組織全体でのAI活用の仕組みづくりを支援する
エクサウィザーズのAIエージェント新機能
10月6日、エクサウィザーズは法人向け生成AIサービス「エクサベース AI」の新機能を発表した。昨今AI技術は急速な進化を遂げており、2030年ごろにはAIが企業や組織全体の業務を自律的に遂行する「AIカンパニー」の時代が訪れるとの予測もある。一方で、企業におけるAI活用には依然として課題が残されている。本記事では、エクサウィザーズの独自データ分析に基づいたAI活用の課題点と、その解決を支援するエクサベース AIの新機能の特長についてリポートする。
AIエージェントが浸透する中で
新たなフェーズに向かうAI活用

「エクサベース AI」は約15万人のユーザー、約1,700の組織に導入されている生成AIサービスだ。大企業から中堅・中小企業、自治体まで幅広い導入実績を持つ。GPTやGemini、Claudeなど、複数の生成AIモデルを利用できるほか、生成AIの利用を管理する「セキュリティガバナンス」機能を備えている。
多くの組織において、エクサベース AIをはじめとした生成AIサービスの導入が進む中、AIの活用方法そのものが新たなフェーズに入りつつある。エクサウィザーズ 常務取締役COO 兼 Exa Enterprise AI 代表取締役 大植択真氏は、業務におけるAIの活用方法の変化についてこう語る。「AIの出力精度やスピードが向上し、AIがユーザーの業務を代行するエージェントという使い方が一気に浸透してきました。知りたいことをAIに質問して回答を得る使い方から、 AIに仕事を任せるフェーズへ移行してきているのです。エンジニアがAIに指示を出してプログラムを開発したり、調査や分析、資料作成といった一般的なオフィスワーカーの業務をAIが代行したりというように、AIの活用領域が広がりを見せています」
組織全体ではAIを使いきれていない
二極化するAI活用の実態
AI活用が新たなフェーズに入る一方で、エクサウィザーズの独自データ分析によって浮き彫りとなった課題が「二極化」である。大植氏は、この二極化の課題についてこう語る。「AIを使いこなす人とAIを使えない人に大きく分かれています。AIを使いこなす人がAIの素晴らしさや効果を実感して、どんどん活用していくのに対し、AIを使えない人は使わない状況が同じ組織の中で生まれています。こうした課題は当社がエクサベース AIを展開する中で、ほぼ全てのお客さまから聞くものであり、企業のAI活用を推進する上での中心的な課題だと認識しています。個人では使える人がいても、組織全体では使いきれていない状況に対し、AI活用の推進者やIT部門担当者、DX部門担当者がさまざまな施策を打ってはいるものの、手が回りきっていないのだと思われます」
同社の独自データ分析では、 1,371社・15万5,012ユーザー分のエクサベース AIの実利用ログから、組織のAI活用の実態を調査している。本調査によると、全ユーザーが生成AIに入力したメッセージ数のうち、上位10%のユーザーによるメッセージ数が全体の49.6%を占めた。この結果から、上位ユーザーとその他ユーザーのAI活用の量に大きな差があることがうかがえる。

また、職種別の平均メッセージ数を見ると、IT・システム・DX推進やソフトウェア開発が多く、総務・事務や教育・公共行政は少ない傾向が読み取れる。大植氏はこの傾向について「当社がAIの利活用を進める中で特に使ってもらいたいのは、事務や営業、経理などの業務をしている方々です。職種別で見ると、こうした方々のメッセージ数は少なく、AI活用の二極化には職種の二極化も含まれていると認識しています」と語る。
注目したいのは、同一職種で見ても上位10%が全体メッセージ数の約40%以上を占めていることだ。職種によってAIの平均的な利用量に差はあるものの、職種や部署内のAI活用度に関わらず、AI活用の二極化が発生しているのだ。

では、AIを使いこなす人とAIを使えない人の二極化がこのまま進むと、どのようなことが起こるのだろうか。大植氏は、二極化の進行で起こりうることをこう指摘する。「AI技術は今後もどんどん進化していきます。AIに触れ続けてその効果を体感し、生産性を上げ続けている人と、初期のタイミングでAIに触れてみたものの継続しなかった人、そもそもAIに触れていない人、情報収集のみにAIを利用している人との間に、今後も大きな差が開き続けると考えています。お客さまと会話する中で、こうした二極化が進行している実感があり、これほどのAI技術の進化がある中で大きなギャップが生じることに危機感を抱いています」
継続的なAI活用によって得られる生産性向上の効果は大きく、AIを適切に活用できるか否かによって、業務成果に大きな差が生まれ続けてしまうのだ。

このような成果の差を解消し、組織全体でのAI活用を推進するために、まずは二極化が生じる背景を理解する必要がある。大植氏によると、AI活用の二極化が生じる背景には大きく二つのメカニズムがあるという。一つ目は「関心の二極化」だ。AIを使いこなす人とAIを使えない人には、初動の使い方に大きな差が見られる。AIを使いこなす人は、初動の段階で業務価値を実感できている場合が多い。
二つ目は「使い込みの二極化」だ。AIの活用方法を自律的に学習し続けられる人のみがAIの用途を発見し、その活用の幅を広げているのだ。
そして、これらのメカニズムを断ち切るには、組織全体でのAI活用の仕組み化が不可欠である。関心の二極化に対しては、関心を喚起し最初のAI活用に導く初動支援が、使い込みの二極化に対しては、上位ユーザーが発見した用途の組織全体への横展開が求められる。
バディとなるAIが人をサポート
AI活用の仕組みをAIと共に作る
こうしたAI活用の仕組み化に貢献するのが、エクサベース AIの新機能「バディエージェント」だ。本機能は10月末からの提供を予定している。大植氏は、バディエージェントのリリース背景についてこう語る。「二極化の課題を解決できれば、全員でAIを活用し、組織全体の生産性を向上できます。バディエージェントは、AI活用の推進者やIT部門担当者、DX部門担当者が人手で行っていたAI活用に向けた施策を、AIに任せてしまおうという発想から開発されました。組織に所属する一人ひとりにバディとなるエージェントを割り当て、全員がAIを使いこなせる世界を実現したいという思いの下でリリースした機能です」

大植氏は、バディエージェントには三つの主要機能があると話す。一つ目はパルンからの声かけだ。AIを使えない人は、自身の業務や利用環境でAIをどのように活用すればよいかイメージできていないケースが多い。パルンが具体的な活用機会をユーザーに提示することで、個人のリテラシーに左右されることなく、実務での利用範囲を広げることが可能だ。
二つ目は「おまかせチャット」だ。ユーザーの目的に応じて、パルンが最適なAIモデルや標準搭載の各種エージェント機能・ツールを選定してくれる。ユーザー自身で複雑なプロンプトの作成やツール選択を行う手間を削減し、最初のAI活用に導く初動支援を実現するのだ。
三つ目は「組織ナレッジ」機能だ。ユーザー企業の業務マニュアルや提案書などを取り込むと、組織固有のルールや用語、情報を反映した回答と、その根拠となる資料が提示される。さらに、有用な活用事例やAIエージェントは自動で社内共有されるため、属人的な取り組みに頼らずとも組織全体への横展開が可能だ。
これらの主要機能を備えるバディエージェントを業務に取り入れ、二極化の課題を解決した先に懸念されるのがコストの増大である。これまではAIを使えなかった人がAIを活用するようになれば、その利用量は飛躍的に増加することが予想される。大植氏は、コスト課題への取り組みについて「利用量の増加に伴い、当社では、原価でかかるAIコストをできる限り抑制することで、多くのユーザーに利用してもらえる持続可能な仕組みづくりに挑戦しています」と語る。
会見の終盤、大植氏は最も伝えたいメッセージを次のように語った。「従来は人がAIの使い方を考えていました。しかし、これからはバディとなるAIが人にとってより良いAIの使い方を見極め、最適化してくれるようになります。二極化の課題の解決にもAIが活用できると考えています」
大植氏が語るように、AIの活用方法そのものが新たなフェーズに入りつつある今、AI活用への根本的な発想の転換が求められている。AI活用を取り巻く課題をAIと共に解決し、組織全体でのAI活用の仕組みもAIと共に作っていくことが、「AIカンパニー」への道筋となるだろう。

