利用する際は、開発手順や運用手順の増加を可能な限り避けるために、ビジネスサービスを提供するアプリケーションをクラウド間で標準化された手順やインタフェースで導入・運用する仕組みが必要となる。

 そこでOpenShiftはさまざまなクラウドでの利用を想定して、統一された導入手順(自動化されたインストーラー)、CLI(Command Line Interface)やGUI(Graphical User Interface)によるアプリケーションの開発、ビルド、デプロイなどの手順を提供している。特にアプリケーションのビルドやデプロイについては、開発環境や本番環境にまたがった形で自動化できる利点がある。またRHELはコンテナアプリケーションを開発するためのベースとして利用できる仕組みも整えている。

 これらの機能や環境を提供するRHELやOpenShiftを利用して、市場の変化や顧客の要望などを迅速に反映させて「ユーザー・ファースト」なサービスを実現させていくのがレッドハットが提唱するオープン・ハイブリッドクラウドだ。

 なおOpenShiftはレッドハットのパートナーがパブリッククラウド上でマネージドなサービスとしても提供しており、アカウントを取得してすぐにOpenShift環境が利用できるようになり、アプリケーション開発やデプロイに集中することが可能となる。

 小島氏は「顧客視点のサービスを実現するには、社内業務の効率化や技術の導入だけでなく、それらをビジネスに結びつける意識付けやカルチャー変革への取り組みも必要です。レッドハットではビジネス部門とIT部門が密に連携して意識改革を実践していくための支援サービスも提供しています。これらのサービスも含めてオープン・ハイブリッドクラウドによるお客さまのDX推進を支援していきます」とアピールする。

ICTの俊敏性を求めて内製化が進む中
擁するエンジニアの数と質で基盤を選ぶ

BizDevOps

アマゾン ウェブサービス ジャパン(AWSジャパン)では企業のICTに求められる要件として、ユーザー企業自身がオーナーシップを取り、自らが責任、判断権限を持って自社のICTを使いビジネスを進めていく「内製化」の流れが加速してきており、そのためにもクラウドの利用が最適だと指摘する。IT人材の不足が深刻化する中、ソフトウェアを容易かつ迅速に開発でき、それに必要なスキルを習得しやすい環境とサービスがこれからのICTに求められるという。

ビジネスの現場の人こそ
クラウドを知る必要がある

アマゾン ウェブサービス ジャパン
パートナーアライアンス統括本部
テクニカルイネーブルメント部 部長
パートナーソリューションアーキテクト
相澤恵奏 氏

 日本ではIT人材はソリューションを提供するIT企業にその多くが在籍しており、ユーザー企業はICTに関する課題解決について、本来であれば自らがオーナーシップを取る必要がある部分でさえもIT企業に任せてしまうケースが散見される。しかし変化に対して適宜即応することが求められる現在のビジネスにおいて、IT企業に頼るだけではICTを追従させることは不可能だ。そこでユーザー企業が自ら必要なアプリケーションを作成する内製化が求められている。

 アプリケーションの内製化をする目的は自分たちでICTを使ってビジネスを加速させることであり、今まで外部に依頼していた開発と運用をユーザー企業が行えばいいというわけではない。アマゾン ウェブサービス ジャパン(AWSジャパン)のパートナーアライアンス統括本部 テクニカルイネーブルメント部で部長 パートナーソリューションアーキテクトを務める相澤恵奏氏は次のようにアドバイスする。

 「アプリケーション開発を高速化させる手法としてDevOpsが普及していますが、ユーザー企業が内製化を進めていく上ではBizDevOpsの考え方が重要になります。自社の業務や事業に必要かつ効果的なソフトウェアを開発するには、Biz(企画)の部分が最も重要だからです」と説明する。

 さらにBiz(企画)にはエンジニア以外の人を関わらせることも重要だという。相澤氏は「ビジネス課題の解決や業務改善をして自社を成長させていくためにはICT活用は欠かせません。ICTにどのような選択肢があるのかを知り、それぞれの特長を理解したうえで最適な選択をする必要があります。そのためにはサービスを利用するビジネスの現場にいる人たちが自身ですぐに、容易に利用できるクラウドを理解することにより、ICTの活用を促進できると考えています」と説明を続ける。

BizDevOpsで内製化を進める
ユーザー企業はBizを主導

アマゾン ウェブ サービス ジャパン
パートナーアライアンス統括本部
テクニカルイネーブルメント部
パートナーソリューションアーキテクト
宇賀神みずき 氏

 内製を推進するにあたりBiz(企画)、Dev(開発)、Ops(運用)の全てをユーザー企業が1社で対応するのはIT人材の確保において難しいのが実情だろう。そこでAWSジャパンではユーザー企業が主導すべき領域をBiz(企画)の全体とDev(開発)の一部と位置付け、AWSジャパンと同社のパートナーがユーザー企業の内製化を支援するさまざまなサービスやプログラムを提供している。

 例えばユーザー企業の内製化を支援するさまざまなソリューションを持ったAWSパートナーを「内製化支援推進AWSパートナー」と位置付け、内製化支援推進AWSパートナーと連携してユーザー企業の内製化を支援している。

 またパートナーのエンジニア育成プログラムとして「ものづくりトレーニング」を2019年から実施している。これは実際にもの(ソフトウェア)を作りながら知識と技術を習得するものだ。

 さらに今年3月から、このプログラムを発展させてユーザー企業に「ANGEL(APN NEXT Generation Engineers Leaders)道場」という名称で、ものづくりトレーニングを提供している。ANGEL道場ではBizDevOpsにのっとった構成となっており、アイデアソンとハッカソンを組み合わせたような内容だ。

 ANGEL道場の企画・運営を務めるAWSジャパン パートナーアライアンス統括本部 テクニカルイネーブルメント部 パートナーソリューションアーキテクト 宇賀神みずき氏はこのトレーニングについて「まずAmazonでもよく用いられているWorking Backwardsという手法を使い、顧客に本当に必要なものは何なのかという顧客を起点にしたサービスの仮想のプレスリリースを最初の1カ月で作成します。後半の2カ月では、それを開発するためのトレーニングやメンタリングを受けつつプロトタイプを作成し、自ら作成したサービスを発表する運用するという実践型の育成を合計3カ月かけて実施します」と説明する。

クラウドのメリットを生かしたアプリ開発
IT人材の育成もクラウドが適している

アマゾン ウェブサービス ジャパン
パートナーアライアンス統括本部
テクニカルイネーブルメント部
パートナーソリューションアーキテクト
髙橋敏行 氏

 第一期が間もなく修了するというANGEL道場ではユーザー企業の内製化を推進する中心メンバーとともに、パートナーの1~3年目の若い人材も受講している。宇賀神氏は「ANGEL道場の受講者はAWS初心者にもかかわらずIoTやAI、コンタクトセンターなどDXに向けた幅広いアプリケーションのプロトタイプを作成し、3カ月の短期間で作ったものとは思えないほどの素晴らしいサービスとなっていました。ものを作りながら学ぶという手法はクラウドのスキルを高めるためには最適だと改めて感じました」と成果を説明する。

 またAWSジャパン パートナーアライアンス統括本部 テクニカルイネーブルメント部 パートナーソリューションアーキテクト 髙橋敏行氏は「若い人材がこれからの日本のITをリードする存在になると考え、パートナーの新卒者育成にも力を入れてきました。早期にAWSを学ぶことで、迅速かつ柔軟にやりたいことが実現できるようになります。実際に入社3年目や4年目のエンジニアが活躍し始めています。これはクラウドのメリットを生かした成果です。不足するIT人材の育成に、クラウドが寄与できると考えています」と強調する。

 AWSジャパンでは初心者が学びやすいように、ハンズオンの作業手順を録画した動画(AWS Hands-on for Beginners)をシリーズで提供しており、視聴者は動画の手順の通りAWSを操作すれば同じサービスが作成できるという。こうしたアプリケーション開発の実践環境をすぐに利用できるのも、クラウドのメリットだろう。

 最後に相澤氏は「AWSを利用してアプリケーションを開発しているパートナーのエンジニアは世界でもその価値が高く評価されており、AWSのスキルを習得することはユーザー企業における内製化の推進においても、パートナーのビジネスにおいても、非常に有利になります」とアピールする。

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