VAIO独自のマルチフリップ機構の復活
三つのスタイルにスムーズに変化するPC
信頼性や品質を強みに法人市場で事業を拡大する一方、新たな体験価値の創出にも注力しているVAIO。その取り組みの第二弾として発表したのが、13.3インチワイドトリプルスタイルPC「VAIO T」「VAIO T work」だ。本記事では9月10日に開催された記者発表会の内容を基に、新製品が生まれた背景やその特長、VAIOとノジマが開発に込めた思いに迫っていく。
AIの登場により再び進化するPC
信頼と驚きを提供する新しいPCとは

取締役 執行役員常務
開発本部 本部長
林 薫氏
2026年8月26日に公開したPickOutNewsの記事で取り上げたように、VAIOはソニーから独立して12年を迎えた。コンシューマー市場中心だった事業から法人市場へと軸足を移し、販売台数に占める法人向けの構成比は約35%から約85%へと拡大。品質や信頼性、細やかな使い勝手が評価され、法人PC市場で独自のポジションを確立してきた。
しかしその過程で、かつてのVAIOが持っていた“驚き”は薄れていったという。VAIO 取締役 執行役員常務 開発本部 本部長 林 薫氏は、「法人市場のニーズに応える進化を続ける中で、以前のような大胆な挑戦は抑えられてきました。しかし、これからのVAIOは『信頼される道具』であるだけでなく、新たな驚きを提供する存在も目指します。信頼と驚きのどちらか一方ではなく、その両立を追求していきます。PCには、もう大きな進化の余地はないのではないか。そう考える人も近年は少なくなかったと思います。しかし、AIの登場によって状況は変わりました。AIを活用した新たな体験、そしてAIと対話するインターフェースとしてのPCの新たな体験が生まれています。今、PCは再び進化の時代を迎えており、その進化に挑戦していきます」と語る。
その挑戦の第一弾となったのが、PC内蔵カメラで血管情報や心拍情報※1を非接触で測定するヘルスケアアプリ「VAIO ウェルネスケア」だ。9月10日に開催された記者発表会では、その第二弾として、13.3インチのトリプルスタイルPC「VAIO T」と「VAIO T work」を発表した。前者は個人向け、後者は法人向けの製品だ。
利用シーンに合わせて
三つのスタイルを自在に切り替え
VAIO TおよびVAIO T workは、VAIO独自のマルチフリップ機構を採用することで、利用シーンに合わせて自在にスタイルを切り替えられる。チルトアップキーボードを備えたノートPCモード、机がない場所でも片手で使いやすいタブレットモード、相手に画面を見せやすいビューモードの三つのスタイルを、1台で使い分けられるのだ。

マルチフリップ機構の狙いは、単にノートPCとタブレットを切り替えることではない。思考や作業の流れを妨げることなく、その時々に最適なスタイルへ移行できることにある。例えば、2人で立ったままタブレットモードで資料を確認し、気になる箇所にタッチ操作でマーキングする。そのままノートPCモードへ切り替えてキーボードで要点をまとめ、資料を添付して送信するといった一連の作業をスムーズに行える。見る、触れる、考える、書く、伝えるという流れをシームレスにつなげられるのだ。




M&Cソリューション推進部
情報ソリューショングループ
グループ長
益田 巧氏
VAIO TおよびVAIO T workは、VAIOとノジマの連携によって生まれた製品だ。ノジマ M&Cソリューション推進部 情報ソリューショングループ グループ長 益田 巧氏は、製品開発の背景を次のように語る。「お客さまに喜んでいただける製品として私が提案したのが、マルチフリップの復活でした。これはかつてVAIOさまが採用していた独自機構の2in1モデルです。私自身も店頭でお客さまに提案していましたが、非常に評価が高く、多くのお客さまが面白いと満足される姿を見てきました。その一方で、後継機種が途絶えてしまったことを残念に感じていました。振り返れば、当時はまだ時代が追いついていなかったのだと思います。PCでのタッチ操作は現在ほど一般的ではなく、Windowsとの親和性も発展途上の段階でした。しかし現在は、スマートフォンをはじめとしてタッチ操作が当たり前になり、モバイルPCの上位モデルでもタッチパネル搭載が標準的な選択肢として受け入れられています。時代がようやくこの機構に追いついた今だからこそ、もう一度チャレンジしたいと考えました。あの時には実現しきれなかった体験も、今なら成立させられるのではないか。その思いをVAIOの開発チームに託しました。お客さまの使い方を誰よりも知る当社の知見と、それを具現化するVAIOさまの技術を組み合わせることで、これまでにない1台を届けられると考えています。VAIO TおよびVAIO T workは、その第一歩となる製品です」
AI時代に求められる
新しいインターフェースを実現

開発本部
プロダクトセンター
シニアプロダクトマネージャー
渡辺 玄氏
VAIO TおよびVAIO T workはマルチフリップ機構というギミックだけを訴求する製品ではない。VAIOのハイエンドPCで磨き上げてきた設計資産を土台に開発されている。
VAIO独自の3マイクを用いたAIノイズキャンセリング機能やアイドル時最大約29時間の長寿命バッテリー、PCに内蔵された人感センサーとカメラを活用し、セキュリティと使い勝手を両立させる「VAIO User Sensing」を搭載しているほか、VAIO独自の数十項目に及ぶ品質試験に加え、米国国防総省基準の「MIL-STD-810H」をクリアしている。さらに、VAIO ウェルネスケアにも対応する。ハイエンドPCとしての安心感を維持しながら、利用者の体験価値を高めていくという。
VAIO 開発本部 プロダクトセンター シニアプロダクトマネージャー 渡辺 玄氏は、VAIO TおよびVAIO T workのコンセプトについて次のように語った。「人とAIとの共創は、すでに多くの場面で始まっており、実際に体験している方も少なくありません。何かを生み出す際、これまでは構想から制作、仕上げまでを人が担っていました。しかし、これからはAIエージェントとの対話を通じて作業を進める場面が増えていくでしょう。そうした時代には、キーボードやマウスといった従来のインターフェースだけでなく、より直感的で人間にとって自然なインターフェースが重要になると考えています。その一つが、タッチと音声による操作です。VAIO TおよびVAIO T workのトリプルスタイルは、こうしたAI時代の働き方をスムーズにしてくれると考えています」
最後に渡辺氏は、VAIOの製品ラインアップの今後について次のように説明した。「今後は二つの製品シリーズで展開していきます。既存の『VAIO』『VAIO Pro』シリーズは、品質と信頼を土台に着実な進化を続ける基幹シリーズです。今後も確かな品質と価値を追求していきます。一方、VAIO TおよびVAIO T workを起点とする『VAIO Next』シリーズは、これまでの進化の枠を超え、新しいスタイルや体験を提案するシリーズと位置付けています。その先には、人とAIとの共創を見据えています。タッチや音声ナビゲーションといったヒューマンAIインターフェースを活用したユニークな商品開発に取り組み、新たな価値をお客さまにお届けしたいと考えています」
※1 血管情報・心拍情報は、カメラから取得したデータに基づき、統計学的処理により構築したモデルから推定した値であり、医学的に確立されたものではない。

