低コストで容易なハイブリッド運用は可能か?
Azure Stack HCIのポテンシャルに迫る

日本マイクロソフト
パートナー事業本部
コーポレートソリューション営業統括本部
コーポレートソリューションパートナー営業本部
清水利幸

Windows Server 2012/R2のEOSを受けて移行が推奨されています。このサーバーOS移行の啓蒙が行われる中、Azureとの連携によって容易なハイブリッド環境の構築と一貫した管理を実現する「Azure Stack HCI」の需要が増えているのです。そうした背景には、オンプレミス体制から卒業してクラウド刷新に向かう意向があります。しかし、従来システムからHCIに切り替わる際に新たなスキルが求められたり運用コストが高騰したりすることなどに懸念を感じ二の足を踏むケースも少なくありません。Azure Stack HCIは、容易な管理性でコストも抑えられるため、Windows Server 2012/R2のリプレース先に有用です。

運用負担とコスト課題のサポートが要

 これまで、度々マイクロフト製品のEOSは行われてきたが、2021年から2023年にかけてもその波が訪れている。2021年10月のWindows 11のリリースに始まり、2022年7月以降はSQL Server 2012、2023年10月以降はWindows Server 2012/R2のEOSなど法人向けのMS製品を刷新する好機となっているのだ。

 Windows Server 2012/R2のEOSも提案機会の一つで、移行が進めば法人市場に大きく影響を及ぼす刷新となる。しかし、今回のリプレースに伴うシステムの移行は、中堅中小企業のシステム環境を確認し、ユーザー企業に最適な啓蒙をしていくことが必要な段階にある。

 Windows Server 2012/R2の市場概況については、本誌2021年10月号の特集にてすでに取り上げている。一度これを振り返ってみよう。MM総研が定期的に実施しているWindows Server 2012/R2に関するマイグレーション状況調査によると、2021年12月末のWindows Server 2012/R2搭載サーバー稼働台数は41万3,335万台との予測でEOSとなる2023年10月時点では20万2,597台が残る見込みだ。この台数は段階的に減少するとMM総研が見解を示している。

 オンプレミスサーバーの運用は中小企業がメインであるものの、インフラを刷新する際のリスクを恐れ中小企業の移行が慎重になる中では、そうした負担を軽減することが肝要だ。

 Windows Server 2012/R2の移行先の選択肢の一つにHCIがある。その中でも、従来のHCIに見られてきたコストの高さや運用負担を軽減するのがHCIソリューション「Azure Stack HCI」だ。日本マイクロソフト パートナー事業本部 コーポレートソリューション営業統括本部 コーポレートソリューションパートナー営業本部 清水利幸氏はAzure Stack HCIの特長と昨今の需要をこう語る。

 「オンプレミスもクラウドもハイブリッドかつ容易に運用可能です。当社の管理下で提供するため、メンテナンスフリーに近い形でシステムやサービスを展開できます。実は現在お客さまとの商談、説明依頼が増えているのですが、Azure Stack HCIが当社の仮想化基盤『Hyper-V』に対応している点が関係していると推測します。Windows Server 2012/R2の時代はHyper-Vが登場し、物理サーバーの仮想化が普及した時期でした。Azure Stack HCIは多くの企業さまが扱い慣れているHyper-Vの基盤技術やストレージの概念のスキルを生かせるため新しいスキルの習得が不要です。Active Directoryと組み合わせるほか、サードパーティー製の製品とも連携できます。ハードウェアも国内の主要ハードウェアを柔軟に選択可能です。Azure Stack HCIを管理する『Azure Arc』を活用すれば、開発環境など高度なレベルのシステム運用の省力化をサポートします」

 HCI導入に際してはコストも懸念されるが、「Azure Stack HCI OSはシングルノード構成からも導入できるのでリッチな構成を組まなくても小さくスタートして徐々に冗長構成を取っていくことにも使えます」と清水氏はアピールする。

オンプレ・クラウドをハイブリッドに運用

 問い合わせがあった企業の例として、「他社のHCIソリューションを検討したものの、コストの高さ、管理の一貫性に乏しい点で課題を感じた」というものがあったと清水氏。同企業は以前からAzureを活用していた。競合他社のHCIと比較検討をした結果、その企業はAzure ArcとAzure Stack HCIによる管理を選択し、現在継続的に運用しているという。

 既存のオンプレミス資産を継続運用できるよう、サポート切れが予定されているOSを保護する「延長セキュリティ更新プログラム」を活用した例もある。クラウド化を進める中でオンプレミス資産活用を迷っている企業に有効だ。実際の活用例では、他社HCIを使っていたところ、同プログラムとAzure Stack HCIに切り替えて資産活用に生かしたものがある。

 HCI需要の背景にいる提案ターゲットとAzure Stack HCIの将来展望について清水氏はこう語る。「HCI基盤を使ってオンプレミスとクラウドをハイブリッドに運用したいというニーズが多いです。オンプレミス、クラウド、エッジ環境など管理基盤を統合的に管理できる点は、Azure Stack HCIの強みです。オンプレミス、クラウドを意識することなく管理したいお客さまには特にHCIがお薦めです。今すでに他社のHCIを使っている場合でも、Windows Server 2012の移行やボトルネックとなっている部分を洗い出すことで、お客さまの既存環境の次の移行先としての提案可能性も生まれるでしょう。Azure Stack HCIとAzureを組み合わせたハイブリッドクラウドの利用はお客さまの資産活用をサポートします」