
「100年企業を目指す都築電気の挑戦」
吉田克之社長が語る信頼と成長の哲学
都築電気は1932年に都築商店として創業し、1941年に設立された都築電話工業を前身とする老舗ICT企業である。
現在はネットワークシステムおよび情報システムの設計、開発、施工、保守を中心に、クラウドサービスやデータ分析など多岐にわたるICTソリューションを提供している。
都築電気の成長と変革をけん引している吉田克之氏は1984年に入社後、営業部門や西日本本部、ソリューションビジネス本部などを歴任し、2025年6月に代表取締役社長に就任した。
創業90年以上の歴史を持つ都築電気の現在と未来について、吉田氏に語っていただいた。
「時計の秒針のように『1秒1秒刻んで、後ろに戻らない』ような成長をしていてほしいなと思っています」
人との絆が育てた企業文化
決して逃げない姿勢が信頼を醸成

代表取締役社長
吉田 克之 氏
1962年、東京都品川区生まれ。1984年に都築電気に入社後、営業部門やソリューションビジネス本部などを歴任し、2025年6月に代表取締役社長に就任。社内外の信頼を集めるリーダーとして、都築電気の成長と変革をけん引している。
——吉田社長が都築電気(当時は都築電気工業)に入社された当時、ITはおろか、コンピューターはまだ世の中に普及していなかったと思います。なぜ都築電気に就職しようと考えたのですか。
吉田氏(以下、敬称略)●確かにPCはまだビジネスや一般家庭に普及していませんでしたが、パーソナルコンピューターやコミュニケーションという言葉を使う企業が増えてきており、新しいテクノロジーによって時代が変わる雰囲気がありました。
そうした中で当社はコンピューターやコミュニケーションに関わる事業を展開していたため、未来を期待できる会社だと感じました。
また、当時すでに完全週休二日制を実施しており、社員に優しい会社だという良い印象を持ったことも入社の決断につながりました。
——実際に入社されて会社の印象はいかがでしたか。
吉田●上司も先輩も部下や新人の面倒見が良く家庭的な雰囲気で、仕事がしやすかった印象が強く残っています。もちろん仕事には全員が真剣に取り組み、上司も先輩も厳しく指導してくれましたが、仕事が終わると毎日のように食事に連れて行ってもらいました。そこで仕事のこと、プライベートのことをいろいろと話してお互いに理解を深め、チームの結束がより強固になりました。
そうなると会社で一緒に仕事をしているメンバーに迷惑をかけたくない、会社の役に立ちたいという気持ちになり、仕事への向き合い方も変わりました。当時は会社のみんながよく働き、よく遊びました。
私は営業を担当していたのですが、お客さまにも恵まれました。入社した当時も長い期間にわたって取引を続けてくださっているお客さまがたくさんおり、そうしたお客さまの管理職の方々は我々のことを単なる取引先の社員ではなく社会人の後輩として接してくださり、仕事ではいろいろなアドバイスをいただいたり、プライベートでもお付き合いしていただいたりするなど、目をかけてくれました。
上司や先輩が後輩や新人を育ててくれて、お客さまも長年にわたって我々の会社を育ててくれる、そういった付き合いができ、長期にわたって継続できることが当社の強みになっていると思っています。
こうした私の経験は昔の話ですが、今も社内の雰囲気も、お客さまとのお付き合いも、時代の変化に伴って形態は変わっていますが都築電気のDNAは脈々と受け継がれています。
——多くのお客さまが都築電気と長く、深く付き合う理由についてどのようにお考えですか。
吉田●お客さまからの相談や要望を必ず解決、実現しようとする姿勢をご評価いただいているのだと考えています。お客さまの困りごとを当社の社員が自身の問題のように捉えて取り組むことが、当社の昔からの社風になっています。
社内だけで解決できない場合はパートナーや協力会社にもご協力いただいて解決策を探し出すという、決して逃げない姿勢がお客さまからの信頼につながっていると自負しています。
100年企業としての矜持と展望
現場主義と経験重視の人材育成
——都築電気は7年後の2032年に創業100周年を迎えます。現在、都築電気は東京証券取引所プライム市場に上場し、永きにわたって成長を続けてこられました。さらにその先の100年に向けて変わらず守ること、変えて伸ばすこと、それぞれをどのようにお考えですか。
吉田●当社はICTを生業としていますから当然、技術や知識の習得が非常に重要となります。しかし商売とは人が人に物を売る、物を買うわけですから、買い手が売り手を信用してくれなければ買ってもらえません。
もしかしたら一度や二度は買ってもらえるかもしれませんが、信用できる売り手でなければ長いお付き合いはしてもらえません。技術や知識が優秀なだけではなく、信頼される人がたくさんいる会社であり続けたい、これを100年後も守りたいと考えています。
その一方で信頼してくれているお客さまやパートナーに迷惑をかけないために、切磋琢磨して技術を磨き続けることも必要です。以前の社名である都築電話工業が示す通り、当時は電話が事業の柱の一つでした。現在のスマートフォンやメールと同じように、当時も電話がつながらなくなるとビジネスでも日常生活でも大きな問題になりました。そのため電話を止めない最新の技術や最善の体制を常に取り入れて、お客さまが電話を安定して使い続けられるよう努めました。
現在、電話はメールなどのコミュニケーションツールに変わり、ビジネスではさまざまなシステムが利用されています。これらのICTがわずかな時間であっても止まってしまうと、以前の電話と同様にお客さまは大きな痛手を受けることになります。
そうした観点から最新のテクノロジーを理解しつつ、安定的に常に問題なく動かし続けられるシステムを提供することが当社の使命だと考えています。次々と新しいテクノロジーが生まれ、それを活用したシステムが提供されていますが、最新のものにただ飛びつくのではなく、お客さまにとって最善のサービスはどれかを判断するスキルが当社に求められます。
例えばお客さまに「新しい製品が出たのでこれを導入したい」というリクエストがあったとしても、当社がその製品に触れて評価し、お客さまにメリットがあるのかを判断するスキルを備えることが、お客さまへの信頼につながります。

——判断するスキルを養うための取り組みは実践されていますか。
吉田●はい、5〜6年前から実践しています。新しいテクノロジーや製品に対するスキルをスピーディーに習得するには、そのテクノロジーや製品を提供しているメーカーに教えてもらうのが確実です。当社が社員をメーカーやコンサルティング会社、シンクタンクなどに一定期間留学して、スキルを身に付ける制度を設けて実施しています。
新しいテクノロジーや製品に関するスキルが身に付くだけではなく、他社での経験が当社に良い影響をもたらしてくれる可能性も期待できます。
——違う会社で長期間仕事をすることに社員の方は抵抗はないのですか。
吉田●当社はお客さまに納めたシステムをお客さまの社内でメンテナンスするといった業務にも携わっているため、アレルギーはないと思っています。
——出向先や留学先の会社に社員の方が転職してしまう危惧はありませんか。
吉田●それは覚悟しています。しかし派遣先の会社の良いところが見える一方で、外部から見た当社の新たな魅力に気付くきっかけになることも多いようです。派遣先から戻ってきた社員が当社の悪いところを指摘して改善するケースもあり、この制度は技術の習得以外にも社内とは違った視座が得られるなどさまざまなメリットがあります。
——派遣する社員の方はどのように選抜しているのですか。
吉田●テクノロジーや製品に関する一定の知識と経験、そして現場での経験という観点から、入社10年目くらいの社員が適していると考えています。入社して10年くらいたつと当社の課題もだんだん見えてきますので、そのくらいのタイミングで違う環境を経験し、当社に持ち帰ってもらうことが双方にとって良い刺激になると思います。
「信頼される人がたくさんいる会社であり続けたい、 これを100年後も守りたいと考えています」
DISと四つの領域で業務提携
変化と目利きにヒントを得る
——昨年10月にダイワボウ情報システム(DIS)と業務提携契約を締結されました。発表ではクラウドサービスビジネスの拡大と市場におけるプレゼンス確立、新たなサービス・付加価値の創造、物流業務のパートナーシップ構築、サブスクリプションサービスの管理システム構築・連携によるビジネス拡大の四つが業務提携の内容となっていますが、このほかに期待する効果はありますか。
吉田●当社はお客さまの困りごとに、お客さまに寄り添って取り組み続けてきたことで結果を出してきました。さらにもう一歩先の成長を目指すにはどうするべきなのかということが悩みでもあり、今がターニングポイントだと考えています。その方向性を捉えるヒントをDISさまから得られると期待しています。
DISさまの企業文化を目の当たりにさせていただき、DISさまが常に変化を求めていること、変化することに疑問を持たないこと、これらを見習いたいですね。
またDISさまは世界中から優れた製品を見つけ出して市場に紹介、提供しています。DISさまが選ぶ製品は市場性のあるもので、独自の「目利き力」があります。お客さまに相談される前にお客さまのためになるソリューションを届けるために、DISさまの目利き力を活用させていただきたいと考えています。
これまで培ってきた当社のソリューション提供力を生かしてDISさまが扱う製品をお客さまに届けることで、新たな領域で両社がさらに成長できると確信しています。
——100年後の都築電気はどんな会社になっていてほしいですか。
吉田●時計の秒針のように「1秒1秒刻んで、後ろに戻らない」ような成長をしていてほしいなと思っています。100年後に会社がどうなっているかは全く想像できませんが、もしも100年後の会社に自分がいられたなら「やっぱり都築電気はこうだよね」というシーンが必ずあると信じています。