VMware Explore 2026でのインフラ戦略
変化するITトレンドに対応するソリューション

8月31日~9月3日の間、米ラスベガスでVMwareの年次イベント「VMware Explore 2026」が開催された。本イベントは、VMwareがBroadcomの傘下に入って3回目の開催となる。Broadcomは同イベントに先立ち、8月27日に合同の事前ブリーフィングを開催した。本稿では、インフラ環境の強化をサポートする「VMware Cloud Foundation」や「TrueSource by Broadcom」、「VMware Tanzu Agent Platform」について紹介していく。

インフラ基盤の強化に注力
セキュアで運用効率をアップする製品群

 今年のVMware Explore 2026では、AIインフラ基盤やエージェンティックAIのセキュリティ、オープンソースの信頼性強化などを主軸に製品戦略が発表された。企業のITインフラ環境をサポートし向上させる製品群を一部抜粋し紹介する。

 まず、Broadcom VCF部門製品マーケティング担当副社長 プラシャント・シェノイ氏から「VMware Cloud Foundation」(VCF 9)の市場実績について紹介された。「VCF 9は昨年5月にリリースされました。それ以降、市場で非常に大きな導入実績を獲得しています。現在、VCF 9およびVCF 9.1は3,000社を超える顧客に導入されており、展開されたCPUコア数は約1,900万コアに達しています。導入企業は中堅・中小企業から大企業まで幅広く、金融、医療、製造業、公共機関、教育機関など多様な業界に広がっています。導入地域も、アジア太平洋、日本、欧州・中東・アフリカ、北米・南米地域に及んでいます。VCF 9の導入が加速している背景には、主に二つの要因があります。第一に、サーバーやメモリー価格の上昇です。現在、多くの企業がハードウェア供給不足やサーバー価格高騰の課題に直面しています。そこでVCF 9では『NVMeメモリーティアリング』機能を導入しました。これにより、従来のDRAMのみで構成するアーキテクチャから階層型メモリーアーキテクチャへ移行できます。結果として、新規サーバー導入時やサーバー刷新時において、ホスト当たり最大42%のコスト削減が可能になります。その上でエンタープライズ向けに求められる性能、可用性、セキュリティも維持できます。AIワークロードの導入を進めながらサーバーコスト増加を抑えたい企業にとって大きなメリットとなり得るでしょう」

AIアシスタントがクラウドを最適化
オンプレ回帰への傾向が高まる

Broadcom VCF部門製品マーケティング担当副社長
プラシャント・シェノイ氏

 発表によると、AIを活用した運用支援機能である「VMware AI Assistant for VCF」が大きく進化したという。新たなVMware AI Assistant for VCFでは、プライベートクラウド運用を大幅に簡素化している。本機能のAIアシスタントは対話型インターフェースを備えており、クラウド管理に想定されるシステム可用性の問題、CPU競合による性能低下、メモリー不足、ストレージ遅延、複雑な障害調査などの問題を迅速に解決できるようサポートする。

 さらに、新たに発表した「Management Packs Builder」により、サードパーティーの監視・運用ツールをノーコードでVCFに統合できるようになった。デバイスデータを「VMware Cloud Foundation」環境(サーバー、ストレージ、ネットワークの仮想化と運用効率化を実現したフルスタック型のSDDC)へ直接マッピングし、エンドツーエンドの可視性を提供する。その結果、企業は従来の「問題が発生してから対応する運用」から「AIを使った予測型運用」への移行を実現するという。

 Broadcomは「AIはクラウドからオンプレミスへ回帰する」という考え方を強く訴える。同イベントでは「VMware Private AI Cloud」が発表されたが、その裏には企業のデータ運用の傾向が変化していることがある。「今年当社実施した調査では、セキュリティ、プライバシー、コストを理由に多くの企業が生成AIの本番運用環境をクラウドではなくオンプレミスのプライベートクラウドへ移行していることが分かりました。これまで企業はPoC(概念実証)や試験運用が中心でしたが、推論処理、RAG、モデルのファインチューニングなど本番用途へ移行しています。企業はデータをAIモデルへ送るのではなく『モデルをデータのある場所へ持っていきたい』と考えています。企業データを外部クラウドへ送信したくないのです。VMwareでは、この流れをAIティッピングポイント(転換点)と呼んでいます」(プラシャント氏)

サイバー攻撃対策プログラムを発表
オープンソースのツールにも対策を

Broadcom Tanzu部門副社長兼ゼネラルマネージャー
プルニマ・パドマナバン氏

 AnthropicのフロンティアAIモデル「Claude Mythos」や重要ソフトの安全を守る業界横断的な取り組み「Glasswing Project」などの登場により、サイバー脅威の速度・量・多様性は急激に増加している。一方でVMwareではセキュリティ分野の取り組みも推進している。プラシャント氏はこうセキュリティ戦略を述べる。「攻撃者はもはや数週間や数カ月ではなく、数時間単位での活動が可能となってきています。また攻撃の各工程はほぼ完全に自動化されている。侵入後のラテラルムーブメント(横展開)も5分未満で発生するケースがあり、多くのセキュリティチームが最初のアラートを分析するより速いスピードで被害が進行します。このため、従来のような数週間単位のパッチサイクルでは対応できません。今後はコンピュート基盤からアプリケーションまで、ITスタック全体に組み込まれたセキュリティが必要になるのです」

 こうした状況を受け、Broadcomは「Frontier AI Security Readiness Program」を発表した。プラシャント氏は「本プログラムはAssess(評価)、Architecture(設計)、導入支援、人材育成の四つのステージで構成されています。セキュリティリスクの可視化や安全なプライベートクラウドの設計、適切な監視とAI、支援機能を備えた環境構築、AIインフラを運用できる人材育成など、管理環境の自動化を目指します」とプログラムのメリットをアピールした。

 Broadcom Tanzu部門副社長兼ゼネラルマネージャーのプルニマ・パドマナバン氏からはオープンソースソフトウェアのポートフォリオ「TrueSource by Broadcom」について紹介された。

「フロンティアAIの登場により、商用ソフトウェアだけでなく顧客のアプリケーションコード、オープンソースライブラリーの脆弱性も大量に発見されるようになっています。当社はJavaでの開発を疎結合・高拡張にする基盤フレームワーク『Spring Framework』の主要開発者であり、メッセージブローカー『RabbitMQ』の主要メンテナーでもあります。こうした背景から発表されたのがTrueSource by Broadcomです。Springは、ライブラリー選定、ビルド、セキュリティ対策をBroadcomが実施します。パッチ提供、オープンソースとの整合性維持、運用自動化まで支援します。重要インフラ向けの顧客には、脆弱性対応パッチへの先行アクセスも提供可能です」

 AIエージェントは従来のアプリケーションとは異なり、自律的な判断能力を持っている。そのため、エージェントは従来のアプリケーションとは異なる前提で設計・管理する必要があるとプルニマ氏は語る。「『VMware Tanzu Agent Platform』ではAIインフラ用サンドボックスに加え、専用の『Agent Sandbox』を提供します。エージェントはコンテナ内で実行されますが、初期状態では『すべて拒否(Deny by Default)』のポリシーが適用されます。エージェントが利用できるのは、指定されたモデル、MCPサーバー、各種スキル、他のエージェント、データ製品のみで、明示的に許可された接続先だけにアクセスできます。これによって権限を後から制限するのではなく、設定当初から必要最小限の権限のみを与える構造を実現しています。VMware Tanzu Agent Platformは『Agent Harness』も提供します。エージェント型アプリケーションを構築する際、開発者はagents.mdファイルを用意するだけでよく、そこにエージェントの目的や意図を定義します。その後、最新の安全なコード取得、ビルド、デプロイまで自動で実行されます」

 プルニマ氏は、Webアプリケーションファイアウォール「Avi WAF」の新たなAPI保護機能についてこう紹介する。「API保護機能により、APIの可視化、脆弱APIの検出、OWASP API攻撃からの防御を実現します。また、『VMware vDefend Firewall』と『Avi WAF』にはAIアシスタントが組み込まれます。例えば『どのファイアウォールルールが請求システムを遮断しているのか』『なぜ決済システムの性能が低下したのか』といった質問に自然言語で回答できるのです。プロンプト検査、個人情報保護、クレジットカード情報保護、エージェント悪用防止、ゼロデイ攻撃検知も実装予定です」