日本エイサー
Acer SpatialLabs Eyes ASEC-1
デジタルコンテンツを次の次元に押し上げることを目指し、Acerは立体3Dソリューションブランド「SpatialLabs」を展開している。SpatialLabsではこれまでに、裸眼での3D立体視を実現するモニターやノートPCを提供してきた。今回レビューするステレオ3Dカメラ「Acer SpatialLabs Eyes ASEC-1」もSpatialLabsの製品群の一つで、2025年2月に発売開始してから数カ月で国内の初期ロットが完売した。グローバルでも在庫の奪い合いになっているという。国内外から高い支持を得るAcer SpatialLabs Eyes ASEC-1はどのような経緯で誕生したのか、その背景と魅力を探っていく。
text by 森村恵一
誰でも簡単に3D写真・動画を撮影

Computing事業部
プロダクトマネージメント
担当部長
張 君儀 氏
Acer SpatialLabs Eyes ASEC-1が開発された背景について、日本エイサー Computing事業部 プロダクトマネージメント 担当部長 張 君儀氏は「SpatialLabsでは3D関連の製品を提供していますが、これまでは裸眼で3Dを鑑賞できる製品が中心でした。そうした中で、3Dコンテンツを作成するカメラもリリースできるのではないかという話が、本社の開発チームから出てきました」と切り出す。
3Dコンテンツを作成するには、人間の視野角に合わせた2台のカメラを用意する必要がある。「これまでの3Dコンテンツ作成はアクションカメラ『GoPro』などを2台使い、それぞれのカメラで撮影した映像を、右目用・左目用の画像を左右に配置する3D動画のファイル形式『サイドバイサイド方式』にまとめる方法が一般的でした。しかしこの方法は、編集作業が面倒で複雑になりがちでした。そこで、一般ユーザーもプロの写真家もより直観的で簡単にサイドバイサイド方式のコンテンツを作れるように、Acer SpatialLabs Eyes ASEC-1の開発に着手しました」(張氏)
Acer SpatialLabs Eyes ASEC-1は、二つのレンズを搭載したコンパクトなステレオ3Dカメラだ。ステレオマイクを内蔵しているため、動画も撮影できる。通常のカメラと異なるのは、二つのレンズで50cm〜無限遠のステレオ撮影が行える点だ。また手ぶれ補正を搭載しているので、写真・動画共に安定した撮影が可能になっている。
本体サイズは幅104×奥行き23.2×高さ65.4mmで、重量は220gだ。本体とPCはUSB Type-Cケーブルで接続でき、充電もUSB Type-Cケーブルで行える。バッテリー容量は1,500mAhで、写真は最大180枚、動画は最大45分まで撮影可能だ。さらには付属品として、USB Type-Cケーブルのほか、本体を収納するポーチや自撮り用のセルフィーミラーが同梱されている。本体を簡単に持ち運べるだけでなく、自撮りをする際に自分の姿をきちんと確認できるのだ。
3D再生に求められる環境とは
Acer SpatialLabs Eyes ASEC-1の利用方法はとてもシンプルだ。本体の電源を入れたら、背面のタッチスクリーンで写真の撮影か動画の撮影かを選択し、後はシャッターボタンを押すだけで良い。全てオートに設定しておけば、被写体に集中してシャッターを切るだけで済む。マニュアルモードもあるため、タッチスクリーンで露出やホワイトバランスを調整し、よりこだわった撮影も行える。ちなみに、タッチスクリーンの操作感はスマートフォンに近い。
撮影した3Dコンテンツは、SpatialLabsの27インチモニター「Acer SpatialLabs View Pro 27 ASV27-2P」や15.6インチノートPC「ConceptD 7 CN715-73G-SL76Z」を使えば、裸眼のままで確認できる。そのほか、VR/ARのヘッドセットでも3Dコンテンツが見られるが、推奨する閲覧環境はSpatialLabs製品とのことだ。理由としては、3D体験における個人差の解消にある。サイドバイサイド方式のステレオ画像は、左右の目の視差によって認識される。そのため、ユーザー間で3D認識の違いが生まれたり、人によっては不快に感じたりしてしまうのだ。そうした差異を解消するために、SpatialLabs製品ではサイドバイサイド方式の映像データを再生するアプリ「SpatialLabs Player」をサポートページで提供している。このアプリを使えば、奥行きなどの調整が手動で行えるので、3D体験の個人差を解消できるのだ。

※画面ははめ込み合成のイメージ。
初期ロット完売の高い注目度
ありそうでなかったステレオ3Dカメラは、国内の初期ロットが短期間で完売したことからも、その潜在的な需要の高さが伺い知れる。実際にX(旧Twitter)でAcer SpatialLabs Eyes ASEC-1を宣伝した際、3Dコンテンツのクリエイターをはじめ、普段とは異なる客層から反応があったという。
加えて活用を希望する声は、クリエイター以外に医療現場からも上がっている。医学生は実習の際、基本的に手術室には入れない。そのため、手術の様子をAcer SpatialLabs Eyes ASEC-1で撮影することで手術のトレーニングに使用するそうだ。3Dで映像を見ることにより、臓器の奥行き感が捉えやすくなる。さらにSpatialLabsのモニターやノートPCを使えば、3Dコンテンツを鑑賞する際に3D眼鏡が不要になり、利便性が向上する。
こうした事例のほかにも、不動産の仮想内見や観光地の情報発信など、3D画像を活用したアイデアは数多く考えられるだろう。将来的に3D鑑賞の環境を整える計画があるならば、そのコンテンツを収集するための3Dカメラとして先行投資する価値はある。