量子コンピューター
量子コンピューターは「量子力学」の原理を使い、膨大な情報を同時並列で処理する次世代技術。従来のスーパーコンピューター(HPC)をはるかに凌ぐ計算速度を持つ。
従来のコンピューターが「0」か「1」のどちらかで情報を処理するのに対し、量子コンピューターは電子や光子といった量子の性質を利用し、「0」と「1」が混在する量子ビット(qubit)によって膨大な組み合わせの並列処理を行う。「0」と「1」が混在する現象を「重ね合わせ」と呼ぶ。
量子コンピューターには、もう一つ重要な性質がある。2つ以上の量子ビットを連動させ、一方の状態が確定すると、もう一方がどれだけ離れていても瞬時に確定する現象。これを「もつれ」と呼ぶ。重ね合わせ状態にある多数の量子ビットをもつれで連携させることで、従来のコンピューターでは不可能な速度での情報処理が可能となる。このアルゴリズムを「量子アルゴリズム」と呼ぶ。
量子コンピューターは、とくに創薬・AI(量子機械学習)・金融の3分野で応用研究が進んでいる。また、従来では困難と考えられていた大規模シミュレーションへの応用も期待されている。例えば、配送業では物流網や交通システムの最適化により、輸送コストの削減、都市部の交通渋滞の解消につながる。金融業界では、金融市場を最適化し正確な市場予測やリスク管理を可能にするなど、デジタルトランスフォーメーション(DX)の次の時代を支える基盤技術として注目されている。
一方で、量子ビットには外部ノイズに弱いという性質があり、熱や電磁波の影響を受けるとエラーが起きやすくなる。そのため、誤り訂正技術や制御精度の向上が進められている。また、量子コンピューターは既存の暗号技術の安全性を脅かす可能性もある。インターネットバンキングなどの公開鍵暗号(非対称鍵暗号)を瞬時に解読してしまうからだ。その脅威に対応するために、量子コンピューターでも解読ができない耐量子計算機暗号(PQC)が開発されている。
(青木逸美)
