既存アプリのモダナイゼーションと
AI/IoT領域での活用の二つに商機あり

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズではコンテナ関連ビジネスに二つのシナリオで取り組む。まず仮想サーバーからのコンテナ環境あるいはクラウド環境への移行と、他社製ハードウェアで稼働しているコンテナ環境の統合だ。もう一つはIoT需要の拡大に向けたエッジでのコンテナソリューションの提供となる。

コンテナ化のアプローチ
クラウド移行は7Rを活用

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ
製品・企画統括本部
ソリューション・アライアンス本部
シニアソリューションアーキテクト
小宮敏博 氏

 企業がコンテナ化へ取り組む際のきっかけとして、既存システムのクラウドへの移行と、クラウドで利用しているサービスの課題解決策としてオンプレミスへの移植という二つのアプローチがある。

 まずクラウドへ移行する際の判断基準の一つとなるのがIT調査会社のガートナーが定義する「7R」と呼ばれる指標だ。その中で「アプリケーションが分割できず改修予定がいない」「改修作業が複雑で改修を予定していない」「一部の機能をクラウドサービスへ変更可能」「改修内容がクラウドサービスで代替できる」というシステムはクラウドへの移行が適切であると提示する。

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(以下、レノボ) 製品・企画統括本部 ソリューション・アライアンス本部 シニアソリューションアーキテクト 小宮敏博氏は「クラウドへ移行する目的がTCO削減ならば既存のアプリケーションの構造を変更せずにクラウドへ移設するマイグレーションが適しています。一方でビジネスを拡大することが目的のクラウド移行の場合は、アプリケーションをコンテナ化するなどのモダナイゼーションが必要です」とアドバイスする。

コンテナ活用のシナリオで
推奨するプラットフォーム

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ
ソリューション推進本部
Microsoftアライアンス担当
米津直樹 氏

 レノボではコンテナ関連ビジネスについて二つのシナリオを持っている。まずファーストステージとして仮想サーバーからのコンテナ環境あるいはクラウド環境への移行と、他社製ハードウェアで稼働している別のコンテナ環境とレノボが提供するコンテナ環境への移行・統合という二つのアプローチでソリューションを提供している。

 顧客企業が上記を検討するにあたり課題となるのがコンテナプラットフォームの選択だろう。小宮氏は「オンプレベンダーから見た場合、クラウドベンダー主導のプラットフォームとは連携が取りづらい」と指摘する。またレッドハットのOpenShiftは「オンプレミス環境で各社サーバーベンダーのプラットフォームで動作できますが、オンプレミス環境でクラスターを構成する場合はOpenStackが推奨されます。当社のお客さまの傾向から見た場合、vSphereおよびHyper-Vをクラスター環境として利用するケースが多いことから、OpenShiftのコンテナ環境で選定する場合はThinkAgileなどのソリューションを構築した内部でOpenShiftを動作させる構成を推奨しています」と説明する。

 ソリューション推進本部 Microsoftアライアンス担当 米津直樹氏は「Azure AKSと同様の環境をオンプレミスで実現できるAzure Stack HCIをはじめ、当社のHCI製品でvSphereで仮想化環境を運用するお客さまにはVMwareのTanzuを、Nutanixを利用するお客さまにはNutanixのKarbonも推奨しています」と話す。

 具体的なソリューションとしてはThinkAgile HX/MX/VXのレノボHCI製品と連携可能なKubernetesソリューションが各社から提供されている。

エッジでのコンテナ活用
AIOpsソリューションも提案

二つ目のシナリオとなるのがIoT需要の拡大に向けたエッジでのコンテナソリューションの提供だ。小宮氏は「リアルタイムにデータを活用したい、クラウドでのデータ処理を高速化したいといった要望に対して、エッジへオンプレミスでコンテナ環境を提供することが求められます」と説明する。

 そこでレノボではエッジサーバーとして「ThinkSystem SE350」を提供している。SE350はエッジコンピューティングでのユースケースを想定して開発されており、エッジサイトでのAI推論を可能にするNVIDIA GPUを搭載し、有線・無線の幅広いインタフェースをサポートするなどの特長を備える。


 またレノボではAI/HPCインフラの運用を効率化するKubernetes対応のオーケストレーションソフト「LiCO」(Lenovo intelligent Computing Orchestration)を提供しており、SE350と組み合わせてITの運用・管理を自動化、効率化する「AIOps」(IT運用のためのAI)を構築することも可能だ。

 さらに小宮氏は「VMwareのストレージ(vSAN)、ネットワーク&セキュリティ(NSX)、ホスト管理(vLCM:vSphere Lifecycle Manager)の機能をSmartNIC(DPU)にオフロードするテクノロジー(Project Monterey)の提供が計画されています。これによりCPUの負荷軽減や、より多くのCPUの命令実行サイクルをアプリケーションに割り当てられるなど、コンテナプラットフォームの効率および性能の向上に役立つためレノボもDPU対応製品のリリースを検討しています」と説明する。

ストレージやデータに関する課題解決が
ステートフルなアプリへの活用を広げる

ネットアップ

ネットアップでは早くからコンテナへの取り組みを始めており、製品の開発や提供など積極的にビジネスを展開してきた。コンテナおよびKubernetes環境ではデータの管理、保護における課題があり、それらを解決するための製品やサービスを提供している。データに関する課題を解決することで、コンテナやKubernetesの活用範囲が広がり、ビジネスが大きく成長すると見ている。

CSIインターフェースを通じて
コンテナでストレージが利用できる

ネットアップ
常務執行役員 CTO
近藤正孝 氏

 最近ではコンテナおよびKubernetesのメリットを生かしながら顧客情報や販売履歴などが管理できるミッションクリティカルなワークロードを動かしたいという機運が高まっているという。

 ネットアップ 常務執行役員 CTO 近藤正孝氏は「コンテナおよびKubernetes環境ではデータの管理、保護における課題があり、それらを解決することでステートフル、すなわちミッションクリティカルなアプリケーションでの活用も広がるでしょう」と説明する。

 Kubernetesによるアプリケーション開発・運用プラットフォームには次のような課題が指摘されている。

・アプリケーションデータの保護が複雑
・データ保護とディザスタリカバリーのための標準的な仕組みがない
・アプリケーションがアクセスするデータの可搬性が乏しい
・運用面で監視が複雑になってしまう

 近藤氏は「コンテナやKubernetesはクラウドから使われ始めたため、クラウド上のストレージサービスやデータベースサービスと連携することが前提となっています。クラウドならば容易にデータを貯めることができますが、この仕組みをオンプレミスやハイブリッドクラウド環境で実現するとなると、連携するストレージサービスやストレージシステムが必要となります。しかし以前は共通で利用できるストレージの仕組みがありませんでした」と話す。

 そこでKubernetesなどのコンテナオーケストレーション向けのストレージインターフェースとしてContainer Storage Interface(CSI)が策定された。

コンテナ化の予定がなくても
CSI対応製品を導入すべき

ネットアップ
システム技術本部
シニア・ソリューションアーキテクト
大野靖夫 氏

 CSIのAPIを通じてコンテナアプリケーションのデータをストレージサービスあるいはストレージシステムに永続的に保管できるようになった。しかし同社のシステム技術本部 シニア・ソリューションアーキテクト 大野靖夫氏は「CSIはコンテナアプリケーションからストレージを操作するための標準的な仕組みではありますが、CSIに対応している製品ならばどれも同じ機能が利用できるというわけではありません」と指摘する。

 例えば安定的に動作するかという観点でCSIドライバーの完成度の差や、CSI対応製品であってもCSIが提供する全ての機能をサポートしているわけではないという差もあるという。

 ネットアップではコンテナ環境でのデータの永続性を実現する製品として「Trident」を提供している。大野氏は「今はコンテナ化に取り組む予定がなくても、コンテナ化が必要になるケースが出てくるかもしれません。そうした場合に対応できるよう、コンテナ対応のストレージ製品を導入してシステムを構築しておくことは無駄ではありません」とアドバイスする。

 Tridentは同社のストレージ製品をKubernetes環境に組み込んで使えるソフトウェア製品だ。提供からすでに4年の実績があり、Kubernetesとの親和性の高さと、Kubernetesに関するノウハウを持つことが強みだという。

Kubernetesの最後の課題
データ保護を解決する

大野氏は「Kubernetesの仕組みの中で、ある時点のデータをコピーして持っておくことは標準化されていますが、そのKubernetes環境が壊れてしまうとデータが失われてしまいます。そのためデータを保護する仕組みが求められています」と説明する。そこでネットアップではその仕組みとして「Astra」を提供することで、ニーズに応えている。

 Astraはアプリケーションのコードや取り扱うデータをバックアップでき、スナップショットも取れる。バックアップからアプリケーションの実体を移動して再稼働させることもできる。例えばアプリケーションが稼働しているクラウドサービスから、別のクラウドサービスやオンプレミスへ同じアプリケーションを移植あるいは移動することができるようになる。

 Astraは現在、Google Cloud PlatformとAzureに対応しているほか、オンプレミス版も近日リリースされる予定だ。さらにAWSにも対応するという。

 このほか複雑なコンテナ環境を可視化するSaaSサービス「Cloud Insights」も提供する。大野氏は「Kubernetesによって監視が一段と複雑化します。物理的なハードウェアに発生した障害がどのシステムに影響が出るのかを把握するのは容易ですが、仮想化環境で分かりづらくなり、さらにKubernetesではアプリケーションが動いているコンテナを特定し、そのコンテナが動いているサーバーや、ネットワークを通じて接続されているストレージまで追跡しなければなりません。Cloud Insightsはストレージレイヤーを含めて一つのツールで監視・管理ができます」とアピールする。さらにCloud Insightsはコンテナ、仮想サーバー、クラウド、オンプレミスの全てに対応できる。

 近藤氏は「政府も企業におけるDXを強く推進しており、DX推進の要素技術となるコンテナおよびKubernetes関連のビジネスは大きく成長すると見ています」と強調する。