人事・給与システムを
AWSのパブリッククラウドで安全に稼働

栃木県内で唯一の公立の精神科病院である栃木県立岡本台病院では2022年4月に地方独立行政法人に移行するのに伴い、人事・給与システムやグループウェアなどのシステムを新たに導入しなければならなくなった。ただしIT専任者やエンジニアがいない同院では、システムの運用・管理が自身でできないという事情があった。そこで高知電子計算センターに依頼し、AWS上に新しいシステムを構築することで課題を解決した。

地方独立行政法人への移行により
既存システムが使えなくなる

 栃木県立岡本台病院(以下、岡本台病院)は地域精神医療の基幹病院として一般的な精神医療をはじめ精神科の救急医療、アルコールや薬物等の依存症医療、医療観察法医療、さらに専門的な医療も提供する。

 岡本台病院は県立病院だったため、人事や予算など病院運営に関する全てのことを栃木県が行っていた。同様に業務に必要な人事・給与システムやグループウェアといったシステムについても栃木県が構築・運用するシステムを利用していた。

 そして2022年4月に地方独立行政法人へ移行した。地方独立行政法人とは地方公共団体が設立する法人であり、地方独立行政法人に移行すると病院の運営を岡本台病院自身で行うことになる。そのため従来は栃木県のシステムを利用していた人事・給与システムやグループウェアなどを、新たに自身で導入して運用・管理しなければならない。

 岡本台病院で情報システムを担当する総務課長 鈴木由起子氏は「以前は人事・給与システムやグループウェアなどは栃木県が運用・管理するシステムを利用していたため、当院の職員がシステムの運用・管理に関与する必要はありませんでした。しかし、地方独立行政法人への移行に伴い独自にシステムを構築して運用・管理する必要が生じましたが、当院にIT専任者やエンジニアがいないため対応に悩んでいました」と説明する。

 また、同院の副主幹 池澤紀子氏は「人事管理においても従来は栃木県の人事課の職員が、当院の職員の情報をシステムに登録していました。地方独立行政法人へ移行すると、こうした業務も病院で行わなければならず、システムを操作しなければなりません。こうした業務への対応も課題でした」と説明を続ける。

栃木県立岡本台病院
総務課長
鈴木由起子 氏
栃木県立岡本台病院
副主幹
池澤紀子 氏
高知電子計算センター
営業部 課長代理
仙頭 航 氏
高知電子計算センター
公共システム一部 UL 技師
傍士智史 氏

従来と全く同じシステムを
運用・管理が不要で使いたい

 地方独立行政法人への移行に伴う人事・給与システムの新規導入に関して、岡本台病院は高知電子計算センターに相談した。高知電子計算センターは2014年より栃木県に人事・給与システムなど基幹系内部システムを提供しており、栃木県に納入したシステムを通じて岡本台病院とも接点があった。

 高知電子計算センターはその社名の通り高知県に本拠を置くSIerであるが、高知県および高知県下の市町村のシステムを手掛けているほか、西日本の自治体にも広くシステムを提供している。その実績が評価されて栃木県や埼玉県など東日本の自治体にも顧客を広げている。

 高知電子計算センターの公共システム一部 UL技師 傍士智史氏は「当社は人事・給与など庁内の業務に使用する基幹系内部システムを中心に事業を展開しています。基幹系内部システムは手掛けている企業が少なく、当社は西日本を中心に多くの実績を持つことが強みです」とアピールする。

 岡本台病院からの依頼について「使い慣れた栃木県のシステムと同じシステムを導入したいというご要望をいただきました。ただし岡本台病院さまはこれまで通り、全ての運用・管理を社外に任せたいというご希望がありましたのでクラウドでのシステムの導入をプロポーザルで提案しました」と当時を振り返る。そして高知電子計算センターはAWSを利用したシステムの導入を岡本台病院に提案した。

業務環境を何も変えずに
新しいシステムへ移行できた

 AWSを利用したクラウドによるシステム導入の提案を受けた岡本台病院の鈴木氏は「クラウド化することで今まで通り運用・管理をせずにシステムが利用できるため、高知電子計算センターさまの提案は大歓迎でした。しかし一部でクラウドに対してセキュリティに不安があるという声もありました」と説明する。

 そこで高知電子計算センターはAWSのセキュリティの高さと世界中での実績を丁寧に説明するとともに、VPNや専用線を用いることで情報漏えい対策を強化できることも説明して提案した。その結果、岡本台病院は高知電子計算センターの提案の通りAWSを利用して新たに人事・給与システムおよびグループウェアを導入することを決断した。

 岡本台病院が新たに導入した人事・給与システムおよびグループウェアは、栃木県のシステムと同じものであるため業務環境を変えずに地方独立行政法人に移行することができた。またAWSを導入したことで従来通り、システムおよびインフラの運用・管理も全て高知電子計算センターに任せることができた。岡本台病院は「何も変えずに新しいシステムへ移行できた」(鈴木氏)ことを高く評価している。

 AWSのサービスとシステムを提供した高知電子計算センターの営業部 課長代理 仙頭 航氏は「岡本台病院さまの事例によって、県庁で稼働しているシステムがパブリッククラウドで安全に稼働できることを実証できました。今後は全国の県や市町村からAWSを利用したクラウド移行への引き合いが増えることを大いに期待しています」とアピールする。

Company Profile

地方独立行政法人
栃木県立岡本台病院
https://okamotodai.jp/
所在地:栃木県宇都宮市下岡本町2162番地
開院:1959年8月
職員数:198名(常勤と非常勤の合計) ※2022年4月1日時点 許可病床数:221

高知電子計算センター
https://www.kcc-kochi.co.jp/
本社:高知県高知市本町4丁目1番16号 高知電気ビル
設立:1966年7月
社員数:206名 ※2022年10月末時点