パッケージソフトをクラウドへ
特典がお得なISVサクセスプログラム

3回にわたり、Windows Server 2012/R2のEOS対策として有効なAzureソリューションを紹介した。しかし、パッケージソフトウェアなどをすでに導入しているユーザー企業に対し、クラウドソリューションを単体で提案するだけでは移行の道筋やメリットが見えない可能性もある。これに対し、マイクロソフトが全世界で提供している「ISVサクセスプログラム」は、自社でパッケージソフトウェアなどを開発し、運用している企業がクラウドに移行しやすい特典などを提供する。企業の既存のパッケージソフトウェアの環境をアップデートさせ、ビジネスを加速化するプログラムを見ていこう。

パッケージソフトのクラウド移行が肝要

日本マイクロソフト
パートナー事業本部
コーポレートソリューション営業統括本部
コーポレートソリューションパートナー営業本部
清水利幸 氏

 メーカーが開発しているパッケージソフトウェアの提供方法は、現在大きく2種類に分かれている。クラウド化の波を受けてSaaS版を提供するケースと、パッケージソフトウェアをアップデートして提供し続けているケースだ。

 アイ・ティ・アールが2021年に発表した「ITR Market View:ERP市場2021」によると、基幹システム「Enterprise Resource Planning」(ERP)の基盤として採用されているクラウドとオンプレミスでは、それぞれの市場で違いが見られるという。ERP市場規模推移および予測では、SaaSは堅調に成長していくが、オンプレミス型のパッケージソフトウェアのビジネスは縮小する予測だ。ERP市場がクラウドへ移行する傾向は強まっていると言えるだろう。

 パッケージソフトウェアのクラウド化に際しては、豊富な管理機能や自動化に対応するAzureが提案できる。しかし、Azureのソリューションを単体で紹介するだけでは、移行計画や方針が異なる各企業側でシナリオが見えにくい。企業のパッケージソフトウェアのスムーズな刷新に向けて、活用目的に沿ったAzure移行シナリオと特典などを提供する「ISVサクセスプログラム」を提案したい。

 本プログラムの参画要件について、日本マイクロソフト パートナー事業本部 コーポレートソリューション営業統括本部 コーポレートソリューションパートナー営業本部 清水利幸氏はこう説明する。「ISVサクセスプログラムの要件は四つです。企業の本社が日本にあること、法人向けのパッケージソフトウェアを提供していること、当社のMarketplaceに企業のソリューションを公開する計画があること、当社とのパートナープログラム『Microsoft Cloud Partner Program』の登録が完了していることを満たしていれば参加できます」

 多様な活用パターンを想定して移行を進められる点も魅力だ。まずは①新規にソフトウェアを開発・展開するケースや、②複数のアプリケーションを統合するケースなどに有効だ。②の具体例としては、会計パッケージソフトを作ってたまったデータをPower BIで可視化したいときにAzureとMicrosoft 365を連携させるといった活用に対応する。

 そのほか、③パッケージソフトウェアをAzure上で構築するケース、④既存のIaaSのパッケージソフトウェアをSaaS化するためにPaaS上に移植して環境を作るケースなどさまざまなニーズに活用できるのだ。

Azure・M365を1年間無償で提供

 さらに、お得な特典も三つ提供している(上図参照)。12カ月間無償で提供するAzureや開発者向けツール「GitHub」「Visual Studio」、サポート窓口、Microsoft Cloud Partner Programによる拡販支援などを有効活用すれば、1年間のうちにソフトウェア刷新を進め、既存ビジネスのさらなる拡大に貢献する。

 実際の活用事例について、清水氏はこう説明する。「ダイワボウ情報システム(DIS)のパートナー企業であり鹿児島に本社を置く日本システムさまの事例を紹介します。オンプレミスのサーバー上でソフトウェアを開発していた同社では、システムの都合上、鹿児島県内にビジネス領域が限られていました。しかし、Azureに刷新した後は県外の顧客が増えたそうです」

 また、建設業向け原価管理システムを提供する建設ドットウェブの事例でも、建設業にクラウド化の波が押し寄せようとしている予兆をいち早く捉えた取り組みを進めている。同社は、原価管理システムのクラウド版「どっと原価NEOクラウド」を開発し提供している。2018年12月にリリースされた後、コンスタントに機能追加を行い、バージョンアップを続けている。清水氏は、「建設ドットウェブさまからは、『やはりクラウドでないとダメという顧客が以前よりも確実に増えました。もしも今クラウド版がなかったらビジネスの土俵にすら上がれなかったことでしょう』との意見が寄せられました」と続ける。こうしたSaaS開発事例を踏まえ、清水氏は次のようにISVサクセスプログラムを推奨する。「法令改正に伴うアップデートも顧客ごとに法律改正版を配布する手間なく対応でき、アプリケーション提供の柔軟性が飛躍的に向上したそうです。既存のパッケージソフトウェアの刷新を検討されている中堅中小企業さまは、ぜひDISの営業担当者にISVサクセスプログラムについてご相談ください」