AI時代に問われる「人の思考力」と、多忙なビジネスパーソンが直面する時間の壁

株式会社フライヤー 代表取締役CEOの大賀康史氏

DXの加速や生成AIの急速な浸透に伴い、企業のビジネス環境は劇的な変容を遂げている。情報やデータ、さらには業務のアウトプットまでもが瞬時に生成される現代において、皮肉にも浮き彫りとなっているのが「人間ならではの思考力や洞察力をいかに育むか」という人材育成の本質的な問題である。

画一的な研修カリキュラムを一斉受講させ、決まった正解をインプットする従来型の人材育成アプローチでは、激変するビジネス環境に対応しきれなくなっている。パーソルイノベーション株式会社「Reskilling Camp」が発表した「企業におけるリスキリング施策の実態調査(2025年12月版)」によれば、生成AIの台頭を受けて企業の約8割がリスキリング方針や研修内容そのものの見直しを実感しているという。

「AIは指示を出せば瞬時に答えを導き出してくれます。しかし、その答えをどう解釈し、自社のビジネスや現場の文脈に合わせて独自の価値を付加できるかどうかは、人間自身の深い理解と思考力にかかっています」と大賀氏は語る。

ビジネスパーソンが未知の課題に対して自ら問いを立て、思考を巡らせる力を養うための王道手段が「読書」である。しかし現実には、日々の業務に追われるビジネスパーソンにとって、まとまった読書時間を確保することは極めて困難だ。「学びたい意欲はあるが時間がない」「本を読めと号令をかけても現場に定着しない」というジレンマが、多くの経営層や人事担当者を悩ませてきた。

このボトルネックを打破し、多忙な現代人の日常に自然な読書習慣を根付かせるソリューションが、「flier business」である。

1冊10分でエッセンスを凝縮。人の手による「品質」と「信頼性」へのこだわり

「flier business」はスマートフォン用アプリやPCから利用できる

「flier business」の中核を成すのは、厳選された書籍のエッセンスを1冊あたり約10分(4000文字程度)で読めるようにまとめた要約コンテンツである。通勤時間や休憩時間、業務の合間といったわずかなスキマ時間を活用し、スマートフォンやPCから手軽にエッセンスを吸収できるのが最大の特徴だ。活字を読むだけでなく、1冊約15分で聴くことができる「音声版」も標準搭載されており、移動中や作業中でも手軽に学習を進められる。

大賀氏は、同サービスを立ち上げた原体験を次のように振り返った。「私自身、起業前は約10年間にわたり経営コンサルタントとして活動していました。若手の頃、百戦錬磨の経営者に対して提言を行う際、自身の限られた経営経験だけでは到底太刀打ちできません。では何が必要かというと、最新のビジネストレンドであり、経営理論であり、業界の知見です。そこで負けてしまえば何も言えなくなるため、休日に図書館に通い、何十冊もの本を片っ端から読み漁る日々を送っていました。しかし、仕事の休みが取りにくかったため、プロジェクトの合間などにまとめて読んでいました。もしその時に、スマートフォンの画面上で、移動時間などのスキマ時間に本のエッセンスを素早く理解できるサービスがあれば、まず自分自身が使っていたでしょう。その切実なニーズを具現化したのが、このフライヤーの始まりです」

現在、同プラットフォーム上で提供されている要約コンテンツは4500冊を数え、毎日新たな要約が追加され続けている(年間365日追加更新)。対象ジャンルも、経営戦略やマーケティングといった実務に直結するビジネス書から、リーダーシップ、テクノロジー、サイエンス、さらには哲学・歴史といった教養(リベラルアーツ)に至るまで、全18カテゴリーに及ぶ書籍が網羅されている。

読める書籍は18種類のカテゴリーから選べる

注目すべきは、生成AI全盛の時代にあっても、要約の制作プロセスにおいて「人の手による丁寧な作り込み」を一貫して徹底している点である。

「世の中の情報を集約したり、定型的なノウハウを抽出したりすること自体は、AIが得意とする領域です。しかし、フライヤーが提供する要約はAIによる自動要約ではありません。経験豊富な専門ライターが執筆し、最低2名以上による精読および出版社出身の編集経験者による校閲・ブラッシュアップを経て、最後に出版社や原著者の許諾を正式に得たものだけを公開しています。『この章を取り上げてほしい』といった著者からの細かなフィードバックを反映させることも珍しくありません。本というメディアは、著者、編集者、校閲者、そして多くの読者の目を経て幾重にも検証された、極めて信頼性の高い知的資産です。だからこそ、作り手の意図を損なうことなく再現する品質担保は、創業以来変わらない私たちの生命線です」と大賀氏はフライヤーのこだわりを強調した。

「AIに指示される側」から「AIを操縦する側」へ――現代に求められる学習アプローチ

現在、多くの企業が業務効率化のためにAIツールの導入を急いでいる。しかし、現場がAIを使いこなせているかといえば、必ずしもそうではない。大賀氏は、AIと人間の関係性を「カーナビゲーション」に例えて鋭く指摘する。

「カーナビには『地図を表示する機能』と『右へ曲がれ、左へ曲がれとルートを指示する機能』の2つがあります。人間側にビジネスの全体像や基礎知識という『地図(土地勘)』がないままAIを使うと、AIから出される指示にむやみに従うだけになってしまいます。それでは、AIが的外れな目的地を案内していても間違いに気づけず、あらぬ方向へ連れて行かれてしまいます。AIの力を最大限に引き出すためには、操縦士である人間自身が確かな知識と判断軸を持つこと、そしてそうした人材を育てる組織的アプローチが求められているのです」

動画学習やAIによる即時回答は、最短距離で既知の正解を得る「ティーチング(Teaching)」のアプローチに適している。一方で、書籍を通じた学びは、多面的な視点に触れ、自分自身の頭で考えを深める「コーチング(Coaching)」のプロセスを辿る。既知の正解を教わる受動的なインプットにとどまらず、未知の課題に対して自ら答えを見つけ出す能動的なマインドセットを育むことこそ、「flier business」がビジネスパーソンにもたらす本質的な価値である。

一部の意欲層から「平均的な中間層」へ。自律的学習を組織全体へ波及させる仕組み

企業の人事担当者や経営層から寄せられる相談の中で最も多いのが、「一部の意欲的な社員は自発的に学ぶが、大多数の社員は継続的な努力を怠っているように見える」という悩みである。

大賀氏は、この組織力学の構造についてこう分析する。「自分で課題意識を持ってキャリアを切り拓いていける人は、どんな組織にも一定数存在します。しかし、それはごく一部の層に限られるのが現実です。人間は本来、慣れ親しんだ環境や居心地の良さに引っ張られやすい生き物であり、これは個人の優劣ではなく普遍的な特性と言えます。だからこそ組織の総合力を引き上げるためには、意欲的な上位層だけでなく、組織の約60%を占める『平均的な中間層』の学習意欲に火をつけ、行動変容を促す仕掛けが不可欠になります」

「flier business」は、この中間層の心理的ハードルを極限まで下げるアプローチを取っている。1冊の本を読破するには「気合」や「まとまった自由な時間」が求められるが、10分の要約であればニュース記事を読む感覚で気軽にアクセスできる。ユーザー調査においても、利用者の64.1%が「1つのコンテンツが短時間で完結する効率の良さ」を利用理由の第1位に挙げている。

flier法人ユーザーへ調査した結果、利用する理由として効率の良さが64.1%と圧倒的だった

さらに、個人の学習を孤立させず、組織ぐるみのモチベーションへと昇華させるための独自機能が多数実装されている。

1.学びメモ(社内SNS型アウトプット機能)

要約を読んだ後に得た気づきや、自身の業務への応用アイデアをコメントとして投稿し、社内で共有できる機能。全社公開だけでなく、特定の部署やプロジェクトグループ内に限定した共有も可能であり、同僚や上司からのリアクションを通じて学習のモチベーションが維持される。

2.AIお悩み解決サーチ(β)

「部下が指示通りに動いてくれない」「新規事業のアイデアが出ない」「モチベーションが上がらない」といった個人のリアルな悩みや状況を自然言語で検索窓に入力すると、蓄積された要約の全文データをAIが解析し、適合率の高い最適な書籍をレコメンドする機能。

3.読書プログラム

「新入社員向け必読書」「新任マネージャー向け推薦図書」「DX推進担当向けプレイリスト」など、企業の育成方針や階層・職種に応じた独自の推薦書籍リストを作成・配信できる機能。

4.みんなの投票箱

要約読了後、提示された設問に対してワンクリックで自分のスタンスを回答できる機能。他者の回答比率を可視化することで、組織内の多様な価値観に触れるきっかけを提供する。

準備ゼロで対話を生む「要約読書会」が、組織のエンゲージメントを劇的に高める

「flier business」の導入企業において、組織のエンゲージメント向上や部門間連携の強化に成果を挙げているのが、要約コンテンツを活用した社内ワークショップ「flier 要約読書会(以下、要約読書会)」だ。

従来の読書会は、参加者全員が事前に指定図書を自費で購入し、読了していることが前提となるため、準備負担の大きさから参加者が集まりにくく、単発のイベントで終わってしまうケースも少なくなかった。

これに対し、フライヤーが提唱する「要約読書会」は、事前準備が一切不要である。

実施時間は約60〜90分。参加者はPCやスマートフォンを1台持って集まるだけでよい。冒頭、ファシリテーターがテーマとなる書籍の概要を2〜3分で説明した後、全員がその場で10分間、黙々と要約を読み込む。全員の前提知識が揃った段階で、3〜4人の小グループに分かれ、「何を感じたか」「自身の業務や過去の経験とどう結びついたか」を1人3分程度で発表し、相互にフィードバックを行い、最後に全体で感想を共有する。

「要約読書会は、本を一人で読むものとしてだけでなく、人をつなぐものとしても非常に優れた効果を発揮します。本の前では、役職や年齢、部署の垣根を越えて誰もが対等な1人の読者になります。『部長も現場のマネジメントでそんな悩みを抱えていたのか』『そういう課題感があるなら、現場の私たちが力になれます』といった普段の業務では出てこない対話が自然と生まれます。縦割り組織を打破し、斜めや横のコミュニケーションを活性化させる施策として、これほど有効なアプローチは他にありません。社内エンゲージメントの向上にも直結するため、非常に高い満足度をいただいています」と大賀氏は読書会が生み出す組織的な価値を強調した。

人的資本開示を支える可視化ダッシュボードと、手厚いカスタマーサクセス

flierのダッシュボード画面

「flier business」は、経営層やITシステム担当者にとっても費用対効果を測定しやすい仕組みを備えている。

管理者向けダッシュボードでは、アカウントの追加・削除といったID管理にとどまらず、従業員のログイン状況、累計閲覧回数、音声再生時間、人気書籍の傾向などをリアルタイムで把握できる。データはCSV形式でエクスポート可能であり、社内イントラ用の推薦チラシ作成機能や、未ログイン社員へのリマインドメール送信機能など、利用促進のためのツール群も網羅されている。

特に2023年3月期以降、大手・上場企業を中心に義務付けられた「人的資本情報の開示」において、同システムのダッシュボードは有用なデータソースとなる。従業員の自律的な学習時間や閲覧実績を客観的な指標として集約・数値化できるため、有価証券報告書や統合報告書における非財務情報の開示指標として直接活用されている。

可視化レポートにより「人材育成方針」のシナリオ作成が可能

また、導入後の形骸化を防ぐため、専任のカスタマーサクセスチームが伴走する点も大きな強みだ。導入初期のオンボーディングミーティングから、管理画面の操作レクチャー、他社成功事例の共有、組織の課題感に合わせた選書提案、さらには要約読書会や社内イベントの企画・運営サポートに至るまで、手厚い支援体制が敷かれている。

導入社数1400社突破。IT流通パートナーとの協業で挑む「地方の人材育成DX」

2019年の法人版リリース以降、「flier business」の導入社数は着実に拡大を続け、2026年現在で累計1400社超、有料会員数133万人を突破した。導入企業は、メガバンクや大手損害保険会社、総合電機メーカー、通信キャリアといったエンタープライズ企業から、急成長スタートアップ、全国の地方銀行、製造業、自治体に至るまで、業種・規模を問わず多岐にわたる。

大企業の全社導入はもちろんのこと、2000人規模の企業で希望者500人を募ってスモールスタートしたり、特定の部署やプロジェクト単位で試験導入したりと、組織のニーズに応じた柔軟な運用が可能である点も、導入の裾野を広げている要因だ。

近年、フライヤーが特に注力しているのが、IT流通パートナーとの連携強化である。ITインフラやPC端末、グループウェアといったハードウェア・SaaSツールの提案とともに、「それらを扱う人材そのものを育てる基盤」として「flier business」をパッケージ提案する動きが全国で加速している。

大賀氏は、IT流通パートナーとの協業の意義と今後の展望について、次のように語った。「私たちが最も真摯に取り組んできたのは、信頼性の高いコンテンツと優れたサービスを作り上げることです。しかし、弊社の陣容は役員・社員を含めて約60名であり、自社単独で全国津々浦々の企業様と接点を持つには限界があります。特に地方の中堅・中小企業様ほど、専任の人事・研修担当者が不在で、体系的な人材育成に人と時間を割けないという深刻な悩みを抱えていらっしゃいます。各地域でお客様の経営課題に日々寄り添っている販売パートナー様が、IT商材に加えて『人材育成のソリューション』を届けてくださることは、日本企業の底力を引き上げる強力な原動力になると確信しています」

ダイワボウ情報システム(DIS)が提供するクラウド・サブスクリプション管理ポータル「iKAZUCHI(雷)」を通じて手配可能となったことで、販売パートナーは月額・年額の継続課金ビジネスとして、自社のアセットに手軽に「人材育成ソリューション」を組み込める体制が整っている。

テクノロジーが急速に進化する現代。激変するAI時代を見据えた読書の普遍的価値と、フライヤーが目指す今後の進化について、大賀氏は熱いメッセージを寄せてくれた。

「あらゆるビジネスパーソンが時代の変化についていこうと駆け足で学び、慌ただしい時代に突入しています。これから1年ほどでAIを活用して仕事を自動化する流れは進んでいくでしょう。しかし、AIだけを学べば優れたビジネスパーソンになれるかというと、そこまで単純ではありません。インターネットが普及しても人間側の能力が必要であり続けたように、AIを使いこなすための『土地勘』や『地図』となる人間力や教養が、今こそ見直される時代に戻ってくると感じています。

特に本を読む行為は、雑念を払って内容に集中するため、リフレッシュやストレス解消効果としてもヨガなどよりも高いと言われています。私は、言葉や行動、知識の生かし方を総合した『知性』こそが人間の魅力そのものだと考えています。一人ひとりが社会人として輝くために人間力を鍛え、本に触れることは大切なことです。私たちはそうした方々にとって頼りになり、より豊かな時間を過ごせるサービスとしてこれからも進化し続けますので、ぜひお気軽にお声がけいただきたいですね」

業務のデジタル化が進めば進むほど、それを主導する人間の「知性」と「自律性」の重要度は増していく。1日10分の読書習慣を起点に、個人の思考力を鍛え、組織に対話と活力を生み出す「flier business」は、AI時代を勝ち抜く企業にとって、持続的な成長を支える強力なパートナーとなるに違いない。

今回紹介したソリューション

flier business(フライヤー ビジネス)

法人向け本の要約・人材育成支援プラットフォーム。ビジネス書からリベラルアーツまで、厳選された良書4400冊以上のエッセンスを1冊10分(音声版は15分)でインプット可能。自社独自の推薦リストを作成できる「読書プログラム」、学びを社内で共有する「学びメモ」、AIが最適な書籍を提案する「AIお悩み解決サーチ(β)」など、組織の自律的な学習習慣を育む機能を網羅する。人的資本開示に対応したダッシュボード機能も備え、大手金融や製造業、自治体など累計1400社以上で導入されている。

iKAZUCHI(雷)

ダイワボウ情報システム(DIS)が提供するクラウド・サブスクリプション管理ポータル。販売パートナーは「iKAZUCHI(雷)」を利用することで、多様化するサブスクリプション型クラウドサービスの発注・更新手続きを簡素化し、月額・年額の継続課金ビジネスにおける顧客ライセンスの一元管理が可能となる。