国の物品・役務調達を対象とする政府電子調達システム(GEPS・ジープス:Government Electronic Procurement System)は電子入札・電子契約・電子請求をワンストップで提供し、事業者と行政の双方の業務効率化を進めている。企業ではさまざまな業務や文書のデジタル化が進んでいる一方で、契約に関しては電子化が取り残されている現実がある。GEPSでの電子契約の利用実態と利用促進への取り組みから、ビジネス(商取引)のさらなる効率化を図るヒントを探る。

政府調達に関わる業務の効率化と
入札参加の間口を広げる仕組み

デジタル庁
国民向けサービスグループ
GEPS/GECS担当
参事官補佐
根本裕一

 GEPSは国の物品・役務の調達を対象とした電子調達の共通プラットフォームである。入札参加資格は全省庁統一資格として各省庁共通の審査基準で扱われ、事業者は一度の申請・審査で各省庁の案件に参加できる。

 統一資格を取得後、調達ポータルで案件検索・情報収集を行い、電子入札、開札、契約、請求へと進む、まさに“電子で入って電子で出ていく”流れとなる。

 GEPSの導入の背景には国の調達の効率化と透明性の向上がある。1998年ごろ、小渕内閣の方針から物品・役務調達の共通化が進み、2001年には統一資格の受付と案件掲載を行う「調達総合情報システム」が稼働を開始した。

 以降、各省が個別に持っていた電子入札システムを共通システムに統合し、電子契約機能を加えた「GEPS」が2014年にリリースされた。現在は第3期GEPSが稼働しており、資格審査機能の統合や調達ポータルの整備(2018年)など、利便性の向上が重ねられている。またシステムのアーキテクチャについても第1期は政府共通プラットフォーム(総務省行政管理局が運用していた政府のプライベートクラウド)、第2期では政府共通プラットフォームはそのままに保守性の向上のために内部フレームワークの変更やミドルウェアのバージョンアップ対応を実施し、現状の第3期は第二期 政府共通プラットフォーム(AWSをベースとした政府のクラウド)上で稼働している。

 GEPSを利用して電子入札や電子契約を行う場合、統一資格を取得後に電子証明書の取得、事業者側での環境設定、利用者登録が必須となる。これらが完了した後に、案件検索から電子入札、開札、契約、請求へと手続きが進む。

 一方の各省庁等の発注側は会計法令と内部規程に基づいて案件登録、公告、開札、契約、検収・支払までのプロセスをGEPS上で一気通貫で遂行できる。また少額調達では入札を行わず、提出された複数の見積書を比較して決める「オープンカウンタ方式」がGEPS上で運用されている。

 さらに2025年3月に開始した「少額物品販売業務」では事前に公募で選定された外部カタログ連携事業者が提供する商品カタログを通じて、官公庁職員が一般のECサイトのように商品を選択・発注できる。外部カタログ連携事業者にはEC事業者など5社が参加している。

 また中小事業者も少額物品販売業務に参加できるよう、商品カタログ情報をCSVデータでGEPSにアップロードする機能も実装しており、前述のEC事業者5社とCSV連携事業者の品目データを横断的に検索できる仕組みも提供している。

 さらに「2026年3月には少額物品特化型のオープンカウンタ方式を新たにリリースする予定です」とデジタル庁でGEPSを担当する国民向けサービスグループ GEPS/GECS担当 参事官補佐 根本裕一氏が説明する。これは一つのID・パスワードで複数の行政サービスにログイン・申請できる法人・個人事業主向けの共通認証システム「GビズID」によるログインと見積書のアップロードのみで少額の調達案件に参加できる仕組みであり、政府調達への入札参加の間口を広げる取り組みも進められている。

GEPSの利用メリットは
印紙税非課税とコスト削減

 政府調達に関わる業務を、入札側と発注側の双方で一気通貫でデジタル化できるGEPSを利用することで得られるメリットは何か。まず入札側は統一資格により一つの資格でGEPSを通じて日本全国の政府機関の案件へアクセスが可能で、調達ポータルで案件を一括検索できる。また24時間365日でオンライン手続きできることや、GEPS内での電子請求などの利便性の高さも挙げられる。

 さらに案件の確認や取引に伴う移動費や書類のやりとりにかかる郵送費等のコスト削減も図れるとともに、電子契約を利用すると印紙税が非課税になる。根本氏は「政府調達に関わる業務全体の効率化はもちろんのこと、移動費や郵送費と印紙税がかからないのは大きなメリットです」と強調する。

 発注側のメリットは公告から契約、請求までのワンストップ化による処理時間短縮、監査・証跡の標準化、見積もり比較やカタログ検索の標準化による少額調達の効率化などが挙げられる。またオープンカウンタ方式では価格に加えて納期、搬入・据付などの諸条件も総合的に勘案し、最安値のみにとらわれない柔軟な判断も可能となっている。

 一方でGEPSの利用には課題もある。根本氏は「利用前提として入札・契約時の電子署名に用いる民間認証局等の電子証明書が必要となります。ICカード型の証明書を用いる場合はカードリーダーの購入とドライバーの導入・設定などの環境構築が必須となり、GEPSの利用においてここが一番のネックになっています」と実務上のハードルを指摘する。また電子証明書の維持費も年間1万円程度かかり、参加頻度が低い中小事業者には負担が重くなりやすいという。

電子契約利用率の伸び悩みは
ユーザーの旧来の価値観が原因

 入札する事業者がGEPSを利用することで得られるメリットの一つに、電子契約を利用すると印紙税が非課税になることを挙げた。しかしこのメリットは十分に享受されていないようだ。

 根本氏は「電子入札の電子応札率は平均74.4%※まで進展している一方で、電子契約率は全体で42%※にとどまっています」と指摘する。しかしこの42%という数字も、コロナ禍以前の約1.5%と比較すると急伸したといえる。電子契約が普及しない背景には紙の契約書を好む文化や社内規程の整備不足が壁となっているようだ。

 根本氏は「電子入札ができるのですから電子契約が行える環境はあるはずです。しかし契約書を電子で保管することへの抵抗感が根強くあり、紙の契約書を社内で保管しておくことを希望する事業者が少なくありません。電子契約書はGEPS上でいつでも参照できると説明をしていますが、移行が進みにくいのが実情です」と説明する。

 また請求については自社システムから発行したPDFの請求書を送付することが一般的であり、デジタルインボイス(Peppol e-invoice)への移行は始まったばかりだという。

 GEPSは今後、第4期としてガバメントクラウドへの移行が予定されている。それに伴い認証にGビズIDを利用することでログイン時の入力項目を自動展開し、事業者の負担軽減を図るほか、法務省の商業登記のリモート署名サービスの実装動向に合わせて物理ICカードに依存しない電子署名方法の選択肢拡張が見込まれている。


※出所:デジタル庁「令和6年度 府省等ごとの電子調達抽出件数(令和6年4月1日〜令和7年3月31日)」